バー・スナック M&A 事業承継 許認可承継

バー・スナックの許認可は引き継げる?深夜酒類提供届は承継不可・営業許可は地位承継【2026年】

更新: 2026年6月14日

バー・スナックを譲ろうとすると、必ずぶつかる疑問があります——「営業許可や深夜営業の届出は引き継げるのか、それとも買い手が取り直すしかないのか」。ここで多くの人が見落とすのが、バー・スナックには性質の異なる3つの許認可があり、承継の可否がまったく違うという点です。保健所の飲食店営業許可は2021年6月1日/2023年12月13日の改正で地位承継が届出化され、引き継げるようになっています。けれど深夜0時以降に酒を出す『深夜酒類提供飲食店営業』は風営法上の”届出”で、一身専属=承継が一切できず、買い手が新規届出をやり直すことになります。接待を伴うスナックの『風俗営業許可』は、承継が相続・合併・分割の3パターンに限られます。後継者不在で出口を探すオーナー、そして居抜きで店ごと取得したい買い手へ。本記事は、バー・スナックの3許認可を、株式譲渡・事業譲渡・相続でどう承継・維持・やり直しになるかと、深夜営業/接待を止めずに引き継ぐ実務を、スキーム別・許可と届出を厳密に区別して整理します。許認可の「取り方」ではなく、M&A・事業承継で「引き継ぐ(引き継げない)」実務に絞ってお伝えします。なお、許認可承継の前提となる業界全体の動向(倒産・後継者不在・M&A)はバー・スナック業界の最新動向2026で定点観測しています。

この記事の結論(先に要点だけ)

  • バー・スナックの営業に要るのは原則飲食店営業許可(食品衛生法に基づく保健所の許可)で、深夜0時以降に酒類を提供するなら深夜酒類提供飲食店営業の届出(風営法・公安委員会=所轄警察署)、接待を伴うなら風俗営業許可(風営法・公安委員会の許可)が加わります[C-01][C-15]。建設業のような経営業務管理責任者・専任技術者・経営事項審査といった重い人的・財務要件はありません。
  • 保健所の飲食店営業許可は「引き継げる」。株式譲渡なら法人格が変わらないため許可は会社に帰属したまま原則そのまま継続し、取り直しや地位承継届は原則不要です(食品衛生責任者・役員等の変更があれば所要の届出。要管轄保健所確認)[C-05]。事業譲渡は2023年12月13日から、相続・合併・分割は2021年6月1日から、地位承継届で承継できます(手数料無料・営業の全部譲渡が条件・譲渡契約書等の添付が必要・必要書類や期限は管轄保健所により異なります)[C-03][C-04]。★「2021年改正で事業譲渡の地位承継が可能になった」という説明は誤りで、事業譲渡は2023年12月13日からです[C-03]。
  • だが深夜酒類提供届は一身専属で承継”できない”——経営者交代・事業譲渡・相続・法人成りでも買い手が新規届出をやり直します(営業開始の10日前まで・無届は50万円以下の罰金・廃業届と新規届出を同時提出すると最大10日間、深夜営業ができない空白が生じうる)[C-15]。接待を伴う風俗営業許可の承継は相続・合併・分割の承認申請の3パターンのみ=事業譲渡・法人成りでは引き継げません(株式譲渡+代表者変更なら法人格不変で継続)[C-15]。
  • 個人事業のバー・スナックは株式(法人格)がなく株式譲渡が使えないため、事業譲渡(≒造作譲渡)=営業許可は地位承継届・深夜届/風営許可は完全やり直しになります[C-06]。許可・造作・常連は廃業すればゼロ、承継すれば居抜きで値が付く”引き継げる資産”。許可と届出の承継ギャップを前提に、可否・必要書類・期限は管轄保健所・所轄警察署(生活安全課)・行政書士へ確認のうえ、まずは自店の出口を整理することから始めましょう。

§1 バー・スナックの許認可とは — 営業許可・深夜酒類提供届・風俗営業許可の3層

承継の話に入る前に、バー・スナックの許認可が「何で構成されるか」を押さえておきます。とくに大切なのは、”許可”と”届出”を混同しないこと。ここが承継ミスの最大の元になるからです。

バー・スナックの許認可とは、店内で酒類・軽食などを提供するために必要な食品衛生法の「飲食店営業許可」を土台に、深夜の酒類提供や接待の有無に応じて風営法上の届出・許可が重なる、3層の許認可をいいます。順に分けて理解しておきます。

