【業界別】オムニチャネルの成功事例
日本国内には、オムニチャネルによるマーケティングを推進し、成功した企業が多くあります。アパレル、雑貨、化粧品、書籍、小売全般、それぞれの業界別にオムニチャネルの成功事例を紹介します。
【アパレル】株式会社ユニクロ
世界各地にも事業を展開し、海外でも高い認知度を獲得しているユニクロは、オムニチャネルをいち早く取り入れた企業です。
ECサイトやスマホアプリを使った通信販売を行っており、オリジナルアプリではAIチャットボットによる接客サービス「UNIQLO IQ」を導入しています。
「UNIQLO IQ」でユーザーが体験できることは以下のとおりです。
・チャットにてコーディネートの提案
・実店舗の在庫確認
・注文・キャンセル、配送、返品・交換などの困りごとへの自動回答
このサービスはユーザーの利便性向上に役立つだけでなく、ユニクロ側にもメリットがあります。ユーザーの性別や年齢などのデータのほか購入データも収集できるため、データを分析し商品開発や在庫管理に役立てることができるのです。
また、チャットボットを使うとユーザーの声を効率良く集められるというメリットもあります。
【雑貨】株式会社良品計画
無印良品を運営する株式会社良品計画も早い段階でオムニチャネルを推進し、成功を収めている企業のひとつです。
良品計画がリリースしたのがスマホアプリ「MUJI passport」で、店舗検索や在庫検索などができるだけでなく、独自のマイルサービスがあるのが大きな魅力となっています。
「MUJI passport」のマイルサービスは、いわゆるポイントプログラムですが、マイルを貯めやすい工夫がなされているのが特徴です。
ユーザーは、以下のようなタイミングでマイルを貯めることができます。
・店舗で買い物をしたとき
・ネットで買い物をしたとき
・MUJI Cardで支払いをしたとき
・店舗でチェックインしたとき
・無印良品に意見を投稿したとき など
貯めたマイルはマイル数に応じてポイントに還元でき、買い物の際に利用できるため、ユーザーは楽しく貯められます。また、マイル数に応じて会員ランクがシルバー→ゴールド→プラチナ→ダイヤモンドとあがり、誕生日特典など様々な特典になるのもポイントです。
こうした工夫により無印良品は多くのユーザーの獲得に成功し、実店舗への誘導につながりました。
【化粧品】株式会社資生堂
日本を代表する化粧品メーカー資生堂では、3つのチャネルを連携させてアプローチするオムニチャネル戦略を打ち出し、成功を収めています。
・Beauty & Co.
美容の専門家と資生堂によるコラボレーションサイトです。20~30代の女性をターゲットに美と健康に役立つ情報を発信することで、潜在層の集客を行っています。
・watashi+
資生堂のおすすめ商品の紹介や美容診断などを行う美容情報サイトです。顕在層にアプローチするもので、オンライン上で資生堂商品の販売をしつつ、実店舗への集客を促します。
・実店舗
ビューティーコンサルタントがメイクレッスンを行うほか、個別に美容の相談に対応し、資生堂商品を販売します。
資生堂では、これら3つのチャネルの取り組みを連携させ、ユーザーの要望を満たすことで、顧客満足度の高いサービスを提供し、売り上げアップを実現させました。
【書籍】株式会社TSUTAYA
ビデオやCDのレンタル、書店などの全国展開のほか、Tカードの発行も行っている株式会社TSUTAYAも古くからオムニチャネルに取り組んできた企業です。
TSUTAYAでは、オムニチャネル戦略のひとつとして、オンラインとオフラインを結びつけ両者の長所を活かす取り組みを行っています。
代表的なサービスとして「Air Book」があります。これはTカードを提示して購入した雑誌や書籍のデジタル版が無料で読めるというサービスです。
ユーザーは自宅などでじっくりと実物を楽しみ、外出先などではデジタル版をチェックするといった使い方ができ、顧客満足度につながっています。
