個人が会社を買う方法完全ガイド|流れ・費用相場・失敗回避
個人が会社を買う方法完全ガイド|流れ・費用相場・失敗回避
個人が会社を買うとは、後継者不在などで売りに出された中小企業や小規模事業を、個人がM&A(株式譲渡・事業譲渡)で取得し、経営を引き継ぐことをいいます。 起業のようにゼロから立ち上げるのではなく、すでに売上・顧客・従業員・許認可がある事業を引き受ける手法です。
「個人が会社を買う」という選択肢は、ここ数年で急速に身近になりました。後継者がいないまま黒字で廃業する中小企業が増える一方、サラリーマンや退職予定者が数百万円規模で会社を引き継ぐ「個人M&A(スモールM&A)」のマッチングサイトが整備されてきたためです。とはいえ、「自分でも買えるのか」「いくら必要なのか」「失敗したら借金を背負わないか」といった不安から、なかなか一歩を踏み出せない方も多いはずです。
本記事では、個人が会社を買う方法とスキーム、費用相場、案件の探し方、7ステップの流れ、資金調達(公庫融資・補助金)、そして簿外債務やPMI(買収後の統合)など失敗の回避策までを、買い手目線で網羅的に整理します。100万〜300万円の少額案件やサラリーマンが買う場合の注意点(副業・連帯保証)にも触れ、読み終えたときに「自分が次に何をすべきか」が見える状態を目指します。なお、税務・契約の個別判断は専門家への相談が前提となる点も、あらかじめ押さえておきましょう。
§1 個人が会社を買うとは(定義・仕組み・起業との違い)
個人が会社を買うとは、後継者不在などで売却される中小企業や小規模事業を、個人がM&A(株式譲渡・事業譲渡)で取得し経営を引き継ぐことです。 法人が買い手になる従来型のM&Aに対し、会社員や個人事業主などの個人が買い手となる点が特徴で、一般に「個人M&A」と呼ばれます。
個人M&A・スモールM&A・マイクロM&Aの呼び方
呼称は明確な定義で線引きされているわけではありませんが、おおよそ次のような規模感で使い分けられることが多いとされます。
| 呼称 | おおよその規模感(目安) | イメージ |
|---|---|---|
| 個人M&A | 個人が買い手となるM&A全般 | サラリーマン・個人事業主などが事業を買う |
| スモールM&A | 数百万〜数千万円規模 | 後継者不在の小規模企業・店舗の承継 |
| マイクロM&A | 数十万〜数百万円規模 | EC・Webサービス・小規模店舗など |
規模が小さいほど自己資金で手が届きやすい一方、事業が属人的で資産が薄く、買収後の運営や引き継ぎ(PMI)が成否を左右しやすい傾向があります。大手M&A仲介の解説でも、個人M&A(スモールM&A)は定義・流れ・案件の探し方・メリット/デメリットを押さえてから動くことが重要とされています(M&Aキャピタルパートナーズ「個人M&A(スモールM&A)」解説)。
起業(ゼロからの創業)との違い
| 観点 | 会社を買う(M&A) | 起業(ゼロから創業) |
|---|---|---|
| 初期リスク | すでに事業実態があり立ち上げ失敗リスクは相対的に低い傾向 | 事業が軌道に乗るか不確実 |
| 顧客・取引先 | 既存の顧客・取引先を引き継げる | ゼロから開拓が必要 |
| 従業員 | 既存従業員・ノウハウを引き継げる | 採用・育成が必要 |
| 許認可 | 株式譲渡なら許認可を承継できる場合がある | 自分で取得が必要 |
| 立ち上げ期間 | すでに動いている事業を引き継ぐため短縮しやすい | 黒字化まで時間を要しやすい |
| 必要資金 | 買収価格+運転資金+PMI投資が必要 | 初期投資は小さくできるが収益化まで持ち出し |
| 主なリスク | 簿外債務・PMI負荷・属人性 | 需要不確実・資金枯渇 |
会社を買う最大の利点は、既存の売上・顧客・組織を引き継げることです。後継者不在で困っている事業の「受け皿」になれる社会的な意義もあります。一方で、表に出ていない債務(簿外債務)を引き継ぐリスクや、買収後の統合(PMI)に伴う負荷というデメリットもあり、メリットだけで判断するのは禁物です。
背景データ:後継者不在と第三者承継の広がり
個人M&Aが注目される背景には、中小企業の後継者不在問題があります。2025年の全国後継者不在率は50.1%で、前年(2024年・52.1%)から2.0ポイント低下し、7年連続で前年を下回って2016年以降で過去最低となりました(帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」2025年11月21日発表、調査対象 約27万社。https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/ )。中小企業白書も後継者問題を主要課題として取り上げています。改善傾向にあるとはいえ、依然としてちょうど半数程度の中小企業で後継者が決まっていない計算です。
第三者への承継(M&A)も広がっています。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)の発表によれば、全国の事業承継・引継ぎ支援センターにおける令和6年度(2024年度)の第三者承継(M&A)成約件数は2,132件で過去最高を更新しました(累計12,306件、発表2025年5月30日)。さらに、創業希望者と後継者不在企業をマッチングする「後継者人材バンク」では、令和6年度の成約件数が106件と過去最高で、新規登録者(創業希望者)数は1,551者、累計登録者は1万者超に達しています。個人が事業を引き継ぐ道筋が、公的にも整備されてきていることがうかがえます。