第1層は、飲食店営業許可=食品衛生法に基づく保健所の許可です。2021年6月1日施行の食品衛生法改正で、営業許可の業種が再編され(営業許可業種は32種に整理)、原則すべての営業者にHACCPに沿った衛生管理が制度化されました[C-01]。許可は施設基準(厨房・手洗い・冷蔵設備など)を満たして保健所長の許可を受けて営業するもので、建設業許可のような経営業務管理責任者・専任技術者・経営事項審査・指定建設業といった重い人的・財務要件はありません[C-01]。各施設には食品衛生責任者を1名専任で配置する義務があり(令和3年6月1日から・兼任不可)、営業者が変わっても配置は必要で、責任者を変更したときは管轄保健所へ変更届を出します(期限・様式は自治体差・例えば江東区では変更のあった日から10日以内)[C-02]。

第2層は、深夜酒類提供飲食店営業=風営法上の”届出”(許可ではありません)です。深夜(午前0時〜午前6時)に主として酒類を提供するバー・スナックは、公安委員会(=所轄警察署の生活安全課)への届出が必要で、届出は営業を開始しようとする日の10日前までに提出します[C-15]。無届営業は50万円以下の罰金の対象です。この営業形態では接待は禁止されており、接待をするなら別途、第3層の風俗営業許可が必要になります[C-15]。

第3層は、接待を伴う場合の風俗営業許可(1号・社交飲食店)=公安委員会の”許可”です。ホステスやママが客の隣に座り会話・接酌などの”接待”をする形態のスナック等が該当しうるもので、これは届出ではなく公安委員会の許可です[C-15]。「接待」に当たるかどうかの個別判断は所轄警察署で確認が必要です。

ここで核心になるのが、★“許可”と”届出”の違いです。飲食店営業許可・風俗営業許可は「許可」、深夜酒類提供は「届出」で、この区別が承継の可否を分けます(詳細は§3/§3.5)。営業許可・風俗営業許可は地位の承継や承認申請という承継の仕組みがありますが、届出である深夜酒類提供にはそもそも承継の仕組みがなく、営業者が変わると引き継げません[C-15]。建設業のように根幹人材(経営業務管理責任者・専任技術者)が抜けると即・継続不能になるタイプの許可ではない一方、バー・スナックは”許可と届出で承継が違う”という固有の落とし穴を持っています。

バー・スナック経営そのものの需要動向や将来性、続ける/売る/畳むの全体像は、バー・スナック経営の将来性・続ける/売る/畳むの全体像で俯瞰しています。買い手が深夜酒類提供届・風俗営業許可をどう取り直したかを含む売却事例の傾向はバー・スナックの売却・第三者承継事例(ママ・常連を残して売れた条件)はこちらで扱っています。本記事(許認可の承継実務)と併せてご覧ください。

注:営業許可の業種区分・食品衛生責任者の変更届の期限、深夜酒類提供届の要否、「接待」の該当・風俗営業許可の要否は、管轄保健所・所轄警察署で運用や判断が異なる場合があります。個別の要件・手続きは管轄保健所・所轄警察署(生活安全課)・行政書士へご確認ください。


§2 なぜ今「許認可ごと承継」が問題になるか — 高齢化・後継者不在・居抜き需要と許可/届出の承継ギャップ

承継スキームの各論に入る前に、なぜ「許可・造作ごと譲る/買う」局面で、許可と届出の承継ギャップが問題になるのかを整理します。

第一に、廃業・倒産の多発とママ/マスターの高齢化・後継者不在です。飲食店倒産は、帝国データバンク(TDB)の集計(暦年ベース)で2024年894件と過去最多、東京商工リサーチ(TSR)の集計(年度ベース)でも2024年度907件と初の900件台で、いずれも小零細が大半(TSRで89.5%)を占めます[C-08]。TDBは暦年・TSRは年度と集計期間が異なるため併記していますが、過去最多水準という方向は一致しています。バー・スナックを含むナイト業態単独の数字は中分類で明示されにくいため、ここでは飲食店全体の数字で方向性として帰属して扱います[C-08]。後継者不在は全国で50.1%(TDB・2025年)と、依然として2社に1社が後継者を確保できていません[C-08]。先代から継いだスナックの高齢店主など、これらが「売り圧」になっています。

第二に、常連・ボトルキープ・好立地・居抜きで「店ごと」買える買い需要です。バー・スナックは、ゼロから開業するより立地・造作(カウンター・内装・カラオケ設備)・常連ごと「店ごと」買える居抜きを求める買い手が動きやすい構造です。居抜きの造作譲渡料は、経営状況とは独立に立地・広さ・路面で決まる物件相場で、軽飲食(バー)ではおおむね100万〜200万円が業界仲介の目安とされます(飲食店ドットコムのカラオケ・パブ・スナック平均は168.6万円・ばらつき大。いずれも公的統計はなく、相場感として扱います)[C-09]。

