Web制作 M&A 事業承継 知的財産

Web制作会社のM&Aで著作権とソースコードは引き継げる?契約とIPの実務

更新: 2026年8月4日

Web制作会社のM&Aでは、工場も店舗も許可証も引き継ぎません。引き継ぐのは人・顧客との契約・知的財産の3つだけです。なかでも買い手が最初に確認し、そしてデューデリジェンス(DD)で最もよく止まるのが、「制作した成果物の著作権は、本当にこの会社のものか」という一点です。本記事では、株式譲渡と事業譲渡で著作権・保守契約・ドメイン・顧客データがどう動くかを、著作権法・民法・個人情報保護法の条文にあたりながら整理し、売り手が今日から着手できる棚卸しの手順と、買い手のDD着眼点を同じ表の両面として並べます。

本記事は「Web制作会社(法人)を譲渡するとき」の話です。 Webサイト・SNSアカウント・ECサイトなどアセット1個だけを譲渡する場合の契約書の必須条項(表明保証・著作権移転条項など)は「Webサイト譲渡契約書の必須条項」を、ドメイン・サーバー・各種アカウントの移管手順は「サイト売買の引き継ぎ実務」をご覧ください。対象が違います(会社まるごと ⇔ アセット1個)。

この記事の結論(先に要点だけ)

  • 株式譲渡なら、会社が持っている著作権も契約も原則そのまま残ります。事業譲渡なら、原則としてひとつずつ移す必要があります。法人格が変わらないか、資産と契約を個別に移すかという構造の違いが、そのまま承継のしやすさの違いになります[C-C01][C-C03][C-C13c]。
  • ただし「会社が持っている」という前提が成立していないことが、中小Web制作会社では珍しくありません。外注に書かせたコード、代表個人名義のドメイン、契約書のない初期顧客——この3つが、買い手が減額や条件変更を口にする典型的な入口です。文化庁は「著作物の創作を他人や他社に委託(発注)した場合は、料金を支払ったかどうか等にかかわりなく、実際に著作物を創作した『受注者側』が著作者となります」と明記しています[C-C18]。
  • 著作権は「譲渡する」と書くだけでは足りません。契約で第27条(翻訳権、翻案権等)・第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)が特掲されていないと、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定されます(著作権法61条2項)[C-C03]。つまり「改修・リニューアルできる形で引き継げているか」は、契約書のこの一行で変わります。
  • 顧客の個人データは、事業の承継に伴う提供であれば第三者提供に当たりません(個人情報保護法27条5項2号)[C-C11]。さらに個人情報保護委員会は、承継契約を締結する前のDD段階での提供も同号に該当するとしたうえで、交渉が不調となった場合の措置まで含めた契約の締結を求めています[C-C16]。渡した後の使い方は承継前の利用目的の範囲内に縛られます(同法18条2項)[C-C17]。
  • 2026年1月1日、下請法は「取適法」へ変わりました。題名・用語・条番号が動き、適用基準に従業員基準(300人・100人)が加わっています[C-C06][C-C08][C-C08b]。外注比率が高いWeb制作会社では、発注書面と支払サイトの体裁がそのままコンプライアンスDDの対象になります。
  • 売り手が今日できる最初の一手は、決算書を磨くことではなく「権利の所在を書き出すこと」です。許認可という制度の担保がない業界では、契約書の束が担保の代わりになります。

※本記事は条文・官庁資料に基づく一般的な整理です。個別の契約の有効性・適法性の判断は行いません。具体的な事案は弁護士等の専門家へご相談ください。


§1 Web制作会社のM&Aで引き継ぐ「契約と知的財産」とは — 許認可が無い業界の資産台帳

建設業なら建設業許可と経営業務管理責任者、飲食店なら営業許可と造作設備——業種ごとに「これが無いと事業ができない」という資産があります。ではWeb制作会社では、何がそれにあたるのでしょうか。

Web制作会社のM&Aにおける知的財産・契約の承継とは、制作したソースコードやデザインの著作権、顧客との保守契約、ドメインなどの事業資産を、会社(法人)ごと買い手へ移すことをいいます。

出発点は、IT・Webには事業許可が原則として存在しないという事実です。労働者派遣など個別に許可・届出が必要な領域はありますが、「Webサイトを作る」「システムを受託開発する」こと自体に免許は要りません。これは参入障壁が低いという意味でもあり、同時に——M&Aの文脈ではこちらのほうが重要なのですが——制度が守ってくれる価値もないという意味でもあります。許可の要らないこの業種で、ゼロから起業するのと会社ごと買うのとで何が違うのかはWeb制作会社は起業と買収どっちで整理しています。

建設業のM&Aでは「許可を引き継げるか」が主戦場になり、制度そのものが資産の輪郭を描いてくれます。Web制作会社にはそれがありません。引き継げるものを作っているのは、制度ではなく契約です。

Web制作会社の資産は4つの象限に分かれる

会社に何が載っているのかを、まず4つに分けて把握します。

1. — エンジニア・デザイナー。雇用契約、秘密保持、退職後の競業避止の定めの有無。 2. 顧客契約 — 制作の請負契約、月額の保守・運用契約というストック収益、受注残。 3. 知的財産 — ソースコード、デザイン、ドメイン、Gitリポジトリ、自社プロダクト。 4. データ — 顧客の個人情報、アクセス解析、運用ノウハウ。

この4象限は、そのまま本記事の骨格であり、§3末尾でチェックリスト(F2)として再登場します。

「人と契約を目当てに買われる」業種であること

Web制作会社が買われる理由は、設備でも許可でもありません。日本M&Aセンターの集計では、2024年のIT・情報サービス業界のM&Aは377件(前年342件)とされています[C-04]。ただしこの数字は同社が「買手企業が開示義務を負っている上場企業などの場合の件数を集計したのみ」と明記しているとおり、公表ベースの限定的な集計です。中小のWeb制作会社の譲渡は、この件数には基本的に現れません。

背景にあるのは人材需給です。経済産業省の試算では、2030年時点のIT人材の需給ギャップは高位シナリオで約78.7万人(中位44.9万人・低位16.4万人)とされています[C-07]。※これは2019年公表の報告書に基づく試算で、生成AI普及前の前提です。「採用するより、技術者チームごと買う」という買い手の合理が働きやすい環境だ、という程度に読んでください。

業界そのものの見通し・二極化の構造についてはWeb制作会社の将来性で扱っています。本記事は、その先の「では、何を引き継げるのか」に絞ります。


§2 なぜ今「権利の棚卸し」が売れるかどうかを決めるのか — DDで止まる会社の共通点

「うちは利益が出ていないから買い手がつかない」——売り手からよく聞く言葉です。しかし実務で交渉が止まる原因は、利益よりも権利の所在が確定していないことにあります。

買い手がWeb制作会社を買う目的は、ほぼ「人・顧客契約・技術」に集約されます。目的物そのものの権利が曖昧なら、買い手は値段を付けようがありません。「価格が付かない」のではなく、「権利が確定していないから価格が付けられない」のです。

DDで止まる会社には、驚くほど同じ形がある

私たちがサイト単体の譲渡実務で毎回チェックしている「引き継ぎ漏れリスト」を会社単位に引き伸ばすと、つまずく箇所はおおむね3つに収束します。

1. 成果物の著作権が確認できない — 受託契約に知的財産の帰属条項がない、あるいは外注先との間に譲渡の合意がない。「会社の資産に見えて、会社の資産でない」状態です。 2. 保守契約が口約束 — 月額のストックがあるのに書面がなく、解約リスクも継続性も読めないため、評価の対象に乗せづらい。 3. 資産が個人名義 — 代表個人のフリーメールで取得したドメイン、個人GitHubアカウント配下のリポジトリ、個人クレジットカードで課金されているクラウド。

①と③は交渉そのものを止める原因になり、②は「買った後に自由に作り替えられない可能性がある」と買い手が気づいた瞬間、条件交渉が表明保証と補償の議論へ一気に流れます。裏を返せば、この3つはいずれも売る前に自力で直せる種類の問題です。

