個人事業主が廃業したら失業保険はもらえる?対象可否と使える制度を解説
個人事業主が廃業したら失業保険はもらえる?対象可否と使える制度を解説
個人事業主(事業主本人)は原則として雇用保険の被保険者ではないため、廃業しても失業保険(失業給付)の対象にはなりません。 これは、雇用保険が「雇用される労働者」を対象とする制度だからです(厚生労働省 雇用保険制度)。
「廃業したら、会社員のように失業保険はもらえるのだろうか」——廃業を控えて当面の収入が不安なとき、最初に気になる点だと思います。結論から言えば、事業主本人は原則として対象外です。とはいえ、これは「廃業後に頼れる制度が何もない」という意味ではありません。
この記事では、(1) なぜ個人事業主は失業保険の対象外なのか、(2) 会社員時代の受給資格が残っているケースや2022年7月に新設された「受給期間の特例」など、例外的に受け取れる可能性があるケース、(3) 失業保険の代わりに使える求職者支援制度(月10万円の職業訓練受講給付金)や年金保険料の免除などの公的制度、(4) 家族従業員・従業員側の雇用保険の扱いまでを、厚生労働省・ハローワーク・日本年金機構の一次情報をもとに整理して解説します。
なお、個別の受給可否は状況によって変わります。最終的な判断はお住まいを管轄するハローワークにご確認ください。本記事は中小M&AプラットフォームM&A-WEBの編集視点から、廃業を検討する個人事業主・小規模法人オーナーが「失業保険の対象可否」を正確に理解するための一次情報として整理したものです。廃業全般の枠組みは親記事個人事業主の廃業とは|手続き・選択肢の全体像で扱っています。
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§1 結論:個人事業主本人は原則、失業保険の対象外
個人事業主(事業主本人)は原則として雇用保険の被保険者ではないため、廃業しても失業保険(失業給付)の対象にはなりません。 雇用保険は「雇用される労働者」を対象とする制度であり、事業主本人は被保険者になれないからです。
ここで言う「失業保険」は通称です。正式には雇用保険制度の失業等給付のうち、求職者給付の基本手当を指すのが一般的です。「失業手当」「失業給付」も同じく基本手当の通称として使われます。詳しい用語の整理は §2-2 でまとめます。
雇用保険は、労働者を雇用する事業に適用される制度です。その事業に雇用される労働者を被保険者とすると整理されています(厚生労働省 雇用保険制度)。事業主本人は労働者を雇う側であり、自らは被保険者になれません。したがって失業給付も受けられないのが原則です。
岡山労働局のリーフレットでも、自営を開始した方は「失業の状態」を満たさないため給付の対象外になる、と説明されています(岡山労働局 自営業を開始する方へ)。「失業の状態」とは、働く意思と能力があり、求職活動を行っているのに職に就けない状態を指します。事業に専念している間はこの状態を満たしません。
ただし、「絶対にもらえない」と諦めるのは早計です。次の2つの方向で、例外的な救済の道があります。
第一に、会社員時代の受給資格がまだ残っているケースや2022年7月新設の「受給期間の特例」を使えるケースでは、廃業後に基本手当を受け取れる可能性があります(§3で詳述)。第二に、雇用保険を受給できない人向けの求職者支援制度(月10万円の職業訓練受講給付金)など、失業保険の代わりに使える公的制度があります(§4で詳述)。
なお、個別の受給可否はケースによって判断が分かれます。最終的な判断は、お住まいを管轄するハローワークでご確認ください。
§2 なぜ個人事業主は失業保険をもらえないのか
雇用保険は「雇用される労働者」を被保険者とする制度であり、事業主本人は制度設計上、被保険者になれないため失業給付を受け取れません。 会社員時代に保険料を払っていても、独立して事業主となった瞬間に被保険者の枠から外れます。
「会社員のときは雇用保険料を払っていたのに、なぜ個人事業主になると失業保険が使えないのか」——その理由は、雇用保険という制度の成り立ちにあります。まず制度の対象範囲を確認し、次に紛らわしい用語を整理しておきましょう。
§2-1 雇用保険は「雇用される労働者」のための制度
