この記事の目次
業務用ロボットのugoが、みずほ銀行・横浜銀行・日本政策金融公庫からの借入で総額10億円を調達した。半年前には株式で資金を集めている。発表から分かること・分からないことを、株式と借入の違いとあわせて整理する。
ugo の借入による調達(2026年10月21日発表)
10億円
みずほ銀行・横浜銀行・日本政策金融公庫から。半年前の2026年4月には株式で調達
出典:ugo株式会社のプレスリリース(2026年10月21日・2026年4月15日)
資料の公表日:
この記事でわかること
スタートアップの資金調達といえば、ベンチャーキャピタルなどから出資を受ける形がよく知られている。ugo は今回、借入で10億円を集めた。発表から何が分かり、何が分からないのかを、同社のこれまでの調達と株式・借入の違いから整理する。
答えの要点:ugo は2026年4月に株式(第三者割当増資)で資金を集め、その半年後に借入で10億円を調達した。会社は借入を選んだ理由を説明しておらず、金融機関ごとの金額・金利・期間・担保も開示していない。分かるのは、使い道に「ugo Nova」の量産体制の構築が含まれることと、同社が以前から借入金を持っていたこと。株式は返さなくてよい代わりに持ち分が薄まり、借入は、通常の融資であれば持ち分を変えない代わりに返済と利息が要る。「株式を売らない会社になった」とは言えない。
業務用ロボットを手がける ugo 株式会社は2026年10月21日、みずほ銀行・横浜銀行・日本政策金融公庫(日本公庫)から、デットファイナンス(借入)で総額10億円を調達したと発表した。
スタートアップが銀行や日本公庫から10億円を借りるのは珍しく見える。ただ、ugo は半年前の4月には株式で資金を集めている。今回の借入は、株式による調達をやめたことを意味するのか。発表の中身と、同社のこれまでの調達から確かめる。
01|何が発表されたのか
調達総額
10億円
調達方法は「デットファイナンス」
借入先
3機関
みずほ銀行・横浜銀行・日本政策金融公庫
累計資金調達額
約50億円
今回の借入を含む(4月時点は約40億円)
発表によると、資金は主に次の3つに充てる。
- 現場での自律的な判断・作業を支えるAIモデルの開発
- 「ugo Nova」をはじめとする国産AIロボットの開発・量産
- フィジカルAIサービスの開発
2つめについて、会社は「ugo Nova」の量産体制を構築し、安定的な供給を実現するとしている。ugo Nova は2026年9月に発表したセミヒューマノイドロボットで、2027年に量産開始を予定している。
なお、貸し手のうち日本公庫は、政府が株式をすべて持つ政策金融機関で、銀行ではない。
02|半年前は株式で調達していた
ugo は2018年に Mira Robotics として創業し、2021年に現在の社名になった。これまでの主な調達は、会社の発表によると次のとおりだ。
| 発表 | 方法 | 金額 | 主な引受先・貸し手 |
|---|---|---|---|
| 2020年5月 | 株式(第三者割当増資) | 1.2億円 | 大成、三菱UFJキャピタルなど |
| 2021年4月 | 株式(シリーズA) | 2.25億円 | 三菱UFJキャピタル、大成など |
| 2022年10月 | 株式 | 非開示 | 三菱UFJキャピタル、川崎重工業、安川電機など |
| 2023年12月 | 出資(形式の記載なし) | 非開示 | NTTドコモ・ベンチャーズのファンド |
| 2024年1月 | 株式 | 8.5億円(累計約16.5億円) | NTTドコモ・ベンチャーズ、みずほキャピタルなど |
| 2025年5月 | 株式 | 非開示 | サンケイビル、トヨタ紡織など |
| 2026年4月 | 株式(シリーズB3) | 非開示(累計約40億円) | NTT西日本(リード)など |
| 2026年10月 | 借入 | 10億円(累計約50億円) | みずほ銀行・横浜銀行・日本公庫 |
出典:ugo株式会社の各発表。2022年10月・2023年12月・2025年5月・2026年4月の各回の金額は公表されていない。2023年12月は、発表に第三者割当増資かどうかの記載がない。
2026年4月の増資から半年で、今回の借入を発表したことになる。「株式から借入に切り替えた」と言える材料はなく、あくまで今回の調達の形が借入だったということだ。
また、今回が ugo にとって初めての借入というわけでもない。同社が公告している決算報告書では、2023年末に長期借入金が約5,475万円、2024年末には短期・長期を合わせて約2.18億円の借入金があった。過去の借入先は公表されていない。