出口を考える会社は多いのに、権利が整理されている会社は少ない

マクロの側も、この非対称を後押ししています。東京商工リサーチの調査では、情報通信業の後継者不在率は77.06%(前年77.32%)で産業別の最高水準にあり、同調査の全産業は62.60%です[C-06]。※帝国データバンクの2025年調査は全業種50.1%ですが、母集団・定義が異なり直接比較はできません(同社は情報サービス業単独の値を公表していません)。

退出も多い業種です。2025年に倒産・休廃業解散で市場から退出した普通法人の市場退出率は情報通信業の4.98%が産業別で最も高く、東京商工リサーチはその要因として「ソフトウェア開発やホームページ制作などの『情報サービス業』の退出法人数が特に増加」したことを挙げています[C-H13]。倒産件数だけを見ても、情報通信業は2025年(暦年)438件・2024年(暦年)425件と、暦年ベースでは4年連続の増加です。ただし2025年度(4-3月)ベースでは432件(前年度比6.0%減)で4年ぶりの減少となっており、暦年と年度で傾向が逆転します。集計期間が異なるため、どちらの数字かを確かめてお読みください[C-05]。

つまり、出口を考える会社は多い。にもかかわらず、権利が整理されている会社は少ない。この差が、そのまま「評価の土俵に乗れるかどうか」の差になります。

※念のため申し添えると、「整備すれば高く売れる」という話ではありません。整備されていないと、そもそも評価の土俵に乗りにくい——本記事が申し上げたいのはここまでです。DDそのものの全体像はデューデリジェンス(DD)とはをご覧ください。


§3 株式譲渡と事業譲渡で「引き継げるもの/引き継げないもの」

同じ「会社を売る」でも、株式を売るのか事業を売るのかで、引き継がれ方はまったく違います。株式譲渡は”会社の持ち主が変わるだけ”、事業譲渡は”資産と契約を一つずつ移す”——この違いが、無形資産に価値が集中しているWeb制作会社では特に大きな差になります。

  • 株式譲渡は法人格が変わりません。したがって、会社が保有する著作権・契約・許諾は、当事者が変わらないまま原則としてそのまま残ります。
  • 事業譲渡は、資産と契約を個別に移す取引です。著作権は個別に譲渡し、契約は相手方の承諾を得て移すのが原則になります[C-C13c]。

ただし「株式譲渡なら何もしなくてよい」ということではありません。顧客との契約にチェンジオブコントロール(COC)条項——支配権に異動が生じた場合に相手方が解除等をなしうる旨の定め——があれば、株式譲渡でも相手方の同意や通知が必要になる場合があります(後述)。

承継可否マトリクス — 何が残り、何を移す必要があるか

| 引き継ぐもの | 株式譲渡(法人格は変わらない) | 事業譲渡(原則として個別に移す) | |—|—|—| | ① 自社従業員が書いたコードの著作権 | 原則そのまま(会社が著作者・権利者のまま)[C-C01] | 個別の譲渡が必要[C-C03] | | ② 外注が書いたコードの著作権 | 会社が持っていればそのまま。譲渡の合意がなければ会社は持っていない[C-C18] | 同左。会社が持っていないものは移せない | | ③ 従業員が作ったデザイン・コピー・写真 | 同上。ただし公表名義の要件の充足を要確認[C-C02] | 同上 | | ④ 改修・リニューアルできる形か | 契約に27条・28条の特掲があるかで決まる(無ければ譲渡者に留保と推定)[C-C03] | 同左 | | ⑤ 著作者人格権 | 譲渡できない(実務では不行使の合意で処理される例がある)[C-C04][C-C18] | 同左 | | ⑥ 顧客の制作契約・保守契約 | 原則そのまま。ただしCOC条項があれば同意・通知等が要る場合がある | 契約ごと移すには相手方の承諾[C-C13c]。債権だけを移す場合の対抗要件は通知または承諾[C-C13] | | ⑦ ドメイン・Gitリポジトリ・クラウド | 会社名義ならそのまま。個人名義なら会社の資産ではない[C-C15] | 同左(名義変更・移管が必要) | | ⑧ 顧客の個人データ | 提供という行為自体が生じない(法人格不変) | 事業の承継に伴う提供は第三者提供に当たらない[C-C11]。DD段階の提供も同様だが契約の締結が必要[C-C16] | | ⑨ 引き継いだ個人情報の使い方 | — | 承継前の利用目的の範囲内でしか使えない[C-C17] | | ⑩ 従業員の雇用 | そのまま継続(雇用契約の当事者が変わらない) | 労働者の承諾が必要[C-C13b] | | ⑪ 売り手の競業 | 契約上の競業避止特約で手当てされるのが通常 | 別段の意思表示がない限り同一・隣接市町村で20年(特約は30年上限)/不正競争目的は期間の限定なく禁止[C-C12] |

Web制作会社のM&Aで何が引き継げるか:株式譲渡(法人格は変わらない)と事業譲渡(資産と契約を個別に移す)の承継可否マトリクス。①自社従業員が書いたコードの著作権=株式譲渡は原則そのまま(職務著作・著作権法15条2項)/事業譲渡は個別の譲渡が必要。②外注が書いたコードの著作権=会社が持っていればそのまま、譲渡の合意がなければ会社は持っていない。③改修・リニューアルできる形か=契約に27条・28条の特掲があるか(無ければ譲渡者に留保されたものと推定・著作権法61条2項)。④著作者人格権=譲渡できない(著作権法59条)。⑤顧客の制作契約・保守契約=株式譲渡は原則そのまま(COC条項があれば同意・通知等が要る)/事業譲渡は移すには相手方の承諾(民法539条の2)、債権だけなら通知または承諾(467条)。⑥ドメイン・Git・クラウド=会社名義ならそのまま、個人名義なら会社の資産ではない。⑦顧客の個人データ=株式譲渡は提供という行為自体が生じない/事業譲渡は第三者提供に当たらない(個人情報保護法27条5項2号)、DD段階の提供も同様だが契約の締結が必要。⑧従業員の雇用=株式譲渡はそのまま継続/事業譲渡は一人ひとりの承諾が必要(民法625条1項)。個別の判断は弁護士へ

以下、行の順に中身を見ていきます。

§3-1 ソースコードとデザインの著作権は誰のものか

まず前提 — プログラムは著作物、ただし「言語・規約・解法」は保護されない

著作権法は、プログラムの著作物を著作物の例示として掲げています(10条1項9号)。「プログラム」とは「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう」と定義されています(2条1項10号の2)[C-C05]。

同時に押さえておきたいのが10条3項です。プログラムの著作物に対する保護は、「その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない」とされています[C-C05]。買い手の視点でいえば、フレームワークやアルゴリズムそのものを権利で押さえることはできない、ということです。押さえられるのは、具体的に書かれた表現=コードの側です。

① 自社の従業員が書いたコード — 原則として会社に帰属する

著作権法15条2項は、「法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする」と定めています[C-C01]。いわゆる職務著作です。自社の従業員が業務として書いたコードは、原則として会社が著作者になります。

② 従業員が作ったデザイン・コピー・写真は、要件が違う

ここが実務で最も見落とされる差です。同じ15条でも、1項はプログラム以外の著作物を対象としており、条文は「職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は……その法人等とする」と定めています[C-C02]。

つまりプログラム以外には「法人名義で公表するもの」という要件が付き、プログラムにはそれが付かないのです。文化庁「著作権テキスト」も、職務著作の要件を挙げたうえで「なお、プログラムの著作物については、公表されない場合も多いため、(d)の要件を満たす必要はありません」と説明しています[C-C18]。

