運送業のM&A・事業承継完全ガイド|一般貨物自動車運送事業許可の承継手続きとGマークの引継ぎ・2024年問題
運送業のM&A・事業承継完全ガイド|一般貨物自動車運送事業許可の承継手続きとGマークの引継ぎ・2024年問題
運送業のM&Aでは、株式譲渡なら許可は会社に残り、譲渡譲受・合併・分割では国土交通大臣の認可を受けて一般貨物自動車運送事業許可を引き継ぎます。 運送会社の売り手・買い手がまず確認すべき論点は「許可は引き継げるのか」「どのスキームが手続上もっとも簡便か」です。本記事はM&A仲介プラットフォームM&A-WEBの編集視点から、業界背景(2024年問題)・許可承継のスキーム別比較・譲渡譲受の認可手続き・Gマーク(安全性優良事業所)の引継ぎ・進め方の5ステップ・個人事業の承継までを、公的出典に基づいて体系的に整理します。許認可の帰趨は貨物自動車運送事業法・国土交通省の制度解説を一次情報として参照します。本記事の親カテゴリであるM&A売却全般の論点はM&A売却(事業売却・会社売却)完全ガイドで扱っています。
運送業のM&Aで一般貨物自動車運送事業許可は引き継げますか
運送業のM&Aで許可を引き継ぐ方法は、選ぶスキームによって異なります。株式譲渡なら許可は会社に残ったまま引き継がれ、譲渡譲受・合併・分割では国土交通大臣の認可を受けて許可を承継します。 行政手続の観点では、許可の名義変更が不要な株式譲渡がもっとも簡便です。
ここでいう「運送業」とは、他人から運賃を受け取ってトラックで貨物を運ぶ「一般貨物自動車運送事業」を指します。一般貨物自動車運送事業を営むには、貨物自動車運送事業法に基づく国土交通大臣の許可が必要です。この許可は事業者(法人または個人)に対して与えられるもので、営業所・車庫・車両・運行管理者・整備管理者・資金といった要件を満たすことが前提となります。
M&Aの場面では、この許可を「会社ごと引き継ぐ」のか「許可だけを移す」のかで、必要な行政手続が変わります。会社の株式を買い取る株式譲渡では、許可を持つ法人格そのものが存続するため、許可の名義変更は不要です。一方、許可だけを別の事業者へ移す譲渡譲受や、複数会社を1つにまとめる合併、事業の一部を切り出す会社分割では、いずれも国土交通大臣の認可手続が必要になります。
なお、許可だけを単独で譲り渡す譲渡譲受は、他業種では珍しい一方、運送業では制度として認められている点が特徴です。ただし認可審査は新規許可とほぼ同条件であり、簡単に通るものではありません。詳細は§3・§4で整理します。
運送業のM&Aが2024年問題で増えているのはなぜですか
運送業のM&Aは、2024年問題(自動車運転業務の時間外労働上限規制)によるドライバー不足・人件費上昇に加え、経営者の高齢化と後継者不在が重なり、近年活発化しています。 単独での事業継続が難しくなった中小運送会社が、規模拡大を狙う同業や周辺業種への譲渡を選ぶケースが増えています。
2024年問題が再編を後押しする構造
2024年問題とは、2024年4月から自動車運転業務に時間外労働の年960時間という上限規制が適用されたことを指します。これにより、長時間労働を前提としていた運送会社は、ドライバーの拘束時間を圧縮しながら同じ輸送量を維持する必要に迫られました。結果として、ドライバーの増員・賃上げ・運行効率化への投資が不可欠となり、小規模事業者ほど単独での対応が難しくなっています。
人手と原資が限られる中小運送会社にとって、規模の経済を得られる同業への譲渡や、グループ入りによる共同配送・幹線輸送の効率化は、経営課題への現実的な打開策となります。買い手側も、自前でドライバーと許可を一から確保するより、既存の許可・車両・人員ごと取得するM&Aを選ぶ動機が強まっています。
経営者高齢化・後継者不在という構造課題
運送業界はもともと家族経営・中小企業の比率が高く、経営者の高齢化と後継者不在が深刻です。中小企業全体でも、後継者未定を理由に黒字でも廃業に至る懸念が指摘されており(中小企業庁 中小M&Aガイドライン)、運送業はこの傾向が特に強い業種の1つとされています。