第三に、許可と届出の承継ギャップです。保健所の営業許可は、2021年6月1日に相続・合併・分割が、2023年12月13日に事業譲渡が、それぞれ地位承継届で承継できるようになり、「許可を取り直すまで営業できない空白」というネックが大きく下がりました[C-03][C-04]。ところが、深夜酒類提供届は一身専属で承継できず、接待の風俗営業許可は限定的にしか承継できないため、”許可ごと店は買えるのに、深夜営業や接待は引き継げない”という摩擦が残ります[C-15]。これが、バー・スナックの承継で最も見落とされやすい落とし穴です(詳細は§3.5)。

加えて、バー・スナックには個人事業が多いという事情もあります。個人事業は株式譲渡が使えないため、第三者へ譲るなら事業譲渡(造作譲渡)になり、営業許可は地位承継届で引き継げても、深夜届・風営許可は完全にやり直しになります(詳細は§3)[C-06]。

需要そのものはあるのに続ける体力は削られ、後継者問題が重なる——許可・造作・常連が生きているうちに「許可ごと譲る/買う」需要が高まる一方、許可と届出の承継ギャップが価格・成約速度に効いてくる地合いといえます(買い手の増加を断定するものではなく、足元の方向性です)。


§3 株式譲渡 vs 事業譲渡 vs 相続 — スキーム別・3許認可はどう残る・やり直しか

ここが本記事の中核です。バー・スナックの飲食店営業許可・深夜酒類提供届・風俗営業許可が、M&Aのスキーム別にどう動くのかを整理します。金額や相場の話ではなく、「何がどのスキームで残り、どのスキームで地位承継届が要り、どのスキームでやり直しになるか」をマトリクスで逆引きできるようにします。

株式譲渡 — 法人格が変わらないので3許認可とも原則そのまま残る

株式譲渡は、株主(オーナー)が交代するだけで会社そのものは存続します。法人格が変わらないため、飲食店営業許可・深夜酒類提供届・風俗営業許可はいずれも会社(法人)に帰属したまま原則として継続し、許可の取り直しや新規届出・地位承継届は原則として不要です(代表者・役員変更があれば所要の届出。個別は管轄保健所・所轄警察にご確認ください)[C-05][C-12][C-15]。買い手から見れば、許可・届出・造作・常連をまとめて取り込めるのが株式譲渡の利点で、深夜営業の空白が出にくく、手続きの摩擦が最も小さくなります[C-12]。法人バー・スナックでは、3許認可を丸ごと残せる株式譲渡が選ばれやすい場面が多くなります。

なお、「株式譲渡=許可・届出が継続」という点について省庁の明文ワンライナーがあるわけではなく、これは法人格が変わらない(営業者=会社が変わらない)という一般法理と、「事業譲渡には地位承継届が必要・深夜届は承継できない」という制度の対比から導かれる整理です。個別の届出要否は管轄保健所・所轄警察にご確認ください[C-05]。

事業譲渡・店舗譲渡 — 営業許可は地位承継届で承継できるが、深夜届は承継不可・風営許可も承継不可

事業譲渡・店舗譲渡では、営業者(人・法人)が変わるため、許認可は当然には移りません。ここで許認可ごとに扱いが分かれます。

飲食店営業許可は、令和5年(2023年)12月13日に施行された、事業譲渡による地位承継の制度が使えます[C-03]。改正前は事業譲渡では譲受人が新規に許可を取り直す必要がありましたが、現在は営業の全部を譲渡する場合に限り、譲受人は新たな許可取得なし・地位承継届の提出で営業者の地位を承継できます[C-03]。根拠は食品衛生法第56条で、許可を受けた者が当該営業を譲渡したときに譲受人が地位を承継し、遅滞なくその旨を都道府県知事に届け出るものとされています[C-03]。

深夜酒類提供届は、★一身専属で承継できません。事業譲渡では譲受人が新規届出をやり直すことになり(営業開始の10日前まで・無届は50万円以下の罰金)、譲渡側の廃業届と譲受側の新規届出を同時に提出すると、最大10日間、深夜営業ができない空白が生じうる点に注意が必要です[C-15]。これがバー・スナックM&Aの致命傷になりやすい論点で、§3.5で詳述します。

風俗営業許可(接待を伴う場合)も、★事業譲渡では承継できません(個人と法人は別人格で、許可証の名義変更ができないため)[C-15]。譲受人は新規許可申請が必要になり、審査期間を要します。

相続・合併・分割 — 営業許可は届出・風営許可は承認申請で承継、深夜届は新規届出

相続・合併・分割による営業許可の地位承継は、令和3年(2021年)6月1日に施行されています[C-03][C-04]。個人営業者が亡くなった場合は相続人が、法人の合併・分割では存続・新設法人が、届出により営業者の地位を承継できます(食品衛生法第56条)[C-03]。★ここで重要なのは、事業譲渡(2023年12月13日)と相続・合併・分割(2021年6月1日)で施行日が異なることです。年号を取り違えないようにしてください。