なお、これらの統計はいずれも年次で更新されます。最新の数値は、中小機構・帝国データバンク・中小企業白書などの公式発表で確認してください。
§2 個人が会社を買う適性|5軸セルフ判断フレーム
「自分に向いているか」ではなく、「いま何が不足しているか」を可視化するのが、このセルフ判断フレームの目的です。会社を買う適性は生まれつき決まっているものではなく、準備で埋められる軸が大半だからです。次の5つの軸で、自分の現在地を「Go/要検討/Stop」の3段階で確認してみましょう。
| 軸 | 内容 | Go(目安) | 要検討 | Stop(要再設計) |
|---|---|---|---|---|
| ① 自己資金・資金調達力 | 投下可能な自己資金+公庫融資等の調達余力 | 自己資金+調達で買収+運転+PMIの3層をまかなえる | 買収価格はまかなえるが運転・PMI余力が薄い | 買収価格すら届かず追加調達のあてもない |
| ② 経営・マネジメント経験 | 事業運営・数値管理・組織マネジメントの経験 | 部門運営や事業数値管理の経験がある | 実務経験はあるが経営全体は未経験 | マネジメント経験がほぼなく学習計画も未定 |
| ③ リスク許容度(連帯保証・簿外債務) | 連帯保証・簿外債務など想定外負担への耐性 | 想定リスクを把握し許容範囲を線引きできる | リスクは理解しているが線引きが曖昧 | 連帯保証・簿外債務の存在自体を把握していない |
| ④ 事業引継ぎ・PMIへの意思 | 買収後の引継ぎ(PMI)に主体的に関わる意思 | 100日プラン等に自ら関わる前提で動ける | 関わる意思はあるが時間配分が未定 | 「契約=ゴール」と捉え引継ぎを軽視している |
| ⑤ 投下できる時間 | ソーシング〜DD〜PMIに割ける時間 | 案件探索と引継ぎに継続的に時間を割ける | 副業・本業との両立で時間が限定的 | まとまった時間がほぼ確保できない |
診断結果の使い方
この表は「Go=必ず成功する」「Stop=買えない」という合否判定ではありません。あくまで準備状況を可視化するためのフレームです。読み方の目安は次のとおりです。
- Stopが1つでもある場合:その軸の準備を最優先にしましょう。例えば③が「Stop」なら、連帯保証や簿外債務の知識を§11でまず固める、といった順番です。
- 要検討が多い場合:資金が薄ければ§8(資金調達)、本業との両立に不安があれば§10(サラリーマン編)を読んで補強するのが近道です。
- Goが揃ってきたら:§9(案件の探し方)で実際の案件相場を見ながら、買い手向けの相談に進むフェーズです。
5軸と各章の対応
各軸は、本記事の以下のセクションと対応しています。不足している軸から読み進めると効率的です。
- ① 自己資金・資金調達力 → §8 資金調達
- ② 経営・マネジメント経験/④ PMIへの意思 → §10 サラリーマン編/§12 買った後はどうなる
- ③ リスク許容度 → §11 失敗事例と回避策
- ⑤ 投下できる時間 → §9 案件の探し方/§10 サラリーマン編
なお、最終的な判断は、税理士・弁護士・M&A仲介などの専門家への相談を前提に行ってください。とくに連帯保証や簿外債務に関する論点は、後ほど§11で詳しく扱います。
§3 3ペルソナ入口マトリクス(誰が・いくらで・どう買うか)
同じ「個人が会社を買う」でも、入口によって現実的な予算・関与時間・向きやすいスキームは変わります。ここでは代表的な3つの入口タイプを整理します。自分に近い行から読み始めると、どの章を重点的に読めばよいかが見えてきます。
| 類型 | 予算レンジ(目安) | 関与時間 | リスク許容 | 向きやすいスキーム | 重点的に読む章 |
|---|---|---|---|---|---|
| 副業者(本業継続型) | 〜300万円中心 | 限定的(本業優先) | 低〜中(本業の安定を維持したい) | 事業譲渡・少額の小規模案件 | §7 / §10 |
| 第二創業希望者(独立) | 300万〜1,000万円 | フルコミット可 | 中(独立リスクを取る前提) | 株式譲渡・事業譲渡の両にらみ | §4 / §6 / §8 |
| 退職予定シニア | 退職金+自己資金(〜1,000万円規模) | 比較的確保しやすい | 中〜やや慎重(資産防衛意識) | 引継ぎ協力が厚い小規模案件 | §6 / §11 / §12 |
マトリクスの読み方
まず「予算レンジ」で自分に近い行を選び、そこから「向きやすいスキーム(§4参照)」「重点的に読む章」へと進んでいくのが効率的な動線です。予算・関与時間・リスク許容はあくまで傾向であり、固定的なものではありません。たとえば副業者でも、退職金や融資を組み合わせれば第二創業型に近い予算を組める場合もあります。
§2の5軸セルフ判断と合わせて見ると、入口タイプごとに「要検討」になりやすい軸が違うことに気づくはずです。副業者は⑤投下時間が、退職予定シニアは②経営経験が、それぞれ補強ポイントになりやすい傾向があります。なお、副業として会社を買えるかどうかは、勤務先の就業規則・副業規定によって判断が分かれます。一律の公的な基準はないため、§10で改めて確認してください。
§4 個人が会社を買う方法とスキーム
個人が会社を買う方法は、大きく「株式譲渡(会社を丸ごと買う)」と「事業譲渡(必要な事業だけ買う)」の2つに分かれます。どちらを選ぶかで、引き継ぐ債務の範囲・税負担・手続きが変わります。以下でそれぞれの特徴とメリット・デメリットを整理します。
