カフェの売却相場2026|居抜き造作譲渡と年買法で「いくら」が変わるか
薄利が続いて、自分も歳をとった。コーヒー豆も牛乳も人件費も上がる一方で、家賃や更新の話が頭をよぎる——。続けても先細り、でも畳むとなると内装の解体やスケルトン返しの原状回復で持ち出しになる。そこで浮かぶのが「店ごと売れるなら売って引退したい。でも、うちみたいな小さなカフェにいくらの値段が付くんだ?」という問いです。本記事は、カフェの売却相場の「読み解き方」と、税引後に手元に残る「手取り」を、一次統計と実務目線でお伝えします。
この記事の結論(先に要点だけ)
- カフェの売却相場には“2つ”あります。①居抜き造作譲渡の相場(=物件相場)は、経営状況と切り離して立地・坪数・路面かで決まり、②年買法による事業相場は時価純資産+営業権(営業利益の概ね数年分)で見ます[C-01][C-02]。同じ売上でも、この2つの掛かり方で値段は大きく変わります。
- 居抜きカフェの造作譲渡料は、業者の目安でおおむね50万〜150万円(中心100〜150万円)、高くても300万円程度とされます[C-01]。ただしこれは公的統計のない業者の相場感で、坪単価式「月家賃÷坪数=坪単価×60〜100倍」も業者の目安にすぎません[C-01]。仲介サイトの金額は売り手の希望額であって成約額ではない点にも注意が必要です。
- 値段を押し上げるのは、好立地・路面・駅近/常連・SNS集客・ブランド/エスプレッソマシン・焙煎機・空調など内装・厨房設備の状態/黒字継続/営業許可・(該当時)深夜酒類提供届/オーナー属人性の低さです[C-03][C-04]。
- 赤字でも好立地なら、居抜き造作で値が付く場合があります[C-03]。経営の状態と独立に物件として値付けされるのが、飲食固有の非対称です。
- 営業許可は引き継げます。株式譲渡なら法人格は変わらず許可は会社に残って手続き不要、事業譲渡でも2023年12月13日施行の地位承継届で承継できます(手数料無料・全部譲渡が条件・譲渡契約書添付/相続・合併・分割は2021年6月1日施行で別の年号)[C-11][C-12]。
- 廃業はスケルトン原状回復・厨房撤去・残リース・退職金で持ち出しになりがち。店(と内装・設備・立地・常連・許可)に値が付くなら、居抜き譲渡のほうが手元に残るお金が多い場合があります[C-08]。
- 次の一手は、畳む前に自店の概算評価を一度知ること。仲介に営業される前に、無料で相場感をつかむのが安全です。
§1 カフェ業界とは — 低利益(FLコスト)と「居抜きで店ごと売れる」ビジネス
「個人カフェに値段なんて付くのか」と思っていませんか。実は、内装・厨房設備・立地・常連という“物件と無形資産”があるカフェは、経営の状態と独立に「店ごと(居抜き)」売れる、飲食ならではの値の付き方をする業種です。
カフェ(喫茶店)業とは、コーヒー・紅茶などの飲み物や軽食を提供する飲食店で、外食産業のうち喫茶・コーヒー業態に位置づけられます。日本フードサービス協会(JF)の調べでは、喫茶店の市場規模は2023年で約1兆1,892億円で、外食産業全体(飲食店・居酒屋・喫茶等の合計)の一角を占めます[C-10]。なお市場規模(売上ベース)と、事業所数や営業許可施設数は別の母数なので混同は禁物です。
カフェの収益構造を理解する鍵がFLコストです。標準的な飲食店のFL比率(Food=食材費+Labor=人件費)は、売上の約60%が目安とされます[C-04]。ここに家賃・水道光熱費・減価償却を引くと、カフェの営業利益率は一桁台にとどまることが多く、赤字も珍しくありません[C-04]。客単価と回転率に上限がある喫茶業態は、構造的に薄利になりやすいのです。
注:カフェ単独の財務統計には公的な区分がなく、本記事の利益率はFL比率(中小機構)と飲食業態の一般的な解説(attributed)で接地しています。粗利率と営業利益率は別物で、FL比率60%は「原価+人件費」の話であって粗利率の話ではありません[C-04]。
だからこそ、開業時に数百万円〜1,000万円超を投じた内装・厨房設備(エスプレッソマシン・焙煎機・空調など)と、立地・常連という無形資産が、“買われる資産”として残る——ここがカフェ売却の出発点です。さらに個人経営のカフェは株式譲渡が使えず、事業譲渡(≒店舗・造作譲渡)が一択になります。法人格を持たないため「会社ごと株式を売る」ことができないからです。この点は§4の相場の二本立てにつながります。