さらに、燃料価格の高止まり、荷主との価格交渉力の弱さ、車両の維持更新コストといった構造的な収益圧迫要因が重なります。これらが2024年問題と同時に押し寄せたことで、「自社単独での存続」から「より強い経営基盤への承継」へと舵を切る経営者が増えているのが現状です。
債務超過会社の事業承継というケース
財務的に苦しい運送会社では、運送事業(許可・車両・人員・取引先)だけを別会社へ承継し、残った旧会社を清算するケースもみられます。この場合、許可の承継方法(譲渡譲受や会社分割)と、旧会社の整理手続を組み合わせて設計します。ただし、こうした再生型の承継は法務・税務の論点が複雑なため、弁護士・税理士を交えた個別検討が前提となります。本記事では一般的な承継スキームの整理にとどめ、個別の再生スキーム設計には立ち入りません。
運送業 許可 承継のスキーム別比較|株式譲渡・譲渡譲受・合併・分割
運送業の許可承継は、株式譲渡(許可は会社に残る)・譲渡譲受(認可で許可を移す)・合併(合併認可)・会社分割(分割認可)の4スキームに整理できます。行政手続の負担は株式譲渡がもっとも軽く、それ以外は国土交通大臣の認可が必要です。 どのスキームが適するかは、許可だけを移したいのか会社ごと引き継ぐのか、簿外債務リスクをどう扱うかで分かれます。
スキーム別 許可帰趨・認可要否の比較表
各スキームの許可の帰趨と認可の要否を整理します。標準処理期間は地方運輸局・案件の内容により幅があるため、目安として捉えてください。
| スキーム | 許可の帰趨 | 認可・届出の要否 | 標準処理期間の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 株式譲渡 | 法人格が存続し許可は会社にそのまま残る | 許可の名義変更は不要(役員変更等の届出で対応) | 行政手続は最小 | 資産・負債・許認可・契約を会社ごと承継。手続上もっとも簡便 |
| 譲渡譲受 | 譲受側へ許可を移し、譲渡側の許可は消滅 | 国土交通大臣の認可が必要 | 1〜3か月程度(大臣権限案件は2〜3か月程度) | 許可だけを移す。認可は新規許可とほぼ同条件の審査 |
| 合併 | 存続会社が許可を保有 | 合併認可が必要 | 1〜3か月程度 | 存続会社の許可の有無にかかわらず認可申請が必要 |
| 会社分割 | 分割により2社が許可を持てる場合がある | 分割認可が必要 | 1〜3か月程度 | 事業の一部を新設・吸収分割で切り出すスキーム |
株式譲渡は、許可を持つ法人格をそのまま承継するため、許可・車両登録・取引契約・従業員雇用がすべて会社に残ります。行政手続の負担が最も軽く、対価を現金で受け取りやすいため、運送業M&Aで多く選ばれるスキームです。一方で、過去の簿外債務や未払い残業代といったリスクも会社ごと引き受けるため、買い手側のデューデリジェンス(DD)が重要になります。DDの全体像はデューデリジェンス(DD)とは?M&Aでの目的・財務/法務/税務/事業の種類を解説を参照してください。
譲渡譲受・合併・分割は「認可」が前提
譲渡譲受・合併・会社分割の3スキームは、いずれも国土交通大臣の認可を受けてはじめて効力が生じます。とりわけ譲渡譲受は、運送業許可だけを単独で移せる珍しいスキームですが、認可が完了した時点で譲渡側(元の会社)の許可は消滅します。認可前に事業を引き継いで運行を始めると、無許可営業とみなされるおそれがあるため、認可のタイミングとクロージング日の調整が欠かせません。
合併では、存続会社がもともと許可を持っているかどうかにかかわらず、合併認可の申請が必要です。会社分割では、事業の一部を新設分割・吸収分割で切り出すことで、元会社・承継会社の双方が許可を保有できる設計も可能ですが、こちらも分割認可が前提となります。
自社に合う承継スキームが株式譲渡か譲渡譲受か判断に迷う場合は、まず専門家に整理してもらうのが近道です。 → M&A-WEBの無料相談フォームはこちら
運送業許可の譲渡譲受の認可にはどのくらい期間がかかりますか
譲渡譲受の認可の標準処理期間は、地方運輸局長の権限で行われる案件で1〜3か月程度、国土交通大臣の権限に係る案件で2〜3か月程度が目安です。認可は新規許可とほぼ同等の要件審査を伴うため、書類準備を含めると半年前後を見込むのが現実的です。 認可の法的根拠は貨物自動車運送事業法にあります。
