バー・スナックは廃業と売却どっちが得?原状回復費と造作譲渡料で手取り比較
常連も自分も歳をとった。客足は読みにくく、酒の原価もヘルプの人件費も上がる一方——。後継者もいないし、「もう畳むしかない」と廃業へ気持ちが傾いていませんか。けれど多くのママ・マスターは、「畳む=カウンターや内装を壊して原状回復し、静かに持ち出して終わるしかない」と思い込んでいます。実はバー・スナックの廃業は静かに終われそうで、スケルトン原状回復も、カウンター・厨房・音響設備の撤去も、在庫(酒・ボトル)の処分も、退職金も、残リースの精算もかかり、規模・契約により持ち出しになりがちです。一方で、あなたの店には経営状況と独立に立地・坪数・雑居ビルの階数・カウンターや内装で値が付く「居抜き造作譲渡」という、飲食ならではの出口があります。居抜きで譲れば造作譲渡料が入り、内装・常連・ボトルキープ・保健所の営業許可ごと次の担い手に引き継げます。本記事は、バー・スナックの廃業にかかる総額と、居抜き譲渡で残る「手取り」を、原状回復費・許可の引き継ぎ・個人保証まで含めて同じ物差しで並べてお伝えします。なお、倒産・後継者不在など業界全体のマクロ動向はバー・スナック業界の最新動向2026で定点観測しています。
この記事の結論(先に要点だけ)
- バー・スナックの廃業は「0円で静かに終わる」ものではありません。賃貸借契約がスケルトン返しなら、カウンター・内装・厨房を解体して躯体に戻すスケルトン原状回復が必要で、軽飲食(バー・スナック)でも坪3〜5万円程度が業界の目安、小規模店でも総額100万円規模になることは珍しくありません[C-08]。これにカウンター・内装・音響設備の撤去・処分、在庫(酒・ボトル)処分、退職金・解雇予告手当、残リースの精算が加わり、規模・契約により持ち出しになりやすいのが実態です。
- 一方バー・スナックには、経営状況と独立に立地・坪数・雑居ビル階数・内装で値が付く「居抜き造作譲渡」という出口があります。赤字でも好立地なら造作で値が付くことがあり[C-03]、居抜きで譲れば原状回復をせずに済むうえ、造作譲渡料が入ります(「カラオケ・パブ・スナック」の業界平均で168.6万円、一般には50万〜150万円規模・公的統計なし)[C-01]。同じ店でも、廃業=持ち出し(マイナス)/居抜き譲渡=造作譲渡料が入る(プラス)と、手取りの符号そのものが逆になり得るのです。
- ★ナイト店固有の最重要ポイント(許可は“二層”):保健所の飲食店営業許可は居抜きで引き継げます(事業譲渡なら2023年12月13日施行の地位承継届、相続・合併・分割なら2021年6月1日施行、株式譲渡なら会社に残り手続き不要)[C-11][C-12]。しかし深夜0時以降に酒類を出す『深夜酒類提供飲食店営業』の届出と、接待を伴う場合の『風俗営業許可』は一身専属で引き継げず、買い手が新規に届出・許可を取り直します[C-15]。つまり畳めば保健所許可も常連も内装も原状回復でゼロ円化する一方、居抜き譲渡なら保健所許可・常連・内装は残せ、深夜届・風営は買い手が再届出で対応します(営業許可・深夜届・風俗営業許可がスキーム別にどう承継/やり直しになるかはバー・スナックの許認可は引き継げる?深夜酒類提供届は承継不可・営業許可は地位承継で逆引きできます)。
- バー・スナックはFLコスト(食材・酒原価+人件費=売上の約6割が目安)に加え、ナイト固有のヘルプ人件費・歩合に規定され、営業利益率は一桁台〜赤字も珍しくない低利益業態[C-04]。けれどだからこそ、カウンター・内装・音響・立地・常連・ボトルキープという“物件と無形資産”が、店ごと(居抜き)売れる資産になります。畳めばこれらは原状回復でゼロ円。譲れば造作譲渡料・保健所許可・常連ごと残ります。
- だから順番は「原状回復で持ち出すと決める前に、まず査定」。廃業の総額と居抜き譲渡の手取りを同じ物差しで並べてから決めるのが、後悔しない出口です。
※債務超過で再建が難しい、立地が悪く居抜きの引き取り手が見込みにくい、賃貸借契約でスケルトン戻しが強制される——こうした場合は、廃業が合理的なこともあります。本記事は「好立地・内装・常連・営業許可が生きているバー・スナック」を主に想定し、両方の手取りを比べる材料をお渡しします。
§1 バー・スナックの「廃業」と「売却(居抜き譲渡)」とは — 2つの出口の正体
出口は「廃業」か「売却」かの2択に見えますが、本質は「資産を処分し原状回復して店を“消す”か、内装・常連・ボトルキープ・営業許可ごと“残す”か」の違いです。
廃業とは、自主的に店を閉め、設備を処分し、原状回復して賃貸借を終わらせることです。借金で行き詰まる「倒産」とは違い、体力があるうちに自分の判断で畳むものです。畳むにはカウンター・内装・音響・厨房設備を売り払うか撤去・処分し、酒やボトルの在庫を処分し、従業員(ヘルプ・アルバイト含む)に辞めてもらい、スケルトン契約なら内装を解体して躯体に戻します。店が持っていた営業許可・カウンター・内装・常連・ボトルキープ・立地という価値は、原則すべて消えてゼロ円になります。
一方の売却(居抜き造作譲渡)は、カウンター・内装・厨房設備をそのまま残し、次の担い手に店ごと引き継ぐことです。バー・スナックのオーナーには飲食ならではの選択肢があります。それは、経営の状態(黒字か赤字か)と独立に、立地・坪数・雑居ビル階数・カウンターや内装の状態で値が付く「居抜き造作譲渡」です。カウンター・音響・ボトル棚・空調・カラオケ機器といった内装・設備(造作)を譲渡し、その対価として造作譲渡料を受け取ります[C-01]。これは「事業そのものの利益」を評価する事業の売り方とは別レイヤの、物件と無形資産(立地・内装・常連)の相場です。だからこそ、赤字でも好立地なら造作で値が付くことがある[C-03]——ここがバー・スナックの出口判断の決定的な特徴です。