PESTで見れば、政策=食品衛生法改正後のHACCP対応、経済=コーヒー豆・乳製品の原価高騰と人件費上昇、社会=コロナ後の客足変化と在宅勤務の定着・オーナーの高齢化、技術=コンビニコーヒーや大型チェーンとの競合激化。需要の回復と小規模店の淘汰圧力が同時に進む構図です。
カフェ経営の将来性や廃業率の全体像は、カフェ経営の将来性・廃業率の動向はこちらで俯瞰しています。本記事(相場・売却価格)と併せてご覧ください。誰が・なぜカフェを買うのか(買い手タイプ別の成約事例)はカフェの売却・第三者承継 事例傾向(一人オーナーが売れた条件)で整理しています。
§2 カフェ業界の動向と将来性 — なぜ今、売却・居抜き譲渡が増えているか
需要が回復しても、すべてのカフェが安泰ではありません。「小規模ほど詰む」構図が進み、出口として居抜き譲渡・M&Aが現実的な選択肢になっています。
最大の背景は倒産・廃業の増加です。飲食店の倒産は2024年(暦年)894件で過去最多を更新しました(帝国データバンク/前年768件比+16.4%。1億円未満の小規模が784件=87.7%)[C-05]。集計の単位を変えると、飲食業の倒産は2024年度(4〜2月累計)907件で、同期間として初の900件台になり、資本金1千万円未満の小零細が約89.5%を占めます(東京商工リサーチ)[C-05]。調査会社によって暦年と年度で集計期間が違うため、両方を併記しています。
カフェに絞ると圧力はさらに鮮明です。喫茶店(カフェ)の倒産は2024年度に2月までで66件発生し、年度通年で過去最多になる可能性が指摘されています(TDB)[C-05b]。主因は原材料高で、国産で流通するアラビカ種コーヒー豆は2024年度平均で1kg当たり900円を超え、前年度の約1.4倍・コロナ禍(2020年度)の約2.5倍に急騰しました[C-05b]。安価なコンビニコーヒーや大型チェーンとの競合も重なります。
一方で売上そのものは回復しています。外食産業の2024年売上は前年比108.4%(3年連続で前年超)、喫茶業態も前年比109.0%でした(JF)[C-10]。つまりカフェ業界は、売上回復と小規模店の淘汰が同時に進む二極化にあります。
後継者問題も無視できません。後継者不在率は全国(全業種)で50.1%(2025年・帝国データバンク)です[C-06]。飲食業単独の値はこの調査の公表テキストに明示がないため、本記事では全国値で接地し、飲食単独は要確認とします(建設業の57.3%などを飲食の値として使うことはしません)。
買い手の動きも活発です。外食業界のM&A件数は2024年に約70件で過去最高を更新しました(前年の約2倍/レコフM&Aデータベース集計・日本M&Aセンター)[C-07]。脱サラで開業を夢見る個人、多店舗展開チェーンの面取り、居抜き再生を狙う事業者などが、立地・常連・内装設備・営業許可を「店ごと」一括取得できる出口を求めています。畳む前に、内装・常連・許可がある“今”に価値があるわけです。
喫茶・コーヒー業態の縮小予想を含む将来性の総論は、カフェ経営の将来性・廃業率の動向はこちらで整理しています。本記事は「売却・居抜き譲渡が増える文脈」に絞っています。
§3 カフェの生き残り戦略 — 続ける/譲る/畳むの3択
続ける現実は、薄利との戦いです。前述のとおりFLコストが売上の約6割を占め[C-04]、原価高・人件費上昇が利益を圧迫します。薄利を変える「自走」(客単価の引き上げ、原価・人件費管理によるFLコスト改善、固定客の囲い込みと会員化、豆やグッズの物販・オンライン販売、立地の強みの活用)には投資と時間、担い手が要ります。
なお、カフェオーナーの年収や利益率の「儲かる/儲からない」の深掘りは本記事の範囲外です。利益率・年収の実態と「薄利でも高く売れる店の整え方」は別記事で扱います。
畳む(廃業)は、スケルトン原状回復(内装をすべて撤去して空っぽの状態で返す契約)、厨房・内装の撤去、残りのリース債務、退職金、在庫処分など、出ていくお金が想像より大きくなりがちです。店を閉めれば、立地も常連も営業許可も、価値ゼロで消えます。
