意向表明書(LOI)とは?M&Aでの役割・記載内容と基本合意書との違いを解説
意向表明書(LOI)とは?M&Aでの役割・記載内容と基本合意書との違いを解説
意向表明書(LOI)とは、買い手が売り手に買収の意向と大まかな条件を示すために差し入れる書面のことです。 希望する取得価格のレンジ、取引スキーム、想定スケジュール、買収理由(シナジー)などを記載し、トップ面談の前後に買い手側から一方的に提出します。英語の Letter of Intent(レター・オブ・インテント)の頭文字をとって「LOI」と略されます。
結論先出し:意向表明書のポイントは 3 つです。第一に、これは「契約」ではなく買い手から売り手への一方的な意思表示(取引の申込み)であること。第二に、原則として法的拘束力はないこと。第三に、後で締結する基本合意書(MOU)とは「合意の有無」「法的性質」が根本的に異なる別物であること。この記事では、両者の違いを比較表で一望できるよう整理し、混同しやすい「LOI」という略語の二面性も解説します。
本記事は M&A 仲介プラットフォームM&A-WEBの編集視点から、意向表明書(LOI)の役割・記載内容・基本合意書との違いを用語解説として整理します。売却プロセス全体の枠組みは親記事M&A による事業売却の手続き完全ガイドを併読してください。
本記事は用語解説です。 意向表明書の文面そのものの作成代行や、個別案件の法的な判断は扱いません。実際に作成・締結する際は、弁護士や M&A 専門家にご相談ください。
意向表明書(LOI)とは何ですか?
意向表明書(LOI)とは、買い手が売り手に対して「この会社・事業を買収したい」という意向と希望条件の概要を伝えるために、買い手側から差し入れる書面です。
M&A の交渉では、買い手は売り手から提示されたノンネームシートや IM(企業概要書)を検討したうえで、「本格的に交渉に進みたい」という意思を意向表明書として示します。記載されるのは確定条件ではなく、あくまで「最終契約を前提とした条件案」です。そのため、デューデリジェンス(DD)の結果や追加交渉によって、価格やスキームが後から変わることは珍しくありません(出典:BATONZ「M&Aの意向表明書とは?」)。
意向表明書は、売り手にとっては「どの買い手候補と優先的に交渉を進めるか」を判断する材料になり、買い手にとっては「本気度」を示すアピールの場になります。
なぜ「LOI」という略語は紛らわしいのですか?
「LOI」は Letter of Intent の略ですが、文脈によって意向表明書を指す場合と基本合意書(MOU)を指す場合があり、同じ「LOI」でも内容が大きく異なります。
実務やコラムでは、買い手が一方的に差し入れる「意向表明書」を LOI と呼ぶ一方、双方が合意して締結する「基本合意書」も LOI と表記されることがあります。略語が同じでも、前者は取引の申込みの意思表示、後者は契約であり、法的性質はまったく別物です(出典:弁護士コラム「基本合意書と意向表明書の違い」(八木啓介弁護士))。本記事では、LOI を「買い手が差し入れる意向表明書」の意味で扱います。
さらに、入札(オークション)方式の M&A では、意向表明書が「初期意向表明書」と「最終意向表明書」の 2 段階に分かれることがあります。一般に初期段階のものには法的拘束力がなく、最終意向表明書には拘束力を持たせることが多い、という違いがあります(出典:M&Aキャピタルパートナーズ「LOIとは」)。「LOI」と一語で言っても指すものが複数あるため、どの段階・どちらの当事者の書面かを確認することが重要です。
意向表明書に法的拘束力はありますか?
意向表明書は契約ではなく買い手からの一方的な意思表示のため、原則として全項目に法的拘束力を持たせないのが通例です。
価格・スキーム・スケジュールはいずれも「最終契約を前提とした条件案」にすぎず、法的に売買を約束するものではありません。独占交渉や秘密保持についても、意向表明書の段階では「お願い」のレベルにとどめ、拘束力を持つ取り決めは後続の基本合意書で改めて締結するのが一般的です。むしろトラブル回避のため、意向表明書には「法的拘束力を有しない」旨を明記しておくことが多いとされています(出典:BATONZ「M&Aの意向表明書とは?」)。
ただし、法的拘束力がなくても、提示した価格レンジや方針は交渉のたたき台として事実上の影響を持ちます。後で大きく覆すと売り手の信頼を損なうため、書ける範囲で現実的な内容にしておくことが実務上のポイントです。
意向表明書には何を書きますか?