そして、ナイト店で特に注意したいのが許可が“二層”になっている点です。まず保健所の飲食店営業許可は、店を譲るときに引き継げます。法人の店を株式譲渡で売れば、会社の法人格は変わらないため、営業許可は会社に残り原則そのまま引き継がれ、許可の取り直し手続きは不要です(個別は管轄保健所へご確認ください)[C-12]。個人事業のバー・スナックは株式譲渡が使えず、事業譲渡(造作譲渡)一択になりますが、その場合も2023年(令和5)12月13日施行の「地位承継届」により営業許可を承継できます(手数料無料・営業の全部譲渡が条件・譲渡契約書の添付が必要)[C-11]。一方で、深夜0時以降に酒類を提供する『深夜酒類提供飲食店営業』の届出と、接待を伴う場合の『風俗営業許可』は、一身専属で引き継げません。これらは買い手が新規に届出・許可を取り直すことになります[C-15]。つまり、保健所許可・常連・内装は居抜きで残せるが、深夜届・風営は買い手側で取り直す——この二層構造を、§4で出口判断に織り込みます。
ここで多くのオーナーが誤解しています。「うちは継ぐ人もいないし、薄利だから畳むしかない」と。しかし、好立地で、内装・常連・ボトルキープ・営業許可が生きているなら、あなたの店は「畳むしかない店」ではなく「居抜きで買われる資産」かもしれません。畳めば、内装も常連もボトルキープも営業許可も原状回復でまとめてゼロ円になり、しかもスケルトン原状回復で持ち出します。この「原状回復で持ち出すか、造作譲渡料が入るか」という手取りの非対称が、本記事の核です。§3.5・§4で具体的に解説します。
業種を問わない廃業と譲渡の比べ方、および廃業手続きの全体像は廃業と譲渡の比較・廃業手続きの全体像(業種共通)も参考になります。本記事はバー・スナックに絞り、判断の軸に掘り下げます。バー・スナック経営そのものの将来性・後継者不在の動向は、バー・スナック経営の将来性(準備中)で俯瞰する予定です。保健所の営業許可の地位承継届の書き方・必要書類、深夜酒類提供届・風俗営業許可の廃止・再届出といった手続詳細は、保健所の営業許可は引き継げる/深夜酒類提供届・風俗営業許可は取り直し(承継不可)の詳細(準備中)に譲ります。
§2 なぜ今、「廃業か売却か」で悩むバー・スナックが増えているのか
需要が回復しても、続けられる体力があるとは限りません。「畳むか、譲るか」を迫られるナイト店は、構造的に増えています。
数字で見ると、2024年の飲食店倒産は過去最多水準です。帝国データバンク(TDB)の集計(暦年ベース)で飲食店倒産は2024年894件で過去最多、うち小規模(負債1億円未満)が87.7%[C-05]。東京商工リサーチ(TSR)の集計(年度ベース)でも飲食業の倒産は2024年度907件で初の900件台、小零細が89.5%でした[C-05]。TDBは暦年・TSRは年度と集計期間が異なるため併記していますが、いずれも小零細が大半を占め、過去最多水準という方向は一致しています。なお、バー・スナック単独の倒産件数・事業所数は公的な業種区分(中分類)では明示されにくいため、本記事は飲食全体の統計で接地しています(ナイト業態単独の数値は要確認)。
背景には、後継者不在の問題もあります。TDBの調査では全国の後継者不在率は50.1%(2025年)で、依然として2社に1社が後継者を確保できていません(最高は建設業の57.3%。飲食・ナイト単独の値は公表テキストに明示がなく、全国値で接地しています)[C-06]。オーナーの高齢化、常連客の高齢化、原価・人件費の上昇が重なり、「畳むか、譲るか」の判断を迫られる店が増えているのです。
一方で、外食全体の需要そのものは回復しています。日本フードサービス協会(JF)の調査では、2024年の外食産業の売上は前年比108.4%と、コロナ前を上回る水準まで戻りました[C-10]。ただしバー・スナックなどナイト業態は、高齢化・後継者不在・物価高で淘汰圧力が相対的に強いと見られ、需要は戻っているのに小零細の倒産は過去最多という二極化が起きています。好立地で常連がつき、内装も許可も生きている店ほど、買い手にとって魅力があり、居抜きで引き取られやすい——。「原状回復で持ち出して畳む」か、「内装・常連・ボトルキープ・許可が生きている今のうちに居抜き譲渡する」か。この分かれ道に、多くのバー・スナックのオーナーが立っています。M&Aという出口自体も広がっており、外食業界のM&A件数は2024年に約70件と過去最高水準(前年の約2倍・レコフDB)とされます[C-07]。
注:倒産件数はTDB(暦年894件)とTSR(年度907件)で集計期間が異なるため併記しています[C-05]。また、これらは飲食全体の統計で、バー・スナック単独の値ではない点にご注意ください。
§3 後悔しない出口の選び方 — 判断の3ステップ
「廃業か売却(居抜き譲渡)か」は、次のステップで順に考えると整理できます。
1. 債務超過かどうか。負債が資産を大きく上回り再建が難しいなら、廃業や専門家への相談が現実的です。一方、過大な債務がなければ、居抜き譲渡で現金化する芽が十分あります。 2. 好立地・居抜き可かどうか。居抜き造作譲渡は経営状況と独立に立地・坪数・雑居ビル階数で値付けされます。路面・駅近・繁華街など好立地なら、赤字でも造作で値が付くことがあります[C-03]。逆に立地が弱い・高家賃すぎる・搬入搬出が難しい空中階なら値が付きにくく、廃業の検討に傾きます。 3. カウンター・内装・常連・ボトルキープ・保健所許可が残るか/スケルトン契約か居抜き可か。カウンター・音響・ボトル棚・空調などの状態が良く、常連・ボトルキープがあり、保健所の営業許可が生きていれば、それは“居抜きで買われる資産”です。さらに賃貸借契約が「スケルトン戻し特約」付きなら退去時に全撤去(原状回復)が必要ですが、居抜きで譲れば原状回復をせずに済みます[C-08]。 4. 深夜届・風営の取り直し負担をどう見るか/急ぐか。買い手は保健所許可・常連・内装は居抜きで引き継げますが、深夜酒類提供届・風俗営業許可は取り直しになります[C-15]。この取り直しのタイムロスは織り込めますが、買い手探しから引き渡しまでには相応の時間がかかります。「今すぐ全部終わらせたい」と焦るほど、原状回復で持ち出して畳む方向に流れがちです。
SWOTで自社を棚卸しすると、強み=好立地・視認性・常連/ボトルキープ・カウンター/音響/内装設備の状態・保健所許可・黒字、弱み=不利立地・空中階・高家賃・ママ/マスターへの集客の属人化・設備老朽・スケルトン契約・赤字継続・深夜届/風営の取り直し負担、が見えてきます。好立地で、内装・常連・ボトルキープ・保健所許可が生きていて、居抜き可(スケルトン強制でない)で、少し時間に余裕がある——この条件がそろうほど、廃業より居抜き譲渡が手取りで有利になりやすい局面です。次章で、その「廃業の総コスト」を具体的に分解します。