| 観点 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 買う対象 | 会社の株式(会社を丸ごと) | 特定の事業・資産(選んで買う) |
| 簿外債務の引継ぎ | 原則として包括的に引き継ぐ | 引き継ぐ範囲を限定しやすい |
| 許認可 | 会社が持つ許認可をそのまま承継できる場合がある | 原則として取り直しが必要になることが多い |
| 契約(取引先・従業員) | 会社の契約をそのまま承継しやすい | 個別に巻き直しが必要 |
| 税負担の方向感 | 売り手(個人株主)の譲渡所得に課税 | 売り手に法人税・消費税等、買い手にも消費税等が生じうる |
| 手続きの重さ | 株式の移転が中心で比較的シンプル | 資産・契約を個別移転するため重くなりやすい |
税負担の方向感について、M&Aキャピタルパートナーズの解説(2026年2月9日公開)によれば、事業譲渡では売り手に法人税(実効税率は約30%とされる)と消費税10%(土地を除く有形資産・棚卸資産・営業権等が課税対象)、買い手に消費税10%・不動産取得税・登録免許税が生じ、株式譲渡(個人株主)では譲渡所得に課税される、という違いがあるとされています。つまり、事業譲渡は税目が多く手続きも個別移転で重くなりやすい、という方向感です。
ここで示しているのはあくまで制度の概要・方向感であり、具体的な税額計算や個別の節税判断は税理士の領域です。どちらのスキームが自分のケースに向くかは、税理士・M&A仲介などの専門家と相談のうえで決めることをおすすめします。
§4-1 株式譲渡で会社を買う
株式譲渡は、対象会社の株式を取得することで経営権を得る方法です。会社という「器」をそのまま引き継ぐため、会社が持つ許認可・取引先との契約・従業員との雇用関係などを包括的に承継しやすいのが大きなメリットです。手続きも、事業譲渡のように資産・契約を一つひとつ移転する必要がなく、株式の移転が中心となるため比較的シンプルです。
税務面では、株式を売却する側(売り手=個人株主)に譲渡所得が生じます。国税庁によれば、個人が株式を譲渡した場合の譲渡所得には申告分離課税で20%(所得税15%・住民税5%)が課され、加えて平成25年〜令和19年は復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が上乗せされます。合計の実効税率は20.315%(=15%×1.021+5%)です(国税庁タックスアンサーNo.1463、令和7年4月1日現在法令等)。
留意点:この20.315%は、株式を売る側(譲渡者)に課される税であり、買い手のコストではありません。買い手側にどのような税効果が生じるかは個別事情によって異なるため、必ず税理士に相談してください。
株式譲渡の注意点は、簿外債務(帳簿に表れていない債務や保証、未払残業代など)も会社ごと包括的に引き継いでしまう可能性があることです。だからこそ、後述するデューデリジェンス(DD)で会社の中身を精査する工程が重要になります。
§4-2 事業譲渡で一部だけ買う
事業譲渡は、対象会社が営む事業のうち、必要な事業・資産・契約だけを選んで個別に買い取る方法です。資産や契約を一つずつ移転するため、買い手が引き継ぎたくない債務やリスクを契約の対象から外しやすく、簿外債務リスクを遮断しやすいのが利点です。
一方で、許認可は原則として買い手側で取り直す必要があり、取引先や従業員との契約も個別に巻き直さなければならないため、手続きは煩雑になりがちです。小規模な店舗・EC・Webサービスなど、「会社まるごと」ではなく「特定の事業だけ」を引き継ぎたいスモールM&Aでは、事業譲渡が選ばれやすいケースがあります。
ただし、事業譲渡であっても簿外債務を完全に回避できると断言はできません。引き継ぐ契約の内容や引き継ぎ方によってはリスクが残るため、どこまでを譲渡対象にするかは弁護士・M&A仲介と相談しながら設計することが大切です。
§5 個人が会社を買う流れ(7ステップ)
個人が会社を買うときの流れは、検討開始からPMI(買収後の統合)まで、おおむね7つのステップに整理できます。全体像を時系列で押さえておくと、各段階で「何をするか」「どの専門家に相談するか」が見えてきます。中小企業庁「中小M&Aガイドライン」(第3版、令和6年8月30日公表)も、こうした手続きの標準的な流れや、仲介・FAの役割、利益相反への対応などを示しています。
Step1 自己分析・予算策定
まず、§2の5軸セルフ判断と§3の入口マトリクスで自分の現在地を確認し、投下できる予算を「3層」で組み立てます。
- 買収価格(会社・事業そのものの代金)
- 運転資金(買収後の仕入れ・人件費・家賃など、当面の事業継続に必要な資金)
- PMI投資(引き継ぎ・改善・システム更新など、買収後の立て直しにかかる資金)
買収価格だけで予算を使い切ってしまうと、買収後に資金が枯渇して立ち行かなくなる(§11のパターン1)リスクが高まります。
Step2 案件ソーシング(案件探し)
案件の探し方は、公的ルートと民間ルートを並行するのが基本です。公的には事業承継・引継ぎ支援センター(全国・無料相談)、民間ではM&Aマッチングサイトを使います。詳しくは§9で比較します。
Step3 ノンネーム情報の閲覧〜1次面談
気になる案件は、まず社名が伏せられた「ノンネーム情報」で概要を確認します。さらに詳しく知りたい場合は、秘密保持契約(NDA)を結んだうえで企業概要書(IM)を入手し、売り手との1次面談に進みます。
