個人M&Aで融資は受けられるの?注意点と審査のための準備について

個人でM&Aを検討しているものの、資金が十分にないとお悩みではないでしょうか。お金を借りる方法もありますが、個人M&Aを理由に融資を受けられるのかという不安もあるかと思います。 個人M&Aでも融資を受けることは可能なのでしょうか。この記事では、個人M&Aでも融資を受けられるのか、注意点や融資を受けるために行うべき準備について解説していきます。

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個人M&Aで融資を受けるのは難しい?

個人M&Aでも、しっかり利益が出ている事業やサイトを買収するのであれば、数千万円単位の資金が必要になることがあります。まとまった資金を自己資金で用意するのはなかなか難しいところでしょう。

そこで、金融機関などから融資を受けるという方法が考えられます。

しかし、手元の資金が少ない個人は、不動産など融資金額に見合う担保の提供が求められることがほとんどで、個人M&Aで融資を受けるのは厳しいのが実情です。

金融機関からの融資が難しい場合は、事業承継やM&Aで利用できる支援制度がないか探してみると良いでしょう。

個人M&Aでも融資を受けやすい?日本政策金融公庫の融資制度とは

事業承継の支援制度を拡充しており、個人M&Aでも融資を受けられる可能性があるものに、日本政策金融公庫の融資があります。具体的な制度の概要を確認してみましょう。

概要

日本政策金融公庫は、民間の金融機関の補完を目的に設立された政府系金融機関です。創業者や長期簿事業者、中小企業などに向け、幅広い融資制度を展開しています。

さまざまな融資制度の中でも個人M&Aに活用できるのが、「事業承継・集約・活性化支援資金」という融資制度です。

日本政策金融公庫では、以下のいずれかに該当する場合に事業承継・集約・活性化支援資金を利用できます。

・融資後7年以内の事業承継を見込んでおり、現経営者が後継者または後継者候補と事業承継計画を策定している
・安定的な経営権の確保などを理由に事業承継や集約を行う
・経営承継円滑化法の認定を受けた中小企業の代表者や個人
・事業承継で経営者個人保証の免除などを理由に金融機関からの資金調達が困難で、日本政策金融公庫が融資に際し免除する場合
・事業承継や集約を契機に第二創業や新たな取り組みを図る場合

出典:「事業承継・集約・活性化支援資金」(日本政策金融公庫)

このように、事業承継やM&Aに必要な資金需要に広く対応しています。

資金の用途

「事業承継・集約・活性化支援資金」の資金の用途は、必要な設備資金や運転資金とされています。

具体的には、事業承継計画や安定的経営権確保を実施するための運転資金、老朽化した設備を買い替えるための資金、M&Aなどを契機に新たな取り組みを始めるための資金として活用することが可能です。

融資の限度額

「事業承継・集約・活性化支援資金」の融資制度には、「国民生活事業」と「中小企業事業」のふたつがあります。

このうち、小規模事業者や個人事業主を対象としているのが国民生活事業です。国民生活事業の融資限度額は7,200万円(うち運転資金は4,800万円)になります。

返済期間

「事業承継・集約・活性化支援資金」の返済期間は、設備資金の場合20年以内(このうち据置期間2年以内)です。一方、運転資金の返済期間は7年以内となります。ただし、日本政策金融公庫から事業資金の借入残高があって、借り換えを行うときは8年以内です。

実際の返済期間は返済能力や設備の耐用年数なども加味されますが、返済期間の限度を見ると返済期間を長めに設定してもらえる可能性はあります。

個人がM&Aで融資を受ける際の注意点!

日本政策金融公庫のように事業承継を支援している制度もありますので、個人M&Aであっても融資を受けられる可能性はあります。

ここでは、実際に融資を受けることになったときにどのような点に注意すべきか見ていきましょう。

融資を受けるには費用が発生する

日本政策金融公庫をはじめ、融資を受ける場合は、借入利率に応じて利息が発生することになります。借入金額の返済に加え、利息も返済しなければならないことを念頭に置きましょう。

また、利息に加え、保証協会を利用して保証を受けるときは信用保証料も必要です。このようなコストも考えて融資額を検討すると良いでしょう。

資金調達の指標には、「資金調達コスト(WACC)」という指標があります。資金調達コストは、株主への配当に関わる株主資本コストと借入金に関わる利子返済のコストの、資産調達に関わる加重平均コストをパーセンテージで表したものです。

資金調達コストの割合が高いと将来の資金繰りにも影響を与えてしまいます。適切なコストに抑え、将来の返済をシミュレーションしながら計画を立てて融資を受けることが大切です。

フルファイナンスを避ける

フルファイナンスは、個人M&Aなどにかかる買収資金のすべてを融資に頼ることをいいます。フルファイナンスでも買収を進めることはできますが、その分リスクも高いです。

たとえば、フルファイナンスによって借入枠を使い果たすことで、その後、運営資金が必要になったときにお金を借りられなくなるという問題が発生します。

このような事業開始後のリスクを軽減するには、フルファイナンスではなく自己資金をある程度用意することが重要です。自己資金が十分にない場合は、リスクを大きくとるよりも、買収先の規模を小さくするなどの検討も行いましょう。

個人M&Aで融資の審査を通過するには

日本政策金融公庫のように事業承継などに力を入れている融資制度もありますが、申し込みをしたからといって必ずしも融資を受けられるとは限りません。

個人M&Aで融資の可能性を高めるには、融資を受けられるようポイントを押さえることです。ここでは融資の可能性を高める4つのポイントを紹介します。

複数の金融機関に相談する

融資の審査や基準、融資に必要な書類、M&Aに対する融資に積極的かどうかは金融機関によって異なります

ある金融機関では融資を受けられなくても、ほかの銀行や信用金庫、信用組合などでは融資が受けられることもありますので、ひとつの金融機関で融資が通らなくてもあきらめずに融資先を探してみましょう。

決算書と事業計画書をしっかり準備する

個人M&Aを行う場合、融資を受けるために事業計画書の提出を求められます。事業計画書は、事業のコンセプトを始め、事業の骨格を記載する書類です。

どのような計画をもって事業を始めるのか、無理な買収計画ではないか、金融機関側が確認するために提出が求められます。融資に大きく影響しますので、事業計画はしっかりと練って事業計画書を準備するようにしましょう。

また、すでに事業を行っている場合で金融機関などから融資を受けるときは、3期分の決算書や資金繰り表の提出が求められるのが一般的です。

決算書はあっても資金繰り表を作成していないケースも見られますので、個人M&Aで融資を受けたい場合は事前に作成しておきましょう。

担保を設定する

金融機関は、将来発生する価値より、現在の価値を重視します。そのため、債務履行能力を補完するために、今現在、価値のある土地や建物、有価証券などの時価評価がしやすく、流動性や換金性の高い資産を担保に設定すると融資を受けやすくなるでしょう。

このような有形固定資産がある場合は担保の設定も検討すると良いでしょう。一方、特許や権利といった無形の資産は評価されにくい傾向にあるため、注意が必要です。

プロのサポートを利用する

個人M&Aで融資を受けようとする場合、すべて自分で行おうとすると、必要な書類の準備などで行き詰ってしまうこともあります。

融資をスムーズに受けられるようにするためにも、M&Aや融資に詳しい専門家にサポートを依頼するのが良いでしょう。事業計画書については、添削サービスもあります。

まとめ

個人M&Aで融資を受けたいと考えているなら、しっかり準備をしておくことが大切です。また、融資だけでなく、M&A成功のためには、どのような場所でM&Aを成立させるかも考えておく必要があります。

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