§3.5 バー・スナックの廃業にかかる総コストを分解する
「廃業=何もしなければ0円」ではありません。畳むためにこそ、お金がかかります。バー・スナックの廃業コストを費目ごとに並べてみましょう。
① スケルトン原状回復(持ち出しの核心) 賃貸借契約が「スケルトン返し(躯体に戻す)」なら、カウンター・内装・厨房を解体撤去して原状回復しなければなりません。バー・スナック(軽飲食)のスケルトン原状回復は坪3〜5万円程度が業界の目安で、小規模店でも総額100万円に達することは珍しくありません(重飲食はさらに高く坪10万円程度)[C-08]。居抜きで借りていても、契約に「スケルトン戻し特約」があれば、退去時には借りた状態にかかわらず全撤去が必要になる点が飲食固有の落とし穴です[C-08]。とくにバー・スナックは雑居ビルの空中階が多く、搬出経路が複雑・作業が夜間にしかできない・個室が多い・排水や排気を改変しているといった条件に該当しやすく、原状回復費が増額しがちです[C-08]。原状回復義務の根拠は民法621条です。いずれも公的統計はなく業界の目安・レンジであり、実額は店舗の規模・契約・立地で大きく振れます。逆に言えば、居抜きで譲れば原状回復をせずに済み、その分が丸ごと負担減になります(これが§4への伏線です)。なお、いったん「解約通知」を出すと原状回復義務が確定しやすく、後から居抜き譲渡に切り替えにくくなるため、解約を通知する前に居抜き譲渡を検討することが実務上のポイントです。
② カウンター・内装・音響設備(ボトル棚・空調・カラオケ機器・什器)の撤去・処分/中古売却 カウンター・内装・音響・厨房設備は、中古売却で資金化するか、撤去・廃棄処分にします。ただし買取価格は状態・年式・メーカー・市況で大きく振れ、決め打ちできません。状態の良い音響機器や厨房機器などは一定の値がつくこともあれば、まとめて二束三文のこともあります。リース機材(カラオケ機器・POSなど)は勝手に返却・解約できず、未払いリース料相当額や残債を違約金として精算する必要があります。
③ 在庫(酒・ボトル・備品)の処分 ボトルキープ分を含む酒類・備品などの在庫も処分が必要です。個人事業の場合、自家消費した在庫は事業所得に計上する扱いになります(後述⑧)。
④ 従業員への退職金・解雇予告手当 従業員(常時雇用のヘルプ・アルバイトを含む)を雇っていれば、廃業に伴う解雇には労働基準法20条で少なくとも30日前の予告か、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)が必要です[C-haigyo-01]。退職金は法律上の一律義務ではなく、退職金規程があれば支払義務が生じますが、小規模なバー・スナックはアルバイト・ヘルプ中心で退職金規程を持たない店も多いのが実態です[C-haigyo-01]。
⑤ 残リース・借入の一括清算と個人保証 カラオケ機器・POSなどのリース残債は一括清算が必要です。そして廃業しても借入や個人保証は自動では消えません。ここが廃業の盲点です。 運転資金の借入をオーナー個人が連帯保証していれば、その保証債務は店を畳んでも当然には消えず、個人の負担として残り得ます。ここは「売却なら見直せる」ポイントとして§4で対比します。
⑥ 敷金の精算 敷金は、原状回復費が差し引かれたうえで返還されます。スケルトン原状回復が必要なら、その費用が敷金から差し引かれ、不足すれば追加負担になります。逆に居抜きで譲れば原状回復が不要になり、敷金の回収余地が広がります。
⑦(法人の場合)解散・清算の実費 法人のバー・スナックを清算するには、解散登記・清算人選任登記・清算結了登記で登録免許税が合計およそ41,000円[C-haigyo-05]。加えて官報での解散公告(債権者保護手続き)が必要で、掲載料は1行あたり税込3,947円(22字/行)、10〜12行でおおむね3.5〜4.5万円が目安です[C-haigyo-05]。債権者保護のための公告期間は会社法で最低2か月と決まっています[C-haigyo-05]。司法書士・税理士に依頼すれば別途報酬(一式で8〜10万円程度が目安)も発生します。ただし、バー・スナックは個人事業のオーナーが多く、その場合は会社清算は不要です。
注:個人事業のバー・スナックと法人で、廃業の構成は大きく違います。 個人事業なら会社清算は不要で、税務署への「個人事業の開業・廃業等届出書」(提出期限は廃業した年分の確定申告期限まで)[C-haigyo-04]+原状回復+資産処分が中心です。法人なら⑦の解散・清算登記・官報公告が加わります。
⑧ 廃業時の課税(個人事業中心) 個人事業のバー・スナックを廃業するときの課税は、次のとおりです。カウンター・厨房機器・音響・什器などの事業用設備を売却した場合は、原則として「譲渡所得」で扱われ、譲渡所得には最高50万円の特別控除があります(少額・短期の資産などは事業所得になることもあります)[C-haigyo-03]。一方、酒・ボトルなどの棚卸資産を自家消費した場合は事業所得に計上し、さらに事業用資産を家事用へ転用すると消費税のみなし譲渡として課税対象になります[C-haigyo-03]。法人なら、解散・清算に伴う清算所得や、株主への残余財産分配の課税が別途生じます。いずれも具体的な税額は会社・個人の状況で異なるため、必ず税理士にご確認ください。
⑨ 許可・届出の扱い(保健所と警察で別)と、常連・内装という“見えない資産”の喪失 そして最後に、費目には載らない最大のコストがあります。畳めば、保健所の営業許可も、立地・常連・ボトルキープも、カウンター・音響・空調などの内装・設備も、原状回復でまとめてゼロ円になります。ここで許可は二層に分かれます。保健所の飲食店営業許可は、廃業すると保健所への廃業届で返還・失効します(自治体運用差あり)。一方、深夜酒類提供飲食店営業の届出・風俗営業許可は警察署(生活安全課)の管轄で、廃業時には廃止届出書の提出(廃止から10日以内など・自治体運用差)と、風俗営業許可証の返納(返納理由書を添付)が必要です(怠ると罰則の対象になり得ます)[C-15]。これらは一身専属で承継できないため、買い手は新規に取り直します。逆に、居抜きで譲れば、保健所許可も常連も内装も次の担い手に引き継がれ、造作譲渡料が入ります(深夜届・風営は買い手が再届出で対応)。これが、本記事の核となる「原状回復で持ち出すか、造作譲渡料が入るか」の非対称です。手続きの様式・期限といった詳細は判断の本筋から外れるため、保健所の営業許可は引き継げる/深夜酒類提供届・風俗営業許可は取り直し(承継不可)の詳細(準備中)に譲ります。

