【スモールM&Aの基礎知識】概要と主な種類
ここではスモールM&Aの基礎知識として、概要や主な種類について見ていきましょう。
スモールM&Aとは?
スモールM&Aとは、M&Aの中でも小規模な事業者が行うものを指し、一般的には以下のケースを指すことがほとんどです。
・売り手や買い手の売上高が年1億円以下
・売買金額が1億円以下
近年は少子高齢化にともない、後継者不足に悩む中小企業が増えており、やむを得ず黒字廃業を選択することも少なくありません。
しかし、スモールM&Aによって第三者に事業を委ねることで、親族や社内に後継者がいなくとも、事業承継を果たすことができます。
スモールM&Aの種類
スモールM&Aでは、その多くは「株式譲渡」か「事業譲渡」どちらかの手法がとられます。
株式譲渡:売却会社の株主が持つ株式を買い手に譲渡し、会社を売買する
事業譲渡:売り手企業が有する事業の一部、またはすべてを買い手が買収する
株式譲渡では会社の経営権ごと引き継ぐため、プラスの財産はもちろん、マイナスの財産も引き継ぐことになります。
一方、事業譲渡は株式譲渡と異なり、株式(経営権)が移転するわけではありません。よって、どの資産や権利・義務を売買するか選べるほか、不要な債権などは引き継がずに済みます。
ただし、契約関係を引き継ぐ際は従業員や取引先からそれぞれ同意を得なければならないほか、「競業避止義務」にも注意が必要です。
スモールM&Aを行うメリット・デメリット
次に、売り手と買い手それぞれの立場からメリットとデメリットについて見ていきましょう。
スモールM&Aを行うメリット
スモールM&Aを行うメリットは以下のとおりです。
売り手:身近に後継者がいなくても事業承継ができるほか、まとまった資金を得られる
買い手:少ない資金で事業の拡大を目指せる
M&Aはかつて「一方的な買収」といったイメージがありました。しかし、これらの売り手と買い手両者にメリットがあることへの理解が深まり、昨今では双方が敵対することなく取引が成立する「友好的M&A」が行われるケースが増えています。
スモールM&Aを行うデメリット
対するデメリットとして、以下の点が挙げられます。
売り手:売買交渉において買い手主導となりやすい
買い手:想定していた管理体制が敷かれていない、従業員からの理解が得られない
スモールM&Aではお互いが提示した条件下のもと、どのように折り合いをつけるかが大切です。
また、状況に応じてM&A仲介会社などに間を取り持ってもらうのもひとつの手でしょう。
スモールM&Aを行うための方法は4つ
スモールM&Aを行うための主な方法を4つ紹介します。
マッチングサイトを利用
マッチングサイトでは必要な情報を登録するだけで、条件に合う売り手や買い手を探せます。
ただし、手軽さとコストの低さがメリットである一方、サイトによってサポート力に差があるため注意しましょう。
なお、サイト購入を検討している場合には、丁寧なサポートと効率的なマッチングが魅力的な
「M&A-WEB」をご活用ください。
「M&A-WEB」は、Webメディアなどを売りたい人と買いたい人のマッチングプラットフォームです。個人での売買をはじめ、M&Aサイト売買の利用がはじめての方でも丁寧なサポートで簡単かつスピーディーにサイト売買ができます。
M&A仲介会社を利用
M&A仲介会社は売り手と買い手のマッチングから契約までをサポートしてくれます。仲介会社であれば、会社独自のネットワークを活かして求める条件に合った案件を紹介してもらえるため、比較的労力をかけることなく案件を見つけられます。
なお、スモールM&Aに特化している仲介会社を選ぶことで、コストの削減にもつながるでしょう。
会計士や弁護士へ相談
会計士や弁護士へ相談することで、会計や法務、税務といった分野において適切なサポートが受けられます。
しかし、M&Aに特化しているわけではないため、M&Aの案件探しにおけるサポート力にはあまり期待できません。あくまでM&Aを進めるうえで発生する、金銭のやり取りや法律関係の相談役として活用しましょう。
