少額で購入しやすいM&A案件とは
M&A案件のなかには少額で取引できるものもあります。たとえば、以下は少額で購入しやすい案件です。
飲食店や小売店
パン屋やラーメン屋などの飲食店は、売却価格500万円以下の案件も多くあります。居抜き物件などで開業することも多いため、事業者自体も多くマッチングがしやすいといえるでしょう。
とはいえ、飲食店や小売業は、事業主に対する信頼や人間関係で成り立っている面も大きいです。事業承継後に顧客や人材といった経営資源が離れていくおそれもあり、事業継続が難しくなることも考えられます。
美容室
後継者不在が深刻化している美容室も少額でのM&Aを行いやすい案件です。
美容室は地域性が高いため、地域の顧客などの経営資産をそのまま受け継ぐことができるのがメリットといえます。すでに多くの顧客を獲得している美容室を購入できれば、集客にかける労力やコストを大幅に削減することができるでしょう。
また、M&Aにより従業員ごと事業を引き継ぐと、顧客にとって馴染みのある美容師をそのまま採用できるのも利点です。
ただし、従業員として美容師を雇う場合は、経営者は国家資格である「管理美容師」の資格が必要となります。
学習塾
学習塾を開業するにあたって課題となるのが生徒の集客です。その点、M&Aで学習塾を購入すれば、最初から生徒がいる状態でスタートできるため、M&Aでも人気の案件となっています。
ただし、学習塾の人件費は上昇しており、利益率は低下の傾向にあることは留意しておきましょう。
とはいえ、オンライン学習やプログラミング教育など、最新の動向を取り入れることで事業を拡大できる可能性はあります。
製造業や印刷業
経営者の高齢化にともない、後継者を探していることが多いため、製造業や印刷業も比較的購入しやすい業種です。買収すれば、立ち上げにかかる時間を短縮できるのがメリットといえます。
専門性が高い分野なので買収時に優秀な人材もまとめて引き継ぎできればベストですが、少額案件の場合、従業員がついてくることはあまり期待できないでしょう。そのため事業を継続するにあたり、自身が事業の専門性をもっている必要があります。
ECサイトやWebサイト
ECサイトやメディアなどのWebサイトも少額で購入しやすいM&A案件です。
自身が小売業を行っている場合、扱っている商品を購入したECサイトを使って販売することができます。実店舗だけでは売上を伸ばすことは難しくても、ECサイトを使えば新たな顧客獲得にもつながり、販売網を拡大することができるでしょう。
とはいえ、売却時点でアクセス数が少ないECサイトだと、買収による大幅な利益アップは望めません。購入を決める前に、現在のアクセス数やどの程度の収益があるのかといったサイトの情報を詳細にヒアリングすることが大切です。
少額でM&Aを行うメリットとデメリット
少額でM&Aを行うことにはメリットが多くあるとはいえ、デメリットもあります。購入を決める前に、メリットとデメリットの両方を知っておきましょう。
少額でM&Aを行うメリット
M&Aを行えば、すでに構築されている販売先や仕入れ先との関係、従業員や事業者といった経営資源をそのまま手に入れることができます。すべてを一から開拓する必要がなく、事業の立ち上げまでにかかる時間やコストを大幅に削減できるのは大きなメリットです。
もしも事業がうまくいかなかった場合でも、少額でのM&Aなら損失も最小限にすることができます。
また、案件や購入後の工夫次第で、事業を成長させて購入額以上に収益を上げられる可能性もあるでしょう。
少額でM&Aを行うデメリット
事業をそのまま引き継ぐため、債務まですべて引き継ぐおそれがあります。M&A対象案件は財務リスクを抱えていることもしばしばあるので、財務状況についてあらかじめしっかりと調べておく必要があるでしょう。
また、少額で購入できても、M&Aを行った事業内容や企業についての知識や理解が不十分だと、事業を継続していくことは困難です。少額で購入できる案件は、売上高や利益が小さいことが多いので、思っていたような収益が得られない可能性もあります。
少額でM&Aを行いたい人のよくある疑問
少額でM&Aを行うにあたって、不安な点や疑問点は解消しておきたいものです。少額M&Aに関するよくある疑問にお答えします。
M&Aって世間のイメージは悪くない?
