注目される食品ECの動きとは?参入への課題や対処法を解説

今やほとんどの人が利用しているECサイトですが、食品ジャンルでは苦戦を強いられており、EC化率はたったの3.31%しかありません。 2020年は新型コロナウィルスによる巣ごもり需要の影響もあり、EC化率も増加しましたが昨今では高止まりの傾向が続いています。 簡単に参入できる分野ではないとされる食品ECですが、そこで生き残るための方法はあるのでしょうか。 今回は食品ECの概要やメリット、市場規模などについて紹介します。そのうえで、今後さらなる支持を獲得するためのポイントについて解説いたします。

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食品ECとは?種類やメリットを紹介

はじめに、食品ECの概要や種類、メリットについて紹介します。

食品ECとは

食品ECの「EC(elECtronic commerse)」とは、日本語で「電子商取引」のことを指します。食品ECはインターネット上で食品を売買するビジネスモデルであり、生鮮食品や加工品、飲料、酒類といった幅広い商品を購入可能です。

そのため消費者は食品ECによって、比較的簡単に日常的な食材や地方や海外の名産品を自宅で受け取ることができます。

食品ECの種類

食品ECは主に以下3つの種類に分けられます。

食材など一般的な食品EC
ネットスーパー
定期的に食材などを販売するEC

それぞれについて紹介していきます。

食材など一般的な食品EC

生鮮食品や加工品、飲料、酒類など一般的な食品を販売するECです。

小売店や百貨店といった販売業者に限らず、生産者や食品メーカーが直接販売するケースも見受けられます。

また、地方の産地取り寄せもこのカテゴリーに含まれており、モール出店や独自サイトの運営がなされることもあります。

ネットスーパー

ネットスーパーとは、既存のスーパーマーケットがネットを通じて食品・日用品の注文を受付け、自宅に配送するサービスです。

日本では、株式会社西友が2000年にはじめた「西友ネットスーパー」が草分けとされています。

また、2001年には株式会社イトーヨーカドーも参入。2022年2月現在もネットスーパー市場は拡大傾向にあるといわれています。

ネットスーパーの実施店舗によっては、午前中の注文に対して当日夜までに配達が可能であるほか、夜の0時まで配達をしている場合もあるものの、いずれも利用できる地域は限定的です。

定期的に食材などを販売するEC

定期的に指定住所へ食品を配達するECです。

あてはまるECは、オーガニック商品を中心に食材の宅配を行っている「ビオ・マルシェ」、産地や安全性にこだわった生協の商品を届ける「co-op deli」、手軽に調理できる食材セットを届ける「Oisix」などが挙げられます。

また、昨今では総合通販会社や生産者団体が行う独自の定期便(花、果物など)も見られるようになっております。

食品ECのメリット

食品ECのメリットとして、次の3点が挙げられます。

・販売できる範囲が非常に広いため販路を拡大できる
・24時間365日年中無休で販売できる
・商品情報だけでなく生産者の想いやメッセージも伝えられる

食品スーパーの商圏は都会で約700m、地方で約2㎞といわれていますが、ECサイトでショップを展開することにより販路の拡大が見込めます。

また、実店舗と異なり24時間365日年中無休で販売できるのも、食品ECならではのメリットといえるでしょう。

そして、食品ECでは実店舗で伝えることが難しい生産者のこだわりや想いを十分に伝えることができ、ユーザーからの共感を得やすいといえます。

食品EC市場の動きや将来性は?

ここでは、食品EC市場の推移や将来性について見ていきましょう。

食品EC市場の推移

経済産業省の「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」によれば、食品、飲料、酒類分野における2020年のEC市場規模は2兆2,086円でした。

カテゴリーとして見れば、衣類・服飾雑貨等に次いで2番目の市場規模ではあるものの、EC化率は3.31%と生活家電(EC化率32.75%)や書籍・映像・音楽ソフト(EC化率42.97%)などと比べて大きく出遅れていることがわかります。

