Web制作会社の利益率と社長年収|受託の薄利と保守ストックの差
「Web制作は儲からない」とよく言われます。一方で業界団体の統計を開くと、営業利益率は二桁に届いている——この食い違いはどこから来るのでしょうか。答えの半分は、加重平均と中央値の差にあります。本記事は求人サイトの「平均年収◯万円」でも、制作会社の自社ブログの「粗利率◯%」でもなく、一次統計でWeb制作会社の利益率と年収の実態を検証し、「買収後にいくら残るのか」という買い手・経営者の物差しに翻訳するものです。Web制作会社は固定資産も、建設業許可や飲食店営業許可に相当する事業許可も持ちません。利益のほぼ全量が「人月単価 × 稼働率 − 人件費」で決まる——だからこそ、決算書の利益率よりも先に見るべき指標があります。相場(いくらで売れるか)は別記事に譲り、ここでは「利益率の中身」に絞ってお伝えします。
本記事は「Web制作会社という法人(会社)の収益性」が主題です。 Webサイト1個・ECサイト1個・ブログ1個を運用/転売して儲かるか(アセット単位の収益性)は、サイト売買は本当に儲かる?月収レンジ・成功率をご覧ください。アセット1個の収益性(月次利益×◯ヶ月)と、制作会社という法人の収益性(人月×稼働率+保守ストック)は、評価の物差しそのものが違います[C-N15]。
この記事の結論(先に要点だけ)
- 情報サービス業(=ソフト開発・受託・パッケージ。Web制作会社に最も近い母数)の売上高営業利益率は、加重平均10.79%/中央値6.79%(JISA「2025年版 情報サービス産業 基本統計調査」=2024年度実績・回答300社/加重平均の母数は有効回答286社)[C-01]。加重平均が中央値を約4ポイント上回る=分布は下方に厚く、中小の実感は中央値側にあります。実際、営業利益率が0%以上8%未満の企業が165社(55.0%)を占めます[C-N17]。
- ネット上でよく見る「Web制作の粗利率は◯割」といった数字は業界ブログ由来で、JISAの統計には粗利率(売上総利益)の項目そのものがありません[C-N01]。粗利率を語るなら、中小企業実態基本調査の情報サービス業(中小企業・法人)売上総利益率46.53%/売上高営業利益率5.64%(令和6年度決算実績)が一次の正本です[C-N18]。粗利率と営業利益率は別物です。
- Web制作会社は固定資産も、この業種を営むための事業許可も原則として持ちません[C-N04]。だから利益率は実質「人月単価 × 稼働率 − 人件費」で決まります。実額でも、情報サービス業では人件費と外注費だけで売上高の約56%を占めます[C-N19]。
- 社長・オーナーの年収は、公的統計が直接出していません[C-N05]。従業員側の年収も、賃金構造基本統計調査が公表しているのは月額給与と年間賞与であって”年収”そのものではないため、換算式を明示して幅で示すしかありません[C-N06]。
- それでも買い手は付きます——決算の営業利益率でなく「1人当たり売上・1人当たり営業利益」と「保守ストックの比率」でスクリーニングし、社長がプレイヤーなら役員報酬の足し戻しを割り引き、給与が市場相場より低ければ昇給余地を価格から先に引くからです[C-N07]。次の一手は、「儲かるか」を「買収後にいくら残るか」に問い直すことです。
§1 Web制作会社のビジネスモデル — 「固定資産も許認可も無い会社」の利益はどこから出るか
利益率の話に入る前に、Web制作会社が何を売って何にお金を使っているのか、そしてこの業種にだけ無いもの(許認可・固定資産・在庫)を押さえておきます。ここが建設業・飲食業の収益構造と決定的に違うところで、この違いを飛ばすと「儲かるのに薄利」という食い違いは解けません。
Web制作会社とは、Webサイト・LP・ECサイト・小規模システムの企画/デザイン/実装/運用を受託する事業者です。本記事が扱うのは「サイト1個の売買」ではなく、「会社(法人)」の収益性です(サイト・EC・ブログといったアセット1個を運用/転売して儲かるかはサイト売買は本当に儲かる?へ)。
売上は大きく2層に分かれます。ひとつは受託(フロー)——制作案件ごとの請負・準委任で、人月×単価で積み上がりますが、案件が終われば売上はゼロに戻ります。もうひとつは月額保守・運用(ストック)——サーバ/ドメイン管理、更新代行、SEO・広告運用、SLAといった継続契約で、金額は小さくても翌月も立ちます。この二層の性質差が、後述する評価の分かれ目になります。
コスト側はもっと単純です。原価のほぼ全量が人件費と外注費で、設備投資・在庫・店舗家賃は実質ゼロ。これは印象論ではなく実額で確認できます。中小企業実態基本調査(令和7年確報=令和6年度決算実績)の情報サービス業(法人・中小企業33,354社)では、売上原価のうち労務費が売上高の17.4%、販管費のうち人件費が21.1%(人件費計 約38.5%)、売上原価のうち外注費が17.8%——人件費と外注費だけで売上高の約56%を占めます[C-N19]。固定費の主体が人件費である以上、損益分岐点は「稼働率」で動きます。
そしてもう一点。Web制作・受託開発には、建設業許可や飲食店営業許可に相当する「この業種を営むための許可」が原則として存在しません[C-N04]。建設業では許可と有資格者が会社に残り、飲食業では店舗と設備が残りますが、Web制作会社に残るのは人と顧客契約とコードだけです。これが「では何が価値なのか」という§4の論点に直結します(契約・著作権の引継ぎ実務そのものはWeb制作会社のM&Aで著作権とソースコードは引き継げる?に譲ります)。
なお、事業内容によっては別途の許可・届出(労働者派遣、有料職業紹介、電気通信事業の届出など)が必要になる場合があります。「IT・Webに許認可が一切存在しない」という意味ではありません[C-N04]。
最後に、本記事全体にかかる前提を一つ。Web制作会社”だけ”の財務や年収を直接出す官庁統計は存在しません[C-N09]。日本標準産業分類上、Web制作は「39 情報サービス業」「40 インターネット附随サービス業」「41 映像・音声・文字情報制作業」に分散し、内容によっては「73 広告業」にも入りえます。そこで本記事は、最も近い母数として情報サービス業(JISA/中小企業実態基本調査)を使い、そのつど「Web制作会社単独ではない」と注記します。総務省の「情報通信業基本調査」は電気通信・放送・映像制作・インターネット附随サービスの4業種が対象で、情報サービス業を含まない別の統計です[C-N09]。同じ「IT」というラベルで並べないでください。
業界そのものの見通し(AIによる二極化・人材不足・後継者不在から「続ける/売る/買う」を判断する視点)はWeb制作会社の将来性2026|AIで淘汰される会社と残る会社の分かれ目で俯瞰しています。本記事は「収益性の物差し」に絞ります。
§2 なぜ「Web制作は儲からない」と言われるのか — 人月単価×稼働率という利益の規定式
「儲からない」という体感と、「営業利益率は二桁」という統計。このギャップを、分布の形と利益の規定式、そして競争構造の3点で解きほぐします。
加重平均10.79%と中央値6.79%は、同じ業界の別の顔