風俗営業許可は、①相続承認申請(被相続人の死亡後60日以内)②法人合併承認申請③法人(新設・吸収)分割承認申請の3パターンで承継できます[C-15]。一方、深夜酒類提供届は、相続・合併・分割でも承継の枠組みがなく、原則として新規届出になります(運用は所轄警察署にご確認ください)[C-15]。

個人事業バー・スナック — 株式譲渡が使えず、事業譲渡=営業許可は地位承継届・深夜届/風営許可は完全やり直し

個人事業のバー・スナックは、株式(法人格)がないため株式譲渡は使えません。第三者へ譲るなら事業譲渡(造作譲渡)になり、営業許可は2023年12月13日以降は地位承継届で承継できますが、深夜届は新規届出やり直し・風営許可は新規許可申請になります[C-06][C-15]。親族へ継ぐなら相続(食品衛生法第56条1項/風営許可は相続承認申請)や生前譲渡で整理します[C-06]。なお、あらかじめ法人化(法人成り)しておけば、将来の株式譲渡で3許認可ごと譲りやすくなる点も示唆できます(ただし法人成りそれ自体では、個人から法人へ営業者が変わるため、深夜届・風営許可は承継できず新規届出・新規許可申請になります)[C-12][C-15]。個人事業の譲渡・名義変更・税務の汎用的な全体像は、個人事業(店舗)の譲渡・名義変更・税務の全体像に譲り、本記事では3許認可の承継方法に絞ります。

スキーム別 3許認可 承継マトリクス(本記事の中核)

バー・スナックの3許認可が、スキーム別にどう動くかをまとめると次のようになります。自店のケースを当てはめて逆引きしてください。

| 承継される要素 \ スキーム | 株式譲渡(法人格存続) | 事業譲渡・店舗譲渡 | 相続(個人事業) | 合併・分割(法人) | |—————————|———————-|———-|——————|——————| | ① 飲食店営業許可(食品衛生法・”許可”) | 会社に帰属したまま原則そのまま継続・取り直し不要(地位承継届は原則不要)[C-05] | 2023-12-13から地位承継届で承継(全部譲渡が条件・契約書添付・無料)。届出を出さない/要件を満たさないと新規許可取り直し=空白[C-03][C-04] | 2021-06-01から地位承継届で承継(食品衛生法56条)[C-03][C-06] | 2021-06-01から地位承継届で承継(存続/新設法人へ)[C-03] | | ② 深夜酒類提供届(風営法・”届出”) | 法人格不変なら届出主体=会社が変わらず原則継続(運営実態が変わるときは所轄警察確認)[C-05][C-15] | ★承継”不可”=廃業届+新規届出やり直し(10日前・無届50万円以下の罰金・同時提出で最大10日の深夜営業空白)[C-15] | ★承継”不可”=新規届出やり直し(届出制ゆえ承継の枠組みなし)[C-15] | ★承継”不可”=新規届出やり直し[C-15] | | ③ 風俗営業許可(接待・風営法・”許可”) | 法人格不変なら継続(役員変更届等で済む)[C-12][C-15] | ★承継”不可”(事業譲渡では名義変更できない)=新規許可申請・審査期間[C-15] | 相続承認申請(死亡後60日以内)で承継[C-15] | 法人合併/分割の承認申請で承継[C-15] | | ④ 適用開始(営業許可の年号) | —(法人格不変で随時)[C-05] | 2023年12月13日〜(令和5改正)[C-03] | 2021年6月1日〜(令和3改正)[C-03] | 2021年6月1日〜(令和3改正)[C-03] | | ⑤ 個人事業での可否 | 不可(法人格がなく株式譲渡は使えない)[C-06] | (営業許可=地位承継届/深夜届=新規届出やり直し/風営許可=新規許可申請)[C-06][C-15] | (営業許可=相続人が承継・56条/風営許可=相続承認申請60日以内/深夜届=新規届出)[C-06][C-15] | 不可(個人事業に合併・分割はない)[C-06] |

バー・スナックの3許認可×M&Aスキーム別の承継分岐:①飲食店営業許可は株式譲渡=原則そのまま継続・取り直し不要、事業譲渡=2023-12-13から地位承継届で承継(全部譲渡が条件)、相続・合併・分割=2021-06-01から届出で承継。②深夜酒類提供届はすべてのスキームで承継不可=新規届出やり直し(株式譲渡は法人格不変で継続)。③風俗営業許可は相続・合併・分割の承認申請のみ・事業譲渡/法人成りは不可。個人事業は事業譲渡一択