雇用保険は労働者を雇用する事業に適用され、その事業に雇用される労働者を被保険者とする制度です。 事業主本人は労働者を雇う側のため、原則として被保険者になれません。
雇用保険の被保険者となるのは、原則として「適用事業に雇用される労働者」です(厚生労働省 雇用保険制度)。事業主や法人の代表者は、雇用関係に基づき労務の対償として賃金を受ける立場ではないため、被保険者の対象外となります。
ただし、会社員時代に払った保険料は「無駄」になるわけではありません。会社員時代の被保険者期間は、後述する「受給資格」の計算に活きる場合があります(§3-1 / §3-2 で詳述)。
法人の代表取締役や役員も、原則として雇用保険の被保険者にはなれません。これは「使用される側」ではなく「使用する側」に位置するためです。ただし、兼務役員(取締役兼部長など)のうち、労働者性が強いと判断される場合は例外的に被保険者となるケースがあります。判断はハローワークで個別に行われます。
§2-2 「失業保険」「失業給付」「雇用保険」の用語整理
「失業保険」は通称で、正式には雇用保険制度の「失業等給付」のうち求職者給付の「基本手当」を指します。 「失業手当」も同じ意味の通称です。事業者向けの「給付金・補助金」とは制度がまったく別物である点に注意してください。
整理すると次の通りです。
- 雇用保険:制度全体の名称。労働者の生活と雇用の安定を目的とする社会保険
- 失業等給付:雇用保険から支給される給付の総称(求職者給付・就職促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付)
- 基本手当:求職者給付の中心。一般に「失業保険」「失業手当」「失業給付」と呼ばれるのはこの基本手当
- 給付金・補助金:事業者向けの助成制度(再チャレンジ・小規模事業者向け等)。雇用保険とは別制度
本記事は雇用保険の失業給付(基本手当)に特化しています。事業者向け給付金・補助金の詳細は、別記事廃業時に使える給付金・補助金(失業保険とは別制度)で扱っています。
§3 廃業後に失業保険を受け取れる可能性があるケース
「個人事業主は対象外」が原則ですが、会社員時代の受給資格が残るケースや2022年7月新設の「受給期間の特例」を使えるケースなど、条件を満たせば基本手当を受け取れる可能性があります。 諦める前に、自分のケースを確認する価値があります。
「個人事業主本人は対象外」が原則ですが、これには重要な例外があります。特に、会社員などで雇用保険に加入していた人が独立・開業し、その後に廃業したケースでは、条件を満たせば基本手当(失業給付)を受け取れる可能性があります。ここでは代表的な3つのケースを、厚生労働省・ハローワークの制度に沿って整理します。
§3-1 会社員時代の受給資格が残っているケース(原則1年)
会社員を退職してすぐ開業し、短期間で廃業した場合、会社員時代の雇用保険受給資格がまだ残っているケースがあります。 求職活動を前提に、基本手当を受け取れる可能性があります。
基本手当の受給資格は、原則として離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あることです。倒産・解雇など特定受給資格者・特定理由離職者の場合は、離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上で要件を満たします。この要件は雇用保険法 第13条(第1項に原則の「2年間/12箇月以上」、第2項で特定受給資格者・特定理由離職者は「1年間/6箇月」に読み替える旨が規定)に基づくものです。実務上のご案内はハローワークインターネットサービス 基本手当、および厚生労働省の労働者向けリーフレット離職されたみなさまへ(雇用保険の求職者給付)を参照してください。
基本手当の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間と定められています。この1年を過ぎると、所定給付日数の残日数があっても受け取れなくなるのが原則です。
ただし、会社員を退職して開業し、基本手当を受給しないまま事業に専念している間は「失業の状態」に当たりません。自営に専念中の期間は支給対象になりません(岡山労働局 自営業を開始する方へ)。廃業後に求職活動を始め、1年の受給期間内であれば残日数分の基本手当を受給できる可能性があります。