意向表明書には、買い手の概要と希望する取引条件の「概要」を記載します。確定条件ではなく方向性を示すものなので、レンジや前提条件付きで書かれるのが一般的です。
代表的な記載項目は以下のとおりです。
- 買い手の概要・事業内容(誰が、どのような会社・ファンドが買収するのか)
- 買収(譲受)を希望する理由・シナジー仮説
- 希望取得価格のレンジと算定の大まかな考え方
- 想定する取引スキーム(株式譲渡/事業譲渡 など)
- 想定スケジュールとデューデリジェンス(DD)の進め方
- 譲渡後の経営・雇用の方針(従業員の処遇、経営陣の関与など)
- 独占交渉・秘密保持に関する希望(この段階では拘束力のない「お願い」として)
なお、本記事では意向表明書の文面そのものの作成代行は行いません。実際に作成する場合は、自社の状況に合わせて弁護士・M&A 専門家のサポートを受けるのが安全です。
意向表明書と基本合意書の違いは何ですか?
意向表明書と基本合意書の最大の違いは、意向表明書が買い手の「一方的な意思表示」であるのに対し、基本合意書は双方が合意して締結する「契約」である点です。
両者を 5 つの軸で比較すると、性質の違いが一望できます。
LOI(意向表明書)↔ 基本合意書(MOU)違い比較表
| 比較軸 | 意向表明書(LOI) | 基本合意書(MOU) |
|---|---|---|
| 合意の有無 | 買い手から売り手への一方的な差し入れ | 双方が合意して締結 |
| 法的性質 | 取引の申込みの意思表示 | 契約 |
| 法的拘束力 | 原則なし(独占交渉・秘密保持も「お願い」段階) | 大部分は拘束力なし。ただし独占交渉権・秘密保持義務などの一部条項に拘束力を持たせる |
| 作成タイミング | プロセス初期(トップ面談の前後) | 条件交渉が進んだ中間段階(DD の前) |
| 記載の詳細度 | 希望条件の概要(大まか) | より詳細・確定的な内容 |
意向表明書は「初期段階で買い手が希望を示す書面」、基本合意書は「交渉が進んだ段階で双方が基本条件を確認し合う契約」と整理すると分かりやすくなります(出典:弁護士コラム「基本合意書と意向表明書の違い」(八木啓介弁護士))。
基本合意書のどの条項に拘束力があり、どこにないのか——独占交渉権・秘密保持などの拘束条項の早見表は、基本合意書(MOU)とは|M&Aでの役割・拘束条項を解説で詳しく整理しています。本記事は「違いの全体像」、相手記事は「拘束条項の詳細」と役割を分けています。
意向表明書はいつ提出しますか?
意向表明書は、買い手が IM(企業概要書)を検討し、トップ面談を経て「本格交渉に進みたい」と判断した段階で提出するのが一般的です。
M&A の売却プロセスにおける位置づけは、おおむね次の流れになります。
[1] 秘密保持契約(NDA)締結
↓
[2] ノンネームシート/IM 開示
↓
[3] トップ面談
↓
[4] 意向表明書(LOI)提出 ← 本記事
↓
[5] 条件交渉
↓
[6] 基本合意書(MOU)締結
↓
[7] デューデリジェンス(DD)
↓
[8] 最終契約(DA)・クロージング
前段の秘密保持についてはNDA(秘密保持契約)とは|M&Aでの役割をわかりやすく解説を、意向表明・基本合意の後に行う買収監査についてはデューデリジェンス(DD)とは|M&Aでの目的・種類を解説を併読してください。
意向表明書は必須ですか?