認可の法的根拠 — 貨物自動車運送事業法第30条
事業の譲渡譲受は、貨物自動車運送事業法第30条に基づき、国土交通大臣の認可を受けなければその効力を生じないと定められています。つまり、当事者間で譲渡譲受の契約を結んだだけでは許可は移転せず、認可がなければ法的な効力が生じません。合併・分割についても、同法に基づく認可が必要です。
認可申請の手続は貨物自動車運送事業法施行規則に定められており、事業譲渡譲受認可申請書に必要事項を記載して提出します。申請先は、営業所の所在地を管轄する地方運輸局(貨物課)です。実際の申請にあたっては、申請書のほか、譲渡譲受契約書の写し、譲受側が要件を満たすことを示す書類(営業所・車庫・車両・運行管理者・整備管理者・資金等に関する資料)の添付が求められます。
認可審査は「新規許可とほぼ同条件」
譲渡譲受の認可で重要なのは、認可審査が実質的に新規許可の取得とほぼ同じ要件を満たすことを求める点です。一般貨物自動車運送事業の許可要件は国土交通省が示しており(国土交通省 一般貨物自動車運送事業の制度・申請)、譲受側がこれらを認可の時点で満たしているかが確認されます。主な確認項目は次のとおりです。
- 営業所・休憩睡眠施設の確保(用途地域・規模等)
- 車庫の確保(営業所からの距離・収容能力等)
- 最低車両数(一般に営業所ごとに5両以上が目安)
- 運行管理者・整備管理者の選任
- 事業開始に必要な資金計画の妥当性
- 法令遵守の体制
これらの要件を譲受側が満たしていない場合、認可は下りません。許可だけを移せるとはいえ、譲受側が一から許可を取るのと同等の準備が必要になる点に注意が必要です。
譲渡物の範囲は管轄により取扱いが異なる
譲渡譲受で「何を譲渡対象に含めるか」については、管轄運輸局によって運用が異なる場合があるとされています。実務上、譲渡物として営業用資産の引継ぎが必要とされるケースから、最小限の備品で足りるとされるケースまで幅があると指摘されています(運送業専門の行政書士による譲渡譲受の実務解説)。地域差があるため、譲渡物の範囲は事前に管轄運輸局へ確認することが欠かせません。本記事ではこうした運用差があることの紹介にとどめ、個別案件での取扱いは管轄窓口・専門家への確認に委ねます。
GマークはM&Aで引き継げますか
Gマーク(安全性優良事業所認定)は、M&A・合併・事業譲渡で自動的には承継されません。事業所の登録事項変更届に加え、承継の経緯に応じた書類を提出し、実施機関が認定継続の可否を総合的に判断します。 Gマークは入札や荷主選定で評価されるため、DDで認定継続の可否を確認すべき論点です。
Gマークとは — 安全性優良事業所認定
Gマークとは、全日本トラック協会が運営する「安全性優良事業所」の認定制度です。事業所の安全性に関する複数の評価項目を審査し、一定基準を満たした事業所を認定するもので、認定を受けた事業所は荷主や行政から安全性の高い事業者として評価されます。制度の趣旨や位置付けは国土交通省も解説しています(国土交通省 トラック事業の安全性評価(Gマーク)制度)。
Gマークは事業所単位で認定されるため、複数営業所を持つ会社では、一部の事業所だけが認定を受けていることもあります。入札参加資格・荷主からの選定・行政上の各種優遇措置で考慮される場面があり、運送会社の付加価値の1つとなっています。
M&A時のGマークは届出+認定継続判断
Gマークは、M&A・合併・事業譲渡・会社分割などで事業者や事業所の体制が変わる場合、自動的には引き継がれません。全日本トラック協会の案内によれば、認定事業所の体制が変わった際は「安全性優良事業所登録事項変更届出書」を提出し、譲渡譲受・統合・分割等のケースでは認定継続に係る自認書や挙証書類を添えて、全国実施機関に届け出る必要があるとされています(全日本トラック協会 Gマーク 認定事業所の変更手続き)。
提出された書類をもとに、実施機関が認定を継続できるかどうかを総合的に判断します。つまり、届出を出せば必ず認定が継続するわけではなく、承継後の体制が安全性の評価基準を満たし続けているかが審査される点に注意が必要です。窓口は各都道府県トラック協会(適正化事業実施機関)であり、承継スキームや事業所の体制に応じて必要書類が変わるため、具体的なケースは事前相談が推奨されます。
