Webメディアコンテンツの著作権

Webサイト 売却 著作権|記事・画像を買い手が使い続けられるか、4つの出どころ別に確かめる

この記事の目次
  1. この記事の結論
  2. サイトの売買契約と、記事ごとの著作権は別の話
  3. 出どころは社内・外注・購入素材・引用とAI生成の4つに分けて確かめる
  4. 外注の記事は、料金を払っていても著作権は受注者側に残るのが原則
  5. 譲渡・利用許諾・人格権は別のものとして、やりたいことから逆算する
  6. 素材・引用・AI生成物は、買い手に引き継げるかを別に確かめる
  7. 侵害の申立て履歴と権利一覧が、買い手の確認の出発点になる
  8. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)
  10. 出典

「サイトを売るのだから、中の記事も画像も全部買い手のものになる」。売り手も買い手も、そう考えがちです。ところが、記事や画像ごとに著作権を持つ人が違うことがあります。買い手が買収後に更新し、改変し、別の媒体に再掲載できるかは、サイトの売買契約だけでは決まりません。この記事は、その確認の手順を出どころ別に整理します。

この記事の結論

  • サイトを買っても、全記事・全画像の著作権が自動で買い手に移るとは限りません。 記事ごとの出どころ(社内・外注・購入素材・引用・AI生成)で、権利を持つ人が変わります。
  • 外注の記事や購入素材は、料金を払っていても権利は外注先や権利者に残ることがあります。 買い手が使い続けられる範囲は、契約や規約で決まります。
  • 売り手は出どころ別の権利一覧を、買い手は一覧の空欄と承継の条件を確かめます。

この記事の対象:記事・写真・イラストを中心としたWebメディア、情報サイトの売却・買収を検討している方。

Webメディア全体のデューデリジェンスの論点は、WebメディアのM&A DATAにまとめています。この記事は、そのうち記事・画像などコンテンツの権利だけを深く扱います。検索流入の見方はWebメディア 買収 SEOリスク、Web制作会社が受託したソースコードの権利はWeb制作会社のM&Aで著作権とソースコードは引き継げる?が扱っています。

サイトの売買契約と、記事ごとの著作権は別の話

結論: サイトを買うことと、そこに載っている個々の記事や画像の著作権を持つことは、別です。後者は、記事ごとに誰が作ったかで決まります。

著作権法では、著作者は「著作物を創作する者」です(著作権法2条1項2号)。著作権は、創作した時点で自動的に創作者に与えられると、文化庁の「著作権テキスト」は説明しています。著作権は、全部または一部を譲渡できる権利です(著作権法61条1項)。つまり、サイトの売買で記事の著作権を買い手に移したいなら、売り手が持っている権利を譲渡する、という手順になります。売り手が持っていない権利は、移しようがありません。

避けたい判断 こうすればOK
「サイトを売るのだから、記事も画像も全部買い手のもの」と考えて契約する 記事・画像ごとに、権利を持つのは誰かを一覧にしてから、移せる範囲を決める
売買契約に「サイトの一切の権利を譲渡する」と書けば足りると考える 売り手が持っていない権利は譲渡できないため、外注先や素材の権利者との契約を別に確かめる
既存の記事を載せ続けるだけなら権利の確認はいらないと考える 載せ続ける、書き換える、別媒体に載せる、で必要な権利が違うことを前提に確かめる

出どころは社内・外注・購入素材・引用とAI生成の4つに分けて確かめる

結論: 記事・画像を、次の4つの出どころに分けます。出どころごとに、確かめる相手と書類が違います。この4区分は、確認を進めやすくするための本記事の整理です。

出どころ 権利を持つ人(出発点) 確かめる書類 買い手が使い続ける際の論点
社内(運営会社の従業員が書いた・撮った) 条件を満たせば会社。満たさなければ作った人 就業規則、雇用契約、記事の公表名義 会社の著作になっているか
外注(ライター・カメラマン・デザイナー) 原則として受注者側 業務委託契約書、発注メール、納品条件 譲渡か利用許諾か、範囲と期間
購入・提供素材(写真・イラスト・フォントなど) 素材の権利者 ライセンス規約、購入履歴 買い手に引き継げるか、規約の制限
引用・AI生成物 引用元の権利者/AI生成物は著作物性の有無から 引用部分の体裁、生成の過程の記録 引用の要件を満たすか、権利を主張できるか