図解F1:廃業で消えるのは費目だけではない。好立地・常連・ボトルキープ・カウンター/内装・保健所の営業許可という“居抜きで売れた資産”が、原状回復で価値ゼロで消えます。さらにスケルトン原状回復で持ち出しになりがちです(金額は店舗規模・契約・立地で変動/原状回復坪単価は業界の目安・公的統計なし)。
こうして並べると、“静かに終わる”はずの廃業が、スケルトン原状回復で意外な持ち出しになりがちで、しかもカウンター・常連・ボトルキープ・保健所許可という“居抜きで売れた資産”を捨てることだと分かります。では、同じものを「居抜き譲渡で残る手取り」と並べると、景色はどう変わるでしょうか。
▶ 原状回復で持ち出す前に、まず手取りを試算しませんか
「畳むといくら持ち出しか」「居抜きで譲るといくら残るか」を同じ土俵で比べると、結論が変わることがあります(売り手は完全無料)。 → 原状回復で持ち出す前に、居抜き譲渡の手取りを試算する
§4【M&A・投資視点】廃業 vs 売却を「手取り」で比較する — 原状回復で持ち出すか、造作譲渡料が入るか(引き継げない許可も織り込む)
ここからが本題です。廃業と売却(居抜き譲渡)を、税引後の「手取り」という同じ物差しで並べます。
比較のフレーム
ざっくり言えば、こうです。
- 廃業の手取り = 資産の処分額(設備の中古売却など)−(スケルトン原状回復・撤去・在庫処分・退職金・残リース・残債清算などのコスト)− 廃業時の税
- 居抜き譲渡の手取り = 譲渡価格(造作譲渡料+営業権)+敷金回収 −(仲介手数料などの譲渡コスト)− 譲渡税
廃業側のコストは§3.5で見たとおりです。居抜き譲渡側の「造作譲渡料がいくらになるか」は、立地・坪数・雑居ビル階数・カウンターや内装の状態で決まる物件相場で、算定式(造作譲渡料のレンジ・坪単価式・年買法)の詳しい解説と相場の出し方はバー・スナックの売却相場と居抜き造作譲渡・年買法の決まり方はこちらをご覧ください。本記事では、相場の中身までは踏み込まず、手取りの符号がどう変わるかに焦点を当てます。
手取りの符号が逆になる — 原状回復で持ち出すか、造作譲渡料が入るか
ここが、バー・スナックの出口判断でいちばん大事な論点です。建設業のように「黒字を捨てる機会損失」とは角度が逆で、バー・スナックは低利益でも“物件・無形資産(立地・カウンター/内装・常連・ボトルキープ・許可)”が居抜きで値になる——この一点が出口を分けます。
- 畳む(廃業) → スケルトン契約なら原状回復で持ち出し(バー・スナック坪3〜5万円目安・小規模でも総額100万円規模・空中階は増額しやすい)[C-08]、さらにカウンター・内装・音響設備の撤去・処分、在庫(酒・ボトル)処分、退職金・解雇予告手当[C-haigyo-01]、残リース・残債の清算が乗る。そのうえ、立地・常連・ボトルキープ・内装・保健所許可をすべて原状回復でゼロ円化する[C-15]。
- 譲る(居抜き造作譲渡) → 造作譲渡料が入る(「カラオケ・パブ・スナック」の業界平均で168.6万円、一般には50万〜150万円規模・坪単価式「月家賃÷坪数=坪単価×60〜100倍」も業者の目安・公的統計なし)[C-01]。さらに原状回復をせずに済み、敷金回収の余地が広がり、保健所許可・常連・内装ごと承継される[C-11][C-12]。
つまり、同じ店でも「廃業=持ち出し(マイナス)/居抜き譲渡=造作譲渡料が入る(プラス)」と、手取りの符号そのものが逆になり得るのです。そして特筆すべきは、この符号の逆転は黒字か赤字かに依存しない点です。居抜き造作譲渡は経営状況と独立に立地・坪数で値付けされるため、赤字でも好立地なら造作で値が付くことがあります(一方で設備が古い・前テナントが急ぐ場合は0円〜数十万の居抜きも多い)[C-03]。「うちは薄利だから値なんて付かない」という思い込みこそ、見直す価値があります。

図解F3:原状回復で持ち出すか、造作譲渡料が入るか。畳めばスケルトン原状回復で持ち出しつつカウンター・内装・常連・ボトルキープ・許可をゼロ円化、譲れば造作譲渡料が入り保健所許可・常連・内装が承継されます(深夜届・風営は買い手が取り直す)。赤字でも好立地なら造作で値が付くことがあります(金額は業界の目安・公的統計なし)。
★引き継げる許可と、引き継げない許可を織り込む
バー・スナックの出口判断では、許可が“二層”になっていることを必ず織り込みます。
- 保健所の飲食店営業許可=居抜きで引き継げる。株式譲渡なら法人格が変わらず許可は会社に残り手続き不要[C-12]、事業譲渡でも2023年(令和5)12月13日施行の地位承継届で承継できます(手数料無料・全部譲渡が条件・譲渡契約書の添付が必要)。相続・合併・分割による承継は2021年6月1日施行です。「2021年改正で事業譲渡の地位承継が可能になった」は誤りで、事業譲渡は2023年12月13日施行、相続・合併・分割は2021年6月1日施行と年号が異なる点にご注意ください[C-11]。
- 深夜酒類提供届・風俗営業許可=買い手が取り直す(承継不可)。深夜0時以降の酒類提供は『深夜酒類提供飲食店営業』として公安委員会への届出(許可ではありません)が必要で、接待を伴う場合は別途風俗営業許可が要ります。これらは一身専属で、事業譲渡・相続・法人成りなどでは引き継げず、廃業・廃止時には警察署へ廃止届・許可証の返納を行い、買い手は新規に届出・許可を取り直します[C-15]。
だからこそ、「畳んで保健所許可も常連も内装も全部ゼロ円化する」より、「保健所許可・常連・内装を残し、深夜届・風営は買い手の再届出を織り込んで居抜き譲渡する」方が、資産を活かせます。深夜届・風営の取り直しは買い手側のタイムロスにはなりますが、保健所許可・常連・ボトルキープ・内装が「店ごと」残ること自体が、ゼロから開業する買い手にとって大きな価値になります。

