Webメディア検索流入のDD

Webメディア 買収 SEOリスク|アップデート前後を比べる3つの数字と、検索が落ちたときの利益シナリオ

この記事の目次
  1. この記事の結論
  2. 見るべきは現在のアクセスではなく、買収後も続く流入の中身
  3. Search Console は、クリック・表示・順位の3つを期間で比べて読む
  4. 流入が上位の少数ページ・クエリに集まっているなら、一本足として評価する
  5. アップデートの時期と減少が重なっても、原因とは言い切れない
  6. 流入を検索・指名・SNS・メールに分けると、検索が落ちたときの傷が見える
  7. 検索流入が落ちたら利益はどう動くか、3つのシナリオで価格に織り込む
  8. 売り手に求める資料は、Search Console の権限と、期間を揃えた推移
  9. まとめ
  10. よくある質問(FAQ)
  11. 出典

「月間のアクセスは安定していて、ほとんどが検索経由」。Webメディアの売却案件でよく見る説明です。買い手が知りたいのは、その検索流入が買収後も続くのか、続かないなら利益がどれだけ下がるのか、です。この記事は、その判断に使える数字の見方と、売り手に求める資料を整理します。

この記事の結論

  • 今のアクセス数は、買収後の約束ではありません。 見るのは、検索流入の推移、少数ページへの集中度、流入元の内訳の3つです。
  • アップデートの時期と減少が重なっても、原因とは言い切れません。 期間を区切って比べ、売り手の作業履歴と突き合わせます。
  • 検索が落ちた場合の利益を試算して、価格の前提にします。 試算に必要な資料は、契約前に売り手へ求めます。

この記事の対象:検索流入が収益の中心になっているWebメディア・情報サイトの買収を検討している方。売り手として、買い手に何を問われるかを知りたい方にも使えます。

Webメディア全体のDD(デューデリジェンス)の論点は、WebメディアのM&A DATAにまとめています。この記事は、そのうち検索順位の変動リスクだけを深く扱います。

見るべきは現在のアクセスではなく、買収後も続く流入の中身

結論: 検索流入は、買った後に買い手が支配できない部分が大きい収益源です。今の数字より、その数字が何でできているかを先に確かめます。

Google は、ランキングの仕組みは継続的に改善されていて、変更が公開者の役に立つときに告知するとしています(Google 検索セントラル「Google 検索ランキング システムのご紹介」)。つまり、順位は買収の前後で変わりうる前提で、買い手は次の3点を分けて見ます。

確認する点 何が分かるか 見る場所
検索流入の推移 上向きか、横ばいか、段階的に落ちているか Search Console のクリック・表示回数・平均掲載順位
集中度 少数のページ・クエリに依存していないか ページ別・クエリ別の一覧
流入元の内訳 検索が落ちたとき、他の流入が支えになるか アクセス解析(検索・指名・SNS・メール・直接)
避けたい判断 こうすればOK
直近の月間アクセスが多いので、買収後も同じ数字が続くと見る 流入の推移と中身を分けて見て、続く部分と続かない部分に分ける
順位が上がっている記事が多いので、リスクは低いと見る 少数の記事に流入が集まっていないか、集中度を確かめる
売り手の「検索は安定している」という説明を、そのまま前提にする 期間を揃えた Search Console のデータで、自分の目で確かめる

Search Console は、クリック・表示・順位の3つを期間で比べて読む

結論: 数字を単体で見ず、同じ条件の2つの期間を比べます。3つの数字は、定義を知ってから読みます。

Search Console のヘルプでは、3つの数字を次のように定義しています。

指標 Google の定義 読むときの注意
クリック Google の検索結果から、Google 以外のページに移動した回数 検索結果からの訪問のみ。SNS やメールからの訪問は含まない
表示回数 検索結果に自サイトのリンクが表示された(または表示されうる)回数 検索の需要の増減など順位以外の理由でも増減するため、クリック・順位と並べて見る
平均掲載順位 自サイトのリンクが獲得した最上位の順位を、表示された全クエリで平均した値 平均なので、数ページの大幅な下落が見えなくなることがある

比べ方の注意が4つあります。

  • 画面の初期設定は直近3か月です。 アップデート前後や1年前との比較は、期間を自分で広げます。どこまで遡れるかは、売り手の画面で一緒に確認します。
  • ページ別とクエリ別で、合計が一致しないことがあります。 集計の単位が違うためで、Google は、ページやクエリを組み合わせると一部のデータが落ちることがあるとも説明しています。数字がずれたら、集計の単位をそろえて見直します。
  • ごく少数回しか検索されないクエリは、一覧に出ません。 クエリ別の合計は、全体のクリックより小さくなりえます。
  • データの反映には2〜3日かかります。 日付は米国カリフォルニアの現地時間で集計されるため、他のツールの日別の数字とは少しずれます。