そして譲る(居抜き譲渡・M&A)。「買われる強み」(好立地・路面・駅近、常連やSNSフォロワー、状態の良いエスプレッソマシン・焙煎機・空調、黒字継続、有効な営業許可、敷金・残リースの良条件)が揃うなら、あなたの店は「畳むしかない事業」ではなく「買われる資産」です。SWOTで自店の「買われる強み」を棚卸しすることが、3択を見極める出発点になります。
§3.5 廃業 vs 売却 — 手取りで比べると見え方が変わる
廃業はスケルトン原状回復・厨房撤去・残リース・退職金・在庫処分など「持ち出し」になりやすく、立地・常連・営業許可も価値ゼロで消えます[C-08]。居抜き譲渡なら、条件次第で造作譲渡料が入り、敷金の回収、許可や常連の引き継ぎも交渉できます。
判断軸は「廃業して出ていくお金」と「居抜き譲渡で手元に残るお金(税引後の手取り)」を、同じものさしで比べること。原状回復の見積もりだけを見ていた方が、相談で「店ごと譲るほうが手取りが多い」と気づくことも少なくありません。赤字でも好立地なら造作で値が付くこともあり、廃業との損得は逆転しうるのです[C-03]。

図解F3:廃業(持ち出し)と居抜き譲渡(造作譲渡料が入る)の手取り非対称。金額は業者の目安・公的統計なしで、断定値ではありません。
廃業と居抜き譲渡の手取りをより詳しく比べたい方は、カフェの廃業と居抜き譲渡の手取り徹底比較をご覧ください(深掘りは別記事に分けています)。
▶ 畳む前に、まず手取りを試算しませんか
「畳むといくら持ち出しか」「居抜きで譲るといくら残るか」を同じ土俵で比べると、結論が変わることがあります(売り手は完全無料)。 → 畳む前に手取りを試算する/居抜き譲渡を相談する
§4【M&A・投資視点】カフェの売却相場 — 居抜き造作譲渡と年買法の二本立て
「うちのカフェはいくらで売れるのか」を、相場の見方と評価の仕組みから解きます。ここがこの記事の主役です。結論から言うと、カフェの「相場」という単一の数字は存在せず、値段は“2つのロジック”で決まります。
まず大前提:カフェの相場は「物件相場」と「事業相場」の二本立て
カフェの値段は、性質の違う2つの相場で構成されます。
- ①居抜き造作譲渡=物件相場:経営状況(赤字/黒字)と切り離して、立地・坪数・路面か・内装設備の状態で決まる。赤字でも好立地なら値が付く。
- ②年買法=事業相場:時価純資産+営業権(営業利益の数年分)で見る。常連・ブランド・黒字・属人性の低さが営業権を厚くする。
同じ売上のカフェでも、この2つの掛かり方で値段は大きく変わります。仲介サイトに並ぶ譲渡額は、売り手の「希望額」であって成約額ではない点にも注意してください。

図解F1:カフェの売却相場の二本立て。①物件相場(造作譲渡)と②事業相場(年買法)。数値は本文・Claims Ledger準拠で、いずれも業者の目安・レンジです。
相場①:居抜き造作譲渡(物件相場)
居抜き譲渡とは、内装・厨房設備・什器をそのまま残して次の借り手・買い手に引き渡し、その対価として造作譲渡料を受け取る取引です。現在の造作譲渡料は、業者の目安でおおむね50万〜150万円、高くても300万円程度(中心は100〜150万円)とされます[C-01]。算定の現場では「月額家賃を坪数で割った坪単価を、60倍から100倍した価格が譲渡価格の目安として妥当」という見方が使われ、立地と業態がマッチすれば100倍以上で取引されることもあります[C-01]。
ただし、これらはすべて公的統計のない「業者の相場感(目安)」です。立地・坪数・路面か・設備の状態・業態で大きく変動し、経営状況(赤字/黒字)とは独立に決まるのが飲食固有の非対称です。金額も坪単価式も、断定できる「相場」ではありません[C-01]。
相場②:年買法(事業相場)
黒字で常連やブランドがあるカフェ、あるいは多店舗を法人で運営しているケースでは、物件の値付けに加えて「事業」としての評価が乗ります。その目安が中小M&Aの定番年買法です。
株式価値(または事業価値)= 時価純資産 + 営業権(=営業利益の概ね数年分/案件により幅)[C-02]
この上乗せ部分が「営業権(のれん)」——常連・ブランド・立地・許可など帳簿に出ない収益力を金額化したものです。ただし年買法には確たる理論的な裏付けはなく、「明確な相場」は存在しません。あくまで交渉のたたき台で、年数(数年分)も案件によってばらつきます[C-02]。