図解F1:バー・スナックの3許認可(飲食店営業許可・深夜酒類提供届・風俗営業許可)×M&Aスキーム別の承継分岐。株式譲渡=法人格不変で3許認可とも原則継続/事業譲渡=営業許可は地位承継届で承継(2023-12-13〜・全部譲渡が条件)だが深夜届は新規届出やり直し・風営許可は新規許可申請/相続・合併・分割=営業許可は届出(2021-06-01〜)・風営許可は承認申請で承継・深夜届は新規届出。個人事業は事業譲渡一択。可否・必要書類・期限は管轄保健所・所轄警察により異なります。

なお、ここではバー・スナックの3許認可に特化して整理しています。飲食店全般のM&A・株式譲渡と事業譲渡の汎用的な違い・進め方の全体像は、飲食店のM&A・株式譲渡vs事業譲渡・進め方の全体像で詳しく解説しています。


§3.5 深夜酒類提供届は承継”できない”・接待の風俗営業許可は相続/合併/分割のみ — 許可と届出の承継ギャップ

バー・スナックM&Aで最も誤解が多く、最も致命的な論点がここです。「保健所の営業許可が引き継げるなら、深夜営業も接待もそのまま引き継げる」という思い込みは危険です。鍵になるのは、”許可と届出の区別”と”承継できない許認可”です。

★まず、深夜酒類提供届は承継できません。深夜酒類提供飲食店営業の届出は、営業者の地位の承継(名義変更)という仕組みがそもそもなく、経営者交代・事業譲渡・相続・法人成りのいずれでも、買い手(譲受人)が新規届出をやり直すことになります[C-15]。届出は営業を開始しようとする日の10日前までに公安委員会(所轄警察署の生活安全課)へ提出し、無届営業は50万円以下の罰金です。ここで実務上の落とし穴になるのが、事業譲渡で店舗を引き継ぐ場合、譲渡側の廃業届と譲受側の新規届出の両方が必要で、これを同時に提出してしまうと最大10日間、深夜営業ができない空白期間が発生しうることです[C-15]。だからこそ、引き継ぎ前に譲受人が早めに新規届出を準備し、空白を最小化する段取りが重要になります。

深夜酒類提供届は引き継げない:一身専属=承継不可。事業譲渡・相続・法人成りでも新規届出やり直し(営業開始10日前・無届は50万円以下の罰金・廃業届と新規届出の同時提出で最大10日の深夜営業空白)。接待を伴う風俗営業許可の承継は相続・合併・分割の承認申請のみ。所轄警察署・行政書士へ要確認

図解F2:深夜酒類提供届・風俗営業許可の承継不可の構造。深夜酒類提供届は一身専属で承継できず、営業者が変わると新規届出のやり直し(10日前・無届50万円以下の罰金・同時提出で最大10日の空白)。接待の風俗営業許可は相続・合併・分割の承認申請のみで、事業譲渡・法人成りでは承継できません。必要書類・期限・運用は所轄警察署により異なります。

★次に、接待を伴う風俗営業許可の承継は3パターンのみです。風俗営業許可(1号)の承継(名義変更)が認められるのは、①相続承認申請(被相続人の死亡後60日以内)②法人合併承認申請③法人(新設・吸収)分割承認申請の3パターンに限られます[C-15]。事業譲渡による許可証の名義変更はできず、法人成りでも承継できません(個人と法人は別人格だからです)。一方、法人で風俗営業許可を受けていれば、株式譲渡+代表者変更なら法人格が変わらず許可は継続し、役員変更に伴う変更届で済みます[C-15]。承継できないケースでは新規許可申請の審査期間を要するため、接待営業の空白に注意が必要です。

一方で、保健所の飲食店営業許可は引き継げます。株式譲渡なら法人格不変で許可は会社に残り原則手続き不要、事業譲渡は2023年12月13日から、相続・合併・分割は2021年6月1日から、地位承継届で承継できます[C-03][C-04][C-05]。★よく見かける「2021年改正で事業譲渡の地位承継が可能になった」という説明は誤りです。2021年は相続・合併・分割まで、事業譲渡の地位承継は2023年12月13日からです[C-03]。二次情報の年号の取り違えにご注意ください。地位承継届の要件は、①手数料無料(許可証の記載事項変更があれば書換え交付手数料が別途要る自治体例があります)②営業の全部譲渡が条件(一部譲渡は不可)③譲渡契約書や覚書等の添付が必要 ④届出は遅滞なく、という4点が柱で、必要書類・期限・運用は管轄保健所により異なります[C-04]。