JISA「2025年版 情報サービス産業 基本統計調査」(2024年度実績・回答300社)によれば、情報サービス業の売上高営業利益率は加重平均10.79%/中央値6.79%です[C-01]。加重平均は売上規模の大きい企業の影響を強く受けるため、中小の実感に近いのは中央値のほうです。
分布を開くと、その姿がもっとはっきりします。営業利益率の階級別企業数は、6%以上8%未満が54社(18.0%)で最多。0%以上8%未満に165社=回答300社の55.0%が集中し、10%以上は78社(26.0%)、0%未満(赤字)は8社(2.7%)です[C-N17]。つまり、中央値が入る階級が最も厚く、上位の一部が加重平均を押し上げている——これが「業界平均は◯%」という一括りの断定を避けるべき理由です。
なお、JISAの統計には「粗利率」「売上総利益」という項目そのものが存在しません(本記事の調査で全65頁を走査し0ヒットを確認)[C-N01]。ネット上でよく見る「Web制作の粗利率は◯割」という類の数字を、この統計に帰属させることはできません。粗利率と営業利益率は別の指標です。
利益の規定式 — 「人月単価 × 稼働人数 × 稼働率 − 人件費」
固定資産も在庫も持たない以上、営業利益はおおむね次の形になります。
営業利益 ≒(人月単価 × 稼働人数 × 稼働率)−(人件費+外注費+販管費)
人件費は月ごとに減りません。だから稼働率が数ポイント落ちるだけで営業利益が消える——この感度の高さが、この業種の薄さの正体です[C-N02]。建設業では有資格者の配置コストが、飲食業では原価と人件費の比率が利益率を規定しますが、Web制作会社でその位置にあるのは「稼働率」です(建設・飲食の具体的な財務指標は業種が違うため本記事では扱いません)。
競争構造 — 参入障壁の低さと、多重下請け
- 新規参入の脅威=極めて大きい。事業許可も設備投資も要らず、PC1台とスキルで開業できます[C-N04]。価格競争は構造的に起きます。開業が容易だということは全員にとって容易だということで、ゼロから起業する場合と既存の制作会社を買う場合の違いはWeb制作会社は起業と買収どっちで比較しています。
- 発注者(買い手)の交渉力=強い。相見積が容易で、成果物も比較しやすい領域です。
- 供給者(エンジニア・デザイナー)の交渉力=強い。経済産業省の委託調査(2019年公表)では、生産性上昇率0.7%を前提に2030年のIT人材需給ギャップは高位78.7万人/中位44.9万人/低位16.4万人と試算されています[C-N10]。よく引かれる「最大約79万人不足」は高位シナリオの値で、生成AI普及前に置かれた前提である点に注意が必要です。結果として、人件費には上がる圧力、単価には上がりにくい圧力という板挟みが生じます。
- 代替の脅威=ノーコード/CMSテンプレート/生成AI。ただし「生成AIでWeb制作の単価が一律に下落した」と示す一次統計は、本記事の調査時点では確認できていません[C-N11]。制作会社の自社ブログや小規模なPR調査は一次統計として扱っていません。この論点の深掘りはWeb制作会社の将来性に譲ります。
- 競合=多数、そして多重下請け。JISAの詳細編(回答300社のうち売上規模が極端に大きい5社を除いた295社)を従業員規模別に見ると、売上に占める「同業者向け」の比率は大企業6.0%に対し小企業(従業員200人以下)30.9%[C-N21]。小さい会社ほど売上の3割が同業者=上位ベンダから来ている——価格交渉力が弱い構造が、統計に現れています。
帰結としての倒産と後継者不在
情報通信業の倒産は、2025年(暦年)438件で前年比3.0%増・4年連続の増加、2025年度では432件で前年度比6.0%減(いずれも東京商工リサーチ集計)[C-N12]。暦年と年度で集計期間が違うため、両方を併記しています。後継者不在率については、東京商工リサーチの2025年調査で情報通信業77.06%(産業別で最高/同調査の全産業は62.60%)、一方帝国データバンクの調査は全業種50.1%で、情報サービス業の単独値は公表されていません[C-N13]。集計主体が違う数字なので、単純に比較はできません。
「続ける/畳む/譲る」を手取りで比べる視点はWeb制作会社は廃業と売却どっちが得?で扱っています。本記事は出口の話には踏み込みません。
§3 Web制作会社の利益率と年収の実態 — 一次統計で検証する
ここが本記事の核です。利益率と年収を、出典・母数・年度・幅まで含めて正直に検証します。求人メディアが断言する平均年収と、一次データで言える範囲の違いを示し、「利益は人の稼働からしか出ない」という構造を腹落ちさせます。
利益率①:業界団体ベース — 加重平均10.79%/中央値6.79%(情報サービス業・2024年度実績)
| 指標 | 値 | 母数・注記 | |——|—:|———–| | 売上高営業利益率(加重平均) | 10.79% | 有効回答286社の加重平均[C-01] | | 売上高営業利益率(中央値) | 6.79% | 回答300社[C-01] | | 0%以上8%未満の企業 | 165社(55.0%) | 最多階級は6〜8%未満の54社(18.0%)[C-N17] | | 10%以上の企業 | 78社(26.0%) | ─[C-N17] | | 赤字(0%未満)の企業 | 8社(2.7%) | ─[C-N17] |
(出典:JISA「2025年版 情報サービス産業 基本統計調査」図表2-39。対象は2024年4月1日〜2025年3月31日に終了した事業年度の単独決算[C-01]。2026年版は本記事の調査時点で未公表です[C-N16])
★重要な注記:この調査の回答企業は1社平均で従業員932人規模です[C-01]。中小のWeb制作会社の実像とは大きく違います。「Web制作会社の営業利益率は10.79%」と読み替えることはできません。
参考までに資本系列別(詳細編295社)を見ると、売上高営業利益率は独立系13.61%(220社)/コンピュータ・メーカー系10.49%(16社)/ユーザー系7.06%(52社)で、詳細編全体は10.15%です[C-N22]。Web制作会社は資本的に独立した中小が大半なので「独立系13.61%」に目が行きますが、これはあくまで平均932人規模のJISA正会員のうちの独立系です。そのまま自社に当てはめず、次の規模別と併せて読んでください(なお、概要編の加重平均10.79%と詳細編の10.15%は集計対象が異なるため、増減を語れる数字ではありません)。
利益率②:中小の実額ベース — 粗利率46.53%/営業利益率5.64%
「もっと自社に近い規模の数字が見たい」——その要求に一次で応えられるのが、中小企業実態基本調査です。令和7年確報(令和6年度決算実績・2026年6月29日公開)の情報サービス業(法人・中小企業33,354社/従業者626,789人/売上高8兆47億円)から、公表実額を使って次を算出しました。
| 指標 | 値 | 算式 | |——|—:|——| | 売上総利益率(粗利率) | 46.53% | 売上総利益 ÷ 売上高[C-N18] | | 売上高営業利益率 | 5.64% | 営業利益 ÷ 売上高[C-N18] | | 1社当たり売上高 | 約2.40億円 | 売上高 ÷ 企業数[C-N18] | | 1人当たり売上高 | 約1,277万円 | 売上高 ÷ 従業者数[C-N18] | | 1人当たり営業利益 | 約72万円 | 営業利益 ÷ 従業者数[C-N18] |