Step4 意向表明(LOI)・基本合意
買収の意思が固まったら、買収条件の希望を示す意向表明書(LOI)を提出し、双方の認識をすり合わせて基本合意に至ります。この段階の条件はあくまで暫定的なもので、次のDDの結果で見直されることもあります。
Step5 デューデリジェンス(DD)
DDは、買い手が対象会社の財務・法務・労務などを精査する工程です。簿外債務・未払残業代・取引先の離脱リスクといった「買ってから困る要素」を、契約前に洗い出します。個人M&Aで失敗を避ける最大の関門であり、専門家(公認会計士・税理士・弁護士など)の関与が重要になります。DDの実務をさらに詳しく知りたい場合は、関連記事もあわせてご覧ください。
Step6 最終契約・クロージング
DDの結果を反映して条件を最終調整し、株式譲渡契約書または事業譲渡契約書を締結します。代金の決済と経営権の移転(クロージング)を行って、法的に買収が完了します。
契約書の具体的な条項や個別の法律判断は、弁護士・M&A仲介に相談すべき領域です。本記事では契約書のひな型や個別の法律相談への回答は扱いません。
Step7 PMI(引き継ぎ・統合)100日プラン
クロージングは「ゴール」ではなく「スタート」です。買収後の最初の3か月(100日)を中心に、従業員・取引先との関係維持、業務の引き継ぎ、改善の着手などを計画的に進めます。PMIを軽視すると、せっかく買った事業の価値が下がってしまいます(§12で詳述)。
各ステップの所要期間は案件によって大きく異なりますが、検討開始からクロージングまで数か月〜1年程度かかることが多いとされます。焦らず、各段階で適切な専門家に相談しながら進めましょう。
§6 会社を買う費用相場と価格の決まり方
「会社を買うにはいくら必要か」は、最も気になるポイントでしょう。費用は大きく、①買収価格そのものと、②買収に付随する費用(手数料・DD費用など)に分かれます。
買収価格の決まり方(価格算定の考え方)
会社の買収価格は、一般に次の3つのアプローチを組み合わせて算定されるとされます。
| アプローチ | 考え方 | イメージ |
|---|---|---|
| コストアプローチ | 純資産(資産−負債)をベースに評価 | 会社の「今の財産」から価格を考える |
| マーケットアプローチ | 類似企業・類似取引の倍率(マルチプル)を参照 | 似た会社がいくらで売買されたかを参考にする |
| インカムアプローチ | 将来生み出すと見込まれる利益・キャッシュフローから評価 | これからどれだけ稼ぐかで価格を考える |
中小・小規模のM&Aでは、これらに加えて実務上「年買法(年倍法)」という簡便な考え方が使われることもあります。おおまかには「純資産+数年分の利益」を目安に価格を考える方法ですが、何年分を乗せるかは交渉や事業の状況によって変わります。
業種別の具体的なマルチプル(倍率)や相場レンジは、公的な統計で個人向け小規模帯の数値を確定できないため、本記事では断定しません。実際の価格は、対象事業の収益力・資産・将来性などを踏まえて専門家が算定するものであり、「この業種ならいくら」と一律に決まるものではない、という点を押さえておきましょう。相場感をつかむには、後述するマッチングサイトで実際の募集案件を眺めるのが現実的です。
買収価格以外にかかる費用
買収価格のほかにも、次のような費用がかかる可能性があります。
- 仲介手数料:M&A仲介・FAを利用する場合の報酬。レーマン方式が一般的です。
- DD費用:財務・法務などの調査を専門家に依頼する場合の費用。
- マッチングサイト利用料:プラットフォームの月額料金・成約手数料など。
仲介手数料の「レーマン方式」は、取引金額に応じて段階的に料率が下がる計算方法です。中小企業庁の中小M&Aガイドライン関連資料に示される標準的な料率テーブル例は次のとおりです。
| 基準価額のうちの部分 | 料率 |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超〜10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円超〜50億円以下の部分 | 3% |
| 50億円超〜100億円以下の部分 | 2% |
| 100億円超の部分 | 1% |
ただし、多くの仲介者・FAは「最低手数料」を設定しており、レーマン方式での算出額が最低手数料を下回る場合は最低手数料が適用されます。中小M&Aガイドライン(第3版)では、この最低手数料の分布・事例の紹介や、M&A支援機関登録制度における手数料体系の公表義務化などが盛り込まれました。最低手数料やDD費用の具体的な金額レンジは、本記事では断定せず、利用する仲介・サービスの公式情報で確認してください。なお、基準とする価額(株価か移動総資産か)によって報酬額が変わる点にも注意が必要です。
マッチングサイトの料金体系(例)
マッチングサイトの料金は各社で異なります。一例として、TRANBI(トランビ)の2026年6月時点の買い手向け料金は次のとおりです(同社公式料金ページ)。
| プラン | 月額(税込) | 案件規模上限 | 契約単位 |
|---|---|---|---|
| 学習用エントリー | 980円(税込1,078円) | — | 1ヶ月単位 |
| ベーシック | 3,980円(税込4,378円) | 500万円 | 6ヶ月単位 |
| ビジネス | 9,800円(税込10,780円) | 3,000万円 | 6ヶ月単位 |