【小売全般】株式会社セブン&アイ・ホールディングス
セブン-イレブンなどでお馴染みのセブン&アイ・ホールディングスでは、オムニチャネルサービス「オムニ7」を運営しています。
「オムニ7」の魅力は、垣根を越えて商品を購入できることです。セブン-イレブンの商品以外にも、西部・そごうなどの百貨店、赤ちゃん本舗やロフトなどのあらゆる商品を購入できます。
購入した商品は全国のセブン-イレブンの店舗で受け取り可能で、店舗受け取りを選択すると送料や手数料はかかりません。また、受け取った商品の返品・返金もセブン-イレブンの店舗でできる(上限2万円)など利便性の高いサービスとして人気を集めています。
オムニチャネルに成功した企業に共通していること
オムニチャネル化には向き・不向きがあり、相性の悪い業種が導入すると思うような成果は得られないでしょう。導入を検討する際は、自社はオムニチャネルとの相性が良いかを見極めることが重要です。
先に挙げた成功企業の共通点から、以下に当てはまる企業はオムニチャネル化に向いているといえます。
顧客が多く事業規模が大きい
オムニチャネル化を実現するためには一定額の投資が必要です。成功事例を見るとわかるように、すでに全国に複数の店舗を抱える企業、また一定の規模のECサイトをもつ企業がオムニチャネル化の成功につながっています。
逆に店舗数が少なく、ECサイトの規模が小さい企業であれば、オムニチャネル化の導入による売上アップは望めません。ほかの戦略が求められます。
実店舗に「行くこと」または「行かないこと」が価値になっている
実店舗に行くことが顧客体験の向上につながっている業種もオムニチャネル化で成功させやすいといわれています。
たとえば、アパレルなどの業種は、実店舗で商品を実際に手に取ったり、試着してみたりすることで購買意欲を高め、ネットでの注文にもつながります。また、店舗で貯めたポイントをECサイトでも使えるようになっていると、実店舗で迷った商品をネットで購入することにもつながるでしょう。
逆に、実店舗の商品をネットで買うことで、店舗に行かなくても良いことが価値になる業種もオムニチャネル化に向いています。
ネットスーパーなどがその例です。忙しい、重いものを抱えて帰るのが大変、自宅からスーパーまでの距離が遠いといった人にとって、スーパーに行かず商品を購入できることのメリットは大きいといえます。こうした業種はオムニチャネル化を図ることで、売上アップが見込めるでしょう。
事例から学ぶオムニチャネルを成功させるポイント
オムニチャネルは大きな成果が期待できるものの、導入しても思うような収益につながらないこともあります。企業の成功事例から、オムニチャネル化を成功させるポイントを紹介します。
顧客に提供したい価値を明確にする
オムニチャネルは、それぞれのチャネルを連携させ、顧客に価値を提供する戦略です。提供したい価値や顧客体験などを整理し、それらを明確にしなければ十分な効果は期待できません。
他企業の成功事例を参考にするだけでなく、カスタマージャーニーマップなどを使って戦略を考えることが大切です。対象となるペルソナを設定し、ペルソナが自社の商品を購入するまでの流れを考えることで、よりユーザーに訴えるサービスを提供することができます。
全社的に取り組む
オムニチャネルの成功のためには、各チャネルで適切な接客も求められます。チャネルごとの担当者がそれぞれの視点から個別の施策を立ててしまうと、それはオムニチャネルとは呼べなくなります。
各チャネルがマーケティングの方向性を合わせ、全社戦略として取り組むことが大切です。
まとめ
オムニチャネルの導入により成功している企業の事例を分析すると、どんな企業がオムニチャネル化に向いているのか理解できます。また、成功のために何が必要となるのかヒントを得ることもできるでしょう。
本記事で紹介した事例や成功のポイントを参考に、オムニチャネル化の可能性について検討してみてください。