受給資格・残日数の有無は離職票の被保険者期間で個別に判定されます。最終的な判断はお住まいを管轄するハローワークでご確認ください。
§3-2 離職後に開業→廃業した人の「受給期間の特例」(最大3年)
2022年7月1日に新設された「受給期間の特例」を使えば、開業して受給期間(原則1年)を超えても、廃業後に残りの基本手当を受け取れる可能性があります。 開業前に離職した方にとって、最重要の救済策です。
原則として、基本手当の受給期間は離職日の翌日から1年です。開業して1年を超えると、所定給付日数が残っていても受給できなくなります。この壁を緩めるために設けられたのが「受給期間の特例」です(厚生労働省 離職後に事業を開始等した場合の受給期間の特例)。
特例の概要:離職後に事業を開始・専念した方は、事業を行っていた期間等(最大3年間)を受給期間に算入しない特例を申請できます。これにより、廃業後の再就職活動で基本手当を受給できる可能性が生まれます。
主な要件は次の通りです(大阪労働局 受給期間特例リーフレット)。
- 雇用保険の支給要件を満たしていること(原則、離職日以前2年間に被保険者期間12か月以上)
- 事業開始日等から30日経過日が受給期間の末日以前にあること
- 当該事業について、再就職手当または就業手当の支給を受けていないこと
- 自立できないと認められる事業でないこと(一定の客観性が求められる)
申請期限:事業開始日等の翌日から2か月以内に、お住まいを管轄するハローワークへ申請する必要があります。期限を過ぎると特例の対象外となる可能性があるため、開業時点で申請の検討をおすすめします。
要件・対象期間・申請期限は制度改定の可能性があります。申請前に厚生労働省・ハローワークの最新情報をご確認ください。
§3-3 開業時に再就職手当を受けた場合の注意
開業時に再就職手当を受け取っていると、後で受給期間の特例を使えなくなるトレードオフがあります。 開業時点での選択が、廃業時の受給に影響します。
再就職手当は、基本手当の受給資格決定後に早期に就職した場合や、事業を開始した場合に支給される就職促進給付の一種です(ハローワークインターネットサービス 就職促進給付)。
ただし、当該事業について再就職手当を受給していると、§3-2 で説明した「受給期間の特例」の要件を満たさなくなる場合があります。「開業時に再就職手当を取るか、廃業に備えて特例の余地を残すか」は、事業の見通し次第で判断が分かれます。
どちらが有利かは個別の状況によります。開業時点でハローワークに相談し、両制度のトレードオフを確認することをおすすめします。
§4 失業保険の代わりに個人事業主が使える公的制度
失業保険が受け取れない場合でも、月10万円の給付を受けながら無料の職業訓練を受けられる「求職者支援制度」など、廃業後の生活と再起を支える公的制度があります。 対象外=無保障ではありません。
失業保険が受け取れない場合でも、廃業後の生活や再就職・再起を支える公的な制度がいくつかあります。代表的なのが、雇用保険を受給できない人向けの「求職者支援制度」です。ここでは失業保険の代わりに検討したい主な制度を紹介します。
§4-1 求職者支援制度(職業訓練受講給付金・月10万円)
求職者支援制度は、雇用保険を受給できない求職者向けに、月10万円を受給しながら無料の職業訓練を受講できる国の制度です。対象に「自営業を廃業した方」が明示的に含まれており、廃業後の最有力代替策となります。
求職者支援制度は、雇用保険の被保険者でない方や、被保険者期間が短く受給資格を満たさない方が、職業訓練を受けながら生活費の給付を受けられる仕組みです(厚生労働省 求職者支援制度)。
対象(特定求職者):厚生労働省の案内では、特定求職者の典型例として「自営業を廃業した方」が明示的に挙げられています。これは個人事業主の廃業層に直結する重要なポイントです。会社員時代の雇用保険受給資格を満たさない方、受給を終えた方なども対象に含まれます。
主な支給要件:
- ハローワークに求職の申込みをしていること
- 雇用保険の被保険者・受給資格者でないこと
- 労働の意思と能力があること
- 職業訓練などの支援が必要とハローワークが認めること
- 本人収入が月8万円以下(一定の場合は12万円以下)など、収入・資産の要件を満たすこと
給付内容:職業訓練受講手当として月10万円に加え、通所手当(交通費)、寄宿手当などが支給される構成です。詳細な金額・支給条件はハロートレーニング(ハロトレ)特設サイトの給付金案内で公開されています。