図解F2:許可は二層。保健所の飲食店営業許可は居抜きで引き継げます(事業譲渡は2023年12月13日施行、相続・合併・分割は2021年6月1日施行、株式譲渡は手続不要)。一方、深夜酒類提供飲食店営業の届出・風俗営業許可は一身専属で承継できず、買い手が新規に取り直します(手続詳細は許認可・承継の解説に譲ります)。
居抜き譲渡なら“残るもの”がある
廃業すれば原状回復でゼロ円に消えるものが、居抜き譲渡なら次の担い手に引き継がれ、対価になります。
- 造作譲渡料:カウンター・内装・音響設備(造作)の対価が、手取りの現金として入ります(「カラオケ・パブ・スナック」の業界平均で168.6万円、一般には50万〜150万円規模・公的統計なし/実額は立地・坪数・雑居ビル階数・設備状態で変動)[C-01]。
- 敷金回収:原状回復をせずに譲れば、原状回復費で目減りするはずだった敷金の回収余地が広がります。
- 保健所の営業許可の承継:株式譲渡なら法人格が変わらず許可は会社に残り手続き不要[C-12]、事業譲渡でも2023年12月13日施行の地位承継届で承継できます[C-11](深夜届・風営は買い手が取り直し)。
- 常連・ボトルキープ・内装の引き継ぎ:常連客やボトルキープ、丁寧に作り込んだカウンター・内装が、次の担い手にそのまま引き継がれます。
- 個人保証の見直し:M&A・事業承継の場面では「経営者保証に関するガイドライン」の特則により、前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めない/前経営者の保証は解除に向けて見直すことが原則とされています[C-haigyo-02]。廃業(清算)では保証債務は当然には消えませんが、譲渡では解除に向けた検討が図られ得ます(必ず解除されるわけではなく、個別の可否は金融機関・専門家へ)。
3Cで見る:買い手は何を狙っているか
買い手(脱サラ独立の開業希望者・多店舗展開のナイト系チェーン・同業など)が欲しいのは、ゼロから揃えると時間のかかる好立地・視認性のある物件・常連・ボトルキープ・カウンター/音響/内装設備・保健所の営業許可、そして「開店までの時間」です。スケルトンから内装工事をして保健所許可を取り、深夜届・風営を取得し、客付けをするより、居抜きで“すぐ開けられる店”を買う方が早く安いため、好立地・許可付きの居抜き案件には需要があります。外食業界のM&A件数は近年増加し、2024年は約70件と過去最高水準(前年の約2倍・レコフDB)とされます[C-07]。同業の廃業が供給を増やすなかでも、好立地・保健所許可付き・常連付きの居抜き物件は希少です(深夜届・風営は買い手が取り直す前提でも、立地と常連・ボトルキープは代えがたい資産です)。買い手が実在することは、売り手にとって「畳まなくても引き取り手がいる」という安心材料でもあります。あとは、立地・常連・ボトルキープ・設備・保健所許可といった“見えない資産”を言語化できるかどうかです。
補足:個人事業と法人で課税が違います
バー・スナックの売却の税は、個人事業か法人かで変わります。個人事業の事業譲渡(造作譲渡)は、譲渡対象の内容に応じて譲渡所得・事業所得に区分されます。法人を株式譲渡で売れば、個人株主の株式譲渡益は申告分離課税で一律20.315%です[C-13]。いずれも具体的な税額は資産の内訳・取得費・所得状況で変わるため、必ず税理士にご確認ください。
畳む前の手取り比較ワークシート
次の項目を自社に当てはめ、①〜⑦の合計=廃業の手取り、⑧⑨=居抜き譲渡の手取り、として並べてみてください。
- ☐ ① スケルトン原状回復の見積(スケルトン契約か居抜き可か・坪3〜5万円目安・小規模でも総額100万円規模になり得る・空中階は増額)[C-08]
- ☐ ② カウンター・内装・音響設備の処分/中古売却額(買取なら資金化/廃棄なら費用・リースは違約金/残債精算)
- ☐ ③ 在庫(酒・ボトル)の処分
- ☐ ④ 退職金・解雇予告手当(30日前予告 or 30日分以上の平均賃金)[C-haigyo-01]
- ☐ ⑤ 残リース・借入残高と個人保証の有無(廃業しても保証は当然には消えない)
- ☐ ⑥ 敷金の精算(原状回復費が差し引かれる/居抜きなら回収余地)
- ☐ ⑦ 廃業時の課税概算(個人=設備売却は譲渡所得・特別控除50万円/在庫自家消費は事業所得・みなし譲渡/法人=清算・解散実費約41,000円+官報約3.5〜4.5万円ほか・要税理士)[C-haigyo-03][C-haigyo-05]
- ☐ ⑧(居抜き譲渡側)造作譲渡料+敷金回収+保健所許可・常連・内装の承継=残せる資産(廃業で全て原状回復でゼロ円/深夜届・風営は買い手が取り直し)[C-01][C-11][C-15]
- ☐ ⑨(居抜き譲渡側)譲渡時の手取り(造作譲渡料 − 譲渡コスト − 税)
編集部より:「畳むしかない」と思っていたママ・マスターが、後で“もったいなかった”と言うこと
廃業の相談で多いのが、「うちみたいな薄利の小さなスナックに、値なんて付くと思わなかった」という声です。立地・常連・ボトルキープ・カウンター・内装・保健所の営業許可、そして店そのものは、廃業すれば原状回復でゼロ円。居抜きで譲れば造作譲渡料が入り、保健所許可も常連も内装も次の担い手に引き継がれます。 スケルトン原状回復やカウンター撤去で意外に持ち出しになり、個人保証は廃業しても残りますが、譲渡なら解除に向けた見直しが図られ得ます。そして「薄利だから」と諦めていた店でも、好立地・視認性があり常連・ボトルキープがついていれば、深夜届・風営の取り直しを織り込んだうえで、開業希望の買い手の“時間を買う”ニーズで居抜きが決まったケースがあります。畳むと決める前に、“数字に出ない資産”を一度棚卸ししてみてください。(※本コラムは当社の飲食・ナイト領域におけるM&A・居抜き譲渡実務での一般的な所感です)
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飲食店M&A・売却の全体像は飲食店M&A・売却の全体像はこちら、居抜き売却の流れ・賃貸人の承諾・造作譲渡契約は居抜き売却の進め方・造作譲渡契約はこちらも参考に。掲載中の案件は掲載中の飲食・バー・スナックのM&A案件を見るからご覧いただけます(買い手が実在することは、売り手にとっての安心材料でもあります)。
