事業・会社を売却する実務

M&Aで従業員にいつ説明する?売り手・買い手の役割と伝える内容

この記事の目次
  1. 説明のタイミングはどう決める?
  2. 株式譲渡と事業譲渡では何が違う?
  3. 説明する内容を4つに分ける
  4. 説明文の組み立て例
  5. 売り手と買い手の役割、説明後の対応
  6. 説明前のチェックリスト

M&Aが進むと、従業員にいつ、何を伝えるべきか迷うことがあります。説明日を一律に決めるより、取引方式、必要な手続き、伝えられる事実を整理し、売り手と買い手で担当を決めることが出発点です。

段階 整理すること 注意点
売却検討中 情報共有が必要な人と範囲 確定情報と未確定情報を分ける
買い手と交渉中 説明者、対象者、雇用上の論点 守秘義務や個人情報を確認
合意・契約前後 開示できる事項、個別手続き、質問窓口 方式によって必要な手続きが異なる
引き継ぎ前後 説明会、個別面談、問い合わせ対応 未決定事項の回答時期を決める

この表は準備の目安で、法定期限や一律の説明日を示すものではありません。

説明のタイミングはどう決める?

従業員が知る必要のある事項と、まだ開示できない事項を整理します。買い手候補が現れたら、誰がいつ説明するかを両者で協議し、取引方式や契約条件に照らして個別の説明・承諾が必要か確認します。

全員への発表と一人ひとりへの手続きは別に考えましょう。事業譲渡では、個別の承諾などを全体発表の後にすればよいと決めつけないようにします。

株式譲渡と事業譲渡では何が違う?

株式譲渡では、通常、株主が変わっても雇用主である会社自体は同じです。事業譲渡で、対象者の労働契約を譲受会社に引き継ぐ場合は、対象者それぞれの承諾が必要です。厚生労働省の指針は、真意による承諾を得るため、事業譲渡の状況、譲受会社の概要や予定する業務・就業場所・労働条件などを十分に説明し、時間的余裕をもって協議することが適当としています。会社分割や合併などには別の規律があります。

待遇や勤務地は方式だけで決まりません。個別の契約と変更内容を確認してください。厚生労働省の事業譲渡等指針の改正後全文を確認してください。改正指針は2026年5月25日から適用されています。協議を行うことが適当とされる事項と、個別承諾の要否は分けて確認します。

説明する内容を4つに分ける

区分 整理する内容
確定した事実 開示可能な取引内容、決定済みの体制
検討中 話し合っている方向性と、決まっていない理由
未決定 いつ、誰が決め、いつ回答する予定か
個別に確認 労働契約、勤務地、職務や待遇など本人ごとに異なる事項

未確定の項目は、決まっていないことと次の連絡予定を合わせて伝えます。

説明文の組み立て例

今回の取引について、現時点で決まっていることと、これから確認することを分けてお伝えします。働き方に関する個別の事項は、確認できた内容から本人に説明します。質問は担当窓口で受け付け、回答できない事項は確認のうえ改めてお知らせします。

文例は説明の型です。実態と決定状況に合わせて自社の言葉に置き換えてください。譲受先や就業場所などの確認が必要な人には、個別の状況に応じて説明します。

売り手と買い手の役割、説明後の対応

売り手は説明対象と現在の雇用条件を整理します。買い手は決定済みの経営体制や引き継ぎ後の運営方針を整理します。共同説明の前に資料を照合し、回答者と連絡窓口を決めましょう。

説明会だけで終えず、個別に尋ねられる窓口を用意します。本人の承諾が必要な場面では、一斉説明会を実施しただけで個別承諾を得たと考えず、対象者ごとに確認します。質問内容、担当者、回答予定日を記録し、全員に関係する変更は追加で共有します。個人情報の共有範囲にも注意します。

説明前のチェックリスト

  • 取引方式と雇用主が変わるかを確認した
  • 必要な個別説明・承諾などの手続きを確認した
  • 確定、検討中、未決定、個別確認の事項を分けた
  • 説明対象、説明者、質問窓口を決めた
  • 給与、勤務地、職務の確認できた範囲を整理した
  • 未決定事項の次の回答時期を決めた
  • 説明後の問い合わせと追加連絡の担当を決めた

取引全体は会社売却の解説、買収後の統合全体はPMI 100日プランも参考にしてください。

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