注:「EBITDA倍率(例 数倍)」を相場として目にすることがありますが、これは全業界の平均的な参考値で、カフェ特化の数字ではありません[C-09]。カフェに固有の一次データは存在しないため、本記事では年買法の補助的な参考にとどめ、金額の根拠としては用いません。
値段を動かす「加点」と「減点」(カフェ固有・ここが主役)
物件相場(造作)と事業相場(営業権)のどちらを厚くするかは、カフェに固有の要素が決めます[C-03][C-04]。
加点される要素
- 好立地・路面・駅近・席数あたりの家賃効率——造作譲渡料の坪単価式が示すとおり、立地は物件相場に直結します[C-01]
- 常連・SNSフォロワー・ブランド・リピート率——営業権を厚くする無形資産
- エスプレッソマシン・焙煎機・空調など内装・厨房設備の状態と残存価値——居抜きで「すぐ営業できる」状態は買い手の時間を買う価値になります
- 黒字継続・FLコストの良好な管理
- 有効な営業許可・(該当する場合)深夜酒類提供の届出——引き継げる許可は買い手の参入コストを下げます[C-11]
- オーナー属人性の低さ——味や接客がオーナー個人に依存しないこと
減点される要素
- 不利な立地・高すぎる家賃
- 集客が味・オーナー個人に依存している
- 設備の老朽化・過大な残リース
- 赤字の継続
- スケルトン原状回復責任(居抜き不可の契約)——居抜きで譲れず原状回復費がかかると、譲渡の妙味が大きく削がれます[C-08]
- 簿外リスク・賃貸借や敷金をめぐる係争

図解F2:カフェの値段を押し上げる要素(左)と引き下げる要素(右)。立地・常連・設備・許可・属人性が、造作と営業権の双方に効きます。
編集部より:現場で「値段を分ける」のは、決算書に出ない部分です
カフェの評価は、売上の大小だけでは決まりません。最後に効くのは、立地と路面・席数あたりの家賃効率、常連やSNSフォロワーのリピート率、エスプレッソマシン・焙煎機・空調など設備の状態と残存価値、黒字が続いているか、味や接客がオーナー個人に依存していないか、営業許可・賃貸契約・敷金・原状回復責任の条件、そして居抜き可かスケルトン契約か——いずれも帳簿に表れにくい要素ばかりです。経験的には、赤字でも好立地なら造作で値が付く一方、味がオーナー属人だと「事業」としての営業権は乗りにくいという非対称があります。ここを整えるだけで買い手の見る目は変わり、価格にも交渉のしやすさにも直結します。(※本コラムは当社の飲食領域におけるM&A実務での知見に基づく一般的な所感です)
3Cで見る:買い手は何を狙っているか
買い手(同業・多店舗チェーン・脱サラ開業希望者・居抜き再生事業者)が欲しいのは、ゼロから揃えると時間のかかる立地・常連・内装厨房設備・有効な営業許可・「すぐ営業できる」時間です。ゼロから物件を探し、内装と厨房を造作し、許可を取り、常連をつくるより、「店ごと」買うほうが圧倒的に早い——この時間価値が、居抜き譲渡の妙味です。自店の強みを言語化できれば、その価値は買い手に明確に伝わります。
営業許可・敷金の承継 — ここがスキーム選択と相場に効く
「営業許可は引き継げないから廃業しかない」というのは誤解です。
株式譲渡なら、株主が変わるだけで法人格は変わらず、会社が持つ飲食店営業許可は会社に残り、手続きは不要です(個別の取り扱いは管轄保健所にご確認ください)[C-12]。
事業譲渡や個人事業の譲渡でも、許可は引き継げます。飲食店営業許可の地位承継は、事業譲渡について2023年(令和5)12月13日施行で、届出により承継できるようになりました(手数料無料・営業の全部譲渡が条件・譲渡契約書等の添付が必要)[C-11]。なお、相続・合併・分割による地位承継は2021年(令和3)6月1日施行で、年号が異なります。「2021年改正で事業譲渡の地位承継が可能になった」というのは誤りなので注意してください[C-11]。個人経営のカフェは株式譲渡が使えず事業譲渡(造作譲渡)一択になるため、この地位承継届が出口の鍵になります。深夜0時以降に酒類を提供する場合の深夜酒類提供は「届出」(許可ではありません)です。引き継げる許可・敷金・残リースの条件は、手取りに直結します。