以上の数字は、Search Console の画面で売り手と一緒に開いて確かめるのが確実です。スクリーンショットだけでは、期間や絞り込みの条件がそろっているか分かりません。

流入が上位の少数ページ・クエリに集まっているなら、一本足として評価する

結論: 同じ平均順位でも、100本の記事に流入が散らばっているメディアと、5本に集まっているメディアではリスクが違います。

ページ別の一覧を、クリックの多い順に並べて見ます。次の質問に答えられるかが目安です。

確認する点 一本足の兆候 見立て
上位ページへの集中 上位数本のクリックが全体の大半を占める その数本の順位が落ちると、全体が動く
上位クエリへの集中 1〜2個の主要クエリに流入が集まる 検索結果の見え方が変わると影響が大きい
上位ページのテーマ 同じテーマの記事が上位に固まる 同じ検索意図に並ぶ競合の動きに影響されやすい
新しい記事の貢献 直近に書いた記事から流入が出ていない 過去の資産に頼る構造で、更新が止まると減る

Google は、ランキングシステムは基本的にページ単位で動いていて、サイト全体の評価が良いことは、すべてのページが上位に出ることを意味しない、と説明しています。サイト全体として強くても、個別のページの順位は個別に動くということです。買い手は、全体の平均より、収益に結びついている主要ページが何本あるかを見ます。

主要ページが少数なら、その数本について、記事を書いた人・更新頻度・被リンクの有無・競合の記事を個別に確認します。

アップデートの時期と減少が重なっても、原因とは言い切れない

結論: アップデートの前後で流入が減っていることと、アップデートが原因であることは別です。因果を決める前に、期間と他の要因を確かめます。

Google は、コアアップデートについて、次のように説明しています(Google 検索セントラル「コア アップデート」)。

  • 年に数回、検索アルゴリズムやシステムの広い範囲で大きな変更を行う。
  • この変更は広い範囲に及ぶもので、特定のサイトやページを対象にしたものではない。
  • 多くのサイトは心配する必要がなく、アップデートがあったことにも気づかない場合がある。
  • 順位は固定されたものではない。下がったサイトが必ずしも「悪い」わけではなく、他にも上位に入るサイトがあるだけ、ということがある。

調べ方も、同じページに書かれています。

手順 Google の案内
1. 時期を確かめる Search Status Dashboard で、アップデートの開始日と継続期間を確かめる(ダッシュボードの掲載は、開始日と継続期間の形式)
2. 待つ アップデートの完了から、少なくとも丸1週間待ってから Search Console で分析する
3. 比べる アップデート開始前の1週間と、完了後の1週間を比べる
4. 幅を見る 順位が4位から29位に落ちるような大きな下落は、より深い調査が必要
5. 検索の種類を分ける ウェブ検索、画像、動画、ニュースを別々に見て、どこで落ちたかを確かめる

買い手が、売り手に確かめる点は次のとおりです。

避けたい判断 こうすればOK
「あの月のアップデートで下がった」という売り手の説明を、原因として受け入れる 同時期のサイト変更(テーマ変更・URL構造の変更・大量の記事追加や削除)、季節要因、計測の変更がなかったか、作業履歴で確かめる
減少がアップデートより前に始まっているのに、アップデートの影響と整理する 減少の始まりの日付と、ダッシュボードの開始日を並べて見る
回復していないので、このメディアはもう戻らないと判断する Google は、変更の効果が出るまで数日、確認されるまで数か月かかることがあり、数か月たっても動きがなければ次のコアアップデートまで待つことになる場合がある、と説明している。回復の見込みを、断定せず幅で見る
順位を戻すために、買収直後にすぐ大きな変更を入れる Google は、安易な「クイックフィックス」を避け、ユーザーにとって意味のある改善を行うよう案内し、コンテンツの削除は最後の手段としている

Google の案内は、アップデートで下がったときの対処です。買い手の視点で言えば、アップデートが原因と決めつけず、因果は「分からない部分がある」前提で価格と契約条件を考えます。