許可と届出で承継の可否がまったく違うことを、一覧で対比すると次のようになります。

| 許認可 | 性質 | 根拠法 | 承継できるか | 承継の方法・注意 | |——–|——|——–|————–|——————| | 飲食店営業許可 | “許可” | 食品衛生法(保健所) | ✅承継できる | 株式譲渡=手続き不要/事業譲渡=2023-12-13から地位承継届(全部譲渡・契約書・無料)/相続・合併・分割=2021-06-01から地位承継届[C-03][C-04][C-05] | | 深夜酒類提供飲食店営業 | “届出” | 風営法(公安委員会/所轄警察) | ❌承継できない(一身専属) | 経営者交代・事業譲渡・相続・法人成りでも新規届出やり直し(営業開始10日前・無届50万円以下の罰金・同時提出で最大10日の深夜営業空白)。株式譲渡は法人格不変で原則継続[C-15] | | 風俗営業許可(接待) | “許可” | 風営法(公安委員会) | △限定承継(3パターンのみ) | ①相続承認申請(死亡後60日以内)②法人合併承認申請③法人分割承認申請のみ/事業譲渡・法人成りは不可(新規許可申請・審査)。株式譲渡+代表者変更なら法人格不変で継続[C-15] |

許可と届出で承継の可否が違う対比表:飲食店営業許可=食品衛生法の

図解F3:許可と届出で承継の可否が違う(本記事の差別化シグネチャー)。飲食店営業許可は食品衛生法の”許可”で承継できる一方、深夜酒類提供は風営法の”届出”で承継できず(新規届出やり直し)、風俗営業は風営法の”許可”で相続・合併・分割の承認申請のみ。許可と届出を混同しないことが承継ミスを防ぐ鍵です。

ここから、売り手・買い手それぞれに示唆があります。

売り手の方への示唆。自店が深夜営業をしているか(深夜酒類提供届の有無)・接待を伴うか(風俗営業許可の有無)を棚卸ししておくことです。自分が法人なら株式譲渡で3許認可を丸ごと残せる可能性があり、個人事業なら事業譲渡=営業許可は地位承継届を前提に、深夜届・風営許可は買い手がやり直すことを早めに開示しておきます。「実行してから手続き」では深夜営業・接待の空白が生じうるため、段取りを早めに整えておくと安心です。

買い手の方への示唆。居抜きで取得するときは、保健所の営業許可だけでなく、深夜届・風営許可は引き継げない前提で、深夜営業・接待の再開時期(届出の10日前・許可の審査期間)を逆算しておくことです。株式譲渡なら法人格ごと3許認可が残って空白が出にくいので、スキームの選び方が再開時期を左右します[C-12]。

「許可は引き継げる」と分かっても、深夜届・風営許可は別物です。可否や必要書類・期限は管轄保健所・所轄警察署により異なるため、個別は管轄保健所・所轄警察署(生活安全課)・行政書士へご確認ください。

▶ 許可・造作ごと/深夜営業を止めずに譲れるか・引き継げるか、無料で相談する

「保健所の営業許可は引き継げるのか」「深夜営業や接待は、買い手が届出・許可を取り直すことになるのか」「自分は株式譲渡が使えるのか、それとも事業譲渡=深夜届はやり直しになるのか」——許可・届出・造作・常連ごと譲れるか/引き継げるかを、3許認可の棚卸しを含めてご相談いただけます(個別の申請手続き・可否・期限は管轄保健所・所轄警察署・行政書士への確認が前提です)。 → 許可・造作ごと/深夜営業を止めずに譲れるか無料で相談する

廃業して原状回復すれば、許可も造作も常連もゼロになり、深夜届も失効します。廃業と売却(居抜き譲渡)の手取り損得は、バー・スナックは廃業と売却どちらが得か(手取り比較)で比較しています。


§4【M&A・投資視点】”引き継げる資産”と”引き継げない許認可” — 深夜営業の空白を最小化する承継準備

ここからは、許認可を「資産」として見る視点です。バー・スナックの価値は、決算書に金額で載りにくい”引き継げる資産”——営業許可・造作(カウンター・内装・カラオケ設備)・好立地・常連・ボトルキープ・ママ/マスターの集客力——にあります。廃業してスケルトン返しすればこれらはゼロになり、加えて原状回復で持ち出しになりますが、許可・造作・常連ごと居抜きで譲れば造作譲渡料が入り、買い手は時間(開業準備・許可取得)を買えます。

ただし、許認可には”引き継げる”ものと”引き継げない”ものがあります。保健所の飲食店営業許可は引き継げる一方、深夜酒類提供届は一身専属で承継不可、接待の風俗営業許可は相続・合併・分割でしか承継できません[C-03][C-15]。買い手にとっては、許可・造作ごと店を買えても、深夜営業や接待を再開するまでに届出のやり直し・許可の審査がある=この空白と審査リスクが、価格・成約速度に効いてきます。だから株式譲渡なら3許認可とも法人格ごと残って空白が出にくく、事業譲渡や個人事業なら営業許可は地位承継届で引き継げても深夜届・風営許可は完全やり直し——出口設計はこのギャップから逆算するのが要諦です。

