経費計上できる?サイト購入費の仕訳方法を解説!

自社のサービスや商品についての認知度を高めるために、Webサイトの運用を行う企業は多くあります。しかし、自社のWebサイトをユーザーに認知してもらうには、検索上位にヒットするようなSEO(検索エンジン最適化)が必要です。 一から立ち上げて検索上位にヒットするようになるまでには時間を要することから、サイトを購入する企業も少なくありません。 企業がオウンドメディアとして運用するようなWebサイトを購入した場合、経費として計上することはできるのでしょうか。 今回は、サイト購入費の経費計上方法や勘定科目の仕訳例、サイト購入後にかかる費用の経費計上について解説します。

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サイト購入費は経費として計上可能

企業で自社のサービスや商品の認知度を高めるために投入したサイト購入費は、経費として計上することが可能です。

サイト購入費を経費計上する際には、用途に合わせて勘定科目の仕訳を行う必要があります。

購入したサイトの特徴や機能によって「広告宣伝費」と「無形固定資産」のどちらかに分類されるため、経費計上時には注意が必要です。

ホームページなどの自社PRに活用する場合は、広告宣伝費に分類されます。

購入したサイトに、検索機能やネットショッピングの機能などのソフトウェアが付属している場合には、無形固定資産に該当するため注意が必要です。

無形固定資産に該当するサイト購入費は、ソフトウェア機能の有無によって、ソフトウェアとのれんの2種類に分類されます。

では、具体的にどのような用途で支出した経費が広告宣伝費や無形固定資産に分類されるのでしょうか。

ここからは、広告宣伝費に含まれるサイト、無形固定資産に含まれるサイトの判断方法について解説します。

広告宣伝費とは

経費計上を行う際の勘定科目において、不特定多数のユーザーに対して企業が宣伝活動を行う際にかかる費用は「広告宣伝費」に分類されます。

サイトの作成や購入、維持に関する費用のほか、チラシやパンフレット、CM、ネット上の広告などが該当します。

サイト購入にかかる経費の場合、1年以内にサイトの更新を部分的にでも行っていれば、広告宣伝費として計上することができます。

ただし、1年以内にサイトの更新を行わない場合、広告宣伝費ではなく繰延資産の扱いになるため注意しなければなりません。

繰延資産とは、1年以上の長期間にわたって利益を生む企業資産のことであり、経費計上の際には均等償却や任意償却を行います。

減価償却を行った場合、サイト購入に充てた経費を購入した年に一括計上できなくなってしまいます。

無形固定資産とは

企業に収益をもたらす資産となるのは、土地や不動産などの有形資産だけではありません。長期にわたって企業の収益を生むものの中で、無形の資産のことを「無形固定資産」といいます。

ソフトウェアを含むサイトの制作や購入費用のほか、漁業権や樹木採取権などの独占的な権利や、ブランド力やノウハウ、従業員の能力などの「のれん」が該当するものです。

無形固定資産としてサイト購入経費を計上する場合は、ソフトウェアまたはのれんに分類されます。

ソフトウェア

サイトに含まれているソフトウェアは多岐にわたります。無形固定資産に分類されるソフトウェアは、プログラムの言語問わずデータベースへのアクセスや、ネットワークへの接続機能を有するものが対象です。

サイトに含まれるソフトウェアには、以下のような例があります。

・ログイン機能
ログイン機能には、サーバーを介してユーザーの入力した情報との差異がないかを確認する機能が組み込まれているため、ソフトウェアに該当します。

・オンラインショッピング機能
オンラインショッピング機能を有するサイトも、ソフトウェア機能をもつものとして判断できます。ECサイトなどのネットショップを運営するサイトの場合、受注、決済に関わる機能が組み込まれているためです。