社内の記事について、文化庁の「著作権テキスト」は、職務著作(法人著作)が成り立つ要件を次のように挙げています。

  • その著作物をつくる企画を立てるのが法人等であること
  • 法人等の業務に従事する者が創作すること
  • 職務上の行為として創作されること
  • 公表する場合に法人等の著作名義で公表されるものであること(プログラムの著作物は、この要件を満たす必要がない)
  • 契約や就業規則に、職員を著作者とする定めがないこと

これは著作権法15条の内容に沿っています。従業員が書いた記事でも、これらを満たさなければ、会社が著作者にならない場合があります。たとえば、運営者個人の名義で公表している記事、個人のブログの記事を会社のサイトに移したもの、就業規則に別段の定めがあるものは、個別に確かめます。個別の当てはめは、弁護士に確認してください。

外注の記事は、料金を払っていても著作権は受注者側に残るのが原則

結論: 外注した記事・写真・イラストは、対価を払っただけでは発注者のものになりません。契約が残っているかが、買い手が使い続けられるかを分けます。

文化庁の「著作権テキスト」は、創作を他人や他社に委託した場合、料金を支払ったかどうかにかかわらず、実際に創作した受注者側が著作者になり、発注者側が納品後に利用するには、そのための契約をあらかじめ交わしておく必要があると説明しています。

文化庁の「文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問」でも、契約書がなく事前の取り決めもない場合に、対価の支払いだけで著作権の譲渡が認められるわけではないと説明されています。裁判所は、一定の範囲で利用許諾があったと認める例が比較的多い、とされています。どう判断されるかは、事前の説明、対価の決め方、利用に関するやりとりなどの事情で変わります。

外注記事が中心のメディアでは、次の書類の有無を確かめます。

確認する点 見る書類 空欄だったときの見方
著作権を譲渡したのか、利用を許諾しただけか 業務委託契約書、発注書、納品時のメール 利用許諾の範囲しか確認できない。範囲を超える利用は、改めて許諾が要る場合がある
譲渡の場合、翻案権等(27条・28条)まで含むか 契約書の譲渡条項の文言 書かれていなければ、これらの権利は譲渡した側に残ったと推定される(61条2項)
著作者人格権を行使しない旨の取り決めがあるか 契約書の人格権の条項 なければ、改変や氏名表示の扱いで外注先との調整が要る場合がある
契約書がない外注先がいるか 発注履歴の一覧 該当の記事は、権利の状況が不明。買い手が使い続けられる前提で価格を考えない

譲渡・利用許諾・人格権は別のものとして、やりたいことから逆算する

結論: 買い手が「続けて載せる」「書き換える」「別媒体に再掲載する」のどれをしたいかで、必要な権利が変わります。先にやりたいことを決め、それに足りる権利があるかを確かめます。

3つの権利の違いは、次のとおりです。

権利・仕組み 内容 買い手にとっての意味
著作権の譲渡 著作権を、全部または一部、契約で他人に移す(61条1項) 移った範囲で、買い手が著作権者になる。分割して移すことも可能(期間・地域・支分権ごと)
利用許諾 著作権者が、他人に利用を許す(63条1項) 許諾された方法と条件の範囲内でしか使えない(63条2項)。利用権は、著作権者の承諾を得ない限り譲渡できない(63条3項)
著作者人格権 公表権・氏名表示権・同一性保持権など(18〜20条) 譲渡できず(59条)、著作者に残る。記事の書き換えや氏名の扱いに影響する

運営会社ごと買う株式譲渡では、許諾を受けた会社自体は変わらないため、63条3項の承諾よりも、契約に支配権の変更(チェンジオブコントロール)の定めがあるかを確かめます。取引形態による違いはWeb制作会社のM&Aで著作権とソースコードは引き継げる?を参照してください。

やりたいことと、確かめる権利の対応は次のとおりです。ここは条文と文化庁資料から、本記事の整理でまとめた対応です。

買い手がやりたいこと 確かめる権利 不足していた場合の対応の方向
今のまま載せ続ける 利用許諾の範囲に、サイトでの継続掲載が含まれるか。許諾の場合、買い手への引き継ぎが可能か 外注先の承諾を取る、または該当記事を外す
内容を更新・書き換える 翻案権等(27条)が譲渡に含まれるか、同一性保持権(20条)への対応 譲渡条項の確認、人格権を行使しない旨の取り決め、改変の範囲について著作者の了解
別媒体・別サイトに再掲載する 複製・公衆送信などの権利が、サイト掲載以外の用途に及ぶか 許諾範囲の拡大か、再掲載しない
他社の無断転載を止める 自分が著作権者であること(許諾だけでは足りないことがある) 譲渡を受ける