| エンタープライズ | 19,800円(税込21,780円) | 上限なし | 6ヶ月単位 |
TRANBIの成約手数料は、買い手・売り手ともに無料(0円)とされています(売り手は完全無料)。ただし、料金は年度・改定で変動するため、申し込み前に必ず最新の公式料金ページで確認してください。
費用の数値(料金・税率・手数料)は年度や各社の改定で変わります。本記事の数値は執筆時点のものであり、実際の検討時には最新の公式情報をご確認ください。
§7 100万〜300万円のスモールM&A(少額で会社を買う)
「100万円や300万円で会社を買えるのか」という疑問は、個人M&Aを検討する多くの人が抱くものです。結論から言えば、少額帯の案件は実際に存在しますが、「100万円なら必ず買える」という性質のものではなく、案件の内容・タイミング・交渉次第である点を前提に考える必要があります。
少額帯で対象になりやすい事業の例
数十万〜300万円程度の少額帯では、比較的小規模・属人性の高い事業が対象になりやすい傾向があります。例えば次のようなものです。
- 小規模な店舗(飲食・サービス・小売など)
- ECサイト・ネットショップ
- Webサービス・メディア・アプリなどのデジタル資産
- 地方の小規模事業
ただし、これらが「いくらで買えるか」「どの程度の割合で少額成約しているか」を示す公的な統計データは確認できていません。具体的な業種や成約割合の数値は本記事では断定せず、あくまで傾向・一例としてご理解ください。
少額案件ほど注意したいこと
少額だからリスクが小さい、とは限りません。むしろ規模が小さい事業ほど、次のような特徴に注意が必要です。
- 属人性が高い:売り手個人のスキル・人脈で回っていた事業は、引き継いだ後に売上が落ちることがあります。
- 資産が薄い:固定資産や内部留保が少なく、トラブル時の体力がない場合があります。
- DD・引き継ぎが軽視されがち:金額が小さいぶん調査を省きやすいですが、簿外リスクは金額の大小に関係なく存在します。
少額案件こそ、DD(§5・§11)と売り手からの引き継ぎ協力期間の確保が成否を左右します。三戸政和氏の著書『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』などで「個人でも小さな会社を買える」という考え方が広く知られるようになりましたが、書籍はあくまで一般論・きっかけであり、実際の判断は個別案件の精査が前提です(書籍については§13で触れます)。
公的な実績として、前述のとおり令和6年度(2024年度)の事業承継・引継ぎ支援センターの第三者承継成約は2,132件、後継者人材バンクの成約は106件でした(中小機構、2025年5月30日発表)。少額帯に限った構成比までは公表資料から読み取れませんが、個人が小規模事業を引き継ぐ動きが公的にも進んでいることはうかがえます。
予算に合う会社・事業の案件を相談したい方へ — 「自分の予算でどんな案件があるのか」を整理したい場合は、買い手向けの無料相談から、希望条件に合う案件の探し方を相談できます。
§8 会社を買う資金調達(公庫融資・補助金)
自己資金だけでは買収価格に届かない場合でも、融資や補助金を組み合わせて資金調達できる可能性があります。代表的な手段を整理します。
| 資金調達手段 | 概要 | 担保・保証の方向感 |
|---|---|---|
| 自己資金 | 預貯金・退職金など | 不要 |
| 日本政策金融公庫の融資 | 事業承継向けの公的融資制度 | 制度・審査による |
| 信用保証協会付き融資 | 民間金融機関+信用保証協会の保証 | 保証協会の保証が前提 |
| セラーファイナンス | 売り手が代金の一部を分割で受け取る仕組み | 案件・交渉による |
| M&A関連の補助金 | 国・自治体の補助金(経費の一部補助) | 公募・採択による |
日本政策金融公庫の事業承継向け融資
日本政策金融公庫(国民生活事業)の「事業承継・集約・活性化支援資金」は、安定的な経営権確保等により事業の承継・集約を行う者などが対象で、個人(個人である中小企業者・個人事業主)も対象に含まれます。融資限度額は別枠7,200万円(運転資金・設備資金)、返済期間は設備資金20年以内(据置5年以内)・運転資金10年以内(据置5年以内)とされています。利率は対象区分や金融情勢によって基準利率・特別利率に変動します(日本政策金融公庫公式)。
補助金
M&A・事業承継に関連する補助金(事業承継・引継ぎ補助金など)は、専門家活用費用やDD費用の一部を補助する枠が設けられることがあります。ただし、補助金は年度ごとに公募内容・対象経費・補助率・締切が変わるため、利用を検討する際は中小企業庁・各事務局の最新の公募要領で確認してください。
融資条件(限度額・返済期間・利率)や補助金の内容は年度で変わります。本記事の数値は執筆時点のものです。実際の申し込み時には、日本政策金融公庫・中小企業庁などの最新の公式情報で必ず再確認してください。
連帯保証(個人保証)の論点
融資を受ける際に気になるのが、連帯保証(個人保証)です。事業承継時の保証については、全国銀行協会・経営者保証に関するガイドライン研究会の「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(令和元年12月公表、2020年4月適用開始)があります。この特則は、原則として前経営者・後継者の双方からの二重徴求を禁止し、後継者への保証は事業承継の阻害要因となり得るとして慎重な判断を求めています。あわせて、事業承継特別保証制度や、経営者保証コーディネーター(事業承継・引継ぎ支援センター)による保証解除支援も整備されています。