さらに従業者規模別(こちらは情報サービス業より広い「情報通信業」の法人企業)を見ると、営業利益率は5人以下3.27%/6〜20人5.66%/21〜50人2.55%/51人以上6.66%、1人当たり営業利益は5人以下 約50万円に対し51人以上 約110万円です[C-N20]。
JISAの中央値6.79%と、中小企業実態基本調査の5.64%は、母集団も年度も算式も違うので合成できません。ただし両者は同じ方向を指しています——規模が下がるほど利益は薄くなる。JISAの詳細編でも、売上高営業利益率は大企業(従業員1,001人以上)10.91%→中堅7.99%→中企業7.60%→小企業(200人以下)7.00%、1人当たり営業利益は大企業3,850千円に対し小企業1,172千円(約3.3倍差)と開いています[C-N21]。

図解F1:Web制作会社の利益はどこから出るか(P/L階段と分布の読み方)。数値は本文・出典準拠。
なぜ利益が残らないのか — 人件費比率は「小さい会社ほど高い」
規模が下がるほど薄くなる理由も、統計に現れています。JISA詳細編の売上高人件費率は、大企業27.57%→中堅31.60%→中企業35.56%→小企業38.38%と上がり、逆に売上高外注費率は35.70%→27.65%と下がります[C-N21]。小さい会社ほど自社人員の比率が高く、繁閑を外注で調整する余地が小さい——だから稼働率が落ちたときの打撃をそのまま受けます。加えて、ソフトウェア開発の売上構成比は大企業15.4%に対し小企業45.6%[C-N21]。小規模ほど労働集約の受託に寄っている構造です。
なお、人月単価の相場・稼働率の水準を示す一次統計は、本記事の調査では見つかりませんでした。したがって具体的な単価や「稼働率◯%が損益分岐点」といった数値は本記事では示しません[C-N02]。
受託フロー vs 月額保守ストック — 「率は高いが額は小さい」ストックの正体
同じ「売上」でも、中身が違います。
- 受託(フロー):案件ごと。人月×稼働率で積み上がり、額は大きいが率は薄く、終われば売上はゼロに戻ります。
- 月額保守・運用(ストック):サーバ/ドメイン管理、更新代行、SEO・広告運用、SLA。原価が薄いため率は高いが、1社あたりの額は小さいのが実態です。
それでも買い手が保守ストックを重視するのは、継続的収益が将来キャッシュフローの予測可能性を上げるからです。翌月も立つ売上があるかどうかで、事業計画の置き方が変わります。
ただし、「保守が月商の◯%あれば合格」といった目安を示す一次統計は存在しません[C-N03]。JISAにも中小企業実態基本調査にも「保守契約」「MRR」を集計した項目はありません。本記事では金額レンジや比率の目安は示さず、率と額を分けて見るという構造の指摘に留めます。保守契約そのものの引継ぎ実務(チェンジオブコントロール条項・再委託制限・顧客の同意)はWeb制作会社のM&Aで著作権とソースコードは引き継げる?へ。

図解F2:同じ売上でも中身が違う(受託フロー/月額保守ストックの二層)。数値は本文・出典準拠。
社長・オーナーの年収 — 「役員報酬=手取り」ではない
先に結論を言うと、Web制作会社の社長・オーナーの年収を直接出す公的統計は存在しません[C-N05]。賃金構造基本統計調査は雇用労働者が対象で役員を含みませんし、JISAの賃金表も25歳・30歳・35歳の従業員が対象です。役員報酬は会社規模・利益・節税方針で大きく変わるため、幅でしか語れないというのが正直なところです。本記事では金額を示しません。
より重要なのは、中小オーナーの会社では役員報酬・私的費用・節税によって営業利益が圧縮されがちだという点です。だから決算の営業利益がそのまま実力を表すわけではありません。M&Aの実務ではこれを「正常収益力(実態利益)」に引き直します。
そしてここにWeb制作会社固有の落とし穴があります。社長自身がトップのエンジニア/デザイナーである場合、役員報酬はオーナーへの分配であると同時に、労働の対価でもあるからです。単純に足し戻せません。これが§4の核になります。
エンジニア・デザイナーの年収 — 「買い手が引き継ぐ人件費」として読む
ここからは従業員側の賃金です。ただし本記事の目的は求職者向けの年収比較ではなく、買い手が引き継ぐ人件費コストの水準を掴むことにあります。
まず統計の定義から。賃金構造基本統計調査が公表しているのは「きまって支給する現金給与額(月額・超過労働給与を含む)」「所定内給与額」「年間賞与その他特別給与額」であり、”年収”そのものではありません[C-N06]。以下は「きまって支給する現金給与額 × 12 + 年間賞与その他特別給与額」で本記事が換算した値です。所定内給与ベースで計算すれば値は下がります(例:ソフトウェア作成者は約537.7万円)。
令和7年賃金構造基本統計調査(職種・第1表・産業計・男女計)
| 職種 | 企業規模 | きまって支給(千円) | 年間賞与(千円) | 年収換算(本記事算出) | |——|———-|———:|———:|———:| | システムコンサルタント・設計者 | 計(10人以上) | 542.1 | 2,385.2 | 約889.0万円 | | 〃 | 10〜99人 | 384.3 | 1,239.8 | 約585.1万円 | | ソフトウェア作成者 | 計(10人以上) | 390.8 | 1,095.1 | 約578.5万円 | | 〃 | 10〜99人 | 360.6 | 855.1 | 約518.2万円 | | その他の情報処理・通信技術者 | 計(10人以上) | 415.8 | 1,108.0 | 約609.8万円 | | デザイナー | 計(10人以上) | 375.6 | 888.6 | 約539.6万円 | | 〃 | 10〜99人 | 342.1 | 617.8 | 約472.3万円 |
(出典:e-Stat 令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者/職種 第1表[C-N06]。概況・統計表とも2026年3月24日公表で、本記事の調査時点ではこれが最新です。令和6年調査には令和8年3月24日付の結果表訂正がありましたが、対象は在留資格区分別の統計表で、令和7年調査には正誤情報が出ていません[C-N26])
★職種名の限界:令和7年の職種小分類にも「Webデザイナー」「Webディレクター」「フロントエンドエンジニア」という行はありません。最も近いのがグラフィック等も含む大括りの「デザイナー」と「ソフトウェア作成者」です。したがって「Web制作会社の平均年収は◯万円」とは書けません[C-N06]。
★そして、本記事で最も重要な数字がこれです。企業規模1,000人以上と10〜99人の年収換算差は、システムコンサルタント・設計者で約425.3万円(10〜99人は1,000人以上の57.9%水準)/ソフトウェア作成者で約122.7万円(80.9%)/デザイナーで約258.5万円(64.6%)[C-N25]。小さい会社の賃金は、大企業のおおむね6〜8割(システムコンサルタント・設計者では6割を切る)水準にある——この事実が§4の「昇給余地の先引き」の土台になります。ただし職種小分類は標本規模が小さく、年によって振れます(同じ差を令和6年調査で計算すると約139.0〜249.1万円)。単年の差を絶対視せず、水準感の把握に使ってください[C-N25]。