2018年に東京商工会議所が行った「事業承継の実態に関するアンケート調査」によると、6割以上の経営者がM&Aについて良い手段だと思わないと回答しています。
出典:「事業承継の実態に関するアンケート調査」(東京商工会議所)
とはいえ、M&Aに関するこうした見方も変わりつつあるといわれています。
その理由のひとつが、中小企業における後継者不足の問題です。実際、2025年までに経営者が70歳を超える企業の約半数は後継者が決まっておらず、廃業になるおそれがあるといわれています。そのため、事業承継の代替手段としてM&Aの需要が高まっているのです。
令和2年3月には経済産業省が「中小M&Aガイドライン」を策定し、国をあげて中小企業のM&Aを推進しています。
こうした流れからM&Aは企業の価値を再評価するものとして、ポジティブなイメージへと変化してきているのです。
参考:「中小M&Aガイドライン-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」(経済産業省)
M&Aの価格は何で決まるの?
M&A市場では、決まった相場や価格が存在しません。価格はあくまでも、売り手と買い手の交渉による合意で決定します。
M&Aの価格を決める要素となるものには以下のようなものがあります。
・会社の純資産
・M&A後に見込まれる利益
・市場価値
・取引先や従業員、技術などの無形資産 など
これらの要素を考慮して販売価格は決められるものの、交渉の余地はあるので、少額でもM&Aは可能です。
買い手は個人でも大丈夫?
M&Aはもともと大企業の間で行われることが多かったものの、昨今では企業同士だけではなく、企業対個人でも行われています。
実際、個人によるM&Aは増えてきているのが実情です。
その理由として、少額で購入できるM&A案件が増え、個人での取引のハードルが低くなったことが挙げられます。また、インターネットを介したM&Aマッチングサービスが出てきたことで情報が入手しやすくなったこともひとつの理由でしょう。
いずれにしても売り手が納得すれば取引は成立するため、個人だからといって購入できないことはありません。
M&Aの資金が足りないときはどうするの?
M&Aの資金が足りないときは、少額M&A向け融資の活用を検討することができます。これは日本公庫や民間の金融機関が行っている融資で、500万円以下の小口資金の融資が約6割を占めているとされています。
法人企業だけでなく、個人企業への融資も行われているので安心して利用できるでしょう。
M&Aで少額の案件を探す方法
少額で購入できるM&A案件の情報を探すには、以下の方法があります。
事業承継・引継ぎ支援センターを利用する
事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置する公的な相談窓口です。
なかでも後継者人材バンクは、創業希望者と後継者不在の事業者のマッチングを行っているので、M&A案件を探している際は利用すると良いでしょう。
M&A仲介会社・マッチングサイトを利用する
M&Aを専門にした仲介会社やマッチングサイトでも少額案件を探すことができます。
仲介会社を利用すれば専任のアドバイザーが相談に乗ってくれます。ほとんどの場合、成功報酬型ではあるものの、相談料や着手金などが高額となるケースもあるので、仲介会社を選ぶ際は注意しましょう。
マッチングサイトについては、場所や時間を問わずいつでも案件が探せるのが魅力です。ただし、サイトにより料金体系が異なるので、利用前に確認をしておきましょう。
サイトM&A仲介サービスを利用する
WebサイトのM&Aを検討しているなら、サイトM&A専門の仲介サービスの利用が安心です。
サイトM&Aは顔を合わせずに取引が可能という気楽さはあるものの、最後まできちんと事業を引き継ぎできるか不安があります。実際にサイトM&Aで詐欺が行われたケースもあり、利用には慎重になりたいものです。
サイトM&A専門の仲介サービスを利用すれば、代金を支払ったのにサイトが引き渡されない、サイトの売買代金が払われないといったリスクを回避できます。売り手と買い手のどちらも安心して取引が行えるのでおすすめです。
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まとめ
資金が少額でもM&Aを行うことはできます。M&Aを行えば、一から事業をはじめる際と比較して、初期費用や集客にかける時間や費用も抑えられ、仮に失敗しても損失が少ないといったメリットがあります。
とはいえ、債務を引き継ぐおそれがありますし、収益があまり出ないことも考えられるので、案件探しは慎重に行いましょう。