★年号の整理:飲食店営業許可の地位承継は、事業譲渡=2023年12月13日施行/相続・合併・分割=2021年6月1日施行です。株式譲渡なら法人格が変わらないため許可は会社に残り手続き不要です。
営業許可の地位承継届の書き方・必要書類・自治体ごとの運用差といった手続詳細は、カフェの営業許可の引き継ぎ(地位承継届2023〜)の詳細はこちらをご覧ください。本記事では「許可が引き継げることが相場・出口にどう効くか」の要点にとどめています。
業態を問わない飲食店売却の相場と造作査定の内訳は、飲食店売却の相場と造作査定の内訳はこちらで、居抜き売却の流れ・賃貸人の承諾・造作譲渡契約は居抜き売却の進め方はこちらで解説しています。本記事はカフェ業態の値付けに絞っています。
同じ飲食でも夜業態のバー・スナックは、深夜0時以降の酒類提供に必要な深夜酒類提供届や風俗営業許可が買い手に引き継げず、相場の決まり方も異なります。バー・スナック業態の売却相場はバー・スナックの売却相場と居抜き造作譲渡の考え方はこちらで解説しています。
手取り(税引後)の考え方
「いくら売れる」を「いくら残る(税引後の手取り)」に翻訳することが、廃業との損得比較の出発点です。法人カフェの株主が株式売却で得た利益には、申告分離課税で税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税2.1%相当+住民税5%)が課されます[C-13]。個人事業の事業譲渡(造作譲渡)の場合は、譲渡資産の内容に応じて譲渡所得・事業所得などに区分されます。実際の税額は取得費や資産区分で変わるため、計算は税理士へご相談ください。敷金の精算、借入・残リースの清算も手取りに直結します。
価格を上げる事前準備 — 売却前に整えると値段が上がる10項目
次の項目を点検すると、買い手の評価と交渉のしやすさが変わります。自店に当てはめてください。
- ☐ 飲食店営業許可の有効期限・更新状況、(該当時)深夜酒類提供届の有無、地位承継の可否確認
- ☐ 賃貸借契約・敷金・更新条件・原状回復責任(居抜き可かスケルトン契約か)の確認
- ☐ エスプレッソマシン・焙煎機・空調など内装・厨房設備の稼働実績・台帳・名義(所有/リースの区分)
- ☐ 常連・会員・SNSフォロワー・リピート率の数値化
- ☐ 黒字化・FLコスト(食材費+人件費)の改善
- ☐ オーナー属人化の解消(オーナー不在でも回る体制・レシピ/オペレーションの標準化)
- ☐ 直近3期分の決算書・試算表の整備(見え方の改善)
- ☐ 残リース・借入・個人保証の精査
- ☐ 簿外リスク・賃貸借や敷金をめぐる係争の有無
- ☐ 居抜き可かスケルトン契約かの最終確認(造作譲渡の可否は手取りを大きく左右)
▶ 「自店だといくらになる?」をまず知る
立地・常連・設備・許可といった“数字に出ない資産”を踏まえた概算評価を、売り手は完全無料でお出しします。居抜き造作譲渡か事業譲渡かも含めてご相談ください。 → カフェの無料売却査定を相談する
掲載中の案件は掲載中の飲食・カフェのM&A案件を見るからご覧いただけます(買い手が実在することは、売り手にとっての安心材料でもあります)。
§5 よくある質問(FAQ)
Q1. カフェの売却相場はいくらですか? A. カフェに「これが相場」という単一の金額は存在せず、値段は2つのロジックで決まります。①居抜き造作譲渡(物件相場)は立地・坪数・路面で決まり、造作譲渡料は業者の目安でおおむね50万〜150万円・高くても300万円程度とされます[C-01]。②年買法(事業相場)は時価純資産+営業権(営業利益の数年分)で見ます[C-02]。いずれも公的統計のない目安で、仲介サイトの金額は希望額であって成約額ではありません。目安を知るには無料査定が近道です。
Q2. カフェの居抜き造作譲渡の相場はどう決まりますか? A. 経営状況とは独立に、立地・坪数・路面か・内装設備の状態で決まります。現場では「月家賃÷坪数=坪単価」を60〜100倍した価格が目安とされ、立地と業態がマッチすれば100倍以上もあり得ます[C-01]。ただしこれは公的統計のない業者の相場感で、断定できる相場ではありません。