連帯保証をどう扱うかは、買い手の人生設計に直結する重要な論点です。融資・保証の具体的な条件は、金融機関や専門家と十分に相談したうえで判断してください。
§9 個人向けM&Aマッチングサイト・案件の探し方
個人が会社を買うための案件は、複数のルートから探せます。一つに絞らず、民間プラットフォームと公的支援を並行して使うのが現実的です。
主なルートの比較
| ルート | 概要 | 個人買い手との相性 | 費用の方向感 |
|---|---|---|---|
| 民間マッチングサイト | TRANBI・BATONZ など。案件を自分で検索・閲覧できる | 高い(少額〜中規模案件が豊富) | 月額制や成約手数料はサービスにより異なる |
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 全国に設置された公的機関。無料相談 | 高い(後継者人材バンクも併設) | 無料 |
| 金融機関・士業ネットワーク | 取引銀行・会計士・税理士などからの紹介 | 案件によるが信頼性は高い | 関与する専門家による |
民間マッチングサイトでは、登録すれば自分のペースで案件を検索・比較できます。料金体系はサービスごとに異なり、例えばTRANBIは買い手の月額プラン制で成約手数料は無料(§6参照)、BATONZなど他のプラットフォームでも個人買い手向けの仕組みが整っています。各サービスの料金・案件数・対応範囲は改定されることがあるため、登録前に最新の公式情報で確認してください。
公的ルートとして、事業承継・引継ぎ支援センターは全国に設置され、無料で相談できます。創業希望者と後継者不在企業をマッチングする「後継者人材バンク」も令和2年度から全国48か所の全センターに設置されており、令和6年度の新規登録者は1,551者(累計1万者超)に達しています(中小機構、2025年5月30日発表)。個人が独立・創業の手段として事業を引き継ぐ受け皿として活用できます。
案件一覧の見方・絞り込みのコツ
案件一覧を見るときは、業種・エリア・価格帯で絞り込み、気になる案件のノンネーム情報からチェックしていきます。価格だけで飛びつかず、売上・利益の推移、譲渡理由、引き継ぎ協力の有無などを必ず確認しましょう。最初は「買う」よりも「相場感をつかむ」つもりで、複数の案件を眺めるのがおすすめです。
個人で買える案件の探し方を相談したい方へ — どのルートが自分に合うか、どんな案件があるかを整理したい場合は、買い手向けの無料相談をご活用ください。予算・希望業種に合わせた案件の探し方をご案内します。
§10 サラリーマンが会社を買うには(副業・資金・連帯保証)
「会社員のまま会社を買えるのか」「未経験でも経営できるのか」は、サラリーマンの方が最も気にするテーマです。順に整理します。
会社員のまま買えるか(副業・兼業の論点)
会社員のまま会社・事業を買えるかどうかは、勤務先の就業規則・副業規定によって判断が分かれます。副業を認めている会社であれば、本業を続けながら本業継続型の小規模案件(§3の副業者タイプ)を引き継ぐことも考えられます。一方、副業が禁止・制限されている場合は、退職後に独立して取り組むなどの設計が必要になります。一律の公的な基準はないため、まずは自社の規定を確認することが出発点です。
サラリーマンの予算感
サラリーマンの場合、自己資金(退職金を含む)に公庫融資などを組み合わせて予算を組み立てるのが一般的です。300万〜500万円帯であれば、少額のスモールM&A案件が現実的な選択肢に入りやすい傾向があります。ただし、§5で触れたとおり、買収価格だけでなく運転資金・PMI投資まで含めた3層で予算を考えることが大切です。
連帯保証・個人保証への向き合い方
融資を受ける際の連帯保証は、サラリーマンが会社を買うときの大きな分岐点です。§8で触れた「経営者保証ガイドライン特則」により、事業承継時の保証は慎重に判断されるべきとされ、保証解除を支援する制度も整備されています。連帯保証を負うかどうかは家計・生活に直結するため、金融機関・専門家と条件を確認したうえで判断してください。
未経験でも運営できる案件の選び方
未経験のサラリーマンが会社を買って経営できるかは、案件の選び方に大きく左右されます。次のような案件は、未経験者でも引き継ぎやすい傾向があるとされます。
- 仕組み化された事業:業務がマニュアル化・標準化され、特定の人に依存しすぎていない事業。
- 売り手の引き継ぎ協力が厚い案件:一定期間、前経営者が引き継ぎに協力してくれる条件が付いている案件。
- 自分の知見が活かせる業種:本業や趣味で土地勘のある領域。
ただし、「サラリーマンでも必ず成功する」といった保証はありません。経営経験の不足は、§2の②④の軸を意識して、引き継ぎ協力期間や専門家の支援で補う前提で臨むことが大切です。
§11 個人M&Aの失敗事例と回避策(リスク・注意点)
個人M&Aには典型的な失敗パターンがあります。あらかじめ「どこでつまずきやすいか」を知っておけば、買って後悔するリスクを下げられます。ここでは代表的な4パターンと、それぞれの回避チェックリストを紹介します。
パターン1:資金不足
買収価格の支払いで予算を使い切り、買収後の運転資金やPMI投資が枯渇してしまうケースです。事業は買った瞬間から仕入れ・人件費・家賃などが発生するため、買収価格=必要資金ではありません。
回避チェックリスト
– [ ] 買収価格・運転資金・PMI投資の3層で予算を組んだか