著作権の譲渡を受ける契約について、文化庁の「著作権テキスト」は、翻案権等(27条・28条)を含めて譲り受けたいなら、契約書に「すべての著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する」と記載しておく必要があると説明しています。また、著作者人格権を行使しない旨を規定する例があるものの、著作者から見れば、改変や氏名の不表示に異議を述べられなくなる不利益があるので注意が必要としています。契約書の書き方は、弁護士に確認してください。

なお、著作権の移転は、登録しなければ第三者に対抗できません(77条)。買い手が著作権の譲渡を受けた記事について、自分の権利を第三者に主張する場面を想定するなら、登録するかどうかも、専門家と相談しておきます。

素材・引用・AI生成物は、買い手に引き継げるかを別に確かめる

結論: 購入した素材は規約が、引用は要件が、AI生成物は人の関与が、それぞれ買い手が使い続けられるかを決めます。

購入・提供素材(写真・イラスト・フォントなど)。 素材ごとのライセンス規約で、利用できる範囲、第三者への譲渡や再許諾の可否が決まっています。規約の内容は素材の提供元ごとに違うため、本記事では一般論を示せません。売り手には、購入履歴と規約を、素材ごとに出してもらいます。規約が確認できない素材は、買い手に引き継げる前提で価格を考えません。

他人の記事・画像の引用。 文化庁の「著作権テキスト」は、引用が認められる条件として、すでに公表された著作物であること、公正な慣行に合致すること、引用の目的上正当な範囲内であること、出所を明示することを挙げています。例として、引用部分と自分の文章の主従関係が明確であること、引用する分量が必要最小限であることが示されています。条文は著作権法32条1項(出所の明示は48条)です。買い手は、サイトの記事のうち、他人の文章や画像を並べただけの部分がないか、引用の体裁になっているかを確かめます。引用に当たるかどうかは、記事ごとの個別の判断です。

AI生成の記事・画像。 文化庁の「著作権テキスト」は、次のように説明しています。

  • 生成AIへの指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合、AI生成物に著作物性は認められないと考えられる。
  • 人間が、AI生成物に創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分には、通常、著作物性が認められると考えられる。
  • AIを使って画像などを生成した場合でも、著作権侵害になるかどうかは、人がAIを使わずに描いた場合と同様に、類似性と依拠性で判断される。

ここから、本記事の整理では、売却の場面で次のように扱うことを提案します。

避けたい判断 こうすればOK
AIで作った記事も、人が書いた記事と同じ資産として価格に入れる AIで作った部分と、人が手を入れた部分を分けて、売り手に説明してもらう
AI生成物なので、他の記事より権利関係は単純だと考える 生成の指示と加筆の記録を確認し、類似した既存の作品がないかも確かめる
他社に無断転載されても、止められると考える 著作物性が認められない部分は、著作権を根拠にした対応が難しい可能性があると見て、価値を考える

侵害の申立て履歴と権利一覧が、買い手の確認の出発点になる

結論: 売り手は出どころ別の権利一覧と侵害の申立て履歴を、買い手は一覧の空欄と承継の条件を、契約前に確かめます。

著作者や著作権者は、権利を侵害する者や侵害するおそれがある者に対し、侵害の停止や予防を請求できます(著作権法112条1項)。文化庁の「著作権テキスト」は、民事上の措置として、差止請求、損害賠償請求、不当利得返還請求、名誉回復等措置請求を挙げています。買収後に、過去の記事や画像について申立てを受けると、買い手が対応することになりかねません。

売り手が用意する資料と、買い手が確かめる事項は次のとおりです。

売り手が用意する資料 買い手が確かめる事項
記事・画像ごとの出どころ一覧(社内・外注・購入素材・引用・AI生成) 空欄の記事・画像が、全体のどのくらいを占めるか。主要ページに空欄がないか
外注先との契約書・発注履歴、納品条件 譲渡か利用許諾か。人格権の取り決め。利用権の譲渡制限(63条3項)
購入素材のライセンス規約と購入履歴 買い手への引き継ぎ可否、利用範囲の制限
引用部分の一覧(出所の明示の有無) 引用の体裁が保たれているか
侵害の申立て・警告・削除要請の履歴と、その後の対応 解決済みか、対象の記事・画像が今も掲載されているか
AI生成物の一覧と、加筆の記録 人が手を入れた範囲の説明が取れるか