Q3. 赤字のカフェでも売れますか? A. 売れる場合があります。居抜き造作譲渡は経営の状態と独立に立地・坪数で値付けされるため、赤字でも好立地なら造作で値が付くことがあります[C-03]。一方、廃業はスケルトン原状回復で持ち出しになりやすいので、手取りで比べると居抜き譲渡が得な場合があります(→§3.5・廃業と居抜き譲渡の手取り比較)。
Q4. カフェの営業許可はM&Aで引き継げますか? A. 引き継げます。株式譲渡なら法人格が変わらず許可は会社に残り手続き不要です。事業譲渡でも2023年(令和5)12月13日施行の地位承継届により承継でき、手数料無料・営業の全部譲渡が条件・譲渡契約書の添付が必要です[C-11][C-12]。相続・合併・分割の地位承継は2021年6月1日施行で年号が異なります。手続の詳細と自治体ごとの運用差はカフェの営業許可の引き継ぎの詳細はこちらで扱います(個別は管轄保健所へ)。
Q5. 個人経営のカフェの売却は株式譲渡と事業譲渡のどちらになりますか? A. 個人経営のカフェは法人格がないため株式譲渡が使えず、事業譲渡(≒店舗・造作譲渡)が一択になります[C-12]。この場合、営業許可は2023年12月13日施行の地位承継届で引き継げます[C-11]。譲渡益は譲渡資産の内容に応じて譲渡所得・事業所得に区分されるため、税務は税理士にご相談ください。
Q6. カフェは廃業と売却どちらが得ですか? A. 廃業はスケルトン原状回復・厨房撤去・残リース・退職金で持ち出しになりやすく、立地・常連・許可も価値ゼロで消えます[C-08]。居抜き譲渡なら造作譲渡料が入り、許可や常連を引き継げます。「出ていくお金」と「手元に残るお金(税引後)」を同じものさしで比べてください(→§3.5・廃業と居抜き譲渡の手取り比較)。
Q7. カフェの売却にかかる税金はどうなりますか? A. 法人カフェの株式譲渡益には申告分離課税で20.315%が課されます[C-13]。個人事業の事業譲渡(造作譲渡)は、譲渡資産の内容に応じて譲渡所得・事業所得などに区分されます。実際の税額は取得費や資産区分で変わるため、計算は税理士へご相談ください。M&A仲介の成功報酬はレーマン方式が一般的です(料率は仲介会社により異なります)[C-14]。
§6 まとめ — 畳む前に、まず査定を
- カフェに「明確な相場」はありません。値段は①居抜き造作譲渡=物件相場(立地・坪数・路面で決まる/造作譲渡料は業者の目安・公的統計なし)と、②年買法=事業相場(時価純資産+営業権)の二本立てで見ます[C-01][C-02]。
- 値段を作るのは、好立地・常連・SNS・設備の状態・黒字・有効な営業許可・オーナー属人性の低さという“数字に出ない資産”です[C-03][C-04]。赤字でも好立地なら造作で値が付くこともあります[C-03]。
- 営業許可は引き継げます。株式譲渡なら会社に残り手続き不要、事業譲渡でも2023年12月13日施行の地位承継届で承継可(手数料無料・全部譲渡が条件・譲渡契約書添付/相続等は2021年6月1日施行で別の年号)[C-11][C-12]。
- 飲食店倒産は過去最多水準、喫茶店倒産も増加し、後継者不在率は全国で50.1%[C-05][C-05b][C-06]。一方で外食売上は回復し、外食M&Aは2024年に約70件で過去最高[C-07][C-10]。内装・常連・立地・許可がある「今」が売り時です。
買い手向け:立地・常連・内装設備・営業許可を「店ごと」取得したい方は、掲載中の飲食・カフェのM&A案件を見るをご覧ください。
売り手向けチェックリスト:①薄利が続く/体力的に限界 ②好立地・路面・駅近で常連やSNSフォロワーがいる ③エスプレッソマシン・焙煎機など設備の状態が良い ④有効な営業許可があり居抜きで譲れる契約 ⑤畳むとスケルトン原状回復で持ち出しになりそう——一つでも当てはまるなら、畳む前に自店の値段を知る価値があります。
立地・常連・内装設備・営業許可は、廃業すれば価値ゼロで消えますが、居抜き譲渡なら次の担い手に引き継がれ、対価が残ります。赤字でも好立地なら造作で値が付くことがある店だからこそ、自店の値段を知ることが、後悔しない出口選びの第一歩です。
▶ 営業許可の引き継ぎを含めて、無料で相談する
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免責
