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#M&A統計#事業承継

国内企業同士のM&A、金額43%減に前年の超大型案件が影響。件数は1〜9月で最多

この記事の目次
  1. 01|国内同士のM&Aは3,090件で最多、取引金額は6.6兆円
  2. 02|43%減の背景にある、前年の超大型案件
  3. 03|海外が絡む取引は、国内同士とは動きが違う
  4. 04|件数は何が増えているのか
  5. 05|「総額が減った」は「会社が安く売れている」ではない
  6. 06|次に見る数字

2026年1〜9月の日本企業同士のM&Aは、件数が3,090件で同期間の最多、取引金額は前年同期比43.1%減。前年にあった豊田自動織機の非公開化という超大型案件が大きく影響しており、この1件を除けば金額は前年同期を上回る。

国内企業同士(IN-IN)のM&A取引金額

−43.1%

2026年1〜9月・前年同期比。件数は3,090件(+4.7%)で同期間の最多

出典:レコフデータ(MARR Online)2026年9月30日現在集計

資料の公表日:

この記事でわかること

2026年1〜9月の国内企業同士のM&Aは「件数は最多なのに、金額は4割減」。この落差がどこから来ているのかを、マーケット別の数字と大型案件から確かめる。

答えの要点:金額の減少には、前年同期に豊田自動織機の非公開化という超大型案件(MARR のデータで5兆4,060億円=2026年2月10日時点。2回目の価格引き上げ後の買収総額は約5.9兆円=2026年3月24日の報道)があったことが大きく影響している。減少額はこの1件の金額より小さく、どちらの金額で見ても、この1件を除くと国内企業同士の取引金額は前年同期を上回る。件数の増加分の約4分の3は国内企業同士で、レコフデータは事業承継と上場企業の事業再編の伸びを挙げている。総額の減少は「会社が安く売れるようになった」ことを意味しない。

日本企業同士のM&Aは増えている。レコフデータ(MARR Online)の集計では、2026年1〜9月の国内企業同士(IN-IN)のM&Aは3,090件と前年同期比4.7%増え、1〜9月としては最多になった。ところが、取引金額は6兆6,113億円で、前年同期から43.1%減った。

買収の数が増えているのに、なぜ金額は4割も減ったのか。数字を分解すると、比較の相手である2025年に、1件で5兆円を超える取引があったことが大きく効いていると分かる。

01|国内同士のM&Aは3,090件で最多、取引金額は6.6兆円

国内同士(IN-IN)の件数

3,090件

前年同期比 +4.7%、1〜9月として最多

国内同士(IN-IN)の取引金額

6兆6,113億円

前年同期比 −43.1%

日本企業のM&A全体の件数

3,883件

+5.0%。金額は22兆8,024億円(−21.1%)

レコフデータは日本企業が当事者のM&Aを、取引の向きで3つに分けて集計している。2026年1〜9月の数字は次のとおりだ。

区分 件数 件数の前年同期比 取引金額 金額の前年同期比
国内同士(IN-IN) 3,090件 +4.7% 6兆6,113億円 −43.1%
日本→海外(IN-OUT) 467件 −2.5% 9兆9,953億円 −22.3%
海外→日本(OUT-IN) 326件 +21.2% 6兆1,957億円 +41.0%
合計 3,883件 +5.0% 22兆8,024億円 −21.1%

出典:レコフデータ(MARR Online)、2026年9月30日現在集計。前年同期比は MARR の公表値。

件数と金額が逆方向に動いたのは国内同士だけだ。日本企業による海外企業の M&A(IN-OUT)は件数・金額とも減り、海外企業による日本企業の M&A(OUT-IN)はどちらも増えた。

02|43%減の背景にある、前年の超大型案件

2025年6月、トヨタ不動産などによる豊田自動織機の非公開化が発表された。レコフデータはこれを国内同士の案件として計上している。金額は時点によって変わっている。

  • 発表時(2025年6月):MARR の金額は約4兆6,840億円
  • 1回目の公開買付け価格の引き上げ(2026年1月)の後:MARR のデータで5兆4,060億円(2026年2月10日時点)
  • 2回目の引き上げ(2026年3月6日)の後:公開買付けの成立を伝えた2026年3月24日のロイターの報道では、レコフデータによる買収総額は約5兆9,000億円

この記事の比較は、すべてレコフデータ(MARR)の集計基準による。MARR の現在のデータで、この案件の金額が約5.9兆円に更新されているかは確認できなかった。

前年同期(2025年1〜9月)の国内同士の取引金額は、MARR の前年同期比から逆算すると約11兆6,192億円。その約半分を、この1件が占めていた。

国内同士の金額の減少額と、豊田自動織機の1件の金額
減少額(2025年→2026年)約5.0兆円
豊田自動織機(MARR、2026年2月10日時点)5兆4,060億円
豊田自動織機(2026年3月24日の報道)約5.9兆円

減少額は MARR の前年同期比(−43.1%)から逆算した前年同期(約11兆6,192億円)と2026年(6兆6,113億円)の差で、M&A-WEB 編集部の試算。約5.9兆円は2回目の公開買付け価格引き上げ後の買収総額で、ロイターがレコフデータの額として報じた値(2026年3月24日)。MARR のデータ(2026年2月10日時点)とは時点が異なる。棒の長さは約5.9兆円を100とした比。