買い手は許認可をどう見るか — チェックポイント3つ

1. 深夜営業・接待の有無と再開時期。まず、深夜0時以降に酒を出すか(深夜酒類提供届の有無)・接待を伴うか(風俗営業許可の有無)を確認します。株式譲渡なら届出・許可とも継続しますが、事業譲渡・個人事業では深夜届は新規届出(10日前・最大10日の空白)、接待の風営許可は承継できず新規許可申請(審査期間)になります。深夜営業・接待をいつから再開できるかが、買収後の売上に直結します[C-15]。 2. 営業許可の有効性と承継方法。飲食店営業許可・許可番号・有効期限を確認し、株式譲渡なら原則継続、居抜き/事業譲渡なら地位承継届で承継できるか(営業の全部譲渡か・契約書が揃うか)を見ます。承継可否がスキーム設計に直結します[C-03][C-04][C-05]。 3. 造作・賃貸借契約・常連/ボトルキープ。居抜きで造作(カウンター・内装・カラオケ設備)を引き継げるか、貸主の承諾は取れるか、造作譲渡料・原状回復義務はどうか、常連やボトルキープ・ママ/マスターの集客力が残るかを確認します。造作譲渡料は経営状況と独立に立地・広さ・路面で決まる相場で、軽飲食ではおおむね100万〜200万円が業界仲介の目安です(公的統計はありません)[C-09]。

編集部より:買い手が最初に確認するのは“保健所の営業許可は引き継げても、深夜届・風営許可は引き継げない=深夜営業/接待をいつから再開できるか”です

実際のバー・スナックのM&Aで、買い手が最初に確認するのは、まず「保健所の営業許可は引き継げても、深夜0時以降に酒を出す深夜酒類提供届と、接待を伴う風俗営業許可は引き継げない=深夜営業・接待をいつから再開できるか」、そして「造作・賃貸借契約(造作譲渡の可否・原状回復義務)・常連・ボトルキープ・ママ/マスターの集客力は残るか」です。株式譲渡なら法人格ごと3許認可が残って居抜きで丸ごと取り込めるため、手続きの摩擦が小さく、深夜営業の空白も出にくくなります。一方、個人店の事業譲渡では、営業許可は2023年12月13日以降は地位承継届で引き継げても、深夜届は買い手が新規届出をやり直し(同時提出で最大10日の空白)、接待の風営許可は新規申請の審査が要ります。それでも「保健所の許可が引き継げるなら深夜営業も接待もそのまま引き継げる」と思い込んだまま居抜きで買い、深夜に酒が出せない・接待できない空白で集客を落とすケースが後を絶ちません。届出の「出し方」や、許可と届出を混同した記事だけ読んでも、この“承継ギャップ”は見えてこないのです。(※本コラムは当社の飲食・バー・スナック領域におけるM&A実務での一般的な所感です)

売り手が承継前に整える準備3つ

1. 3許認可を棚卸しする。飲食店営業許可の有効期限・許可番号、深夜酒類提供届の有無、接待を伴うなら風俗営業許可の有無、食品衛生責任者は誰か・承継後の再選任候補を一覧にして「見える化」します。”何が引き継げて何が引き継げないか”を早期に開示できる状態ほど、買い手の評価が安定します。 2. スキーム選択を早期に決める。法人バー・スナックで3許認可を丸ごと残したいなら株式譲渡、個人事業・店舗単体なら事業譲渡=営業許可は地位承継届・深夜届/風営許可は完全やり直しを前提に逆算しておきます[C-05][C-06][C-12]。 3. 居抜き前提なら引き継ぎ条件を整理し、保健所・警察へ事前確認する。造作・常連・ボトルキープ等の引き継ぎ条件を整え、営業許可の地位承継届の必要書類・期限を管轄保健所で、深夜届の新規届出・風営許可の新規申請の段取り(10日前・審査期間)を所轄警察署で事前に確認しておきます[C-04][C-15]。

相場・手取りの考え方は別記事へ

バー・スナックはFLコスト(酒・食材原価+人件費)が売上の約6割が目安で、これにナイト固有のヘルプ人件費・歩合が乗るため、低利益にとどまりやすい業態です(営業利益率10%以下といった数字は業界二次情報が中心のため、帰属して扱います。粗利率と営業利益率は別物です)[C-10]。けれど、だからこそ営業許可・造作・好立地・常連・ボトルキープという”引き継げる資産”が、店ごと(居抜き)売れる価値になります。許可・造作・常連が承継できる前提なら、それらの有無が評価を大きく左右しますが、深夜届・風営許可の承継不可は成約速度・価格に効いてきます。具体的な相場の算定式(居抜き造作譲渡+営業権/年買法)と税引後の手取りは、バー・スナックの売却相場・居抜き造作譲渡と営業権の決まり方で詳しく解説しています。本記事では「許可と届出の承継可否・空白リスクが評価を左右する」という定性的な整理に留めます。