制作会社名義で公表していないデザイン成果物については、職務著作の要件を満たすかを個別に検討することになります。DDで論点化しやすい箇所です。

③ 外注(フリーランス・下請)に書かせたコード — 原則は受注者側に残る

買い手が最も嫌う「会社の資産に見えて、会社の資産でない」状態が生まれるのがここです。文化庁「著作権テキスト」は次のように明記しています[C-C18]。

著作者とは「著作物を創作する者」のことであるため、著作物の創作を他人や他社に委託(発注)した場合は、料金を支払ったかどうか等にかかわりなく、実際に著作物を創作した「受注者側」が著作者となります。このため、発注者側が納品後にその著作物を利用(略)するためには、そのための契約をあらかじめ交わしておくことが必要になります。

発注して代金を払った、という事実だけでは著作権は移りません。外注比率の高いWeb制作会社では、過去案件の外注契約に譲渡の定めがあるかどうかが、そのまま「会社の資産台帳の正確さ」になります。

④ 「著作権をすべて譲渡する」だけでは足りない — 27条・28条の特掲

本記事のハイライトです。著作権法61条1項は「著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる」と定めますが、続く61条2項はこう定めています[C-C03]。

著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。

27条は「翻訳権、翻案権等」、28条は「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」の条文です。改修・リニューアル・機能追加は、多くの場合この翻案の領域に入ります。したがって「著作権を譲渡する」とだけ書かれた契約では、買い手が引き継いだ後に自由に作り替えられない可能性が残るという整理になります。

文化庁「著作権テキスト」も、この61条2項を挙げたうえで「これらの権利を含めた著作権の譲渡を受ける際、契約書に『すべての著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する』と記載しておく必要があります」と実務対応を示しています[C-C18]。

なお条文は「留保されたものと推定する」であり、確定ではありません。反証の余地はありますが、DDの場では「特掲があるか/ないか」で判断が進むのが実際のところです。

⑤ 著作者人格権は譲渡できない

著作権法59条は「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない」と定めます[C-C04]。実務では不行使の合意を置く例がありますが、文化庁「著作権テキスト」は、そうした規定について「著作者としては、依頼者が著作物を改変、修正した場合や著作者の氏名を表示しなかった場合でも異議を述べることができないといった不利益が生じるため注意が必要です」と、著作者側の不利益にも言及しています[C-C18]。売り手が個人クリエイターに発注してきた会社では、双方の立場から検討しておきたい論点です。

なお、Webサイト1個を譲渡する場面での著作権移転条項の書き方はWebサイト譲渡契約書の必須条項で扱っています。本記事は「会社の資産台帳として、どこに権利が散らばっているか」を見る側です。

§3-2 顧客契約・保守契約はそのまま移せるのか

Web制作会社では月額の保守・運用契約が価値の中心にあることが多く、この契約が引き継げるかどうかは重要な論点です。

契約ごと移す場合と、債権だけ移す場合は条文が違う

事業譲渡で「契約そのもの」を移す場合、根拠となるのは民法539条の2です。「契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する」と定められています[C-C13c]。つまり保守契約を丸ごと移すには、顧客の承諾が要るのが原則です。

これに対し、売掛金など債権だけを移す場合の条文は民法467条です。「債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない」(1項)、第三者への対抗要件は「確定日付のある証書」(2項)とされています[C-C13]。契約ごと移すのか、債権だけ移すのかで参照する条文が変わる点は、DDの初動でも混乱しやすいところです。

株式譲渡でも安心できない理由 — COC条項

株式譲渡なら契約の当事者は変わりません。それでも顧客が離れうるのは、契約書にチェンジオブコントロール(COC)条項が入っている場合です。支配権に異動が生じたときに相手方が契約を解除できる旨の定めがあれば、株式譲渡であっても解除できる権利が相手方に生じうることになります(これは条文ではなく契約実務の問題で、実際に解除されるかどうかは別の話です)。

月額保守のストックが企業価値の中心にあるWeb制作会社では、この条項の有無が交渉の前提を変えます。あわせて確認しておきたいのが、再委託(外注)制限・秘密保持・知的財産の帰属条項・自動更新と解約予告期間です。ストックが評価にどう効くかはWeb制作会社の売却相場2026で扱っています。

事業譲渡では、売り手側に競業の制限がかかる

会社法21条1項は、事業を譲渡した会社は「当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村……の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない」と定めます。特約による延長は30年が上限で(同2項)、さらに3項は「不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない」として、期間・地理の限定なく競業を禁じています[C-C12]。

ここはWeb制作会社に固有の面白さがある論点です。1項の地理的射程は「市町村」単位であり、オンラインで完結する受託制作の実態とは噛み合いにくい。一方で3項には地理も期間も限定がありません。実務では契約上の競業避止特約で手当てされるのが通常ですが、建設・飲食のようなローカルビジネスとは前提が異なる点は押さえておく価値があります。

§3-3 ドメイン・Git・クラウドの”名義”問題(IPハイジーン)

最も発見されにくく、最も直しやすいリスクがここにあります。株式譲渡でも事業譲渡でも、そもそも会社名義でない資産は「会社の資産として売れない」からです。

チェックしたいのは次の各項目です。ドメインのWhois登録者・管理担当者、レジストラのアカウント所有者、GitHubのリポジトリがOrganization配下か個人アカウント配下か、クラウド(AWS/GCP等)のルートアカウントのメールアドレス、SaaSの契約名義と支払いカード、SSL証明書、Google Search Console/GA4のオーナー権限。

GitHubのサービス使用条件(発効日2026年4月27日)は、個人アカウントについて「お客様は、個人アカウントおよびその中のコンテンツに対する最終的な管理権を保持します」、組織アカウントについて「本条件に基づいて作成された組織アカウントの『オーナー』は、その組織アカウントおよびその中のコンテンツに対する最終的な管理権を保持します」としています。あわせて「組織アカウントの所有者として少なくとも1つの個人アカウントを指定する必要があります」とも定めています[C-C15]。

つまり、「Organization配下にしてあるから安心」ではありません。そのOrganizationのオーナーが誰の個人アカウントなのか、退職した元エンジニアのままになっていないか——DDではそこまで見られます。

この領域の是正は法律問題ではなく移管という作業です。売り手が今日から着手できて、最も早く効きます。具体的な移管手順(ドメイン・サーバー・ASP・各種アカウント)はサイト売買の引き継ぎ実務にまとめています。

§3-4 顧客の個人情報は買い手に渡してよいのか

以下は2026年8月時点の整理です(後述のとおり、令和8年改正個人情報保護法は公布済み・未施行です)。

原則と、事業承継の例外

個人情報保護法27条1項は「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」と定めます。そのうえで同条5項は、一定の場合について「当該個人データの提供を受ける者は、前各項の規定の適用については、第三者に該当しないものとする」とし、その2号に「合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合」を挙げています[C-C11]。

事業承継に伴う提供は、そもそも「第三者提供」に当たらない、という整理です。

条番号の注意:第三者提供の制限は現行法では27条です。28条は「外国にある第三者への提供の制限」であり、別の条文です[C-C11]。

DD段階での提供はどうなるか — 「同意は不要、ただし契約は必須」

ここが本記事で最もお伝えしたい点です。「クロージング前のDDで顧客リストを見せてよいのか」という問いに、個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)3-6-3は正面から答えています[C-C16]。

また、事業の承継のための契約を締結するより前の交渉段階で、相手会社から自社の調査を受け、自社の個人データを相手会社へ提供する場合も、本号に該当し、あらかじめ本人の同意を得ることなく又は第三者提供におけるオプトアウト手続を行うことなく、個人データを提供することができるが、当該データの利用目的及び取扱方法、漏えい等が発生した場合の措置、事業承継の交渉が不調となった場合の措置等、相手会社に安全管理措置を遵守させるために必要な契約を締結しなければならない。

つまり、DD段階の提供も同意は不要。ただし「安全管理措置を遵守させるために必要な契約」の締結が求められ、そこには交渉が不調に終わった場合の措置まで含まれる、という整理です。秘密保持契約(NDA)を結んでいるから足りる、と当然に言えるわけではありません。