不足する生活費については、求職者支援資金融資(労働金庫の融資制度)の利用も可能です。申込み・手続きの窓口は、お住まいを管轄するハローワークです。
なお、給付金額・収入要件・対象範囲は制度改定の可能性があります。申請前に厚生労働省・ハローワークの最新情報をご確認ください。
§4-2 国民年金保険料の免除・納付猶予
廃業で収入が減ったときは、国民年金保険料の免除・納付猶予制度を申請できます。 未納のまま放置せず、適切な手続きで将来の年金受給権を守れます。
廃業や失業で収入が減少した場合、国民年金保険料の免除・納付猶予を申請できます(日本年金機構 国民年金保険料の免除・納付猶予)。「失業による特例免除」では、廃業届の写しなどを所得の証明書として用いられる場合があります。
免除には全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除の段階があり、世帯の所得状況に応じて判定されます。全額免除が認められた期間でも、老齢基礎年金額の一部(国庫負担分)は反映される仕組みです。
手続き窓口は市区町村役場の国民年金担当窓口、または年金事務所です。申請が遅れると免除を受けられない期間が発生する可能性があるため、廃業届の提出と前後して早めに申請することをおすすめします。
国民年金以外の手続き(国民健康保険料の減免など)は、別記事個人事業主の廃業とは|手続き・選択肢の全体像に整理しています。
§4-3 小規模企業共済・給付金など(隣接記事へ)
廃業時に共済金を受け取れる「小規模企業共済」や、事業者向けの給付金・補助金もあります。これらは失業保険とは別制度です。 詳細な制度ごとの解説は隣接記事でまとめています。
小規模企業共済は、個人事業主・小規模法人の役員等が掛金を積み立て、廃業時や役員退任時に共済金(退職金代わりの資金)を受け取れる制度です(中小機構 小規模企業共済)。掛金は全額所得控除の対象となり、廃業準備の選択肢として活用されています。
事業者向けの給付金・補助金(再チャレンジ・小規模事業者向け等)は、制度の改廃が早いため、最新情報を公式サイトで確認することをおすすめします。失業保険(雇用保険の失業給付)とは制度の根拠法が異なる、まったく別の枠組みです。
具体的な金額・申請手順・対象範囲は、隣接記事廃業時に使える給付金・補助金(失業保険とは別制度)で詳しく整理しています。本記事は失業保険=雇用保険の失業給付に特化するため、重複を避けて概要に留めます。
§5 受給可能ケースの手続きと相談先
受給可能ケースに当たる場合は、離職票・求職申込み・受給期間特例の申請を、お住まいを管轄するハローワークで行います。 個別の受給可否は窓口で判定されるため、自己判断で進めず必ず相談を経由してください。
§3 の受給可能ケースに該当する場合、一般的な手続きの流れは次の通りです。
①基本手当を受け取る場合の流れ:
- 会社員時代の離職票(離職票-1、離職票-2)を準備
- お住まいを管轄するハローワークで求職の申込み+受給資格の決定
- 7日間の待期期間(自己都合退職の場合はさらに給付制限期間あり)
- 失業認定(4週間に1回、求職活動実績を申告)
- 基本手当の受給
自営に専念している期間は「失業の状態」を満たさないため支給停止になります。求職活動と並行しない事業継続中は受給対象外となる点に注意してください(ハローワークインターネットサービス 雇用保険の受給手続き)。
②受給期間の特例を使う場合:事業開始日等の翌日から2か月以内に、管轄ハローワークへ申請します(§3-2 再掲)。
③求職者支援制度の場合:ハローワークで求職申込みを行い、職業訓練の受講相談と職業訓練受講給付金の申請を進めます(§4-1 再掲)。
必要書類:離職票、本人確認書類、マイナンバー確認書類、預貯金通帳(振込口座)、写真など。最新の必要書類は管轄ハローワークの案内をご確認ください。
最終判断はハローワークへ:受給可否・残日数・特例の適用・必要書類は、個別の状況によって判断が分かれます。お住まいを管轄するハローワークで必ずご確認ください。個別の労務相談・年金手続きの代理は社労士の独占業務に当たります。判断に迷う場合は社労士への相談もご検討ください。
§6 家族従業員・従業員側の雇用保険はどうなる?