おもな機能が広告宣伝目的ではなく、販売目的であることから、無形固定資産に該当するソフトウェアだと判断できます。

・検索機能
サイト内にある商品などの検索を行う機能です。ユーザーが探している商品などをキーワードから検索できるもので、検索キーワードの履歴分析にも活用されます。

検索機能には、サーバーを介して自社サイトの情報やあらゆるデータの抽出、リストアップを行う機能が搭載されているため、ソフトウェアのひとつと判断することが可能です。

・予約機能
自社商品やサービスなどの予約を行う機能も、ソフトウェアに該当します。

商品や予約情報の管理を行うプログラムが搭載されているため、広告宣伝をおもな目的としたサイトではないと判断される機能です。

・ゲーム機能
サイト上でユーザーがゲームを行うことができる場合も、ソフトウェアを有するサイトとして判断します。

広告宣伝が主な目的ではなくなることや、ゲームを機能させるためのプログラムが組み込まれているため、無形固定資産として計上しましょう。

・動画配信機能
動画配信機能を有するサイトも、ソフトウェアが組み込まれたものに該当します。動画を再生するためのプログラムが組み込まれているためです。

ただし、自社の商品やサービスの宣伝広告を目的として、サイト上に掲載するための動画制作を行った場合、制作費に関しては「宣伝広告費」に分類されます。

作成した動画を掲載するのではなく、サイトに動画の配信機能が組み込まれている場合には、無形固定資産としての計上が必要です。

上述のような機能がソフトウェアに分類される一方で、サイト内のお問い合わせフォームや資料請求フォーム、SEO機能などは宣伝広告費に分類されます。

コンピューターにそれぞれの機能をもたせるために、指令(プログラム)を組み合わせて表現したものがソフトウェアです。

しかし、ワードプレスなどにはMySQLというソフトウェアが搭載されているものの、基本的にはソフトウェアに分類されません。

このように、ソフトウェアの分類には曖昧な面もあるため、宣伝広告に使用した機能か否かを基準に判断すると良いでしょう。

のれん

のれんは、買収対象のブランド力やノウハウなど、収益につながる資産価値を表すものです。「超過収益力」とも呼ばれます。

サイト購入費が高額な場合、買収したサイトが事業とみなされる場合には、のれんが発生する可能性があるため注意しなければなりません。

ソフトウェアに該当する部分の有無にかかわらず、サイトがもつ収益力よりも将来性を見越して高値で購入した場合などが対象です。

たとえば、毎月200万円の収益を生むサイトを1,000万円で購入した場合、サイトの資産価値は200万円と判断できるため、差額部分の800万円はのれんに該当します。

この800万円を5年間で減価償却する必要が出てくる場合があるため、高値で購入した場合にはのれんを計上しなければなりません。

ただし、収益力が年々減少する可能性もあるため、のれんの扱いは不確定な部分もあります。顧問弁護士や会計士と相談するなどして、確認しておくと良いでしょう。

3つの勘定科目の仕訳例

ここからは、広告宣伝費、ソフトウェア、のれんの3つの勘定科目に該当する経費計上の仕訳例について紹介します。

広告宣伝費

広告宣伝費は、企業の宣伝活動にかけた経費を計上する際に使用する勘定科目です。

ソフトウェアやのれんなどの無形固定資産を含まないサイトを購入した場合、以下のように形状します。

借方

貸方

摘要

広告宣伝費

2,000,000

Webサイト購入費用

そのほか、広告宣伝費として計上する仕訳例は以下のとおりです。金額や利用目的などに応じて計上する際の勘定科目が異なるため、注意しなければなりません。

 

・商品宣伝のためにチラシを印刷した

借方

貸方

摘要

広告宣伝費

100,000

チラシ印刷費用

 

・雑誌に自社の広告を掲載した

借方

貸方

摘要

広告宣伝費

70,000

雑誌掲載費用

 

・営業活動で配布する物品を購入した

借方

貸方

摘要

宣伝広告費

3,000

物品購入費用

ソフトウェア

ソフトウェアを含む無形固定資産を経費計上する場合には、上述のとおり減価償却する必要があります。

中小企業の場合、サイト購入費が30万円以下であれば「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」に該当する点に注意しましょう。

サイト購入費が30万円以下であれば、中小企業は一括償却することができます。30万円を超える場合は、サイトの耐用年数とされる3年もしくは5年で減価償却を行いましょう。

大企業の場合は損金算入特例の対象外となるため、10万円以上が減価償却の対象となります。

減価償却は、対象となるものの「耐用年数」で計上する年数が異なる点が特徴です。ソフトウェアで3年計上となるのは「複写して販売するための原本」または「研究開発用」の2種類になります。

それ以外のソフトウェアは、5年間減価償却して計上すれば問題ありません。

国税庁によると、市場販売目的でソフトウェアを購入した際の減価償却費は、以下の計算式で算出するよう定められています。

購入の代価+購入に要した費用の額+事業の用に供するために直接要した費用の額/各年度期首の販売見込数量

※そのソフトウェアの導入に当たって必要とされる設定作業や、自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業などの費用の額も取得価額に算入します。

出典:「ソフトウエアの取得価額と耐用年数」(国税庁)

(例) 

見込み販売数量 1,000個 初年度に実績として販売した数量 800個

ソフトウェアを含むサイト購入費 700万円

800万円×800÷1,000=640万円

 

初年度の減価償却費は640万円となり、次年度は未償却の購入費160万円を計算式の購入費部分に当てはめて算出することになります。

自社使用目的でソフトウェア購入した場合、購入費を耐用年数ごとに定められた減価償却率(定額法)を掛けることで算出可能です。

平成19年4月1日以降に購入したサイトの場合、耐用年数3年のものは0.334、5年のものは0.200が減価償却率になります。

(例)