渡した後の使い方は、承継前の利用目的に縛られる(買い手の落とし穴)

27条5項2号が答えるのは「渡してよいか」だけです。渡った後の使い方を縛るのは18条2項です[C-C17]。

個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。

「顧客リストごと買ったのに、買い手の新サービスの案内には使えない」という事態が、ここから生じます。個人情報保護委員会も「合併や組織再編等を行う事業者の方へ」(令和3年6月23日)で、「事業者が合併や組織再編等を行う場合に、ホームページ等に記載している個人情報の利用目的の確認を行わなかったため、正しく利用目的を通知・公表していない状態で個人情報を利用している事例が発生しています」と注意喚起しています[C-C17]。買い手のDD項目に「承継前の利用目的の記載」を入れておく理由がこれです。

受託運用しているデータは、自社のデータではない

もう一点、Web制作会社に固有の切り分けがあります。クライアントのサイトを運用受託していて、その会員登録者データを預かっている場合、そのデータについて開示・訂正等に応じる立場にあるのは原則としてクライアント側であり、受託側の「保有個人データ」としては扱われないのが一般的な整理です。ただし、預かっている以上、安全管理措置の実施は受託側にも求められます(委託元には委託先の監督義務があります)。自社が保有する個人データ(自社の顧客企業の担当者情報など)と、受託運用で預かっているデータは、棚卸しの段階から分けて把握しておく必要があります。

時点の注記 — 令和8年改正法は公布済み・未施行

「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」は令和8年7月10日成立・7月17日公布され、施行期日は「原則として公布の日から起算して2年を超えない範囲内」とされています。2026年8月時点では未施行です[C-C19]。改正内容として27条1項・2項・7項は挙げられていますが、本記事が依拠する27条5項2号および18条2項は、公表されている改正概要には掲げられていません(改正されないと断定できるものではありません)。施行に向けた続報は個人情報保護委員会の公表資料でご確認ください。

権利の棚卸し 4象限 — 売り手も買い手も、同じ表を見る

Web制作会社のM&A:権利の棚卸し4象限チェックリスト。①人(エンジニア・デザイナー)=キーエンジニア/デザイナーの雇用契約、秘密保持契約(NDA)の締結状況、退職後の競業避止の定めの有無(有効性は判例による)、キーマンの残留見込み/リテンションの設計、事業譲渡なら労働者一人ひとりの承諾(民法625条1項)。②顧客契約(請負と月額保守)=受託契約書の有無/知的財産の帰属条項、27条・28条の特掲(著作権法61条2項)、保守/運用契約の書面化と月額(ストック)、COC条項/自動更新・解約予告期間、再委託(外注)制限・秘密保持条項、事業譲渡で契約ごと移すには相手方の承諾(民法539条の2)。③知的財産(コードと名義)=自社従業員のコード=職務著作(15条2項)、外注コードの譲渡の合意が書面にあるか、デザイン等は公表名義の要件(15条1項)、ドメインのWhois登録者・レジストラの名義、GitHubはOrganization配下か/オーナーは誰か、クラウドのルートアカウント/SaaS契約名義/GA4・GSCの権限。④データ(預かりものと自社のもの)=顧客個人データの利用目的の記載、承継後は承継前の利用目的の範囲内(18条2項)、安全管理措置の整備状況、DD提供時の契約(交渉が不調のときの措置まで)、受託運用で預かるデータの切り分け

| 象限 | チェック項目 | |—|—| | ① 人 | キーエンジニア/デザイナーの雇用契約・秘密保持/退職後の競業避止の定めの有無/事業譲渡なら労働者の承諾[C-C13b] | | ② 顧客契約 | 契約書の有無/知的財産の帰属条項27条・28条の特掲[C-C03]/保守契約の書面化と月額/COC条項/解約予告期間/再委託(外注)制限/事業譲渡なら契約ごと移すことへの相手方の承諾[C-C13c] | | ③ 知的財産 | 自社従業員のコード[C-C01]/外注コードの譲渡合意の有無[C-C18]/デザイン等の公表名義[C-C02]/ドメインのWhois登録者・レジストラのアカウント所有者/GitHubはOrganization配下か、そのオーナーは誰か[C-C15]/クラウドのルートアカウント/SaaS契約名義と支払カード/SSL/GSC・GA4のオーナー権限 | | ④ データ | 顧客個人データの利用目的の記載(承継後は承継前の目的の範囲内)[C-C17]/安全管理措置/DD提供時の契約(交渉不調時の措置まで)[C-C16]/受託運用データの切り分け |

ここまでが「何が引き継げるか」です。次に、外注取引に残っているコンプライアンス上の宿題を確認します。


§3.5 2026年1月「取適法」施行 — 外注(フリーランス)取引のコンプラDDが変わった

以下は2026年8月時点の整理です。取適法は施行直後で、公正取引委員会の運用基準・ガイドブック・Q&Aが順次追加されている段階にあります。

現に動いています。公正取引委員会は2026年6月24日、中小企業庁・特許庁と連名で「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」(知財取引指針)と契約書ひな形を公表し、同日、これを踏まえて取適法の運用基準およびフリーランス法の考え方の改正案を意見募集に付しました(意見提出期限は2026年7月23日)[C-C20]。知的財産の取引条件そのものが「取引適正化」の論点として動いているということです。外注契約のひな型を見直す際は、公取委の最新の公表資料に当たって進めてください。

① 法律の名前が変わった

2026年1月1日施行の改正により、下請代金支払遅延等防止法(下請法)は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」へ改称されました。e-Govに登録された略称は「中小受託取引適正化法」と「取適法(とりてきほう)」の2つです[C-C06]。公正取引委員会のリーフレットも「2026年1月から『下請法』は『取適法』へ!」と案内しています。以下、本記事では「取適法」と表記します(旧名の「下請法」で検索される方も多いため、名称としては併記します)。

② 用語が変わった

  • 下請代金 → 製造委託等代金
  • 親事業者 → 委託事業者
  • 下請事業者 → 中小受託事業者

[C-C06]。地味に見えて、実務ではここが効きます。社内の発注書・注文請書のひな型が旧用語のままなら、それ自体が「管理体制が更新されていない」というサインとして買い手に読まれます。

③ Web制作・システム開発は「情報成果物作成委託」として対象

取適法2条3項は「情報成果物作成委託」を「事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」と定義し、2条7項1号は「情報成果物」の第一に「プログラム」を挙げています[C-C09]。Web制作・システム開発の外注は、この枠組みに入ります。

適用の基準は、リーフレットの適用対象表によれば次のとおりです(かっこ内は外注先=中小受託事業者側の要件)[C-C08b]。

  • プログラム作成等に係る情報成果物作成委託 → 委託事業者:①資本金3億円超(外注先=個人または資本金3億円以下)/②資本金1千万円超3億円以下(外注先=個人または資本金1千万円以下)/③従業員300人超(外注先=従業員300人以下)
  • プログラム作成を除く情報成果物作成委託(デザイン・コンテンツ制作等)→ 委託事業者:①資本金5千万円超(外注先=個人または資本金5千万円以下)/②資本金1千万円超5千万円以下(外注先=個人または資本金1千万円以下)/③従業員100人超(外注先=従業員100人以下)

見落とされやすいのは②の段です。資本金が3億円・5千万円に届かない会社でも、資本金1千万円超であれば、個人(フリーランス)や資本金1千万円以下の会社へ外注した時点で委託事業者に当たりえます。取適法は大企業だけの話ではありません。

条文上は、資本金基準が2条8項1号〜4号(1号=3億円超/2号=1千万円超3億円以下/3号=5千万円超/4号=1千万円超5千万円以下)、従業員基準が2条8項5号(従業員300人超)・6号(従業員100人超)に置かれ、中小受託事業者側は2条9項1号〜6号がこれに対応しています[C-C08b]。リーフレットには「(いずれかの基準に該当すれば適用対象)」との注記があり、資本金基準と従業員基準はORの関係です[C-C08b]。