事業承継・引継ぎ支援センターへ相談
事業承継・引継ぎ支援センターは、事業継承をサポートするために国が設置している公的機関です。
承継を検討している会社・個人事業主と創業を目指している起業家とのマッチング支援のほか、引き継ぎのサポートを受けられます。
事業承継・引継ぎ支援センターへは無料で相談できるほか、各分野の専門家から質の高いアドバイスを受けられます。ただし、外部の専門家への依頼が必要な際は費用がかかるため注意しましょう。
スモールM&Aに向けた準備・手続き
ここでは、スモールM&Aに向けた準備や手続きについて見ていきましょう。
スモールM&Aの目的を明確にする
はじめに、M&Aにおける目的、必要性、方針、課題を明確にしましょう。
目的が明確でないままM&Aを行うと、コストや時間が無駄になるほか、売上が思ったように期待できないといった事態を引き起こしかねません。
依頼するサポート先を決める
M&Aは専門知識を要する業務も多く、経営者や従業員のみで行うことは困難です。
サポート先を決める際には、実績や報酬額、サポート体制を欠かさずにチェックしましょう。
スモールM&Aの案件を探す
サポート先を決めたら、いよいよ案件探しです。
交渉相手が見つかった場合、まずノンネームシートを確認し、興味があれば秘密保持契約の締結へ進みます。
ノンネームシートとは、会社の情報をまとめた資料のことで、事業内容や売上高、従業員数などが企業名を特定できない範囲で記載されています。
資料をきちんと確認したうえで、交渉するかの判断を下しましょう。
交渉・契約の締結
経営者同士が顔合わせをし、条件面の交渉を行います。
両者が条件面で合意ができれば、基本合意書の締結とデューデリジェンス(企業の実態把握調査)の実施を経て契約締結となります。
スモールM&Aの契約後に必要な手続き
スモールM&Aの契約後に必要な手続きを紹介します。
クロージング
クロージングは、経営権や各種権利を売り手から買い手へ移転することを指します。
具体的には契約書の内容に従った株式譲渡、対価の支払いなどの手続きが該当します。
PMI
PMIとは、売り手と買い手の経営方針や業務システムをひとつに統合する手続きのことです。
特にM&A直後は、社内で混乱が生じ、業務上のミスやシステム障害などが発生しやすい状況にあります。PMIによって統合後のトラブル要因を取り除くことで、M&Aによる効果を最大化できます。
PMIはスモールM&Aの目的達成に欠かせません。
スモールM&Aを行う際の注意点とその対策
最後に、スモールM&Aを行う際の注意点と対策について解説します。
費用負担が大きいと利益が残らない
スモールM&Aは売買金額が小さい反面、手数料が高めに設定されていることがあります。
また、仲介会社によっては成功報酬の最低額が決まっているところもあるため、スモールM&Aを行う前のプラットフォーム選びを慎重に進めることが大切です。
情報不足は多大な損失につながるリスクがある
個人や中小企業の中には、財務諸表の内容が十分でない、そもそも経営計画書がないというケースも珍しくありません。
情報不足が否めない状況下でスモールM&Aを行うことは、極めて危険です。提出資料だけで判断せず、ヒアリングや客観的な調査結果をもとに判断するようにしましょう。
PMIがスムーズに行われないと従業員の離職につながる
スモールM&Aにともなう環境の変化は少なからず従業員に対して不安やストレスを与えます。
そのため、統合後も安心して働き続けられるような職場環境の整備は迅速に整えましょう。
まとめ
今回の記事では、スモールM&Aの概要や市況、メリット・デメリットについてお伝えしました。
比較的少額の資金で成立するスモールM&Aは、下調べをしたうえで慎重に進めることが大切です。ケースに応じて適切な専門家を頼りつつ、スモールM&Aでチャンスを掴みましょう。