03|発表で分かること、分からないこと
| 項目 | 開示 |
|---|---|
| 総額・借入先・使い道 | 開示あり(10億円、3機関、上記の3つ) |
| 累計調達額 | 開示あり(約50億円。今回の借入を含む) |
| 金融機関ごとの金額 | 開示なし |
| 融資の種類(通常の融資か、劣後ローン・資本性ローン・新株予約権付きの融資か) | 開示なし |
| 金利・期間・返済方法 | 開示なし |
| 担保・保証 | 開示なし |
| 借入を選んだ理由 | 説明なし(代表・金融機関のコメントもない) |
報道でも、BRIDGE が「各金融機関からの借入額の内訳や借入条件は明らかにしていない」と書いている。
この記事で確認できないこと
- ugo が株式ではなく借入を選んだ理由
- 金融機関ごとの金額、金利、期間、担保・保証の有無
- 日本公庫のどの制度を使ったか(新株予約権付きの融資なら、将来株式に変わりうる権利が付く)
- 2025年以降の売上・利益・手元資金の金額(公表されている財務は2024年末が最新)
04|株式と借入は、何が違うのか
ここからは ugo に限らない一般論として整理する。
株式による調達(第三者割当増資)は、新しい株主に株式を渡して資金を受け取る。返済の義務はない一方、既存の株主の持ち分は薄まる。借入は返済と利息の支払いが必要になる代わりに、通常の融資であれば株式は増えない。
ugo に当てはめると、4月の増資では新しい株主が加わった。今回の借入は、通常の融資であれば株主の構成を変えない代わりに、返済と利息の負担が生じる。
金融庁は、スタートアップ向けの融資である「ベンチャーデット」について、創業者などの持ち分の希薄化を避けながら、次の株式による調達や上場までの「つなぎ」となる資金を提供するものだと説明している。主要行など8行のベンチャーデットの残高は、2024年3月末時点で約5,000億円(行ごとに定義が異なる概算値)とされる。
日本公庫には、スタートアップ向けの融資制度があり、企業が新たに発行する新株予約権を公庫が取得して、無担保で資金を出す「新株予約権付融資」の仕組みもある。公庫自身はこの権利を使わず、株式公開のときなどに経営者らへ売却する。新株予約権は行使すると株式を受け取れる権利なので、この形の場合、「株式がまったく増えない調達」とは言い切れない。ugo がどの制度を使ったかは公表されていない。
日本のスタートアップの借入による調達は、増えてはいるものの欧米と比べると小さい。経済産業省の委託調査によると、2024年のスタートアップのデットファイナンスは、米国618.0億ドル、欧州287.8億ドルに対し、日本は16.4億ドル(日本の数値はプレスリリース等で観測できたものを集計した参考値)だった。
「株式を売らずに」とは言えない
今回の10億円は借入だが、ugo は半年前に株式で調達しており、借入の条件も開示されていない。「株式を売らずに成長資金を集める会社になった」と読むのは、発表の内容を超えている。
05|量産の計画と、会社が語っていないこと
ugo は2025年1月に販売を始めた「ugo mini」の累計出荷台数が2026年3月に100台を超えたとし、10月20日に発表した次世代モデル「ugo mini G2」では、国内の EMS(電子機器の受託製造)を使った量産・供給体制を構築したと説明している。2026年4月の発表では、売上高が直近3年間、連続して前年比およそ2倍になったとしている(金額は非公表)。
同社の CFO は、借入の発表前の2026年7月に配信された自社のポッドキャストで、ハードウェアの事業は部材を仕入れてから納品・請求までに時間がかかり、先に資金が出ていく事業だと話していた。これは事業の一般的な資金の流れについての発言で、今回の借入の理由として語られたものではない。
使い道に量産体制の構築が含まれていることは発表から分かる。ただし、4月の株式による調達でも、会社は使い道に「ロボットの量産体制強化」を挙げていた。量産は株式の回と借入の回のどちらの使い道にも入っており、量産の準備と借入という手段の選び方がどう結びつくのかは、会社が説明していない以上、この記事では断定しない。
06|次に見ること
今後の決算公告で2025年以降の借入金や純資産がどう動いたか、そして ugo Nova の量産が予定どおり2027年に始まるかが、今回の資金の使われ方を確かめる手がかりになる。借入の条件や理由について会社が説明する機会があれば、この記事を更新する。
参照資料