「失業保険の対象外」は事業主本人の話です。家族従業員と従業員では雇用保険の扱いが異なるため、立場ごとに正しく切り分けて理解する必要があります。 廃業時に事業主が行うべき従業員側の手続きもあります。
「失業保険の対象外」なのは事業主本人の話です。同じ事業に関わる人でも、家族従業員(青色事業専従者など)と、雇っていた従業員とでは雇用保険の扱いが異なります。それぞれを正しく切り分けておきましょう。
§6-1 青色事業専従者など同居の家族従業員は原則対象外
同居の親族(青色事業専従者など)は原則として雇用保険に加入できません。 ただし、一定の要件を満たせば例外的に加入できる場合があります。
事業主と同居している親族は、原則として雇用保険の被保険者となりません(厚生労働省 雇用保険制度)。事業主との一体性が強く、独立した労働者性が認められにくいためです。青色申告で「事業専従者」として扱う家族も、原則としてこの枠に入ります。
例外的に加入が認められる要件は、おおむね次の3つを全て満たす場合とされています。
- 事業主の指揮命令に従っていることが明確である
- 就業実態(就業時間・勤務形態)が他の労働者と同様である
- 賃金の決め方が他の労働者と同様である(役員等の地位にない)
判断に迷う場合は、雇用実態を確認できる書類(出勤簿・給与台帳・雇用契約書など)を準備のうえ、お住まいを管轄するハローワークへ相談することをおすすめします。
§6-2 雇っていた従業員には失業給付がある(離職票の交付)
雇用保険に加入していた従業員は、廃業による離職で失業給付の対象になります。事業主側は離職票を速やかに交付する必要があります。
個人事業主が雇用保険に加入した従業員を雇っていた場合、その従業員は廃業による離職で失業給付の対象となります。事業主側の手続きは次の通りです(北海道ハローワーク 事業所を廃止したときの雇用保険手続き)。
- 雇用保険適用事業所廃止届をハローワークへ提出
- 雇用保険被保険者資格喪失届と離職証明書をハローワークへ提出
- ハローワークから交付された離職票を従業員へ速やかに交付
従業員は受け取った離職票で、お住まいを管轄するハローワークにて受給手続きを行います。事業主本人は対象外でも、従業員には給付がある点が大きな違いです。
事業主としての従業員手続きの詳細(必要書類・期限)は、別記事の廃業手続き解説に整理しています。本記事では概要に留めます。
§7 失業保険がなくても|廃業より譲渡で手元に残す選択肢
失業保険が使えなくても、廃業前に「事業を第三者へ譲渡(M&A)する」選択肢を検討する余地があります。 譲渡できれば、顧客基盤・営業権・許認可といった無形資産を金額に変えられる可能性があります。
失業保険が受け取れないと、廃業後の収入がゼロになりがちです。視点を変えると、「事業そのものを資金に換える」という選択肢があります。
廃業すると、長年積み上げてきた顧客基盤・営業権・許認可・のれんは1円も値段にならず消滅します。一方で、第三者承継(M&A)で事業を譲渡できれば、これらの無形資産が手元に残る金額に変わる可能性があります。「廃業して何も残らない」より「譲渡で手元に資金を残す」方が結果的に良い場合があるのは、こうした構造の違いがあるからです。
ただし、譲渡の方が常に有利と断定することはできません。譲渡できる事業かどうかは、利益・顧客基盤・許認可・後継者の有無といった条件次第で変わります。すべての事業に買い手がつくわけではない点には注意が必要です。
後継者不在で廃業を考えている方は、公的な相談窓口事業承継・引継ぎ支援センター(無料)の活用も選択肢です。中小機構の支援を受けて、第三者承継の可能性を探れます。
廃業と譲渡の手取り・税負担・期間の詳細比較は、別記事廃業 vs 譲渡|手取り・税負担・期間 比較で整理しています。本記事は失業保険の対象可否に特化するため、ここでは選択肢の存在提示に留めます。
失業保険が使えなくても、譲渡なら手元に残る金額を無料相談で試算 → M&A-WEB 無料診断(売主完全無料)
§8 よくある質問(FAQ)
廃業と失業保険についてよく寄せられる質問を、PAA(Google「他の人はこちらも質問」)対応の形でまとめます。
- 個人事業主が廃業したら失業保険はもらえますか?
原則として事業主本人は対象外です。雇用保険は「雇用される労働者」のための制度のためです。ただし会社員時代の受給資格が残るケースや受給期間の特例を使えるケースは例外です(→ §1 / §3)。
- 個人事業主が雇用保険に入れないのはなぜですか?