同じ傾向は業界団体の統計でも確認できます。JISAの賃金状況表(回答300社の単純平均・残業手当を含まない「給与×12+賞与」)では、25歳 約410.2万円/30歳 約491.8万円/35歳 約571.4万円[C-N23]。さらに30歳平均年収を従業員規模別に見ると、小企業465.8万円(74社)/中企業475.3万円(79社)/中堅企業492.7万円(47社)/大企業538.3万円(56社)、営業地域別では地方型444.1万円(40社)/首都圏型483.9万円(106社)/全国型512.6万円(110社)です[C-N24](この設問への回答社数は規模別内訳の合計で256社。詳細編295社の全数ではありません)。
★両統計を足したり平均したりしないでください。賃金構造基本統計は産業計の職種別・雇用労働者、JISAは正会員企業の年齢別・単純平均・残業手当なし——母集団も算式も違います[C-N06][C-N23]。
利益率・年収サマリ表
| 論点 | 一次統計で言えること | 母数・年度・限界 | |——|———————|—————–| | 営業利益率 | 加重平均10.79%/中央値6.79%[C-01] | 情報サービス業(JISA正会員・1社平均932人)・2024年度実績 | | 分布 | 0〜8%未満に165社(55.0%)[C-N17] | 同上・回答300社 | | 粗利率 | 46.53%(中小・情報サービス業)[C-N18] | 中小企業実態基本調査 令和6年度決算実績・実額からの算出。JISAには粗利率の項目が無い[C-N01] | | 1人当たり営業利益 | 約72万円(中小・情報サービス業)[C-N18]/小企業1,172千円・大企業3,850千円(JISA)[C-N21] | 母集団が違うため合成不可 | | コスト構成 | 人件費 約38.5%+外注費17.8%=約56%[C-N19] | 中小・情報サービス業・実額からの算出 | | 社長年収 | 公的統計なし[C-N05] | 金額は示せない | | 従業員の年収 | ソフトウェア作成者 約578.5万円/デザイナー 約539.6万円ほか[C-N06] | 「きまって支給×12+年間賞与」による換算値。令和7年調査・産業計・職種小分類(Web専業の行は無い) | | 規模間の賃金差 | 122.7〜425.3万円[C-N25] | 1,000人以上 − 10〜99人。年齢構成・職務範囲の差を含み、年次で振れる | | 人月単価・保守比率 | 一次統計なし[C-N02][C-N03] | 定性でしか語れない |
§4 【M&A・投資視点】買い手は「1人当たり利益」で見る — プレイヤー社長ディスカウントと昇給余地
営業利益率の中央値が6.79%(情報サービス業)という労働集約の業種を、買い手はなぜ買うのでしょうか。答えは単純です——買っているのは利益率ではなく、人と顧客契約とコードだからです。事業許可も固定資産も無いこの業種では、価値の全量が①エンジニア(人)②顧客契約・保守契約・受注残③知的財産(ソースコード・ドメイン)に集中します。だから評価も、率ではなく人ベースの指標になります。
買い手のスクリーニング指標3つ
① 1人当たり売上・1人当たり営業利益(率でなく”人あたり”で見る)
決算の営業利益率は、役員報酬・私的費用・節税で歪みます。まず正常収益力(実態利益)に引き直し、次に従業員数(+常時稼働のフリーランス数)で割る。売上規模より「1人でいくら稼いでいるか」が、この業種の実力にいちばん近い指標です。
これは実務の勘所であると同時に、統計側も裏打ちしています。JISAは「従業員一人あたりの売上高/人件費/営業利益」を正式な経営指標として掲載しており、1人当たり営業利益は小企業1,172千円に対し大企業3,850千円[C-N21]。中小企業実態基本調査でも情報サービス業の1人当たり営業利益は約72万円、情報通信業の従業者規模別では5人以下 約50万円/51人以上 約110万円です[C-N18][C-N20]。買収対象がこのレンジのどこにいるかは、決算の利益率よりずっと雄弁です。
併せて確認したいのが稼働率(アサインされていない人月がどれだけあるか)と外注比率(自社の粗利が外注に流出していないか)です。
② 収益の質 — 保守ストックの比率・顧客集中度・受注残
月額保守/運用のストックが月商のどれくらいを占めるか。ただし前述のとおり率は高いが額は小さいので、額と率の両方を見ます[C-N03]。加えて、特定1社への売上依存(顧客集中度)、受注残(バックログ)の厚みと質、そしてチェンジオブコントロール条項の有無(支配権移転で契約が切れないか)。契約面の実務は著作権とソースコードの引継ぎへ。
③ 人的リスク — キーマン依存・給与ギャップ・流出(この業種で最大)
社長・キーエンジニアへの依存度(売上の何割がその人の稼働に紐づくか)は必ず定量化します。IT・Webでは退職届1枚で競合になりうるため、人的リスクは他業種と重みが違います。
★補正A:プレイヤー社長ディスカウント
中小M&Aの定石は「役員報酬・私的費用を足し戻して正常収益力を出す」ことです。ところがWeb制作会社では社長自身がトップのエンジニア/デザイナーであることが多く、役員報酬は”オーナーへの分配”であると同時に”労働の対価”でもあります。
そのまま足し戻すと、社長が引退した瞬間に消える売上・稼働まで利益として数えてしまう——これが過大評価です。実務では、社長の稼働を外注または採用で置き換えた場合のコスト(代替人件費)を控除して、初めて実態利益と見ます。代替人件費の水準は、§3の職種別賃金(ソフトウェア作成者 約578.5万円、システムコンサルタント・設計者 約889.0万円など)が見積もりの出発点になります[C-N06]。
建設業なら許可と有資格者が、飲食業なら店舗と設備が会社に残ります。Web制作会社に残るのは人と契約とコードだけ——だからこの控除が効きます。なお、控除幅の「相場」はありません。案件ごとに社長の稼働実態から積み上げるものであり、本記事では割引率の数値は示しません[C-N07]。
★補正B:昇給余地の先引き
もうひとつが、「安く買えた会社ほど、買収後に人件費が上がる」という逆説です。
§3で見たとおり、企業規模10〜99人の年収換算は1,000人以上のおおむね6〜8割水準(職種によっては6割を切る)にあります(差は122.7〜425.3万円)[C-N25]。JISAの30歳平均年収でも、小企業465.8万円 vs 大企業538.3万円という開きがあります[C-N24]。つまり、市場相場より低い給与で回っている会社は、買収後にリテンション目的の昇給が必要になる可能性が高い。エンジニアの流出が競合化に直結する業種では、この昇給は「やってもいい施策」ではなく「やらざるを得ない前提」になりがちです。
だからこの昇給余地は、買収価格から先に引いておく——というのが実務での見方です。
ただし注意点を1つ。規模間の賃金差は、そのまま必要昇給額ではありません。年齢構成・勤続年数・職務範囲・地域が異なるためです[C-N25]。使い方は「価格から引くべき金額」の算出ではなく、「この会社の給与水準は、市場のどのあたりにいるのか」を把握するためのベンチマークです。