§5 よくある質問(FAQ)
Q1. バー・スナックは廃業と売却、どちらが得ですか? A. 「廃業して出ていくお金」と「居抜きで譲って手元に残るお金(税引後)」を同じ物差しで比べるのが基本です。好立地で、内装・常連・ボトルキープ・保健所許可が生きているバー・スナックなら、廃業の持ち出し(スケルトン原状回復・カウンター撤去・退職金・残リース清算)より、居抜き譲渡の手取り(造作譲渡料が入る)が上回ることがあります。ただし債務超過、立地が弱い、スケルトン戻しが強制される場合などは、廃業が合理的なこともあります。
Q2. 赤字のスナックでも居抜きで売れますか? A. 売れる場合があります。居抜き造作譲渡は経営の状態と独立に立地・坪数・雑居ビル階数で値付けされるため、赤字でも好立地なら造作で値が付くことがあります(設備が古い・急ぐ場合は0円〜数十万の居抜きも多いですが、立地と常連は別評価です)[C-03]。一方、廃業はスケルトン原状回復で持ち出しになりやすいので、手取りで比べると居抜き譲渡が得な場合があります。「薄利だから値が付かない」という思い込みは、まず査定で確かめる価値があります。
Q3. バー・スナックの廃業費用(原状回復)はいくらかかりますか? A. 店舗規模・契約で大きく変わります。スケルトン契約なら原状回復が必要で、バー・スナック(軽飲食)は坪3〜5万円程度が業界の目安、小規模店でも総額100万円規模になることは珍しくありません(重飲食は坪10万円程度・公的統計なし)[C-08]。これにカウンター・内装・音響設備の撤去・処分、在庫(酒・ボトル)処分、退職金・解雇予告手当、残リース清算が加わり、規模により持ち出しになりがちです。とくに雑居ビルの空中階・夜間作業・個室・水回りの改変で増額しやすく、「スケルトン戻し特約」があれば居抜きで借りていても全撤去が必要な点にご注意ください[C-08]。
Q4. 廃業すると保健所の営業許可・深夜酒類提供届・常連はどうなりますか? A. 許可は二層に分かれます。保健所の飲食店営業許可は廃業すると失効し、保健所への廃業届と許可証の返還が必要です(自治体運用差あり)。深夜酒類提供飲食店営業の届出・風俗営業許可は警察署(生活安全課)の管轄で、廃止届の提出と許可証の返納が必要で、これらは一身専属で承継できません(買い手が新規に取り直します)[C-15]。常連・ボトルキープ・立地も原状回復で価値ゼロになります。一方、居抜きで譲れば、保健所許可は株式譲渡なら会社に残り手続き不要[C-12]、事業譲渡でも2023年12月13日施行の地位承継届で承継でき[C-11]、常連・内装ごと引き継がれます(深夜届・風営は買い手が取り直し)。
Q5. 廃業(清算/原状回復)と売却で、税金はどう違いますか? A. 個人事業のバー・スナックの廃業では、カウンター・厨房機器・音響などの設備売却は原則「譲渡所得」(最高50万円の特別控除)、在庫(酒・ボトル)の自家消費は事業所得+消費税のみなし譲渡で扱われます[C-haigyo-03]。法人なら清算・解散に伴う課税が加わります。居抜き譲渡では、個人事業の事業譲渡は譲渡所得・事業所得の区分、法人の株式譲渡なら個人株主の譲渡益は一律20.315%です[C-13]。同じ店でも手取りが変わり得るため、必ず税理士にご確認ください。
Q6. 借金・個人保証があってもスナックは売れますか? A. ケースによります。M&A・事業承継では「経営者保証に関するガイドライン」の特則で、保証の二重徴求を避け、前経営者の保証を解除に向けて見直すことが原則とされています[C-haigyo-02]。廃業では保証は当然には消えないため、対比として知っておく価値があります(必ず解除されるわけではなく、個別は金融機関・専門家へ)。
Q7. 後継者がいないバー・スナックでも居抜き譲渡できますか? A. 可能性は十分あります。全国の後継者不在率は50.1%[C-06]と高く、外食M&Aは2024年に約70件と過去最高水準[C-07]です。開業希望の買い手は、好立地・常連・ボトルキープ・内装・保健所許可を「店ごと」「すぐ開ける状態で」得られる居抜きを求めています(深夜届・風営は取り直す前提)。後継者がいなくても、立地・内装・常連・保健所許可が健在なら、買い手の“時間を買う”ニーズで居抜きが決まる芽があります。内装も常連も許可も生きている今ほど評価が上がります。
§6 まとめ — 原状回復で持ち出す前に、まず査定を
- バー・スナックの廃業は0円では終わりません。スケルトン契約なら原状回復(坪3〜5万円目安・小規模でも総額100万円規模・空中階は増額)[C-08]、カウンター・内装・音響設備の撤去・処分、在庫(酒・ボトル)処分、退職金、残リース清算、(法人なら)解散・清算(登記約4.1万円+官報約3.5〜4.5万円ほか[C-haigyo-05])で、規模・契約により持ち出しになりがちです。個人保証は廃業しても当然には消えません。
- 一方バー・スナックには、経営状況と独立に立地・坪数・雑居ビル階数・内装で値が付く「居抜き造作譲渡」という出口があります。赤字でも好立地なら造作で値が付くことがあり[C-03]、居抜きで譲れば原状回復をせずに済むうえ造作譲渡料が入ります(業界の目安・公的統計なし)[C-01]。同じ店でも、廃業=持ち出し(マイナス)/居抜き譲渡=造作譲渡料が入る(プラス)と、手取りの符号が逆になり得ます。
- バー・スナックはFLコスト(食材・酒原価+人件費=売上の約6割が目安)+ナイト固有のヘルプ人件費・歩合で低利益[C-04]ですが、だからこそカウンター・内装・音響・立地・常連・ボトルキープという“物件と無形資産”が、店ごと売れる資産になります。畳めば保健所許可も常連も原状回復でゼロ円[C-15]、譲れば造作譲渡料・保健所許可・常連ごと残ります[C-11][C-12](深夜届・風営は買い手が取り直し)。
- 飲食店倒産は過去最多水準(TDB暦年894件/TSR年度907件)[C-05]、後継者不在率50.1%[C-06]。外食需要は回復(2024年108.4%)[C-10]で二極化が進むなか、内装・常連・ボトルキープ・許可が生きている「今」が、出口を選べるタイミングです(バー・スナック単独の倒産件数は要確認)。