雇用保険は「雇用される労働者」を被保険者とする制度であり、事業主本人は被保険者になれないためです(→ §2)。
- 会社員を辞めて開業し廃業した場合、失業保険は受け取れますか?
条件を満たせば、会社員時代の受給資格が残るケースや「受給期間の特例(最大3年)」で受給できる可能性があります。最終判断はハローワークでご確認ください(→ §3-2)。
- 失業保険の代わりに使える制度はありますか?
求職者支援制度(月10万円の職業訓練受講給付金)、国民年金保険料の免除・納付猶予、小規模企業共済などがあります(→ §4)。
- 求職者支援制度は廃業した人も対象ですか?
厚生労働省の案内で「自営業を廃業した方」が特定求職者に含まれます。収入要件・出席要件などを満たす必要があります(→ §4-1)。
- 家族従業員(青色事業専従者)は雇用保険に入れますか?
同居の親族は原則対象外です。事業主の指揮命令下にあり就業実態が他の労働者と同様などの要件を満たせば加入できる場合があります(→ §6-1)。
- 廃業後の失業保険の手続きはどこでしますか?
お住まいを管轄するハローワークです。離職票・本人確認書類などを持参し、求職申込みと受給資格の決定を受けます(→ §5)。
§9 まとめ|まず対象可否を確認し、代わりの制度と選択肢を
個人事業主(事業主本人)は原則として雇用保険の被保険者ではないため、廃業しても失業保険(失業給付)の対象にはなりません。これは雇用保険が「雇用される労働者」を対象とする制度だからです。
ただし、(1) 会社員時代の受給資格が残るケースや(2)2022年7月新設の「受給期間の特例(最大3年)」を使えるケースなど、例外的に受け取れる可能性もあります。(3) さらに、失業保険が使えない場合でも、月10万円を受給しながら無料の職業訓練を受けられる求職者支援制度や、国民年金保険料の免除・納付猶予など、廃業後の生活を支える公的制度があります。
自分が受給可能ケースに当たるかは状況によって変わります。最終的な判断はお住まいを管轄するハローワークでご確認ください。あわせて、廃業後の資金が不安な方は、「廃業して何も残らない」より「事業を第三者へ譲渡して手元に資金を残す」という選択肢もあります。
関連記事として、個人事業主の廃業とは|手続き・選択肢の全体像(hub)、廃業 vs 譲渡|手取り・税負担・期間 比較、廃業時に使える給付金・補助金、廃業年の確定申告のやり方、個人事業の開業・廃業等届出書(再開業の場合)を合わせてご確認ください。
廃業して何も残さない前に、譲渡の選択肢を無料相談で確認する(完全無料・売主完全無料) → M&A-WEB 無料診断
参考文献
本記事は、以下の公的一次情報(厚生労働省・ハローワーク・日本年金機構・中小機構)に基づいて作成しています。制度の最新情報は各公式サイトでご確認ください。
- e-Gov 法令検索「雇用保険法(昭和49年法律第116号)」(第13条 基本手当の受給資格)
- 厚生労働省「雇用保険制度」
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ(雇用保険の求職者給付)」(受給資格・所定給付日数を含む労働者向けリーフレット)
- 厚生労働省「離職後に事業を開始等した場合の雇用保険受給期間の特例について」
- 厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
- 厚生労働省「ハロートレーニング(ハロトレ)給付金について」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
- ハローワークインターネットサービス「就職促進給付・再就職手当」
- 岡山労働局「自営業を開始する方へ(PDF)」
- 大阪労働局「雇用保険の受給期間の特例(PDF)」
- 北海道ハローワーク「事業所を廃止したときの雇用保険手続き」
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
- 中小機構「小規模企業共済」
- 中小機構「事業承継・引継ぎ支援センター(第三者承継支援)」
本記事の位置づけ:本記事は廃業を検討する個人事業主・小規模法人オーナー向けに、雇用保険の失業給付(基本手当)の対象可否を整理した一般情報です。個別の受給可否・特例適用・必要書類の判定は、お住まいを管轄するハローワークの専管事項です。労務・社会保険の個別相談は社会保険労務士、税務は税理士、法的紛争は弁護士の専門領域となります。本記事は専門家相談の代替ではなく、相談前の制度理解の一助としてご活用ください。
最終更新: 2026-05-27 / 編集: M&A-WEB編集部