図解F3:決算の利益率 ≠ 買収後に残る利益(スクリーニング指標と2つの補正)。数値は本文・出典準拠。
売り手が磨けば、評価は変わる
薄利でも評価される会社に整えるための順序は、次の3つです。
1. 正常収益力を説明できる決算3期にする。役員報酬・私的費用・一過性損益を整理し、社長自身の稼働分は分けて示す。これがあるだけで、買い手は補正Aを過大に見積もらずに済みます。 2. 稼働率と保守ストックを上げる。低単価・低粗利案件を整理し、月額保守・運用契約の締結率を上げ、顧客集中度を下げる。継続的収益は将来キャッシュフローの読みやすさに直結します。 3. 人の引継ぎ設計。キーメンバーの処遇を市場水準に近づけ(=補正Bの余地を自分で潰す)、社長依存を減らし、雇用条件・業務委託を書面で整える。
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価格そのものの話は、別記事へ
「では、いくらになるのか」——年買法(時価純資産+営業利益の数年分)やEBITDA倍率といった算定式は本記事では扱いません。Web制作会社の売却相場2026|年買法と保守ストックでいくらになるかにまとめています。本記事の役目は、その手前——営業利益が薄いこの業種では、正常収益力の引き直し(補正A・補正B)が価格を大きく左右するという点を押さえることです[C-N14]。用語の整理はEBITDAとは(営業利益との違い)・のれん(営業権)とは、評価実務の全体像は中小M&Aのバリュエーション実務、買い手側の流れは個人が会社を買う方法をご覧ください。
実務チェックリスト
買い手:収益性をスクリーニングする10項目
- ☐ 1人当たり売上・1人当たり営業利益を算出したか(正常収益力に引き直したうえで)
- ☐ 稼働率とアサイン状況を確認したか(アサインの無い人月がどれだけあるか)
- ☐ 外注比率を確認したか(自社の粗利が外注に流出していないか)
- ☐ 月額保守・運用のストックと、その月商比率を額と率の両方で見たか
- ☐ 顧客集中度(特定1社依存)を確認したか
- ☐ 受注残(バックログ)の厚みと質を確認したか
- ☐ 社長の稼働が売上のどれだけを作っているか=補正A(プレイヤー社長ディスカウント)の要否を判定したか
- ☐ 従業員給与と市場水準(賃金構造基本統計)のギャップ=補正B(昇給余地)を試算したか
- ☐ キーメンバーの在籍年数・処遇・退職リスクを確認したか
- ☐ 役員報酬/私的費用/一過性損益を整理した決算3期の説明を受けたか
売り手:評価を上げるために整える10項目
- ☐ 役員報酬・私的費用・一過性損益を整理したか
- ☐ 社長自身の稼働(何にどれだけ時間を使っているか)を可視化したか
- ☐ ディレクター/リーダーを育て、社長依存を減らす動きを始めたか
- ☐ 制作フロー・ナレッジをドキュメント化したか
- ☐ 低単価・低粗利案件を整理したか
- ☐ 月額保守・運用契約の締結率を上げたか(口約束を書面へ)
- ☐ 顧客集中度を下げる営業をしているか
- ☐ キーメンバーの処遇を市場水準に近づけたか
- ☐ 雇用条件・業務委託契約を書面で整えたか
- ☐ ソースコード・Git・ドメインの法人帰属を確認したか
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掲載中の案件はWeb制作・デザイン・システムのM&A案件一覧、買い手向けの一覧はこちらからご覧いただけます。なお、当社の案件掲載サイトではIT/Web系の売り案件が92件、買収ニーズが23件(当社調べ・2026年8月4日時点・重複を除いた実件数)と、掲載業種のなかでも厚みのある領域です。いずれも掲載・希望額ベースであり、成約価格ではありません[C-N08]。
§5 よくある質問(FAQ)
Q1. Web制作会社の利益率はどのくらいですか。
Web制作会社単独の財務統計は存在しません[C-N09]。最も近い母数である情報サービス業では、売上高営業利益率が加重平均10.79%/中央値6.79%(JISA・2024年度実績・回答300社/加重平均の母数286社)[C-01]。中小企業に限った中小企業実態基本調査(令和6年度決算実績)の情報サービス業では5.64%(実額からの算出)です[C-N18]。加重平均だけを見ると二桁ですが、回答企業の55.0%は0%以上8%未満の帯にいます[C-N17]。
Q2. Web制作会社は儲からないと言われるのはなぜですか。
構造要因は4つです。①事業許可も設備投資も不要なため参入障壁が低く価格競争が構造的[C-N04] ②多重下請けで単価が削られる(小企業は売上の30.9%が同業者向け)[C-N21] ③固定費の主体が人件費なので稼働率が落ちた月の打撃が直接効く(情報サービス業では人件費と外注費で売上の約56%)[C-N19] ④受託はフロー型で案件が終われば売上がゼロに戻る。統計の中央値6.79%は、この構造の帰結として読めます[C-01]。
Q3. Web制作会社の社長・オーナーの年収はどのくらいですか。
直接出す公的統計は存在しません[C-N05]。賃金構造基本統計調査は雇用労働者が対象で役員を含まず、JISAの賃金表も従業員(25・30・35歳)が対象です。役員報酬は会社規模・利益・節税方針で大きく変わるため、本記事では金額を示していません。決算の営業利益がそのまま社長の実入りを表すわけでも、その逆でもありません。
Q4. エンジニア・デザイナーの年収はどのくらいですか。
令和7年賃金構造基本統計調査(産業計・男女計)を「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で換算すると、ソフトウェア作成者 約578.5万円/システムコンサルタント・設計者 約889.0万円/デザイナー 約539.6万円です[C-N06]。ただし同調査は”年収”を公表しておらず、これは本記事による換算値です。また職種小分類に「Webデザイナー」の行はなく、「デザイナー」はグラフィック等を含む大括りです。「Web制作会社の平均年収は◯万円」とは言えません。
Q5. 月額保守(運用)契約は利益率にどれくらい効きますか。
「保守が月商の◯%あれば良い」という一次統計は存在しません[C-N03]。JISAにも中小企業実態基本調査にも保守契約やMRRを集計した項目がないためです。定性的に言えるのは、保守・運用は原価が薄く利益率は高い一方、1社あたりの金額は小さいということ。買い手が重視するのは金額の大きさではなく、翌月も立つ売上があることで将来キャッシュフローの予測可能性が上がる点です。率と額を分けて見てください。
Q6. 利益が薄いWeb制作会社を買っても意味はありますか。
買い手が買っているのは利益率ではなく、人・顧客契約・保守ストック・知的財産です。事業許可も固定資産も無いこの業種では、価値がそこに集中します[C-N04]。したがって判断材料は決算の営業利益率ではなく、1人当たり営業利益(中小の情報サービス業では約72万円が一つの目安[C-N18]、JISAでは小企業1,172千円・大企業3,850千円[C-N21])と保守ストックの厚み、そして社長依存の度合いです。ただし「買えば儲かる」という意味ではありません。個別の投資判断は専門家にご相談ください。
Q7. 社長がプレイヤーの会社は、なぜ役員報酬を足し戻すと過大評価になるのですか。
