個人がM&Aで失敗してしまう場合の理由とは
個人がM&Aで失敗する主な理由として、次の5つが挙げられます。
・経営者としての思考が不足している
・仲介会社から良い案件を紹介してもらえない
・既存従業員からの信用が得られない
・買収先に関する知識や理解が不足している
・想定外の債務があった
それぞれ見ていきましょう。
経営者としての思考が不足している
未経験でM&Aに挑戦する人の中には、これまでのサラリーマン思考が捨てられず、経営者としての思考が十分に身に付いていない人もいます。
というのも、サラリーマンの多くは任された仕事に意識が向きやすく、会社全体よりも自身の評価を重要視することが多いでしょう。
一方で、経営者は会社全体を見通したうえで経営方針を決め、会社の存続や発展を第一に考えています。
このような違いを理解したうえで、経営者思考に切り替えることが大切です。
仲介会社から良い案件を紹介してもらえない
個人M&Aの場合は、仲介会社から手厚いサポートを受けられない可能性もあります。
その理由として、個人相手のM&Aは規模が小さく、仲介会社としては売上の貢献度があまり期待できないことが挙げられるでしょう。
また、個人M&Aの対象となる小規模案件を扱っていない仲介会社もあります。
既存従業員からの信用が得られない
M&Aを行った結果、経営者が交代することは従業員に大きな不安を与えることは言うまでもありません。
特に、個人M&Aが行われる会社は小規模なことが多く、経営者と従業員の距離が近いといえます。そのため、経営者が交代することを納得してもらうために多大な労力と時間が必要となるでしょう。
万が一、信頼関係を築くことができずに離職者が増えてしまった場合、会社の存続にも関わります。
買収先に関する知識や理解が不足している
買収する前に事業内容を十分に把握していないと、従業員や顧客とトラブルになる可能性が高まります。
経営者になったからといって身勝手な経営をしていては、必ずどこかで反発が起きるでしょう。どの企業にも特性があるため、それらを理解したうえで経営方針を決めていく必要があります。
想定外の債務があった
会計の簡略化などにより、計上されていない債務があとになって発覚するケースもめずらしくありません。
貸借対照表に計上されていない債務のことを「簿外財務」といい、経営が傾く一因となります。
なお、M&Aにおける簿外債務は主に次の4つです。
・退職給与引当金:将来支払われる退職金のうち、現在までに発生している分を見積もり計上するための勘定科目
・リース債務:ファイナンス・リース取引で借手側に生じる負債
・債務保証損失引当金:将来債務が発生した場合に備えるもの
・未払賞与:従業員に支払わなければならない未払いの賞与
このような債務を見落とさないためにも、経営状況などを把握できる財務諸表をしっかりと理解するようにしなければなりません。
個人M&Aを行うときに注意したいポイント
実際に個人M&Aを行う場合、次のふたつのポイントに気を付けましょう。
・少額で買収できる会社は利益も少ない
・買収後に事業が回らなくなるリスクもある
少額で買収できる会社は利益も少ない
安易に安いからという理由で、会社を買収してしまうことはおすすめできません。なぜなら、買収額が安ければ安いほど、利益が少なくなる傾向にあるからです。
しかし、利益が少ないと分かっていても、その企業の発展に見込みがあると判断した場合は、買収を検討してみても良いでしょう。
いずれにせよ、買収先を徹底的に調査したうえで、買収するか否かの見極めが必要になります。
買収後に事業が回らなくなるリスクもある
買収前までは問題なく事業が回っていても、買収後に事業がうまく回らなくなることがあります。
先述したように、経営者の交代によって従業員の不信感が高まると、こうした状況に陥るおそれが高くなるでしょう。最悪の場合、従業員が一斉退社する、ストライキを起こすといった取り返しのつかない事態につながりかねません。
また、買収後は情報収集を怠らずに、市場の変化を察知することも大切です。というのも、前任の経営者は市場の変化を見極めて売りに出していた可能性が大きいためです。
市場の変化にすばやく対応できるように、国内外問わず世の中の動きをこまめにチェックし、日頃から気を配るようにしましょう。
失敗を避けよう!個人M&Aを成功させるには
最後に、個人M&Aにおける失敗事例や注意すべき点を踏まえて、個人M&Aを成功させるポイントについて紹介します。
細やかに従業員のケアをする
経営者が変わる際に、状況によっては従業員に迷惑がかかることも少なくありません。
個人M&Aを行う際はより重点的に従業員のケアを行うようにしましょう。
従業員にM&Aを行う理由や今後の経営方針について丁寧に説明することはもちろん、状況に応じて個別で対話をする機会を設けることも大切です。
この際、現場の従業員よりも先に役員や管理職といった上席の立場にある人たちから先に説明するようにしましょう。
経営により深く携わっている人たちから先に理解を得ることで、次に説明する従業員からの納得も得やすくなります。
財務諸表をよく確認する
会社の財務状況を正確に知るためには、財務諸表をよく確認し、正しく理解することが欠かせません。
財務諸表は以下の3つに分けられます。
・貸借対照表:会社の資産と負債を表す
・損益計算書:会社の利益屋必要経費を表す
・キャッシュフロー計算書:会社がもつお金の流れを表す
失敗事例で述べた簿外債務の発覚は、これらの確認不足によって引き起こされるケースがほとんどです。
そのため、細かい部分までチェックをするのはもちろん、契約時に表明保証が明記されているかも必ず確認するようにしましょう。
なお、表明保証とは契約の内容が真実かつ正確であることを表明、保証するもので、個人M&Aにおいては常識的な記載事項となっています。
事業継承には時間をかける
M&Aを行い経営者になったとしても、いきなり企業のトップとして活躍するのは簡単なことではありません。
経営者として早く成功させたいがために身勝手な経営方針ばかりを打ち出していては、従業員がついてこないリスクも考えられるでしょう。
そこで、M&Aで成功している人の多くは、買収した後も前の経営者からサポートをしてもらう期間を設けるといった対策を講じています。
事業の引継ぎは、十分に時間をかけることが重要です。
M&Aマッチングサイトを利用して案件を探す
個人でM&A案件を探すのに限界を感じた場合、案件が豊富にあるM&Aマッチングサイトを活用してみると良いでしょう。
会社を経営するのはハードルが高いという方は、サイトM&Aサービスを利用して、Webサイトの購入を検討してみてはいかがでしょうか。
M&Aサービスのひとつである「M&A-WEB」では、2,000以上のサイトが登録されていることに加えて、多様なジャンルも取り揃えています。
ぜひこの機会に、利用してみてください。
まとめ
今回の記事では、個人M&Aの失敗事例を踏まえてリスクや注意点についてお伝えしました。
個人によるM&Aの機会は増えているものの、企業に比べて信用されにくいこともあり、交渉に至らないケースも少なくありません。
そのため、M&Aの知識をつけるのはもちろんのこと、失敗事例を把握しておくことが個人M&Aの成功への第一歩となるでしょう。