一覧に空欄が見つかった場合、買い手には、次のような選択肢があります。ここは契約の組み方の整理で、どれを選ぶかは個別の事情で変わります。

空欄への対応 内容
譲渡前に補う 売り手が外注先から、譲渡または承諾を取ってから売買に進む
対象から外す 権利が不明な記事・画像を、売買の対象や掲載から外す
価格・条件に反映する 権利が不明な部分の割合を見て、価格や契約条件を調整する

どの条件を契約に入れるか(表明保証、補償、支払いの時期など)は、弁護士・税理士などの専門家に確認してください。

まとめ

  • サイトを売ることと、記事や画像の著作権を渡すことは別です。権利は、社内・外注・購入素材・引用とAI生成の出どころごとに、持つ人が変わります。
  • 外注した記事や購入素材は、料金を払っていても権利が受注者や権利者に残ることがあります。使い続けられる範囲は、契約や規約が決めます。
  • 売り手は出どころ別の権利一覧と侵害の申立て履歴を出し、買い手は空欄と承継の条件を確かめて、価格や契約に反映します。

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よくある質問(FAQ)

Q1. Webサイトを売却すると、記事や画像の著作権も買い手に移りますか? A. 自動で移るとは限りません。著作権は、全部または一部を契約で譲渡できる権利ですが(著作権法61条1項)、サイトの売買契約に記事や画像の著作権の扱いが書かれていなければ、誰がどの権利を持っているかは、記事ごとの出どころで決まります。売り手が著作権を持っている記事は譲渡の対象にでき、外注や購入素材は、受注者や権利者との契約の範囲が上限になります。

Q2. 外注ライターに記事の料金を払っていれば、著作権は発注者のものになりますか? A. 料金の支払いだけでは、そうなりません。文化庁の「著作権テキスト」は、創作を他人や他社に委託した場合、料金を支払ったかどうかにかかわらず、実際に創作した受注者側が著作者になると説明しています。発注者が納品後に利用するには、そのための契約が必要です。契約が残っていない場合は、利用許諾の範囲がどこまでだったかを確かめます。

Q3. 著作権を譲り受けても、記事を自由に書き換えられないことはありますか? A. あります。著作者人格権は譲渡できず(著作権法59条)、同一性保持権(同20条)により、著作者の意に反する改変を受けない権利が著作者に残ります。契約で、著作者人格権を行使しない旨を定める例もあります。譲り受ける記事を買い手が書き換える予定なら、その取り決めが契約にあるかを確かめます。

Q4. 外注ライターとの契約が「利用許諾」だけだった場合、サイトを買った人は記事を使い続けられますか? A. 許諾の内容と、買い手への引き継ぎの可否によります。著作権法63条3項は、利用権は著作権者の承諾を得ない限り譲渡できないと定めています。サイト資産を買い手に移す形の売買では、ライターごとの契約に譲渡制限や承継の定めがあるか、著作権者の承諾が要るかを確かめる必要があります。個別の契約の読み方は、弁護士への確認をお勧めします。

Q5. AIで作った記事や画像は、売却のとき著作権の対象資産として扱えますか? A. 一律には扱えません。文化庁の「著作権テキスト」は、生成AIへの指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合、AI生成物に著作物性は認められないと考えられると説明し、人間が創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分には通常、著作物性が認められると考えられるとしています。本記事の整理では、AIで作った部分は著作権を前提に価格を考えず、人が手を入れた範囲を売り手に説明してもらいます。

Q6. 売り手に、記事や画像の権利について何を出してもらえばよいですか? A. 記事・画像ごとの出どころ(社内・外注・購入素材・引用・AI生成)、外注先との契約書や発注メール、素材のライセンス規約、著作権侵害に関する申立てや警告の履歴を、一覧にしてもらいます。一覧のどこに空欄があるかが、買い手が追加で確かめる箇所です。

Q7. 侵害の申立てを受けた履歴があるサイトは、買わないほうがよいですか? A. 一概には言えません。申立ての相手、対象の記事や画像、どう解決したか(削除、許諾の取得、示談など)を確かめ、今も残っている問題があるかで判断します。著作権者は侵害の停止や予防を請求できる(著作権法112条)ため、解決していない申立てがあるなら、対象の記事や画像を買収後も使えるかを契約前に整理します。

出典

  • e-Gov法令検索「著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)」(2条・15条・18〜20条・27条・28条・32条・48条・59条・61条・63条・77条・112条) https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
  • 文化庁「著作権テキスト -令和8年度版-」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/94383901_01.pdf
  • 文化庁「文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/faq/index.html

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