- ugo株式会社(PR TIMES)「ugo、みずほ銀行・横浜銀行・日本政策金融公庫から総額10億円のデットファイナンスを実施」(2026年10月21日。総額・借入先・資金使途・累計調達額)
- ugo株式会社(PR TIMES)「ugo、NTT西日本をリードに社会インフラ事業各社から資金調達」(2026年4月15日。シリーズB3(第三者割当増資)、売上の伸び)
- Mira Robotics(現 ugo株式会社、PR TIMES)「大成株式会社、三菱UFJキャピタル7号投資事業有限責任組合、MBC Shisaku1号投資事業有限責任組合を引受先とした第三者割当増資を実施」(2020年5月29日。総額1.2億円)
- ugo株式会社(PR TIMES)「Mira Roboticsが「ugo株式会社」へ社名変更。経営体制の強化および2.25億円の第三者割当増資を実施。」(2021年4月28日。シリーズA)
- ugo株式会社(PR TIMES)「ugo、安川電機・川崎重工業とugo Platform連携による協業並びに資金調達を実施」(2022年10月28日。第三者割当増資(金額非公表))
- ugo株式会社「業務DXロボットのugoがNTTグループより資金調達」(2023年12月21日。NTTドコモ・ベンチャーズのファンドから(形式・金額の記載なし))
- ugo株式会社「ugo、8.5億円の資金調達。施設メンテナンス事業会社を含む各社と業務提携」(2024年1月31日。累計約16.5億円)
- ugo株式会社「ugo、不動産・製造・セキュリティ・人材サービス・海外展開に強みを持つ複数の事業会社より、第三者割当増資にて資金調達を実施。」(2025年5月27日(金額非公表))
- ugo株式会社「企業情報(会社概要・沿革)」(設立年・沿革)
- ugo株式会社「決算報告書 2024年度・2023年度(電子公告)」(2023年末・2024年末の貸借対照表の借入金)
- ugo株式会社「フィジカルAI時代に向けた国産セミヒューマノイド「ugo Nova」を発表」(2026年9月16日。2027年に量産開始を予定)
- ugo株式会社「ugo、AIロボット「ugo mini」の次世代モデル「ugo mini G2」を発表」(2026年10月20日。国内EMSを活用した量産・供給体制)
- ugo Robotics Radio(ugo株式会社のポッドキャスト)「#34_Interview:投資する側から投資される側へ―CFO中村健、VCキャリアが導いた選択」(2026年7月20日配信。借入の発表前。発言は自動文字起こしで確認)
- BRIDGE「警備や点検を担う国産AIロボットのugo、みずほ銀行などからデットファイナンスで10億円を調達」(2026年10月22日。借入額の内訳や条件は非開示と記載)
- 金融庁「スタートアップに対するデットファイナンスの現状と課題(規制改革推進会議 WG 資料)」(2025年4月21日。ベンチャーデットの説明、主要行等8行の残高)
- 日本政策金融公庫「スタートアップ支援資金」(スタートアップ向け融資と新株予約権付融資の仕組み)
- 日本政策金融公庫「中小企業事業のご案内2025(令和7年7月発行)」(PDF の4ページ目(政策金融機関であること)、12ページ目(スタートアップ支援資金と新株予約権付融資))
- 日本政策金融公庫(NEDO サイト掲載)「日本政策金融公庫のスタートアップ支援について(2026年4月時点)」(p.7 新株予約権付融資(無担保・無保証人、公庫が新株予約権を取得し株式公開時などに売却)、p.8 株式公開できなければ失効)
- e-Gov 法令検索「株式会社日本政策金融公庫法」(第1条(一般の金融機関が行う金融を補完)、第3条(政府が発行済株式の総数を保有))
- e-Gov 法令検索「会社法 第2条第21号(新株予約権の定義)」(新株予約権は、行使すると株式の交付を受けられる権利)
- PwCコンサルティング(経済産業省掲載)「スタートアップエコシステム調査2026(経済産業省 委託調査報告書)」(2026年3月31日。2024年のデットファイナンスの国際比較(日本の数値は参考値))
- 公表事実
- 数値・日付・取引条件は、上の資料に書かれていることだけを載せています(資料の公表日 2026年10月21日)。
- 編集部の分析
- 「どう読むか」は M&A-WEB 編集部の解釈です。資料から言えることと区別して書いています。
- 確認できないこと
- 資料に無いこと(取得価格の内訳、個々の企業の事情など)は推測で埋めず、そう書いています。
一次資料との照合:2026年10月22日