– [ ] 想定外の出費に備えた余力(バッファ)を確保したか
– [ ] 公庫融資・補助金など調達手段を事前に検討したか
パターン2:DD不足
デューデリジェンス(DD)を省いた、または不十分だったために、簿外債務・未払残業代・取引先の離脱リスクなどを見落とすケースです。少額案件ほど省略されがちですが、リスクは金額の大小に比例しません。
回避チェックリスト
– [ ] 財務・法務・労務のDDを実施したか(必要に応じて専門家に依頼)
– [ ] 簿外債務・未払残業代・係争の有無を確認したか
– [ ] 主要取引先が買収後も継続する見込みを確認したか
パターン3:PMI不在
「契約=ゴール」と誤解し、買収後の統合(PMI)を計画していなかったために現場が混乱するケースです。経営者が代わった直後は、従業員や取引先が不安を抱えやすいタイミングです。
回避チェックリスト
– [ ] 買収後100日でやることを計画したか(100日プラン)
– [ ] 従業員・取引先への説明・関係維持の段取りを決めたか
– [ ] 自分が現場にどう関わるかを具体化したか
パターン4:引き継ぎ放棄
売り手の協力期間を活かせず、業務ノウハウや顧客関係が消失してしまうケースです。属人的な事業ほど、前経営者からの引き継ぎが価値の源泉になります。
回避チェックリスト
– [ ] 売り手の引き継ぎ協力期間を契約に盛り込んだか
– [ ] 引き継ぐべきノウハウ・人脈・取引条件を文書化したか
– [ ] キーパーソン(従業員)の離職リスクに手を打ったか
リスク類型早見表
| リスク類型 | 主な内容 | 主な対策 |
|---|---|---|
| 簿外債務 | 帳簿外の債務・保証・未払残業代など | DD(財務・法務・労務)、表明保証の活用 |
| 人材流出 | キーパーソンの離職 | 引き継ぎ期間の確保、処遇の維持 |
| 取引先離脱 | 経営者交代を機に取引縮小 | 早期のあいさつ・関係維持、契約確認 |
| 許認可 | 事業継続に必要な許認可の不備・取り直し | スキーム選択時に確認、専門家に相談 |
なお、ここで挙げた失敗事例は、一般化した類型として説明したものです。個別の契約上のリスクや法律判断については、弁護士・M&A仲介に相談してください。簿外債務の有無を契約前に見極めるDDの実務は、関連記事でさらに詳しく解説しています。
§12 会社を買った後はどうなる(経営権・従業員・PMI)
「会社を買うとどうなるのか」——買収後に何が変わり、何をすべきかを整理します。買った後のイメージが持てると、不安はかなり和らぎます。
経営権はどう移るか
株式譲渡であれば株主が変わり、必要に応じて代表者(社長)が交代します。これにより、買い手が会社の意思決定権を持つことになります。事業譲渡の場合は、買い取った事業の運営主体が買い手に移ります。いずれの場合も、登記や届出など必要な手続きが伴います。
従業員・取引先はどうなるか
株式譲渡では、会社の従業員との雇用関係や取引先との契約は原則として継続します。とはいえ、経営者が代わることへの従業員・取引先の不安は避けられません。早めに丁寧な説明を行い、雇用や取引条件を維持する姿勢を示すことが、その後の事業の安定につながります。
PMI(買収後の統合)100日プランの要点
買収後の最初の3か月(100日)でやることの目安は、次のとおりです。
- 関係構築:従業員・取引先へのあいさつと、現状ヒアリング。
- 現状把握:業務フロー・数値・課題の棚卸し。
- 引き継ぎ:前経営者からのノウハウ・人脈の移管。
- 小さな改善から着手:いきなり大改革をせず、信頼を得ながら進める。
買収後シナリオQ&A
- うまくいくケース:DDでリスクを把握し、引き継ぎ期間を確保し、従業員・取引先との関係を丁寧に維持できた場合。
- つまずくケース:契約をゴールと捉えてPMIを軽視し、引き継ぎが不十分なまま現場が混乱した場合。
雇用・税務の個別の取り扱いは、社会保険労務士・税理士などの専門家に相談しながら進めてください。買った後のシナリオを具体的に描けることが、安心して一歩を踏み出すための鍵になります。
§13 会社を買う前に読みたい本・体験談
実際に動き出す前に、書籍や体験談で全体像と「リアル」を掴んでおくと、判断の精度が上がります。
定番書籍
個人M&A・スモールM&Aをテーマにした書籍は複数あります。代表的なものとして、三戸政和『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』シリーズは、「個人でも小さな会社を買える」という考え方を広く知らしめた一冊として知られています。このほか、M&Aの実務・流れ・資金調達を解説した入門書なども出ており、目的(考え方を知りたい/実務を学びたい)に応じて選ぶとよいでしょう。
書籍はあくまで一般論・きっかけであり、特定の書籍が読者の成功を保証するものではありません。本記事ではアフィリエイトリンクは掲載しておらず、書籍の選定は中立的に紹介するにとどめています。
個人M&A体験談・ブログから学べること
個人M&Aの体験談やブログからは、購入金額・業種・苦労・結果といった、書籍やコラムでは見えにくい「リアル」を学べます。とくに、想定外のトラブルにどう対処したか、引き継ぎで何に苦労したか、といった実体験は参考になります。
ただし、体験談はあくまで個人の一例であり、同じ手順で同じ結果が出る再現性が保証されているわけではありません。「うまくいった話」も「失敗した話」も、自分のケースに当てはまるかを冷静に見極めながら読むことが大切です。
§14 よくある質問(FAQ)