意向表明書は法律上の必須書類ではなく、案件によっては省略されることもあります。
教科書的なフローでは「意向表明書 → 基本合意書」と段階を踏みますが、実務では両者を統合し、いずれか一方だけで進めるケースも少なくありません。たとえば意向表明書の内容を充実させ、その一部(独占交渉・秘密保持など)に拘束力を持たせることで、実質的に基本合意書の役割を兼ねさせることもあります(出典:弁護士コラム「基本合意書と意向表明書の違い」(八木啓介弁護士))。
一方で、複数の買い手が競う入札(オークション)方式では、候補を絞り込む手段として意向表明書の提出が事実上必須になります。「必ず作るもの」ではなく「案件の進め方によって要否が変わる書面」と理解しておくとよいでしょう。
よくある質問
意向表明書(LOI)とは何ですか
意向表明書(LOI)とは、買い手が売り手に買収の意向と大まかな条件を示すために差し入れる書面のことです。希望取得価格のレンジ・取引スキーム・想定スケジュール・買収理由などを記載し、トップ面談の前後に買い手側から一方的に提出します。記載内容は確定条件ではなく「最終契約を前提とした条件案」です。
意向表明書と基本合意書の違いは何ですか
最大の違いは、意向表明書が買い手の一方的な意思表示(取引の申込み)であるのに対し、基本合意書は双方が合意して締結する契約である点です。作成タイミングは意向表明書が初期段階、基本合意書が条件交渉後の中間段階。記載の詳細度も基本合意書のほうが確定的です。拘束力は意向表明書が原則なし、基本合意書は独占交渉権・秘密保持などの一部条項に拘束力を持たせます。
意向表明書に法的拘束力はありますか
原則として、意向表明書のすべての項目に法的拘束力を持たせないのが通例です。買い手からの一方的な意思表示であり、価格やスキームも「最終契約を前提とした条件案」にすぎません。独占交渉や秘密保持も意向表明書の段階では「お願い」にとどめ、拘束力を持つ取り決めは後続の基本合意書で締結するのが一般的です。
意向表明書には何を書きますか
買い手の概要・事業内容、買収を希望する理由(シナジー)、希望取得価格のレンジ、想定する取引スキーム(株式譲渡/事業譲渡など)、想定スケジュールとデューデリジェンスの進め方、譲渡後の経営・雇用方針、独占交渉・秘密保持に関する希望などを記載します。いずれも確定条件ではなく概要・レンジで示すのが一般的です。
意向表明書はいつ提出しますか
NDA 締結・IM 開示・トップ面談を経て、買い手が本格交渉に進みたいと判断した段階で提出するのが一般的です。プロセス全体では「NDA → ノンネーム/IM → トップ面談 → 意向表明書 → 条件交渉 → 基本合意書 → デューデリジェンス → 最終契約」という流れの中の初期〜中盤に位置づけられます。
意向表明書は必須ですか
法律上の必須書類ではなく、案件によっては省略されることもあります。実務では意向表明書と基本合意書を統合し、いずれか一方で進めるケースもあります。一方、複数の買い手が競う入札(オークション)方式では、候補を絞り込む手段として提出が事実上必須になります。案件の進め方によって要否が変わる書面です。
まとめ
意向表明書(LOI)は、買い手が売り手に買収の意向と希望条件の概要を示すために差し入れる書面です。本記事のポイントを整理します。
- 性質:契約ではなく、買い手から売り手への一方的な意思表示(取引の申込み)。原則として法的拘束力はない。
- 基本合意書との違い:合意の有無(一方的/双方合意)・法的性質(申込み/契約)・拘束力・作成タイミング・記載の詳細度の 5 軸で異なる別物。違いの全体像は本記事の比較表で、拘束条項の詳細は基本合意書の記事で確認するのが効率的。
- 「LOI」の二面性:意向表明書と基本合意書の双方を指しうる略語のため、どの段階・どちらの書面かを確認することが重要。
意向表明書は、その後の条件交渉・基本合意・デューデリジェンスへと続く M&A プロセスの入口に位置する書面です。用語の意味と役割を正しく理解したうえで、実際の作成・締結は専門家と進めましょう。
M&A の進め方や意向表明書を受け取った後の対応を相談したい方へ → M&A-WEB の無料相談(売主完全無料)
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