2026年1月から従業員基準が追加されたことの意味は小さくありません[C-C08]。資本金を抑えている会社でも、従業員数によって適用対象になりうるからです。自社が委託事業者に当たるかどうかは当てはめの問題ですので、基準は公取委資料でご確認ください。

④ 条番号が動いた

| 項目 | 旧(〜2025年12月31日・下請代金支払遅延等防止法) | 新(2026年1月1日〜・取適法) | |—|—|—| | 題名 | 下請代金支払遅延等防止法 | 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 | | 略称 | 下請法 | 取適法/中小受託取引適正化法[C-C06] | | 用語 | 下請代金/親事業者/下請事業者 | 製造委託等代金/委託事業者/中小受託事業者[C-C06] | | 支払期日(受領日から60日以内) | 2条の2 | 3条[C-C09] | | 明示義務 | 3条 | 4条(承諾の有無にかかわらず電磁的方法が可能に)[C-C08][C-C09] | | 遵守事項(禁止行為) | 4条 | 5条[C-C09] | | 遅延利息 | 4条の2 | 6条(率は公正取引委員会規則で定める=年14.6%)[C-C07][C-C09] | | 適用基準 | 資本金基準のみ | 資本金基準 + 従業員基準(300人/100人)(いずれかに該当すれば対象)[C-C08][C-C08b] | | 対象取引 | 製造/修理/情報成果物作成/役務提供 | 左記+特定運送委託[C-C08][C-C09] | | 禁止行為 | 11項目(旧構成) | ⑪「協議に応じない一方的な代金決定」を新設/②支払遅延に手形払等を含む[C-C07] |

下請法から「取適法」への新旧対照表(2026年1月1日施行)。Web制作・システム開発の外注は「情報成果物作成委託」として対象(取適法2条3項/2条7項1号に「プログラム」)。題名=下請代金支払遅延等防止法→製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律/略称=下請法→取適法・中小受託取引適正化法/用語=下請代金・親事業者・下請事業者→製造委託等代金・委託事業者・中小受託事業者/支払期日(受領日から60日以内)=第2条の2→第3条/明示義務=第3条→第4条(承諾の有無にかかわらず電磁的方法が可能に)/遵守事項(禁止行為)=第4条→第5条/遅延利息(年14.6%)=第4条の2→第6条(率は公正取引委員会規則で定める)/適用基準=資本金基準のみ→資本金基準+従業員基準(300人/100人。プログラム作成等=資本金3億円超・1千万円超3億円以下・従業員300人超、それ以外=資本金5千万円超・1千万円超5千万円以下・従業員100人超。いずれかに該当すれば対象)/対象取引=製造・修理・情報成果物作成・役務提供→左記+特定運送委託。注記:資本金1千万円超なら3億円・5千万円に達しなくても「委託事業者」に当たりうる(取適法2条8項2号・4号)。禁止行為に⑪「協議に応じない一方的な代金決定」を新設

以下、本文では新しい条番号のみを用います。

  • 支払期日=3条:中小受託事業者の給付を受領した日から起算して「六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」[C-C09]。
  • 明示等=4条:委託事業者は給付の内容その他の事項を「書面又は電磁的方法により中小受託事業者に対し明示しなければならない」[C-C09]。中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、電子メール等の電磁的方法によることが可能になりました[C-C08]。
  • 委託事業者の遵守事項=5条遅延利息=6条[C-C09]。

⑤ 4つの義務と11の遵守事項

公正取引委員会のリーフレット(令和7年8月)は「委託事業者には、4つの義務と11の遵守事項が課されています」と整理しています[C-C07]。実務上、Web制作会社に直接効きやすいのは次の2つです。

  • ⑪ 協議に応じない一方的な代金決定(新設) — 「中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金を決定すること」[C-C07]。条文上は5条2項4号に置かれています。
  • 遅延利息 — 「支払遅延や減額等を行った場合、遅延した日数や減じた額に応じ、遅延利息(年率14.6%)を支払うこと」[C-C07]。

⑥ フリーランス法との関係

外注先が個人であれば、取適法とは別にフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が関わってきます。同法2条1項は「特定受託事業者」を①従業員を使用しない個人、②一の代表者以外に他の役員がなく従業員も使用しない法人と定義し、3条は「業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに……書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない」と定めています[C-C10]。

3条の義務主体は「業務委託事業者」=特定受託事業者に業務委託をする事業者です。つまり、発注側の規模を問わず明示義務が及びます

整理すると、資本金1千万円以下で従業員数も基準(プログラム作成等なら300人、それ以外なら100人)以下であれば、取適法の委託事業者には当たりません。それでも、個人へ発注するならフリーランス法3条の明示義務は及びます。逆に資本金1千万円超であれば、前掲②の段により取適法の側でも当事者になりえます——つまり、どちらの法律からも外れる場面のほうが少ない、と考えておくのが実務的です。両法の適用関係は取引ごとに異なりますので、個別の判断は専門家へご確認ください。

⑦ M&Aにどう接続するか

是正指導や勧告のリスクは、買収後に顕在化します。だから買い手は、発注書面・支払サイト・外注先の属性をDDで確認します。売り手側の準備は、発注時の明示(書面または電磁的方法)・60日以内の支払期日・価格協議の記録を整えること。そして、旧「下請法」用語のままの社内ひな型を更新することです。

ひな型を更新するなら、公取委らが公表した契約書ひな形(前掲・2026年6月24日)にも目を通しておくと、外注先との知的財産の取扱いをどう書くかの相場観がつかめます[C-C20]。本記事の§3-1で見た「27条・28条の特掲」は、この外注側の契約でも同じ論点として効いてきます。


§4【M&A・投資視点】権利の”きれいさ”が価値になる — 買い手のDD着眼点と売り手の整え方

Web制作会社には、決算書に載らないのに価格を左右する資産と、決算書に載らないのに価格を壊す債務があります。前者は保守契約のストックと、権利がクリーンなソースコード。後者は権利の所在が確定していない成果物、外注先との未整備な取引、個人名義の資産です。

許認可という”制度の担保”が無い業界では、契約書の束がそのまま担保の代わりになります。だから売り手が最初にやるべきは、利益を作ることではなく権利を確定させること——そしてそれは、今日から着手できます。

買い手のDD着眼点3つ

① 成果物の権利帰属 主要顧客の受託契約に知的財産の帰属条項があるか。27条・28条の特掲があるか[C-C03][C-C18]。外注先との間に譲渡の合意があるか。自社プロダクトを持っている場合はOSSライセンスとの整合。権利が確認できない場合、実務では価格そのものより表明保証と補償でリスクを分配する方向に議論が進むことが多いといえます(案件ごとに扱いは異なります)。

② 顧客契約の継続性 保守・運用契約が書面になっているか。COC条項の有無、解約予告期間、受注残の実在。株式譲渡でもCOC条項次第で顧客が離れうる、という前提でストックの安定度を見ます。

③ 労務・外注のコンプライアンス キーエンジニアの雇用契約・秘密保持・退職後の競業避止の定めの有無。取適法・フリーランス法に沿った明示(書面/電磁的方法)・支払サイト・価格協議の記録[C-C06]〜[C-C10]。

アセット単位の買収でのDD項目はサイト買収のデューデリジェンスに、買収後の統合設計はPMI 100日プランにまとめています。

売り手が今日から着手できる3手(着手順)

1. 権利の棚卸し表を作る 主要顧客20社程度について、「契約書の有無/知財帰属条項の有無/27条・28条の特掲の有無/保守の有無と月額/COC条項の有無」の5列を埋めるだけで、DDの初動が別物になります。埋まらないセルが見つかることこそが、この作業の成果です。

2. 名義の是正(IPハイジーン) ドメイン、GitHubのOrganizationとそのオーナー、クラウドのルートアカウント、SaaS契約を法人名義へ[C-C15]。法的論点ではなく作業なので、最も早く効きます。