中小M&Aでは役員報酬・私的費用を足し戻して正常収益力を出すのが定石ですが、社長自身がトップの実務者である場合、役員報酬は”労働の対価”でもあるからです。そのまま足し戻すと、社長が引退した瞬間に消える売上・稼働まで利益に数えてしまいます。実務では、その稼働を外注または採用で置き換えたコストを控除して実態利益と見ます(=プレイヤー社長ディスカウント)[C-N07]。控除幅に相場はなく、案件ごとに積み上げる性質のものです。
Q8. Web制作会社を高く評価してもらうには何を整えればいいですか。
3点です。①正常収益力を説明できる決算3期(役員報酬・私的費用・一過性損益を整理し、社長の稼働分を分けて示す) ②稼働率と保守ストックの底上げ(低粗利案件の整理、月額契約の締結率、顧客集中度の低減) ③人の引継ぎ設計(キーメンバーの処遇を市場水準へ近づける=昇給余地を自分で潰す、社長依存の解消、雇用・業務委託の書面整備)[C-N07]。整えれば必ず高く売れるという意味ではなく、整っていないと評価の土俵に乗りにくいという順序の話です。
§6 まとめ — 「儲かるか」を「買収後にいくら残るか」に変える
要点を3つに絞ります。
- 加重平均10.79%と中央値6.79%は別物です。情報サービス業の売上高営業利益率はこの2つの顔を持ち、回答300社のうち55.0%が0%以上8%未満の帯にいます[C-01][C-N17]。中小に限れば営業利益率は5.64%、粗利率は46.53%(中小企業実態基本調査・令和6年度決算実績)[C-N18]。JISAに粗利率の項目は無く、業界ブログの「粗利率◯割」を統計に帰属させることはできません[C-N01]。
- 利益は「人月単価 × 稼働率 − 人件費」でしか動きません。事業許可も固定資産も無く、人件費と外注費で売上の約56%[C-N19]。しかも小さい会社ほど人件費比率が高く(小企業38.38%)、同業者向け売上の比率も高い(30.9%)[C-N21]。稼働率の数ポイントが営業利益をそのまま食います。
- 年収は幅でしか語れません。社長年収の公的統計は存在せず[C-N05]、従業員側も賃金構造基本統計は”年収”を公表していないため換算が必要です[C-N06]。そして企業規模10〜99人の年収は1,000人以上のおおむね6〜8割水準(職種によっては6割を切る)[C-N25]——この差が、買収後の昇給余地として効いてきます。
出口の問い直しは、こうなります。
買い手の方
- ☐ 決算の営業利益率でなく、1人当たり売上・1人当たり営業利益で見たか
- ☐ 保守ストックの比率を額と率の両方で確認したか
- ☐ 社長がプレイヤーなら、代替人件費を控除したか(補正A)
- ☐ 給与が市場相場より低いなら、昇給余地を価格から先に引いたか(補正B)
売り手の方
- ☐ 役員報酬・私的費用を整理し、社長の稼働分を分けて説明できるか
- ☐ 稼働率と月額保守ストックを底上げできるか
- ☐ 社長依存を減らし、キーメンバーの処遇を市場水準に近づけているか
買い手は「儲かる業種か」を「買収後にいくら残るか」に、売り手は「利益が薄いから売れない」を「稼働率と保守ストックと引継ぎ体制を磨けば評価は変わる」に——問いを変えることから始めたいところです。相場の算定式はWeb制作会社の売却相場2026、廃業との手取り比較はWeb制作会社は廃業と売却どっちが得?、契約とソースコードの引継ぎは著作権とソースコードは引き継げる?、業界の全体像はWeb制作会社の将来性2026、統計の母数の違いを含む業界の“今”はWeb制作業界の最新動向2026へ。サイト1個の収益性を知りたい方はサイト売買は本当に儲かる?をご覧ください。
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免責
本記事はWeb制作会社の利益率・年収およびM&Aに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の利益率・年収・査定額・成約・売却を保証するものではありません。記載した利益率は情報サービス業(JISA 2025年版=2024年度実績/中小企業実態基本調査 令和7年確報=令和6年度決算実績)の値であって、Web制作会社単独の統計ではありません。年収は幅であり、賃金構造基本統計調査の公表値は月額給与と年間賞与であって”年収”そのものではないため、本記事の年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」による換算値です。実際の社長・従業員の収入は会社規模・受注状況・役員報酬の取り方により大きく異なります。個別の財務評価・税務の取り扱いは税理士、契約・法務に関する事項は弁護士へご相談ください。本記事には当社サービス(無料相談・案件掲載)へのご案内を含みます。
出典
- [C-01] 情報サービス業の売上高営業利益率 加重平均10.79%/中央値6.79%(回答300社/加重平均の母数=有効回答286社。対象は2024年4月1日〜2025年3月31日に終了した事業年度の単独決算=「2024年度」。回答企業は1社平均で従業員932人・売上355億6,496万円) — 一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)「2025年版 情報サービス産業 基本統計調査」図表2-39ほか: https://www.jisa.or.jp/Portals/0/report/basic2025report.pdf
- [C-N16] JISA 基本統計調査の最新版は2025年版(2026年版PDFは本記事の調査時点で未公開) — 同上/JISA 統計資料一覧: https://www.jisa.or.jp/it_info/statistics/tabid/769/default.aspx
- [C-N17] 営業利益率の階級別企業数:6%以上8%未満54社(18.0%)が最多/0%以上8%未満165社(55.0%・本記事の集計)/10%以上78社(26.0%)/0%未満(赤字)8社(2.7%)/合計300社 — JISA「2025年版 情報サービス産業 基本統計調査」図表2-39: https://www.jisa.or.jp/Portals/0/report/basic2025report.pdf
- [C-N01] JISAの統計に「粗利率」「売上総利益」「売上高総利益」の項目は存在しない(本記事の調査で全65頁を走査し0ヒット)。「Web制作の粗利率は◯割」等の数字は業界ブログ由来であり統計に帰属させない — JISA「2025年版 情報サービス産業 基本統計調査」全文: https://www.jisa.or.jp/Portals/0/report/basic2025report.pdf
- [C-N18] 情報サービス業(法人・中小企業33,354社/従業者626,789人/売上高8兆47億円)の売上総利益率46.53%/売上高営業利益率5.64%/1社当たり売上高 約2.40億円/1人当たり売上高 約1,277万円/1人当たり営業利益 約72万円(いずれも公表実額からの算出) — 中小企業庁「中小企業実態基本調査 令和7年確報(令和6年度決算実績)」3.売上高及び営業費用 (2)産業中分類別表 1)法人企業(e-Stat・2026年6月29日公開): https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00553010&tstat=000001019842