また昨今では、コロナ禍により在宅時間が増えたことで食材ECの需要が増加し、新規参入する業者も増えています。

そのため、市場が活性化する一方で競争も激しくなっており、いかに消費者のニーズを掴むかが重要です。

食材ECの将来性

株式会社矢野経済研究所が実施した調査によると、コロナによる巣ごもり需要をきっかけとして家庭向け食品ECの動きが加速しています。

とはいえ、食品EC市場は高止まりの傾向にあるとされ、2022年にはその反動が懸念されていることに注意する必要があるでしょう。

また、特需が長く続かない背景に消費者のニーズの高まりに業界が追いついていないといった側面も挙げられます。

市場規模自体は拡大傾向にあるものの、これから先さらなる成長を遂げるためにはいくつかの対策を講じる必要があるでしょう。

食品ECには課題もある!対策を講じよう

新型コロナウィルスの感染拡大によって食品ECが活発化している一方、まだまだ多くの課題が残されているのも事実です。

ここでは食品ECの課題と解決へ向けた対策について紹介します。

課題と対策①食品の取り扱い方

消費者が食品を購入する際、重視するポイントの1つとして鮮度が挙げられます。

生鮮食品は手に取って実際に確認したいと考える消費者も多く、鮮度を確認しづらいECに不安を抱くケースも少なくありません。

鮮度のいい状態で生鮮食品を消費者に届けるためには、食品に特化した独自の物流拠点を持つことが効果的です。

とはいえ、物流拠点の構築は多大なコストがかかるため、大手企業以外にはハードルが高いといった側面があることが事実としてあります。

鮮度の高い商品を消費者の元に届けるために、ECで商品を購入してくれた人に対し、鮮度のいい商品を丁寧な梱包で発送し、受け取ってもらうといった基本的対応の徹底が重要であるといえます。

課題と対策②収益性の低さ

食品の多くは単価が安く、配送や手数料など事業者側の負担が大きいといった一面があることもあり、利益率があまり高くありません。

また、食品を適切に保管する設備の維持管理費、在庫管理、ピッキング、配送手配など少し考えるだけでも、数多くのバックエンド作業が必要であり、それぞれ固定費や変動費が生じます。

そのため収益性の低さをカバーする対策として、定期購入など継続的に売り上げに繋げる工夫で安定した売上を目指す、消費者の視点に立った戦略を立てるといったことが挙げられるほか、商品管理の効率化による費用の節約を図ることも大切です。

課題と対策③利便性の問題

消費者がECサイトを利用する理由の1つに、「利便性」があります。

Amazonや楽天といったECサイトが大きなシェアを獲得している背景として、簡単な操作で欲しいものがすぐに手に入ることが挙げられるでしょう。

しかし、食品はECサイトに比べると実店舗(スーパーやコンビニなど)の方が利便性は高いといえます。いつ届くのかと荷物がくるまで自宅で待機する必要がないほか、実際に商品を目で見て確認が可能です。

そのため、食品ECにおいては注文したその日に配達を行うといった利便性を高める工夫や、感染リスクを低減できるといった観点からアピールを続ける必要があるでしょう。

食品ECで成功している取り組み事例を参考にしよう!

食品ECの概要やメリット、課題について理解したところで、参考となりそうな取り組み事例を紹介します。

事例①:ネットスーパー

食品ECの中でも大手である「楽天西友」は、楽天のEC事業のノウハウと、西友の生鮮食品販売のノウハウを融合させ、積極的に事業を展開しています。

「楽天西友」が講じた具体的な施策として、ネットスーパー専用の拠点を新たに設けたことで当日の宅配を可能としたことが挙げられます。

この取り組みは成功し、西友のネットスーパー利用者は発足前と比較して1.4倍まで増加しました。

事例②:醤油に特化したECサイト

「醤油職人」は、独自の取り組みで成功しているECサイトです。醤油に特化したECサイトを運営し、日本全国の醤油を100mlの小びんに詰めて販売しています。

サイト内では醤油の種類や使い方、レシピにとどまらず、醤油の歴史や蔵元探訪記などユニークなコンテンツを数多く掲載しているのも特徴です。

事例③:オンラインでの頒布会

食品流通会社の「全国農協食品株式会社」は、米や果物などを中心とした農畜畜産物を販売するECサイトを運営しています。

同社ではオンラインでの頒布会を実施したことにより、売上が2倍以上に伸びました。

頒布会(はんぷかい)とは、定期購入のように商品が届く配送方法である一方、毎月届く商品が異なり、趣味嗜好の要素が強いことが特徴として挙げられます。

従来から紙媒体での頒布会を行っていましたが、顧客からのニーズを受けてオンラインへ移行したことが功を奏したといえるでしょう。

まとめ

今回の記事ではECの中でも、食品ECの現状や課題、それに伴う対処法についてお伝えしました。

大手各社が食品ECに力を入れ始めたものの、まだまだ課題も多く、日本全国に浸透するのは当分先の話となるでしょう。

少子高齢化が予想される日本において、食品ECの拡大は急務であり、それに付随するサービスも向上させていかなければなりません。

記事で取り上げた成功例を参考に、食品ECを効率よく運用していきましょう。