なお、順位が落ちる原因には、アップデートのほかに手動対策もあります。人の審査によって、スパムに関するポリシーに沿っていないと判断された場合に、該当するページが低く表示されたり、検索結果に出なくなったりすることがあります。Search Console の「手動による対策」レポートで確認でき、通知はメッセージセンターにも届きます。買収前に、売り手の画面で履歴がないかを確認します。

流入を検索・指名・SNS・メールに分けると、検索が落ちたときの傷が見える

結論: 検索だけに頼る度合いが高いほど、順位変動のリスクはそのまま収益に出ます。検索以外の流入の厚みは、保険になります。

流入元は、次の4つに分けて月次で並べます。

流入元 見る場所 検索変動への強さ(目安) 確認の観点
一般検索(指名を除く) Search Console のクエリ別 弱い 上位クエリへの集中度、ページ別の推移
指名検索(サイト名・運営者名を含む検索) Search Console のクエリ別で、サイト名を含むものを抽出 比較的強い 時間をかけて積み上がったもの。サイト名が変わると途切れる
SNS アクセス解析 中 アカウントを買い手に移せるか、投稿の運用が誰か
メール・直接 アクセス解析、配信ツール 強い 配信リストの移転ができるか。個人情報の扱いは別の確認が必要

Search Console のクリックは、Google の検索結果からのクリックだけを数えます。SNS やメールの数字は、アクセス解析側で見ます。2つのツールの数字は定義も集計の単位も違うので、合計して検索の割合を出すときは、同じ期間でそろえます。

指名検索は、買収後の運営者名の変更やサイト名の変更の影響を受けます。サイト名を変える予定があるなら、指名検索の分は変更後に維持されない前提で見積もります。

検索流入が落ちたら利益はどう動くか、3つのシナリオで価格に織り込む

結論: 「落ちるかどうか」は予測できません。そこで、落ちた場合の利益を先に試算し、現在の利益と並べて価格を話します。

次は仮の数字での試算です。実際のメディアの価格や、順位が落ちる確率を示すものではありません。

仮の前提:月の売上300万円、費用200万円(外注費・サーバー費・人件費など、検索流入が減っても同じだけかかると置く)、月の利益100万円。売上のうち240万円(8割)は、検索流入に比例して増減する収益(広告・アフィリエイト等)とします。

シナリオ 検索経由の売上の変化 月の売上 月の利益 現在の利益との差
現状 0% 300万円 100万円 -
小さな下落 10%減(24万円減) 276万円 76万円 約24%減
大きな下落 30%減(72万円減) 228万円 28万円 約72%減
深い下落 50%減(120万円減) 180万円 −20万円 赤字

この前提では、検索経由の売上が1割減るだけで利益は2割以上減ります。費用が変わらないためです。外注費を調整して費用を減らせる余地があるかどうかで、結果は変わります。

この表の使い方は2つあります。

  • 買い手: 自社が耐えられる下落の幅を決める。たとえば、3割減でも赤字にならない価格か、を確かめる。
  • 売り手: 買い手がこの試算をしてくることを前提に、費用の内訳(固定費と調整できる費用)と、検索以外の収益の分け方を先に用意する。

下落後の利益で見積もった価格と、現在の利益で見積もった価格の差は、買い手と売り手で話し合う材料になります。どの条件を契約に入れるか(価格の決め方、支払いの時期、表明保証など)は個別の事情で変わるため、弁護士・税理士などの専門家に確認してください。

売り手に求める資料は、Search Console の権限と、期間を揃えた推移

結論: 数字が本物かを確かめる最短の方法は、売り手と一緒に Search Console の画面を開くことです。そのうえで、次の資料を求めます。

資料 目的
Search Console の閲覧権限(または画面共有) 数字を自分の目で確かめる
クリック・表示・順位の推移(日別・週別。アップデート前後の期間を含む) 減少の始まりを日付で確かめる
ページ別・クエリ別の一覧(クリックの多い順) 集中度を確かめる
流入元ごとの月次データ 検索以外の流入の厚みを確かめる
記事の更新・外注・サイト変更の履歴 減少と作業の関係を確かめる
手動対策の履歴 順位低下の他の原因を除く
収益の月次内訳(広告・アフィリエイト等) シナリオ試算の元にする

権限の渡し方は、先に手順を決めておきます。Search Console の所有者には、確認用のトークンでサイトの所有を確認した「確認済みの所有者」と、確認済みの所有者から権限を与えられる「委任された所有者」があり、権限は同じです。確認済みの所有者を足す・外すには、サイトにトークンを置く・外す作業が必要です。確認済みの所有者をすべて外すと、猶予期間のあと、残りのユーザーも権限を失います。その間もデータは収集されますが、誰も見られません。また、トークンが残っていると、外した人が再び所有者になれます。