3. 外注取引の体裁を整える 発注時の明示(書面または電磁的方法)、60日以内の支払期日、価格協議の記録。旧「下請法」用語のままのひな型を更新する[C-C08][C-C09]。

人(キーマン)という、条文では守れない資産

IT・Webでは、キーエンジニアの離職が買収価値を直撃します。実務ではキーマン条項・リテンションボーナス・アーンアウトといった手当てが検討されますが、いずれも契約上の工夫であって、人を縛れるわけではありません。

なお、退職後の競業避止義務の有効性は、判例の蓄積によって判断される問題です。本記事はこれについて条文を根拠として示しません(労働契約法16条は「解雇」の規定であり、競業避止の根拠条文ではありません)[C-C14]。個別の有効性の判断は弁護士へご相談ください。

事業譲渡で従業員を移す場合は、民法625条1項が「使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない」と定めており、一人ひとりの承諾が必要になります[C-C13b]。人が最大の資産である業種では、これが事業譲渡のコストとして効いてきます。

相場・評価額は本記事では扱いません

いくらで売れるか(年買法・倍率の考え方、査定変数)はWeb制作会社の売却相場2026|年買法と保守ストックでいくらになるかで扱っています。本記事の立ち位置は、その手前——「評価の土俵に乗る状態になっているか」です。

収益性の目安だけ触れておくと、情報サービス業の売上高営業利益率はJISAの調査で加重平均10.79%/中央値6.79%(2025年版=2024年度実績・有効回答300社)とされています[C-01]。※同調査に粗利率の項目はなく、粗利率をこの統計に帰属させることはできません。また母集団はJISA正会員企業で、小規模Web制作会社をそのまま代表するものでもありません。利益率と社長年収の詳細はWeb制作会社の利益率と社長年収をご覧ください。

なお当社が運営する案件掲載面(/malist)に掲載中のIT/Web系の売り案件は92件です(当社調べ・2026年8月3日にWP RESTで実計数)[C-08]。掲載は希望額であって成約額ではなく、内訳もアセット・システムの譲渡案件が大半で、Web制作会社(法人)の株式譲渡の件数ではありません。市場の流動性の目安としてお読みください。

▶ 「引き継げる状態か」を、出口の選択肢と併せて確認する

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§5 よくある質問(FAQ)

Q1. 受託制作したWebサイトのソースコードの著作権は誰のものですか? A. 誰が書いたかで整理が変わります。自社の従業員が職務上書いたプログラムは、別段の定めがない限り会社が著作者になります(著作権法15条2項)[C-C01]。一方、外注(フリーランス・他社)に書かせた場合は、料金を支払ったかどうかにかかわらず、創作した受注者側が著作者になるのが原則で、発注者が利用するには契約が必要とされています(文化庁「著作権テキスト」)[C-C18]。M&Aでは、この両方が混在していることが論点になります。

Q2. 自社の従業員が書いたコードの著作権は、会社に帰属しますか? A. 著作権法15条2項は「法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は……別段の定めがない限り、その法人等とする」と定めています[C-C01]。したがって原則として会社に帰属します。ただし雇用契約や就業規則に「別段の定め」が置かれている場合は結論が変わりえますので、規程をご確認ください。

Q3. 「著作権をすべて譲渡する」と契約書に書けば、改修もできますか? A. その書き方だけでは足りないと整理されています。著作権法61条2項は、27条(翻訳権、翻案権等)・28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定すると定めています[C-C03]。文化庁も「すべての著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する」と記載する必要があるとしています[C-C18]。改修・リニューアルは翻案の領域に入ることが多いため、DDではこの一行が確認されます。

Q4. 株式譲渡と事業譲渡で、契約と著作権の引継ぎはどう違いますか? A. 株式譲渡は法人格が変わらないため、会社が持っている著作権も契約も原則そのまま残ります。事業譲渡は資産と契約を個別に移す取引で、著作権は個別の譲渡、契約は相手方の承諾を得ての移転(民法539条の2)が原則になります[C-C13c]。従業員も、事業譲渡では一人ひとりの承諾が必要です(民法625条1項)[C-C13b]。IT企業のM&Aで株式譲渡が選ばれやすい実務的な理由の一つがここにあります。

Q5. 顧客との保守契約は、同意なしに引き継げますか? A. 事業譲渡で契約ごと移す場合は、相手方の承諾により契約上の地位が移転するのが原則です(民法539条の2)[C-C13c]。売掛金など債権だけを移す場合の対抗要件は、譲渡人の通知または債務者の承諾です(民法467条1項)[C-C13]。株式譲渡なら契約の当事者は変わりませんが、契約書にチェンジオブコントロール条項があれば、相手方に解除等の権利が生じうる点にご注意ください(契約の定め方によります)。

Q6. 顧客の個人情報を買い手に渡してよいのですか? A. 合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合は、第三者に該当しないとされています(個人情報保護法27条5項2号)[C-C11]。さらに個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、承継契約の締結より前の交渉段階(DD)での提供も同号に該当し、本人の同意なく提供できるとしつつ、利用目的・取扱方法・漏えい時の措置・交渉が不調となった場合の措置等について、相手会社に安全管理措置を遵守させるために必要な契約を締結しなければならないとしています[C-C16]。なお、承継後は承継前の利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱えません(同法18条2項)[C-C17]。(2026年8月時点。令和8年改正個人情報保護法は公布済み・未施行です[C-C19])

Q7. 2026年1月の「取適法」で、Web制作の外注取引は何が変わりましたか? A. 旧・下請法の題名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わり、略称は「取適法」「中小受託取引適正化法」となりました[C-C06]。用語も製造委託等代金/委託事業者/中小受託事業者へ変更されています。実務面では、適用基準に従業員基準(300人・100人)が追加され(資本金基準とのOR)[C-C08][C-C08b]、書面交付は中小受託事業者の承諾がなくても電磁的方法で可能になり[C-C08]、禁止行為に「協議に応じない一方的な代金決定」が新設されました[C-C07]。条番号も、支払期日60日=3条、明示等=4条、遵守事項=5条、遅延利息=6条へ移動しています[C-C09]。(2026年8月時点。運用基準等は追加・更新されうるため、最新は公正取引委員会の公表資料でご確認ください)


§6 まとめ — 売り手/買い手が次に取るべき一手

要点を3つに絞ります。

  • 株式譲渡なら会社が持っている権利や契約は原則そのまま残り、事業譲渡なら原則ひとつずつ移す。この違いがスキーム選択の実務的な出発点です[C-C01][C-C13c][C-C13b]。ただし前提として「会社が持っている」が成立していなければなりません。外注に書かせたコード[C-C18]、代表個人名義のドメイン[C-C15]、契約書のない初期顧客——この3つは、買い手が確認する場所です。
  • 著作権は「譲渡する」と書くだけでは足りない。27条・28条の特掲があってはじめて、改修まで含めて引き継げると整理されています(著作権法61条2項)[C-C03][C-C18]。
  • 2026年1月から、下請法は「取適法」へ。名称も用語も条番号も変わり、適用基準に従業員基準が加わりました[C-C06][C-C08][C-C08b][C-C09]。社内の発注ひな型が旧用語のままなら、更新のタイミングです。

出口別のチェックリストにすると、こうなります。

売り手の方

  • ☐ 主要顧客20社程度について、契約書の有無・知財帰属条項・27条/28条の特掲・保守の有無と月額・COC条項を一覧にしたか
  • ☐ 外注に出したコードについて、譲渡の合意が書面にあるかを確認したか
  • ☐ ドメイン・GitHubのOrganizationとそのオーナー・クラウドのルートアカウント・SaaS契約を法人名義へ移したか
  • ☐ 外注取引の明示(書面/電磁的方法)・60日以内の支払期日・価格協議の記録を、取適法・フリーランス法に沿って整えたか
  • ☐ 顧客の個人データについて、承継前の利用目的の記載とDD提供時の契約の用意があるか