- [C-N19] 情報サービス業の売上原価のうち労務費が売上高の17.4%、販管費のうち人件費が21.1%(人件費計 約38.5%)、売上原価のうち外注費が17.8%=人件費と外注費で売上高の約56%(公表実額からの算出) — 同上: https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00553010&tstat=000001019842
- [C-N20] 情報通信業(法人)の従業者規模別 売上高営業利益率 5人以下3.27%/6〜20人5.66%/21〜50人2.55%/51人以上6.66%、1人当たり営業利益 5人以下 約50万円/51人以上 約110万円(公表実額からの算出。母数は情報サービス業より広い「情報通信業」) — 中小企業庁「中小企業実態基本調査 令和7年確報」3.売上高及び営業費用 (1)産業別・従業者規模別表: https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00553010&tstat=000001019842
- [C-N21] JISA詳細編(295社)の従業員規模別:売上高営業利益率 大企業10.91%/中堅7.99%/中企業7.60%/小企業(200人以下)7.00%(詳細編全体10.15%)、従業員1人当たり営業利益 大企業3,850千円/小企業1,172千円、売上高人件費率 27.57%→38.38%、売上高外注費率 35.70%→27.65%、取引先別売上高の「同業者」比率 大企業6.0%/小企業30.9%、ソフトウェア開発の売上構成比 大企業15.4%/小企業45.6% — JISA「2025年版 情報サービス産業 基本統計調査」3.1.4 従業員規模別全体表: https://www.jisa.or.jp/Portals/0/report/basic2025report.pdf
- [C-N22] JISA詳細編(295社)の資本系列別 売上高営業利益率:全体10.15%/独立系13.61%(220社)/コンピュータ・メーカー系10.49%(16社)/ユーザー系7.06%(52社)/その他6.99%(7社) — JISA「2025年版 情報サービス産業 基本統計調査」3.1.2 資本系列別全体表: https://www.jisa.or.jp/Portals/0/report/basic2025report.pdf
- [C-N23] JISA賃金状況表(回答300社の単純平均。統計側の定義は「年収は(給与×12+賞与)の値。残業手当は含まない」「給与は所定内給与を基準」):25歳 4,102,131円/30歳 4,917,911円/35歳 5,713,595円 — JISA「2025年版 情報サービス産業 基本統計調査」2.4.2 賃金状況/図表2-53: https://www.jisa.or.jp/Portals/0/report/basic2025report.pdf
- [C-N24] JISA「30歳平均年収の分布」(本設問への回答は規模別内訳の合計で256社。詳細編295社の全数ではない):従業員規模別 小企業465.8万円(74社)/中企業475.3万円(79社)/中堅企業492.7万円(47社)/大企業538.3万円(56社)、資本系列別 独立系479.3万円(188社)/ユーザー系527.8万円(47社)、営業地域別 地方型444.1万円(40社)/首都圏型483.9万円(106社)/全国型512.6万円(110社) — JISA「2025年版 情報サービス産業 基本統計調査」3.2.7 30歳平均年収の分布: https://www.jisa.or.jp/Portals/0/report/basic2025report.pdf
- [C-N06] 令和7年賃金構造基本統計調査(職種・第1表・産業計・男女計・企業規模計10人以上):システムコンサルタント・設計者 きまって支給542.1千円/年間賞与2,385.2千円、ソフトウェア作成者 390.8千円/1,095.1千円、その他の情報処理・通信技術者 415.8千円/1,108.0千円、デザイナー 375.6千円/888.6千円。公表項目は「きまって支給する現金給与額(月額・超過労働給与を含む)」「所定内給与額」「年間賞与その他特別給与額」であり”年収”ではない(本記事の年収換算は「きまって支給×12+年間賞与」。所定内給与ベースではソフトウェア作成者 約537.7万円)。職種小分類に「Webデザイナー」「Webディレクター」の行は存在しない — 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」結果の概況(2026年3月24日公表): https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/index.html / e-Stat 一般労働者/職種 第1表(statInfId=000040421116・2026-03-24公開): https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001229845&tclass2=000001229849&tclass3=000001229855&layout=datalist
- [C-N25] 同調査の企業規模別 年収換算(本記事の算出):10〜99人 システムコンサルタント・設計者 約585.1万円(384.3千円/1,239.8千円)/ソフトウェア作成者 約518.2万円(360.6/855.1)/デザイナー 約472.3万円(342.1/617.8)。1,000人以上 約1,010.4万円(589.2/3,034.0)/約640.9万円(418.6/1,385.9)/約730.8万円(473.0/1,631.7)。差は約425.3万円/約122.7万円/約258.5万円(10〜99人は1,000人以上の57.9%/80.9%/64.6%)。規模間の賃金差は年齢構成・勤続年数・職務範囲の差を含み、そのまま必要昇給額ではない。また職種小分類は標本規模が小さく年次で振れる(同じ差を令和6年調査で算出すると約179.7万円/約139.0万円/約249.1万円=78.0%/78.8%/63.9%) — 同上(第1表 企業規模別): https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001229845&tclass2=000001229849&tclass3=000001229855&layout=datalist
- [C-N26] 賃金構造基本統計調査の最新版は令和7年調査(速報2026年1月16日/概況・統計表2026年3月24日公表)で、本記事はこれを使用している。e-Stat の提供分類上、令和7年調査に正誤情報は掲載されていない(令和6年調査には令和8年3月24日付の訂正があるが、対象は在留資格区分別(外国人労働者)統計表等の表章記号「X」の基準修正で職種別統計表は対象外だった) — e-Stat 賃金構造基本統計調査 提供分類一覧: https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450091&tstat=000001011429