国内同士の金額の減少額(約5兆79億円)は、豊田自動織機の金額を5兆4,060億円と約5.9兆円のどちらで取っても、それより小さい。つまり、この1件を除いて比べれば、2026年の国内同士の取引金額は前年同期を上回る(M&A-WEB 編集部の試算)。どれだけ上回るかは、前年同期の数字にこの案件がどちらの金額で入っているかで大きく変わるため、ここでは増減率を示さない。日本企業のM&A全体(22兆8,024億円、−21.1%)も、同じ1件を除けば減少幅はわずかになる。

2026年の国内同士には、兆円規模の取引は見当たらない。2026年1〜8月の金額上位10件(全区分)に入った国内同士の案件は、久光製薬の経営陣による MBO(3,937億円)と、大和証券グループによるオリックス銀行の買収(3,700億円)の2件だけだった。

前年同期の数字は、後から修正されている

MARR の前年同期比は、その後に修正された前年の数字と比べている。2025年10月の公表時点では、2025年1〜9月の国内同士の取引金額は9兆3,385億円だった。現在の比較の基準(約11兆6千億円)は、それより約2.3兆円多い。この上方修正には豊田自動織機の公開買付け価格の引き上げ(2026年1月と3月)による増額が含まれるとみられるが、どこまで反映されているか、残りがどの案件の追加・修正によるものかは、公開資料では確認できなかった。なお、当時の公表値を基準にしても、豊田自動織機(当時の金額 約4兆6,840億円)を除いた国内同士の金額は前年同期を上回る。

03|海外が絡む取引は、国内同士とは動きが違う

日本企業による海外企業の M&A(IN-OUT)は、件数467件(−2.5%)、金額9兆9,953億円(−22.3%)と、件数・金額とも前年同期を下回った。

一方、海外企業による日本企業の M&A(OUT-IN)は、件数326件(+21.2%)、金額6兆1,957億円(+41.0%)と、どちらも増えた。2026年5月には EQT の運営ファンドなどによるカカクコムの買収があった(公表時の金額は約5,513億円、レコフデータの2026年9月の資料では約6,564億円)。国内同士で金額が減った一方で、海外からの買収は金額が増えている。

04|件数は何が増えているのか

日本企業のM&A全体の件数は、前年同期(3,699件)から184件増えた。このうち国内同士が139件で、増加分の約4分の3を占める。

レコフデータが2026年9月に示した資料(1〜8月の集計)は、市場をけん引する動きとして次の数字を挙げている。

分類(レコフデータ) 2026年1〜8月の件数 前年同期比
中堅・中小企業を中心とした事業承継 741件 +11.1%
上場企業の事業再編 1,042件 +5.6%
投資ファンドが買い手(国内同士+海外企業による日本企業の M&A) 741件 −1.7%

事業承継と上場企業の事業再編は増えている一方、投資ファンドが買い手の件数は前年同期を下回った。ファンドが件数の増加を引っぱった、とはこのデータからは言えない。これらの分類は重なり得るため、件数を足し合わせることもできない。

また、2026年9月単月の事業承継M&Aは80件で、前年同月から7.0%減った。事業承継の伸びが続くかは、10月以降の数字を見ないと分からない。

05|「総額が減った」は「会社が安く売れている」ではない

レコフデータの取引金額は、案件ごとに公表された対価(一部は推計)を足し上げたものだ。件数・金額とも公表ベースで、まだ完了していない案件も含む。公開買付けの価格が引き上げられれば、後から金額も修正される。

そのため、総額は数件の大型案件で大きく動く。総額が4割減ったことは、1社あたりの売却価格が下がったことを意味しない。金額が公表されない案件は総額に入らないため、総額を件数で割った「平均」を、平均的な買収価格として読むこともできない。

自社の事業の価値を考えるときは、総額ではなく、同じ業界・規模の取引でどんな条件が付いているかを見る必要がある。

この記事で確認できないこと

  • MARR の現在のデータで、豊田自動織機の金額が2回目の価格引き上げ後の額(約5.9兆円)に更新されているか
  • 前年同期の国内同士の金額が約2.3兆円上方修正された内訳(豊田自動織機の価格引き上げ分がどれだけ含まれるか)
  • 豊田自動織機の1件を除いた場合の正確な増減率(この案件の金額をどちらで取るかで大きく変わる)
  • 豊田自動織機以外の上位案件まで除いた比較(修正後の上位案件が確定できないため)
  • 金額が公表されていない案件の割合
  • 2026年10〜12月や通年の見通し

06|次に見る数字

10〜12月の集計では、国内同士の件数の伸びが続くか、事業承継型の M&A が再び増えるか、海外企業による日本企業の買収が金額・件数とも伸び続けるかが焦点になる。金額については、前年の大型案件の影響が抜けたあとの比較になるため、1件の大型取引の有無で前年同期比が大きく振れることを前提に読む必要がある。

参照資料

公表事実
数値・日付・取引条件は、上の資料に書かれていることだけを載せています(資料の公表日 2026年10月2日)。
編集部の分析
「どう読むか」は M&A-WEB 編集部の解釈です。資料から言えることと区別して書いています。
確認できないこと
資料に無いこと(取得価格の内訳、個々の企業の事情など)は推測で埋めず、そう書いています。

一次資料との照合:2026年10月22日

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