買い手の方

  • ☐ 権利帰属条項と27条・28条の特掲の有無を、主要契約で確認したか
  • ☐ 保守契約が書面化されているか・COC条項の有無・解約予告期間を確認したか
  • ☐ キーエンジニアの残留見込みと、外注取引のコンプライアンス(取適法・フリーランス法)を確認したか
  • ☐ 引き継ぐ個人情報について、承継前の利用目的の範囲(18条2項)を確認したか[C-C17]

Web制作会社のM&Aで引き継ぐのは、許可証でも設備でもなく、人・顧客との契約・知的財産です。制度が価値を守ってくれない業界では、権利の所在を確定させておくことが、そのまま「売れる状態」をつくることになります。決算書を磨く前に、権利を書き出す。それが最初の一手です。

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免責

本記事は、Web制作会社・受託開発会社のM&A(株式譲渡・事業譲渡)における契約・知的財産・個人情報の承継に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の契約の有効性・適法性・承継の可否を判断するものではなく、特定の結果を保証するものでもありません。記載した条文・官庁資料は2026年8月時点で確認したものです。取適法は2026年1月1日施行の直後であり、公正取引委員会の運用基準・ガイドブック等は今後追加・更新されうるため(2026年6月24日には運用基準の改正案が意見募集に付されています[C-C20])、最新の情報は同委員会の公表資料でご確認ください。また令和8年改正個人情報保護法は公布済み・未施行であり、施行に伴い取扱いが変わりうる点にご留意ください。契約・著作権・労務・個人情報に関する個別の判断は弁護士、税務の取扱いは税理士、労務手続は社会保険労務士へご相談ください。本記事の内容は、当社が法律事務を取り扱うことを示すものではありません。また、本記事には当社サービス(無料売却相談・案件掲載面)へのご案内を含みます。