- [C-N05] Web制作会社の社長・オーナーの年収を直接出す公的統計は存在しない(賃金構造基本統計調査は雇用労働者が対象で役員を含まない/JISAの賃金表も25・30・35歳の従業員が対象)。役員報酬は会社規模・利益・節税方針で大きく変動する — 両統計の調査対象定義([C-N06][C-N23])より
- [C-N02] Web制作会社は事業許可・固定資産・在庫を持たず、原価のほぼ全量が人件費と外注費であるため、営業利益は実質「人月単価 × 稼働人数 × 稼働率 −(人件費+外注費+販管費)」で決まる。人月単価の相場・稼働率の水準を示す一次統計は本記事の調査では確認できなかったため、具体的な単価・率は示していない — コスト構成は[C-N19][C-N21]、規定式は当社のM&A実務知見(T3・attributed)
- [C-N03] 受託(フロー)と月額保守・運用(ストック)では収益の性質が異なり、保守は利益率が高い一方で1社あたりの金額は小さい。買い手が保守ストックを重視するのは継続的収益が将来キャッシュフローの予測可能性を上げるため。「保守が月商の◯%」という目安を示す一次統計は存在しない(JISA・中小企業実態基本調査ともに保守契約・MRRの集計項目なし) — 業界専門解説(T3・attributed)+当社のM&A実務知見
- [C-N04] Web制作・受託開発には、建設業許可や飲食店営業許可に相当する「この業種を営むための許可」が原則として存在しない(=参入障壁が低く価格競争が構造的で、価値は人×顧客契約×知的財産に集中する)。ただし事業内容によっては別途の許可・届出(労働者派遣・有料職業紹介・電気通信事業の届出等)が必要になりうる — 当社調査(Web制作業そのものへの参入許可法令は確認されず。網羅的な非在証明ではないため限定表現としている)
- [C-N07] プレイヤー社長ディスカウント(社長がトップ実務者である場合、役員報酬を単純に足し戻した正常収益力は過大になりうるため、その稼働を外注/採用で置き換えるコストを控除する)および昇給余地の先引き(給与が市場相場より低い会社は買収後にリテンション昇給が必要になりやすいため、価格から先に引く)は、M&A実務での見方であり一般則ではない。控除幅・割引率の相場は存在しない — 当社のM&A実務知見(T3・attributed)。土台となる賃金差は[C-N24][C-N25]、1人当たり利益は[C-N18][C-N20][C-N21]で一次に接地
- [C-N08] ma-platform の案件掲載サイトにおけるIT/Web系の掲載件数:売り案件 総掲載1,076件のうち92件(内訳=ECサイト・WEBショップ57/WEBサービス・アプリ・システム35/WEBサイト・WEBメディア18/WEB制作・デザイン・システム12。複数業種タグの重複を除いた実件数)、買収ニーズ 総94件のうち23件(売り案件と同一の業種タグ4種で集計)。2026年8月4日に WP REST(`/wp-json/wp/v2/malist`・`/needs` の industry タクソノミー id=160,161,159,193)で再計数。いずれも掲載・希望額ベースであり成約価格・成約件数ではない — 当社サイト実査(proprietary)
- [C-N09] Web制作会社単独の財務・年収を出す官庁統計は存在しない(日本標準産業分類上、Web制作は「39 情報サービス業」「40 インターネット附随サービス業」「41 映像・音声・文字情報制作業」に分散し、内容により「73 広告業」にも入りうる)。総務省「情報通信業基本調査」は電気通信・放送・テレビジョン番組制作・インターネット附随サービスの4業種が対象で情報サービス業を含まない別統計 — 総務省 情報通信業基本調査: https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin02_02000181.html / 中小企業実態基本調査「日本標準産業分類一覧」: https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00553010&tstat=000001019842
- [C-N10] 2030年のIT人材需給ギャップは、生産性上昇率0.7%を前提に 高位78.7万人/中位44.9万人/低位16.4万人。「最大約79万人不足」は高位シナリオの値であり、2019年公表=生成AI普及前の前提に基づく試算 — 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年3月公表)p.17 表3-5: https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf
- [C-N11] 「生成AIによってWeb制作の単価が一律に下落した」と示す一次統計は本記事の調査時点で確認できていない(制作会社の自社ブログ・小規模なPR調査は一次統計として扱っていない) — 当社調査(非在の明示。深掘りは`web-seisaku-shoraisei`)
- [C-N12] 情報通信業の倒産 2025年(暦年)438件・前年比3.0%増で4年連続増加/2025年度 432件・前年度比6.0%減(暦年と年度で集計期間が異なる) — 東京商工リサーチ: https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1202288_1610.html / https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1202724_1610.html
- [C-N13] 後継者不在率 情報通信業77.06%(2025年・産業別で最高/同調査の全産業62.60%)=東京商工リサーチ集計。帝国データバンクの調査は全業種50.1%で情報サービス業の単独値は未公表(集計主体が異なり単純比較はできない) — 東京商工リサーチ: https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201982_1527.html / 帝国データバンク: https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
- [C-N14] 相場の算定式(年買法=時価純資産+営業利益の数年分/EBITDA倍率)は本記事では扱わず`web-seisaku-ma-souba`へ送出。営業利益が薄い分、正常収益力の引き直し(プレイヤー社長ディスカウント・昇給余地の控除)が価格を大きく左右する — 中小M&A実務解説(T3・attributed)
- [C-N15] サイト1個の収益性(月次利益×◯ヶ月)と、制作会社という法人の収益性(人月×稼働率+保守ストック)は評価の物差しが違う — 当社の編集方針(会社M&Aとアセット M&A の両クラスターを運営する媒体としての整理・proprietary)