本記事はカフェのM&A・売却に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の査定額や成約・売却を保証するものではありません。記載した相場・算定式・倍率(造作譲渡料・坪単価式・年買法・EBITDA倍率など)はあくまで業者の目安・レンジであり、公的統計に基づく確定値や実際の成約価格を保証するものではありません。仲介サイト等の掲載額は売り手の希望額であって成約額ではありません。利益率はカフェ単独の公的財務区分がないため、FL比率(中小機構)と飲食業態の一般的解説で接地しています。営業許可の地位承継・深夜酒類提供届は管轄保健所・警察(公安委員会)の運用差があり最新情報の確認が必要です。個別の税務の取り扱いは税理士、許認可(営業許可の地位承継)の可否は行政書士・管轄保健所、契約・賃貸借・敷金・原状回復などの法務に関する事項は弁護士へご相談ください。本記事には当社サービス(無料売却相談)へのご案内を含みます。
出典
- [C-01] 居抜きカフェの造作譲渡料は業者の目安でおおむね50万〜150万円(中心100〜150万円)・高くても300万円程度/坪単価式「月家賃÷坪数=坪単価×60〜100倍」は業者の目安で立地・業態がマッチすれば100倍以上(公的統計なし・希望額≠成約額)— 居抜き不動産業者解説(店サポ/みやこ不動産)(T3・attributed): https://misesapo.jp/archives/3901
- [C-02] 年買法(株式価値=時価純資産+営業利益×概ね数年分/年数は案件により幅・理論的裏付けは弱く明確な相場は存在しない)— 中小M&A実務解説(T3・attributed): https://masouken.com/年買法の計算ロジック
- [C-03] 赤字でも好立地なら居抜き造作で値が付く場合がある(経営状況と独立に立地・坪数で値付けされる飲食固有の非対称)/カフェの値段の加点・減点要素(立地・常連・設備・属人性・営業許可で加点/不利な立地・高家賃・味やオーナー依存・設備老朽・赤字・スケルトン原状回復責任で減点)— 居抜き不動産業者解説+当社の飲食領域M&A実務知見(T3+実務・定性): https://misesapo.jp/archives/3901
- [C-04] 標準的な飲食店のFL比率(食材費+人件費)は売上の約60%が目安(中小機構「小規模事業者支援のための業務必携」)/カフェの営業利益率は一桁台〜赤字も珍しくない(飲食業態解説・attributed/粗利率と営業利益率は別物)— 独立行政法人中小企業基盤整備機構+飲食業態解説(T2+attributed): https://www.smrj.go.jp/
- [C-05] 飲食店倒産2024年(暦年)894件=過去最多(前年768件比+16.4%・1億円未満の小規模784件=87.7%)/飲食業倒産2024年度(4-2月)907件=初の900件台(資本金1千万円未満812件=約89.5%)。★暦年(TDB)と年度(TSR)は集計期間が違うため併記 — 帝国データバンク「飲食店の倒産動向(2024年)」: https://www.tdb.co.jp/report/industry/20250114-insyokutousan/ / 東京商工リサーチ「2024年度 飲食業の倒産」: https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201142_1527.html
- [C-05b] 喫茶店(カフェ)の倒産は2024年度に2月まで66件・年度通年で2018年度(73件)を上回り過去最多の可能性/アラビカ種コーヒー豆は2024年度平均1kg900円超=前年度比約1.4倍・コロナ禍(2020年度)比約2.5倍に急騰 — 帝国データバンク「『喫茶店』の倒産動向(2024年度)」: https://www.tdb.co.jp/report/industry/20250305_coffee/
- [C-06] 後継者不在率は全国(全業種)50.1%(2025年・前年比▲2.0pt)。飲食業単独値は公表テキストに明示なし(建設業57.3%を飲食値として使わない)— 帝国データバンク「後継者不在率動向調査2025」: https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