カウンター・内装・立地・常連・ボトルキープ・保健所の営業許可、そして店そのものは、廃業すれば原状回復で持ち出しつつ価値ゼロで消えますが、居抜きで譲れば次の担い手に引き継がれ、造作譲渡料が残ります(深夜届・風営は買い手が取り直しますが、それは織り込んで譲れます)。「原状回復で持ち出す」と決める前に、自店の値段(手取り)を一度だけ知ることが、後悔しない出口選びの第一歩です。相場の詳しい出し方はバー・スナックの売却相場と居抜き造作譲渡・年買法の決まり方、実際に「誰が・なぜ買ったか」と常連を残して売れた条件はバー・スナックの売却・第三者承継事例(ママ・常連を残して売れた条件)はこちらもあわせてご覧ください。
※債務超過で再建が難しい、立地が弱く居抜きの引き取り手が見込みにくい、賃貸借契約でスケルトン戻しが強制される——こうした場合は、廃業が合理的なこともあります。「廃業すると必ず損」というわけではありません。
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免責
本記事はバー・スナックの廃業・M&A(居抜き造作譲渡)に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の査定額・成約・節税効果を保証するものではありません。記載した費用・相場・税の取り扱いはあくまで目安・レンジであり、実際の金額は店舗の規模・状態・立地・雑居ビル階数・契約条件・市況により異なります。スケルトン原状回復費・造作譲渡料・設備の中古処分額は公的統計がなく業界の目安(希望額≠成約額)であり、実額を保証するものではありません。個別の税務(廃業時の譲渡所得・みなし譲渡・清算課税・株式譲渡課税)は税理士、許認可(飲食店営業許可・地位承継、深夜酒類提供飲食店営業の届出・風俗営業許可)の廃止・承継・取り直しは行政書士・保健所・警察署、契約・清算・法務に関する事項は弁護士へご相談ください。保健所の営業許可の承継・廃業届の運用、深夜酒類提供届・風俗営業許可の廃止届・返納の様式や期限は自治体(保健所・警察)により異なるため、必ず管轄窓口にご確認ください。本記事には当社サービス(無料売却相談)へのご案内を含みます。
出典
- [C-01] 居抜きバー・スナックの造作譲渡料は「カラオケ・パブ・スナック」の業界平均で168.6万円(飲食店ドットコム)、飲食店舗一般では50万〜150万円規模(中心100〜150万・高くて300万)が業者の目安、坪単価式「月家賃÷坪数=坪単価×60〜100倍」も業者の目安。設備が古い/急ぎは0円(無償)譲渡も。公的統計なし・希望額≠成約額 — 飲食店ドットコム/ミセサポ(misesapo.jp)ほか業界解説(T3・range/attributed・共通REF=bar-ma-souba C-01): https://misesapo.jp/archives/3901
- [C-03] 居抜き造作譲渡は経営状況と独立に立地・坪数・雑居ビル階数で値付けされるため、赤字でも好立地なら造作で値が付く場合がある(設備が古い・急ぐ場合は0円も)/廃業はスケルトン原状回復で持ち出しになりやすい(手取りの非対称) — 業界解説(T3+実務知見・共通REF=bar-ma-souba C-03)
- [C-04] バー・スナックはFLコスト(食材・酒原価+人件費=売上の約6割が目安)+ナイト固有のヘルプ人件費・歩合に規定され低利益(営業利益率は一桁台〜赤字も珍しくない)。※公的財務区分は「宿泊業,飲食サービス業」中分類までで、バー・スナック単独のT1営業利益率実数はない。FL比率は中小機構帰属、営業利益率は業態解説に基づくattributed・定性 — 中小機構ほか(共通REF=bar-ma-souba C-04)
- [C-05] 飲食店倒産は2024年(暦年)894件で過去最多・小規模(負債1億円未満)87.7%(TDB)/飲食業倒産は2024年度907件で初の900件台・小零細89.5%(TSR)。※TDBは暦年・TSRは年度で集計期間が異なるため併記。バー・スナック単独の値ではなく飲食全体(ナイト単独は要確認) — 帝国データバンク/東京商工リサーチ(共通REF=bar-ma-souba C-05): https://www.tdb.co.jp/report/industry/20250114-insyokutousan/ / https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201142_1527.html
- [C-06] 後継者不在率は全国50.1%(2025年・最高は建設業57.3%)。※飲食・ナイト単独値は公表テキストに明示なく全国値で接地(建設57.3%を飲食値に誤用しない) — 帝国データバンク「後継者不在率動向調査2025」(共通REF=bar-ma-souba C-06): https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
- [C-07] 外食業界のM&A件数は2024年 約70件で過去最高水準(前年の約2倍・レコフDB) — 日本M&Aセンター(同社集計・共通REF=bar-ma-souba C-07): https://www.nihon-ma.co.jp/columns/2025/x20250205-3/
- [C-08] バー・スナック(軽飲食)のスケルトン原状回復は坪3〜5万円程度が業界の目安・小規模でも総額100万円規模になり得る(重飲食は坪10万円程度)。雑居ビル空中階・夜間作業・個室・排水/排気改変・搬出経路で増額しやすい。居抜きで借りても「スケルトン戻し特約」があれば退去時に全撤去が必要・原状回復義務の根拠は民法621条。公的統計なし・range/attributed — 飲食店ドットコム/居抜き市場/解体業者解説(T3・共通REF=bar-ma-souba C-08+本調査 H-haigyo-01): https://www.inuki-info.com/knowledge/closeContent/detail/123