DDでGマークの認定継続可否を確認
買い手側のDDでは、対象会社の各事業所のGマーク認定状況と、M&A後に認定が継続できるかどうかを確認しておくことが重要です。Gマークを前提に取引している荷主や、入札で加点を受けている取引がある場合、認定が継続できなければ事業価値に影響する可能性があります。承継スキームの選択段階から、Gマークの取扱いを論点に含めておくことが望まれます。
許可の承継方法やGマークの認定継続可否について、自社のケースで確認したい場合は専門家へご相談ください。 → M&A-WEBの無料相談フォームはこちら
運送業M&Aの進め方|要件確認を含む5ステップ
運送業M&Aは、目的整理 → 相手探し → 基本合意 → デューデリジェンス(DD)→ 認可申請とクロージングの5ステップで進みます。許可要件・運行管理者・車両・Gマーク・労務を承継時点で満たすかを、DDの段階で確認することが要点です。 認可手続が必要なスキームでは、認可期間を見込んだスケジュール設計が欠かせません。
Step 1: 目的整理とスキームの仮決め
最初に、譲渡・譲受の目的を整理します。売り手は「会社ごと譲るのか(株式譲渡)」「許可・車両・人員を別会社へ移して旧会社を整理するのか(譲渡譲受・分割)」を、買い手は「許可ごと取得して規模を拡大したいのか」を明確にします。この段階で、株式譲渡か認可を伴うスキームかの方向性を仮決めしておくと、その後の進行がスムーズです。
Step 2: 相手探し(公的機関+民間プラットフォーム)
譲渡・譲受の相手は、事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関と、M&A仲介・マッチングプラットフォームなどの民間サービスの双方から探せます。運送業は許可・車両・ドライバーという固有の論点があるため、業種特有の事情を理解した相手・支援者を選ぶことが、後の手続をスムーズにします。仲介とFAの違いや使い分けはM&A仲介とFAの違い|両手・片手の仕組みと利益相反・報酬体系で選ぶ使い分けマトリクスで整理しています。
Step 3: 基本合意(LOI)
買い手・譲受側が決まったら、譲渡額・スキーム・主要条件を盛り込んだ基本合意書(LOI)を締結します。LOIは原則として独占交渉権と秘密保持以外に法的拘束力を持たせないのが通例で、ここから本格的なDDへ進みます。
Step 4: デューデリジェンス(許可要件・人員・車両・Gマーク・労務)
運送業のDDでは、財務・法務に加えて、許可に関わる固有の確認項目が重要になります。主な確認ポイントは次のとおりです。
- 許可要件の充足:営業所・車庫・最低車両数を承継時点で満たすか
- 運行管理者・整備管理者:選任が継続できるか、退職予定者がいないか
- 車両:登録状況・リース残債・整備記録・車検残存
- 運行管理者・点呼記録・労働時間:2024年問題への対応状況
- Gマーク:認定状況とM&A後の継続可否
- 労務:未払い残業代・社会保険加入状況・ドライバーの定着
運行管理者や整備管理者は許可維持の前提条件であるため、承継を機に退職する人材がいないかは特に重要です。要件を満たせない場合、認可が下りない、または許可の維持に支障が出る可能性があります。
Step 5: 認可申請とクロージング
最後に、スキームに応じた認可申請(譲渡譲受・合併・分割の場合)と、最終契約・対価決済・各種名義変更を進めます。認可を要するスキームでは、認可完了がクロージングの前提となるため、認可期間(1〜3か月程度)を逆算したスケジュールを組みます。株式譲渡では認可は不要ですが、役員変更等の届出や許可台帳上の手続を確認します。
なお、譲渡契約書の具体的な雛形や条項の作成は、弁護士・M&A仲介などの専門家の領域です。本記事では手続の流れを整理するにとどめ、契約書の条項作成代行や個別の文例提示は行いません。
事業譲渡で運送業を引き継ぐには何が必要ですか