買い手が自分のトークンで確認済みの所有者になり、そのうえで売り手側のトークンを外す、という順序を、契約前に取り決めておくと、データを見失うリスクを減らせます。権限を渡した後でも過去のデータがどこまで見られるかは、画面で確認してください。

まとめ

  • 検索流入が中心のWebメディアは、今のアクセス数ではなく、推移・集中度・流入元の内訳の3つで、買収後も続く部分を見極めます。
  • アップデートの時期と減少が重なっても、原因とは断定できません。Google の手順に沿って期間を区切って比べ、売り手の作業履歴と突き合わせます。
  • 検索が落ちたときの利益を試算し、価格の前提にします。そのために、Search Console の権限と期間を揃えた推移を、契約前に売り手へ求めます。

自社の場合を確認する メディアの事業価値を、自社の数字で確かめたいとき → 事業価値を確認する

よくある質問(FAQ)

Q1. Webメディアを買う前に、SEOのリスクは何を見て判断しますか? A. 今のアクセス数ではなく、流入の中身を見ます。具体的には、Search Console のクリック・表示回数・平均掲載順位の推移、少数のページやクエリへの集中度、検索・指名・SNS・メールなど流入元の内訳です。これに、検索流入が落ちた場合の利益の試算を重ねて、価格の前提にします。

Q2. Googleのアップデートの時期に流入が減っていたら、アップデートが原因ですか? A. 断定はできません。Google は、コアアップデートは広い範囲の変更で特定のサイトやページを狙うものではないと説明しています。減少がアップデートと同じ時期に起きていても、サイト側の変更、季節要因、競合の動きなど他の要因が重なっている可能性があります。売り手に当時の作業履歴を確認し、期間を区切って比べます。

Q3. アップデート後の影響は、いつ Search Console で確認しますか? A. Google はコアアップデートの完了から少なくとも丸1週間待ってから分析することを勧めています。Search Status Dashboard で開始日と継続期間を確かめ、アップデート開始前の1週間と、完了後の1週間を比べる方法が案内されています。

Q4. 順位が落ちたメディアは、買ってはいけませんか? A. 一概には言えません。Google は、順位は固定されたものではなく、下がったからといって質が低いとは限らないと説明しています。落ちた幅、落ちたページの範囲、売上への影響、回復する余地を確かめたうえで、落ちた後の利益を前提に価格を考えるかどうかを買い手と売り手で話し合います。

Q5. 売り手には、買収の検討でどんな資料を求めればよいですか? A. Search Console の閲覧権限(または画面共有)、期間を揃えたクリック・表示・順位の推移、流入元ごとの月次データ、上位ページ・クエリ別の一覧、記事の更新と外注の履歴、Manual actions(手動対策)の有無が中心です。権限の渡し方は契約前に手順を決めておきます。

Q6. 買収後に Search Console の権限を引き継ぐときの注意点はありますか? A. Search Console の所有者には、確認トークンで確認する「確認済みの所有者」と、所有者から権限を与えられる「委任された所有者」があります。確認済みの所有者をすべて外すと、猶予期間のあと残りのユーザーも権限を失い、データは収集されても誰も見られなくなります。売り手側のトークンを消す手順も含め、移管の順番を決めておきます。

出典

  • Google 検索セントラル「Google 検索のコア アップデート」 https://developers.google.com/search/updates/core-updates
  • Google 検索セントラル「Google 検索ランキング システムのご紹介」 https://developers.google.com/search/docs/appearance/ranking-systems-guide
  • Search Status Dashboard(Ranking の履歴) https://status.search.google.com/summary
  • Search Console ヘルプ「検索パフォーマンス レポート」 https://support.google.com/webmasters/answer/7576553
  • Search Console ヘルプ「表示回数、掲載順位、クリック数とは」 https://support.google.com/webmasters/answer/7042828
  • Search Console ヘルプ「Search Console のユーザー、所有者、権限の管理」 https://support.google.com/webmasters/answer/7687615
  • Search Console ヘルプ「Search Console のデータについて」 https://support.google.com/webmasters/answer/96568
  • Search Console ヘルプ「手動による対策レポート」 https://support.google.com/webmasters/answer/9044175
  • Google Search Console API「パフォーマンス データを取得しています」 https://developers.google.com/webmaster-tools/v1/how-tos/all-your-data

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