Q. 個人でも会社を買えますか?
A. はい、個人でも会社を買えます。後継者不在の中小企業や小規模事業を、株式譲渡・事業譲渡で取得する「個人M&A」が広がっており、マッチングサイトや事業承継・引継ぎ支援センターを通じて個人が買い手になれます。ただし資金計画やDD(精査)が前提で、最終判断は専門家への相談をおすすめします。
Q. 会社を買うにはいくら必要ですか(費用相場)?
A. 買収価格は会社の収益力・資産・将来性などから算定され、数十万円規模から数千万円以上まで幅があります。加えて運転資金・PMI投資・仲介手数料・DD費用などが必要です。業種別の相場は一律に決まらないため、マッチングサイトの募集案件で相場感をつかむのが現実的です。
Q. 100万円や300万円で会社を買えますか?
A. 100万〜300万円程度の少額案件は実際に存在しますが、「必ず買える」わけではなく、内容やタイミング、交渉次第です。少額ほど属人性が高く資産が薄い傾向があるため、DDと引き継ぎ協力の確保が成否を左右します。
Q. 会社を買う流れ・手順は?
A. ①自己分析・予算策定 ②案件探し ③ノンネーム閲覧〜面談 ④意向表明・基本合意 ⑤デューデリジェンス(DD) ⑥最終契約・クロージング ⑦PMI(引き継ぎ)、の7ステップが基本です。検討からクロージングまで数か月〜1年程度かかることが多いとされます。
Q. 未経験・サラリーマンでも会社を買って経営できますか?
A. 仕組み化された事業や、売り手の引き継ぎ協力が厚い案件を選べば、未経験でも引き継ぎやすい傾向があります。会社員のまま買えるかは勤務先の副業規定次第です。経営経験の不足は引き継ぎ期間や専門家の支援で補う前提で臨むとよいでしょう。
Q. 会社を買うとどうなりますか(経営権・従業員・取引先)?
A. 株式譲渡なら株主が変わり、必要に応じて代表者が交代して経営権が移ります。従業員の雇用や取引先との契約は原則継続しますが、経営者交代への不安に対し丁寧な説明と関係維持が重要です。買収後100日のPMIが安定のカギになります。
Q. 会社を買うリスク・注意点は何ですか(簿外債務など)?
A. 主なリスクは、簿外債務・人材流出・取引先離脱・許認可の不備です。とくに株式譲渡では簿外債務を包括的に引き継ぐ可能性があるため、DD(財務・法務・労務)でリスクを洗い出すことが重要です。個別の法律判断は弁護士・M&A仲介に相談してください。
Q. 会社を買うための資金は融資で調達できますか?
A. 自己資金に加え、日本政策金融公庫の事業承継向け融資や信用保証協会付き融資、補助金などを組み合わせて調達できる可能性があります。公庫の事業承継・集約・活性化支援資金は個人も対象とされます。条件は年度で変わるため最新の公式情報で確認し、連帯保証の扱いも専門家と相談してください。
Q. 会社を買えるおすすめのサイト・サービスは?
A. 個人買い手向けにはTRANBIやBATONZなどのマッチングサイト、公的には全国の事業承継・引継ぎ支援センター(無料相談)や後継者人材バンクがあります。料金・案件数は改定されるため公式情報で確認し、複数ルートを併用して相場感をつかむのがおすすめです。
まとめ
個人が会社を買うことは、後継者不在の中小企業が増える今、起業よりも低リスクな選択肢として現実味を帯びています。成否を分けるのは大きく3点です。第一に、株式譲渡か事業譲渡かのスキーム選択と、買収価格の相場観を持つこと。第二に、買収価格だけでなく運転資金・PMI投資まで含めた3層の資金計画を、公庫融資や補助金も視野に組み立てること。第三に、DD(デューデリジェンス)で簿外債務などのリスクを見極め、買収後の引き継ぎ(PMI)を軽視しないことです。
100万〜300万円の少額案件やサラリーマンが買うケースでも、この勘所は変わりません。なお、税務・契約の個別判断は、税理士・弁護士・M&A仲介などの専門家に相談することを前提に進めてください。
まずは個人買い手向けのマッチングサイトで案件の相場感をつかみ、気になる案件があれば早めに相談してみるのが、最初の一歩としておすすめです。個人で会社を買うための無料相談(買い手向け)から、あなたの予算・希望に合う案件の探し方を整理してみてはいかがでしょうか。
あわせて読みたい関連記事
- デューデリジェンス(DD)の進め方と確認ポイント
- M&A仲介手数料・マッチングサイトの料金を比較する
- ブログ・Webサイト買収という選択肢
- サイト売買・事業売買の全体像
- M&Aによる事業売却の流れ(売り手側の全体像) — 売り手側の視点もあわせて理解すると交渉に役立ちます
- 会社・事業の売り手向けガイド