事業譲渡(譲渡譲受)で運送業を引き継ぐには、譲渡譲受契約に加えて、国土交通大臣の認可と、譲受側が許可要件を満たすことが必要です。認可なくして譲渡譲受の効力は生じません。 許可だけを単独で移せる点が運送業の特徴ですが、認可審査は新規許可と同等です。
運送業の事業譲渡には、大きく2つの意味合いがあります。1つは、会社が営む複数事業のうち運送事業だけを切り出して別会社へ譲る「事業譲渡」、もう1つは、運送業許可そのものを移す「譲渡譲受」です。許可を移す譲渡譲受では、前述のとおり貨物自動車運送事業法第30条に基づく国土交通大臣の認可が必須です。
必要となる主な要素を整理すると、第一に当事者間の譲渡譲受契約、第二に事業譲渡譲受認可申請書の提出(施行規則)、第三に譲受側が営業所・車庫・車両・運行管理者・整備管理者・資金などの許可要件を満たすこと、第四に認可後の各種名義変更(車両登録・運行管理者選任届等)です。譲渡物の範囲は管轄により取扱いが異なるため、事前に運輸局へ確認します。
廃業を選ぶか譲渡を選ぶかで手取りや手続が変わる点は、運送業に限らず共通します。廃業と譲渡の比較は廃業 vs 譲渡|「廃業のつもりが売れた」事例で見る後悔しない選択が参考になります。運送業の場合、許可・車両・ドライバーという譲渡可能な資産があるため、廃業より譲渡の選択肢を先に検討する価値があります。
個人事業の運送業を従業員に引き継ぐことはできますか
個人事業として運送業を営む場合でも、譲渡譲受の認可手続を経れば、従業員(番頭・ドライバー)への事業承継は可能です。個人から個人・個人から法人のいずれの形でも、譲受側が許可要件を満たし、国土交通大臣の認可を受けることが前提となります。 高齢の経営者がリタイア時に信頼できる従業員へ事業を譲るケースで活用されます。
運送業の許可は個人にも与えられますが、個人事業の許可は本人に帰属するため、本人が引退・死亡する場合に許可をそのまま誰かに渡せるわけではありません。生前に従業員へ事業を引き継ぐ場合は、譲渡譲受の認可手続を通じて、譲受側(従業員個人または従業員が設立した法人)が新たに許可を得る形で承継します。
実務では、個人事業主が法人成り(法人化)したうえで承継しやすくするパターンや、信頼できる従業員に譲渡譲受で許可・車両・取引先を引き継ぐパターンがみられます。いずれの場合も、譲受側が運行管理者・整備管理者・車庫・資金などの要件を満たすことが認可の条件となります。個人事業の承継は、相続・贈与・売買のいずれに当たるかで税務上の取扱いが変わるため、税理士を交えた検討が前提です。本記事では税額の個別計算には立ち入らず、承継の枠組みの整理にとどめます。
価格や評価についても、運送業のM&Aでは車両・許可・取引先・人員という資産性が評価されますが、具体的な譲渡価額は事業規模・収益力・地域・取引先構成によって大きく異なります。本記事では評価の考え方の概論にとどめ、個別の査定額は専門家による個別査定に委ねます。
運送業のM&Aで一般貨物自動車運送事業許可は引き継げますか
引き継ぐ方法はスキームによって異なります。株式譲渡では法人格が存続するため許可は会社にそのまま残り、名義変更は不要です。譲渡譲受・合併・会社分割では、国土交通大臣の認可を受けて許可を承継します。許可だけを単独で移す譲渡譲受は運送業で認められていますが、認可審査は新規許可とほぼ同条件です。詳細はスキーム別比較の章を参照してください。
株式譲渡で運送業の許可はどうなりますか
株式譲渡では、許可を持つ法人格がそのまま存続するため、一般貨物自動車運送事業許可は会社に残ったまま引き継がれます。許可の名義変更は不要で、役員変更等の届出で対応します。資産・負債・許認可・取引契約・従業員雇用を会社ごと承継できるため、行政手続上もっとも簡便なスキームです。一方で、過去の簿外債務などのリスクも会社ごと引き受けるため、買い手側のデューデリジェンスが重要になります。
運送業許可の譲渡譲受の認可にはどのくらい期間がかかりますか
標準処理期間の目安は、地方運輸局長の権限による案件で1〜3か月程度、国土交通大臣の権限に係る案件で2〜3か月程度です。認可は新規許可とほぼ同等の要件審査を伴うため、書類準備を含めると半年前後を見込むのが現実的です。期間は地方運輸局や案件の内容により幅があるため、具体的な見通しは管轄運輸局への確認が必要です。