- [C-07] 外食業界のM&A件数は2024年 約70件=過去最高(前年の約2倍/レコフM&Aデータベース集計)— 日本M&Aセンター(T2・attributed): https://www.nihon-ma.co.jp/columns/2025/x20250205-3/
- [C-08] カフェ廃業時のスケルトン原状回復・厨房/内装撤去・残リース・退職金・在庫処分は持ち出しになりやすい(居抜き譲渡なら造作譲渡料が入る非対称)。原状回復坪単価は公的統計なし=業界の目安 — 居抜き不動産業者解説+実務知見(T3+実務・定性): https://misesapo.jp/archives/3901
- [C-09] EBITDA倍率(例 数倍)は補助的な参考で全業界平均=カフェ特化値ではない — 中小M&A実務解説(T3・attributed): https://masouken.com/年買法の計算ロジック
- [C-10] 外食産業の2024年売上 前年比108.4%(3年連続前年超)・喫茶業態109.0%(JF 外食産業市場動向調査2024)/喫茶店市場規模2023年 約1兆1,892億円(JF)。売上回復と小規模淘汰の二極化 — 日本フードサービス協会(日経報道): https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP685890_X20C25A1000000/
- [C-11] 飲食店営業許可の地位承継:事業譲渡は2023年(令和5)12月13日施行で届出により承継可(手数料無料・営業の全部譲渡が条件・譲渡契約書等の添付)/相続・合併・分割は2021年(令和3)6月1日施行。「2021年改正で事業譲渡の地位承継が可能になった」は誤り。深夜酒類提供は届出(許可ではない)— 東京都保健医療局「事業譲渡について(地位承継)」: https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/jigyojoto.html / 川崎市: https://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000130206.html / 厚生労働省 食品衛生法改正リーフ: https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000739154.pdf
- [C-12] 株式譲渡なら法人格不変で飲食店営業許可は会社に残り手続き不要(一般法理・個別は管轄保健所確認)/個人事業は株式譲渡が使えず事業譲渡(造作譲渡)一択 — 食品衛生法の制度構造/自治体保健所(運用差あり・attributed): https://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000130206.html
- [C-13] 個人の株式譲渡益は申告分離課税20.315%(所得税15%+復興特別所得税+住民税5%)。個人事業の事業譲渡は譲渡所得・事業所得の区分。個別は税理士へ — 国税庁 タックスアンサー No.1463: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
- [C-14] M&A仲介の成功報酬はレーマン方式が一般的(具体料率は断定回避)— 中小M&A実務解説(T3・attributed)
相場(いくらで売れるか)の前提となるカフェの利益率・年収の実態(FLコスト約6割・粗利率と営業利益率の違い・正常収益力)は、カフェの年収・利益率の実際(買収後にいくら残るか)はこちらで整理しています。
そもそも「ゼロから新規開業するか、居抜き/既存店を買収するか」で迷っている方は、初期費用・立ち上げ期間・リスクで正面比較したカフェの新規開業 vs 居抜き買収(どちらで参入するか)はこちらもご覧ください。本記事は「買う場合にいくらか」の相場に絞っています。
カフェの相場の前提となる業界全体の足元(外食M&A過去最高・倒産過去最多水準・コーヒー豆高騰・後継者不在)を一次統計で定点観測したカフェ業界の最新動向2026(倒産・後継者不在・M&A市場の今)はこちら。