- [C-10] 外食全体は売上回復(2024年108.4%)だがバー・スナックなどナイト業態は高齢化・後継者不在・物価高で淘汰圧力が強い(二極化)。ナイト縮小予想は forecast・attributed・断定回避 — 日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査2024」(共通REF=bar-ma-souba C-10): https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP685890_X20C25A1000000/
- [C-11] 保健所の飲食店営業許可の地位承継は、事業譲渡=2023年12月13日(令和5改正)施行で届出により承継可(手数料無料・営業の全部譲渡が条件・譲渡契約書添付)。相続/合併/分割=2021年6月1日(令和3改正)施行。「2021改正で事業譲渡承継」は誤り — 東京都保健医療局/川崎市/厚生労働省(共通REF=bar-ma-souba C-11): https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/jigyojoto.html / https://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000130206.html
- [C-12] 株式譲渡なら法人格不変で保健所の営業許可(・深夜届・風営)は会社に残り手続き負担が小さい(個別は管轄保健所/警察確認)。個人事業は株式譲渡が使えず事業譲渡(造作譲渡)一択 — 一般法理/自治体・警察運用差は attributed(共通REF=bar-ma-souba C-12)
- [C-13] 個人の株式譲渡益は申告分離課税20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)/個人事業の事業譲渡は譲渡所得・事業所得の区分。個別税額は税理士へ — 国税庁 タックスアンサー No.1463(共通REF=bar-ma-souba C-13): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
- [C-15] ★深夜0時以降の酒類提供=『深夜酒類提供飲食店営業』は公安委員会への“届出”(許可でない・深夜=午前0〜6時・営業開始10日前・無届は罰金)で地位の承継ができず、事業譲渡・相続・法人成りでは譲渡側の廃止届+譲受側の新規届出をやり直す。接待を伴う場合の風俗営業許可も事業譲渡・法人成りでは承継不可(相続・合併・分割は承認申請のみ)。廃業時は警察署(生活安全課)へ廃止届出書(廃止から10日以内・別記様式・自治体運用差)+風俗営業許可証の返納(返納理由書)。許可(保健所=承継可)と届出/風営(警察=承継不可)を混同しない。条番号は公開直前に e-Gov で確定 — 愛知県警/岐阜県警/風営法解釈運用基準/行政書士解説(T1/T2・共通REF=bar-ma-souba C-15+本調査 H-haigyo-08): https://www.pref.gifu.lg.jp/site/police/9677.html
- [C-haigyo-01] 解雇は30日前の予告か30日分以上の平均賃金(解雇予告手当・労働基準法20条)/退職金は法定でなく規程による(労基法89条三の二・小規模ナイト店はアルバイト・ヘルプ中心で規程なしも多い) — e-Gov 法令(労働基準法): https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/322AC0000000049
- [C-haigyo-02] M&A・事業承継時は「経営者保証に関するガイドライン」特則により前経営者・後継者の双方から二重には保証を求めず、前経営者保証は解除に向け適切に見直す(廃業=清算では当然には消えない対比・必ず解除ではない) — 全国銀行協会「経営者保証に関するガイドライン」特則(令和元年12月): https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline_sp.pdf
- [C-haigyo-03] 個人事業のバー・スナック廃業では、事業用設備(カウンター・厨房機器・音響・什器)の売却は原則「譲渡所得」(譲渡所得の特別控除 最高50万円・少額/短期資産等は事業所得)/棚卸資産(酒・ボトル)の自家消費は事業所得に計上+消費税のみなし譲渡/事業用資産を家事用へ転用すると消費税のみなし譲渡で課税。具体税額は税理士へ — 国税庁 タックスアンサー No.6603(事業を廃止した場合)/No.3152(譲渡所得の特別控除50万円): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6603.htm / https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3152.htm
- [C-haigyo-04] 個人事業の「開業・廃業等届出書」の提出期限は廃業した年分の確定申告期限まで(令和8年1月以後ルール・旧1か月以内から変更)。税務署への届出と保健所の営業許可廃業届・警察の深夜届/風営廃止届(C-15)は別物 — 国税庁 タックスアンサー No.2090: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm
- [C-haigyo-05] 法人のバー・スナックの解散・清算は解散登記30,000円+清算人選任登記9,000円+清算結了登記2,000円=登録免許税 合計約41,000円+官報の解散公告(1行 税込3,947円・22字/行で10〜12行=約3.5〜4.5万円)+債権者保護の公告期間2か月以上(会社法499条)+士業報酬一式8〜10万円程度。※個人事業のバー・スナックには会社清算は不要 — 登録免許税法 別表第一24号/全国官報販売協同組合/会社法499条(T1/T3・range): https://www.gov-book.or.jp/asp/Kanpo/KanpoPrice/?op=1