出典

  • [C-C01] 「法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。」(著作権法15条2項・条見出し「職務上作成する著作物の著作者」)— e-Gov 著作権法(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
  • [C-C02] 「法人その他使用者(略)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。」(著作権法15条1項)※プログラム以外には「法人名義での公表」要件が付く点がプログラムとの差。個別の当てはめは専門家へ — e-Gov 著作権法(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
  • [C-C03] 「著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。」(61条1項)/「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。」(61条2項)。27条=「翻訳権、翻案権等」/28条=「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」。※条文は「推定する」であり確定ではありません — e-Gov 著作権法(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
  • [C-C04] 「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。」(著作権法59条・条見出し「著作者人格権の一身専属性」)— e-Gov 著作権法(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
  • [C-C05] 「十の二 プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。」(2条1項10号の2)/「九 プログラムの著作物」(10条1項9号)/「第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。」(10条3項)— e-Gov 著作権法(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
  • [C-C06] 旧・下請代金支払遅延等防止法は2026年1月1日施行の改正により題名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」となり、e-Gov登録の略称は「中小受託取引適正化法」「取適法」の2つ。附則「この法律は、令和八年一月一日から施行する。」。用語は 下請代金→製造委託等代金/親事業者→委託事業者/下請事業者→中小受託事業者 へ変更 — e-Gov/公正取引委員会「取適法リーフレットNo.01」(令和7年8月)(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/331AC0000000120 / https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf
  • [C-C07] 「委託事業者には、4つの義務と11の遵守事項が課されています」/「遅延利息を支払う義務 支払遅延や減額等を行った場合、遅延した日数や減じた額に応じ、遅延利息(年率14.6%)を支払うこと」/「⑪ 協議に応じない一方的な代金決定 中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金を決定すること」(条文上は5条2項4号)。※年率14.6%は公正取引委員会リーフレットに基づく記載であり、条文上は「率は公正取引委員会規則で定める」(6条)— 公正取引委員会(T1): https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf / https://laws.e-gov.go.jp/law/331AC0000000120
  • [C-C08] 「適用基準に『従業員基準』を追加 従来の資本金基準に加え、従業員基準(300人、100人)が追加され、規制及び保護の対象が拡充されます」/「書面交付義務について、中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、電子メールなどの電磁的方法による方法とすることが可能になります」/「対象取引に『特定運送委託』を追加」— 公正取引委員会「取適法リーフレットNo.01」(令和7年8月)(T1): https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf
  • [C-C08b] 委託事業者の定義(取適法2条8項)は資本金基準4号+従業員基準2号の計6号:一号=資本金3億円超(相手方=個人又は資本金3億円以下)/二号=資本金1千万円超3億円以下(相手方=個人又は資本金1千万円以下)/三号=資本金5千万円超(情報成果物作成委託等・相手方=個人又は資本金5千万円以下)/四号=資本金1千万円超5千万円以下(相手方=個人又は資本金1千万円以下)/五号=常時使用する従業員300人超(相手方=300人以下)/六号=同100人超(相手方=100人以下)。中小受託事業者(2条9項1号〜6号)がこれに対応。リーフレットの適用対象表も同じ2段構成で「委託事業者 資本金3億円超/資本金1千万円超3億円以下/従業員300人超」「(プログラム作成等を除く)資本金5千万円超/資本金1千万円超5千万円以下/従業員100人超」を掲げ、注記に「(いずれかの基準に該当すれば適用対象)」とある(資本金基準と従業員基準はOR)。※資本金1千万円超であれば、3億円・5千万円に達しなくても二号・四号により委託事業者に当たりうる点に注意。※自社が該当するかの当てはめは公取委資料でご確認ください — e-Gov/公正取引委員会(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/331AC0000000120 / https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf
  • [C-C09] 取適法の条番号:「(製造委託等代金の支払期日)第三条」(受領日から起算して「六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」)/「(中小受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)第四条」(「書面又は電磁的方法(略)により中小受託事業者に対し明示しなければならない」)/「(委託事業者の遵守事項)第五条」/「(遅延利息)第六条」。「情報成果物作成委託」は2条3項、「情報成果物」の第一に「プログラム」を掲げるのは2条7項1号、「製造委託等」の定義(特定運送委託を含む)は2条6項。※旧・下請法の条番号(2条の2/3条/4条/4条の2)は新旧対照表の左列にのみ記載しています — e-Gov(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/331AC0000000120
  • [C-C10] 「この法律において『特定受託事業者』とは、業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。 一 個人であって、従業員を使用しないもの 二 法人であって、一の代表者以外に他の役員(略)がなく、かつ、従業員を使用しないもの」(2条1項)/「(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)第三条 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、(略)書面又は電磁的方法(略)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。」/「この法律において『業務委託事業者』とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者をいう。」(2条5項)。※3条の義務主体は「業務委託事業者」であり、発注側の規模を問いません。取適法との適用関係は取引ごとに異なります — e-Gov フリーランス法(令和5年法律第25号)(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025
  • [C-C11] 「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」(27条1項・条見出し「第三者提供の制限」)/「5 次に掲げる場合において、当該個人データの提供を受ける者は、前各項の規定の適用については、第三者に該当しないものとする。(略)二 合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合」(27条5項2号)。※28条は「外国にある第三者への提供の制限」であり別条です — e-Gov 個人情報保護法(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057
  • [C-C12] 「事業を譲渡した会社(略)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、(略)指定都市にあっては、区又は総合区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。」(会社法21条1項)/「2 譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。」/「3 前二項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない。」— e-Gov 会社法(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
  • [C-C13] 「債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。」(民法467条1項)/「2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。」(条見出し「債権の譲渡の対抗要件」)。※会社法467条(事業譲渡等の承認)とは別の条文です — e-Gov 民法(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • [C-C13b] 「使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。」(民法625条1項・条見出し「使用者の権利の譲渡の制限等」)— e-Gov 民法(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • [C-C13c] 「第五百三十九条の二 契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。」(民法・第三款「契約上の地位の移転」)。※契約ごと移す場合は539条の2、債権だけを移す場合の対抗要件は467条で、条文が異なります — e-Gov 民法(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • [C-C14] 「(解雇)第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労働契約法16条)。※本記事では、退職後の競業避止義務の有効性の根拠条文として労働契約法16条を用いていません(同条は解雇の規定です)。競業避止の有効性は判例の蓄積により判断される問題であり、個別の判断は弁護士へ — e-Gov 労働契約法(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128
  • [C-C15] 「ユーザー。本条件に従い、お客様は、個人アカウントおよびその中のコンテンツに対する最終的な管理権を保持します。」/「組織アカウント。本条件に基づいて作成された組織アカウントの『オーナー』は、その組織アカウントおよびその中のコンテンツに対する最終的な管理権を保持します。(略)組織アカウントには複数のオーナーを含めることができますが、組織アカウントの所有者として少なくとも1つの個人アカウントを指定する必要があります。」(発効日 2026年4月27日)— GitHub「GitHubのサービス使用条件」(T2・attributed): https://docs.github.com/ja/site-policy/github-terms/github-terms-of-service
  • [C-C16] 「また、事業の承継のための契約を締結するより前の交渉段階で、相手会社から自社の調査を受け、自社の個人データを相手会社へ提供する場合も、本号に該当し、あらかじめ本人の同意を得ることなく又は第三者提供におけるオプトアウト手続を行うことなく、個人データを提供することができるが、当該データの利用目的及び取扱方法、漏えい等が発生した場合の措置、事業承継の交渉が不調となった場合の措置等、相手会社に安全管理措置を遵守させるために必要な契約を締結しなければならない。」(3-6-3)— 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(T1): https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
  • [C-C17] 「個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。」(個人情報保護法18条2項)。あわせて「事業者が合併や組織再編等を行う場合に、ホームページ等に記載している個人情報の利用目的の確認を行わなかったため、正しく利用目的を通知・公表していない状態で個人情報を利用している事例が発生しています。」(令和3年6月23日)— e-Gov/個人情報保護委員会「合併や組織再編等を行う事業者の方へ」・ガイドライン(通則編)3-1-4(T1): https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057 / https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/gappei_soshikisaihen/ / https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
  • [C-C18] 「著作者とは『著作物を創作する者』のことであるため、著作物の創作を他人や他社に委託(発注)した場合は、料金を支払ったかどうか等にかかわりなく、実際に著作物を創作した『受注者側』が著作者となります。」/「(なお、プログラムの著作物については、公表されない場合も多いため、(d)の要件を満たす必要はありません)」/「これらの権利を含めた著作権の譲渡を受ける際、契約書に『すべての著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する』と記載しておく必要があります。」/「『著作者人格権』については、利用者に自由に使わせる必要がある場合などに、著作者人格権を行使しない旨を規定する例も見受けられます。この場合、著作者としては、依頼者が著作物を改変、修正した場合や著作者の氏名を表示しなかった場合でも異議を述べることができないといった不利益が生じるため注意が必要です。」— 文化庁「著作権テキスト」(全117頁・PDF作成日2026年6月1日)(T1): https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/94388701_01.pdf
  • [C-C19] 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」は令和8年7月10日に成立し、令和8年7月17日に公布。施行期日は「原則として公布の日から起算して2年を超えない範囲内」で、2026年8月時点では未施行。公表されている改正概要では27条1項・2項・7項が改正対象として挙げられている一方、本記事が依拠する27条5項2号・18条2項は掲げられていない(改正されないと断定できるものではありません)— 個人情報保護委員会(T1): https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/r8kaiseihogohou/ / https://www.ppc.go.jp/files/pdf/260717_kaiseihounitsuite.pdf
  • [C-C20] 公正取引委員会・中小企業庁・特許庁は令和8年(2026年)6月24日、「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」(知財取引指針)および「契約書ひな形」(別紙1-2)を公表。同日、公正取引委員会は「知財取引指針の内容等を踏まえ、『製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律』(昭和31年法律第120号)及び『特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律』(令和5年法律第25号)の解釈・考え方を更に明確にするため」として両法の運用基準・考え方の改正案を意見募集に付した(意見提出期限=令和8年7月23日23時59分必着)。※2026年8月3日時点で改正手続は進行中であり、確定版の内容・時期は未定です — 公正取引委員会(T1): https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2026/jun/260624_chizaitorihiki.html / https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2026/jun/260624_pubcomme.html
  • [C-01] 情報サービス業の売上高営業利益率は加重平均10.79%/中央値6.79%(2025年版=2024年度実績・回答300社/加重平均の母数は有効回答286社)。※原典の表記は「平均値(加重平均)」であり単純平均ではありません。※同統計に粗利率・売上総利益率の項目はなく(全65頁で該当語0件)、粗利率をJISAに帰属させることはできません。※母集団はJISA正会員企業で、小規模Web制作会社をそのまま代表するものではありません。※2026年版は未公表(2026年8月3日時点) — 情報サービス産業協会(JISA)「情報サービス産業 基本統計調査」2025年版 図表2-39(T2・attributed): https://www.jisa.or.jp/Portals/0/report/basic2025report.pdf
  • [C-04] 2024年のIT・情報サービス業界のM&Aは377件(前年342件)。レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンターが集計(マール40分類「ソフト・情報」・経営権移転を伴うもの)。※原典が「377件という件数は、買手企業が開示義務を負っている上場企業などの場合の件数を集計したのみ」と明記しているとおり公表ベースの限定集計です。※他社集計の国内M&A総件数とは母数定義が異なるため、並置やシェアの算出はしていません — 日本M&Aセンター(T2): https://www.nihon-ma.co.jp/columns/2024/x20241227-1/
  • [C-05] 情報通信業の倒産は2025年(暦年)438件(前年比3.0%増)/2024年(暦年)425件/2025年度(4-3月)は432件(前年度比6.0%減)。※暦年と年度で集計期間が異なり、暦年は増加・年度は減少と傾向が逆転するため併記しています。※暦年の値と年度の値は別々の公表資料に基づきます — 東京商工リサーチ(T2): 暦年=https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1202288_1610.html / 年度=https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1202724_1610.html
  • [C-06] 情報通信業の後継者不在率は77.06%(前年77.32%)で産業別の最高水準(同調査の全産業は62.60%・2025年)。※帝国データバンクの2025年調査は全業種50.1%ですが、母集団・定義が異なり直接比較はできません(同社は情報サービス業単独値を公表していません) — 東京商工リサーチ/帝国データバンク(T2・attributed): https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201982_1527.html / https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
  • [C-07] 2030年時点のIT人材の需給ギャップは高位約78.7万人/中位約44.9万人/低位約16.4万人。※「約79万人」は高位シナリオの値であり、2019年公表の報告書=生成AI普及前の前提に基づく試算です — 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(T1・attributed+range): https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf
  • [C-08] ma-platform /malist に掲載中のIT/Web系の売り案件は92件(当社調べ・2026年8月3日実計数)。数え方=`/wp-json/wp/v2/malist?industry=<業種ID>&status=publish` の重複排除後の実数(ECサイト・WEBショップ57/WEBサービス・アプリ・システム35/WEBサイト・WEBメディア18/WEB制作・デザイン・システム12 のユニオン)。※1案件が複数の業種タームを持つため、業種タームの件数を単純合算すると重複計上になります。また業種タクソノミーは売り案件と買いニーズで共用のため、ターム件数には買いニーズが含まれます。※掲載は希望額であり成約額ではありません。※内訳はアセット・システムの譲渡案件が大半で、Web制作会社(法人)の株式譲渡の件数ではありません — 自社データ(proprietary・attributed)
  • [C-H13] 2025年に倒産・休廃業解散で市場から退出した普通法人の市場退出率は情報通信業4.98%が産業別で最も高い(前年4.52%/卸売業3.06%・製造業2.61%)。東京商工リサーチは要因として「ソフトウェア開発やホームページ制作などの『情報サービス業』の退出法人数が特に増加」したことを挙げている。※「市場退出」=倒産+休廃業・解散、集計対象は普通法人に限定されています — 東京商工リサーチ(T2): https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203057_1527.html