運送業のM&Aが2024年問題で増えているのはなぜですか
2024年問題(自動車運転業務への時間外労働の年960時間上限規制)により、ドライバーの拘束時間圧縮・増員・賃上げが必要となり、小規模事業者ほど単独での対応が難しくなったためです。これに経営者の高齢化・後継者不在、燃料高、荷主との価格交渉力の弱さといった構造課題が重なり、より強い経営基盤への承継としてM&Aを選ぶ事業者が増えています。
GマークはM&Aで引き継げますか
Gマーク(安全性優良事業所認定)は、M&A・合併・事業譲渡で自動的には承継されません。事業所の登録事項変更届に加え、譲渡譲受・統合・分割等のケースでは認定継続に係る自認書や挙証書類を全国実施機関に提出し、実施機関が認定継続の可否を総合的に判断します。窓口は各都道府県トラック協会で、承継スキームや体制に応じて必要書類が変わるため、事前相談が推奨されます。
事業譲渡で運送業を引き継ぐには何が必要ですか
許可を移す譲渡譲受では、当事者間の譲渡譲受契約に加え、貨物自動車運送事業法第30条に基づく国土交通大臣の認可が必要です。認可なくして譲渡譲受の効力は生じません。譲受側が営業所・車庫・最低車両数・運行管理者・整備管理者・資金などの許可要件を満たすことが認可の条件で、認可後は車両登録などの名義変更を行います。譲渡物の範囲は管轄運輸局により取扱いが異なる場合があるため、事前確認が必要です。
個人事業の運送業を従業員に引き継ぐことはできますか
個人事業の運送業でも、譲渡譲受の認可手続を経れば従業員への事業承継は可能です。個人から個人・個人から法人のいずれの形でも、譲受側が許可要件を満たし、国土交通大臣の認可を受けることが前提です。高齢の経営者がリタイア時に信頼できる従業員へ許可・車両・取引先を引き継ぐケースで活用されます。承継が相続・贈与・売買のいずれに当たるかで税務上の取扱いが変わるため、税理士を交えた検討が前提です。
まとめ — 運送業M&Aの3原則と次の一歩
運送業のM&A・事業承継は、一般貨物自動車運送事業許可をどのスキームで引き継ぐかが出発点です。本記事では、2024年問題を背景とした再編動向、許可承継のスキーム別比較、譲渡譲受の認可手続、Gマークの引継ぎ、進め方の5ステップ、個人事業の承継までを、貨物自動車運送事業法・国土交通省・全日本トラック協会の公的情報に基づいて整理しました。
運送業M&Aの3原則は次のとおりです。第一に、株式譲渡が行政手続上はもっとも簡便で、許可は会社に残ったまま承継できます。第二に、譲渡譲受・合併・会社分割では国土交通大臣の認可が必須で、認可は新規許可とほぼ同条件の審査を伴います。第三に、Gマークは自動承継されず、届出+認定継続判断が必要なため、DDで認定継続可否を確認しておくことが重要です。
許可の帰趨・認可期間・Gマークの取扱いは、スキームと事業所の体制によって変わります。売り手は廃業より譲渡の選択肢を先に検討する価値があり、買い手は許可要件・運行管理者・Gマーク・労務をDDで早期に確認することが、承継後のトラブル回避につながります。M&A売却全般の流れはM&A売却(事業売却・会社売却)完全ガイド、DDの詳細はデューデリジェンス(DD)とは?、仲介・FAの選び方はM&A仲介とFAの違い、廃業との比較は廃業 vs 譲渡を併せて参照してください。
運送業のM&A・事業承継の無料相談は、M&A-WEBの無料相談フォームはこちらへ。 許可の承継方法・Gマークの認定継続可否・進め方を、自社のケースに沿ってご相談いただけます。買い手側で運送会社の取得を検討している方は、買い手向けの相談窓口(https://ma-platform.com/contact/)からもお問い合わせいただけます。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引・許可承継・税額・法的判断を保証するものではありません。許可承継・認可手続・Gマークの認定継続・税務判断は、本記事の記述を参考としつつ、管轄運輸局・各都道府県トラック協会・弁護士・税理士などの専門家への事前相談を必ず実施してください。