購入したソフトウェアが300万円

耐用年数5年

300万円×0.2=60万円

このケースでは、60万円を減価償却費として計上しましょう。

ソフトウェアの経費計上における仕訳例には、以下のようなものがあります。

このケースでは、60万円を減価償却費として計上しましょう。

ソフトウェアの経費計上における仕訳例には、以下のようなものがあります。

 

・今期の償却額が60万円のケース

借方

貸方

適用

減価償却費

600,000

ソフトウェアの減価償却

 

・購入したソフトウェアの一部に研究開発費が含まれるケース

借方

貸方

適用

減価償却費

300,000

ソフトウェアの減価償却

研究開発費

500,000

ソフトウェアの研究開発費部分

 

・購入したソフトウェアが10万円以下だったケース

借方

貸方

適用

宣伝広告費

80,000

サイト購入費用

※10万円以下であればソフトウェアを含むサイト購入費用でも、一括計上可能です。

のれん

サイト購入費のうち、のれんにあたる費用を経費計上する際の仕訳例を紹介します。無形固定資産の場合、1円単位まで償却計上を行わなければなりません。

・サイト購入費用2,000万円のケース(のれんにあたるのは1,000万円)

借方

貸方

適用

減価償却費(のれん)

2,000,000

サイト購入費用

※別途のれん部分を除く購入費用の経費計上も必要です。

 

・サイト購入費用25万円のケース(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に該当)

借方

貸方

適用

広告宣伝費

250,000

サイト購入費用

※損金算入特例に該当する場合は、のれんも広告宣伝費として一括計上できます。

【購入後】サイトの維持・更新にかかる費用

ここからは、サイト購入経費ではなく、サイトを購入後に維持管理や更新時に発生する費用の経費計上について解説します。

計上する際には自社の用途に合わせて勘定科目を設定し、どのような場面で発生した経費なのかが一目でわかるように、摘要に記載しておきましょう。

ドメイン費用

ドメイン費用とは、インターネット上で使用する住所のようなもので、URLの末尾にある「.com」や「co.jp」などの表記で知られています。

ドメイン費用は、ドメインを扱う管理会社に払う利用料のことで、年間契約で支払う形式が一般的です。

経費計上を行う際の勘定科目としては「通信費」として仕訳されることが多く、場合によっては「広告宣伝費」「支払手数料」に分類されるケースもあります。

更新料として、年間約1,000~3,000円程度の利用料が発生するので必ず計上しておきましょう。

サーバー費用

サーバーとは、ネットワークを介してサービスを提供する際に必要なコンピューターのことで、サイトのデータを保管しておく場所を指します。

レンタルサーバーを利用する際には、サーバー費用を経費計上する必要があるため、自社サーバーをもたずレンタルする場合には注意が必要です。

サーバー費用は、経費計上の際に「通信費」「広告宣伝費」などの勘定科目で計上することが多く、通信費にまとめず勘定科目を別途用いることもあります。

「賃借料」「レンタルサーバー代」のほか「支払手数料」などの勘定科目で計上しても問題ありません。

コンテンツ作成費用

コンテンツ作成費用は、自社の商品やサービスを宣伝するために、サイトに掲載するコンテンツを作成した場合に発生する費用です。

一般的には「広告宣伝費」として計上できますが、ネットショッピングや予約機能などの高度な機能を追加した場合には「無形固定資産」に該当することがあります。

コンテンツ作成に該当するものは多岐にわたり、会社概要やお知らせの更新、商品やサービスの紹介、イベント告知などもそのひとつです。

サイト上の文章、画像、映像、音楽など、なんらかのデータを更新や変更した際に生じた経費をコンテンツ作成費用として計上することができます。

SEO対策費用

SEO対策費用もサイト購入後に発生する費用のひとつです。サイトを検索上位にヒットさせるためには、SEO対策(検索エンジン最適化)が必要になります。

SEO対策は、広告宣伝費とみなされるため「広告宣伝費」の勘定科目で経費計上することが一般的です。

SEO対策には「SEOコンサルティング」サイトの内部リンクなどの骨組みをつくる「内部対策」のほか、被リンク獲得やSNS設置などを行う「外部対策」などがあります。

また、SEOコンテンツの作成は「広告宣伝費」、コンサルティング費用を「業務委託費」や「支払手数料」などのように、経費計上の内訳に応じた勘定科目に分類しても問題ありません。

もし自社でSEO対策を行う場合には、担当社員の人件費や分析ツールの購入費用なども経費として発生します。

まとめ

サイト購入にかかる経費は、金額や内訳、用途などによってさまざまな勘定科目で計上する必要があります。

また、経費をかけてサイトを購入するのであれば「費用対効果の高いサイトを購入したい」と考える方も多いでしょう。

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