なお税務について。株式譲渡で個人株主が得た利益には申告分離課税で20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が課されます。事業譲渡は、個人なら譲渡所得・事業所得や消費税といった論点があり、課税の入口が異なります。個別の税額は税理士へご確認ください[C-13]。また、「M&Aで事業承継税制を使って節税できる」という理解は正しくありません。事業承継税制は親族内・社内承継の納税猶予制度であり、第三者へのM&A売却とは別物です[C-13]。混同しないようにしてください。

廃業との手取り損得はバー・スナックは廃業と売却どちらが得か、業界の将来性・全体像はバー・スナック経営の将来性・続ける/売る/畳むの全体像も参考になります。掲載中の案件は掲載中の飲食・バー・スナックのM&A案件一覧(「飲食」で検索)からご覧いただけます。

▶ 許可・造作・常連ごと、出口を相談する

売り手の方は「許可・造作・常連ごと譲れる出口」を、買い手の方は「深夜営業・接待を止めずに引き継げるバー・スナック案件」を、それぞれ無料でご相談いただけます。 → 売り手の方:許可・造作・常連ごと譲れる出口を無料相談する → 買い手の方:深夜営業/接待を止めずに引き継げるバー・スナック案件を相談する


§5 よくある質問(FAQ)

Q1. バー・スナックの営業許可は、M&A・事業承継で引き継げますか? A. 保健所の飲食店営業許可は、スキームに応じて引き継げます。株式譲渡なら、法人格が変わらないため営業許可は会社に帰属したまま原則として継続し、取り直しや地位承継届は原則不要です[C-05]。事業譲渡・相続・合併・分割では、許可は当然には移転できませんが、地位承継届で営業者の地位を承継できます(事業譲渡は2023年12月13日から、相続・合併・分割は2021年6月1日から)[C-03][C-04]。ただし、深夜酒類提供届・風俗営業許可は営業許可とは扱いが異なります(Q2・Q3参照)。可否・手続きは管轄保健所・所轄警察署・行政書士へご確認ください。

Q2. 深夜酒類提供飲食店営業の届出は、名義変更・承継できますか? A. できません。深夜酒類提供飲食店営業は「許可」ではなく公安委員会(所轄警察署)への「届出」で、営業者の地位の承継(名義変更)という仕組みがありません[C-15]。経営者交代・事業譲渡・相続・法人成りのいずれでも、買い手(譲受人)が新規届出をやり直すことになります(営業開始の10日前まで・無届は50万円以下の罰金)。事業譲渡では譲渡側の廃業届と譲受側の新規届出の両方が必要で、同時に提出すると最大10日間、深夜営業ができない空白が生じうる点に注意してください。株式譲渡なら法人格が変わらず、原則として継続します。

Q3. 接待を伴うスナックの風俗営業許可は、事業譲渡で引き継げますか? A. 事業譲渡では引き継げません。風俗営業許可(1号)の承継(名義変更)が認められるのは、①相続承認申請(被相続人の死亡後60日以内)②法人合併承認申請③法人(新設・吸収)分割承認申請の3パターンのみで、事業譲渡・法人成りでは承継できません(個人と法人は別人格のため)[C-15]。承継できない場合は新規許可申請が必要で、審査期間を要します。一方、法人で許可を受けていれば、株式譲渡+代表者変更なら法人格が変わらず継続し、役員変更届で済みます。

Q4. 保健所の営業許可と、深夜酒類提供届・風俗営業許可で、承継の扱いはどう違いますか? A. 保健所の飲食店営業許可は”許可”で、地位承継届により承継できます(株式譲渡は手続き不要・事業譲渡2023-12-13〜・相続等2021-06-01〜)[C-03][C-05]。一方、深夜酒類提供は風営法の”届出”で承継できず(新規届出やり直し)接待の風俗営業許可は”許可”ですが承継は相続・合併・分割の3パターンのみです[C-15]。つまり「許可ごと店は買えても、深夜営業や接待は引き継げない」ことがあり、許可と届出を混同しないことが承継ミスを防ぐ鍵です。

Q5. 個人事業のバー・スナックを譲るとき、許認可はどうすればよいですか? A. 個人事業は株式(法人格)がないため株式譲渡が使えません。第三者へ譲るなら事業譲渡(造作譲渡)になり、営業許可は2023年12月13日以降は地位承継届で承継できますが、深夜届は新規届出やり直し・風営許可は新規許可申請になります[C-06][C-15]。親族へ継ぐ場合は相続(食品衛生法56条1項/風営許可は相続承認申請60日以内)や生前譲渡で整理します。個人事業の譲渡・名義変更・税務の汎用的な全体像は個人事業(店舗)の譲渡の全体像も参考になります。個別は管轄保健所・所轄警察署・税理士へご確認ください。

Q6. 居抜きでバーを買うと、深夜営業はいつから再開できますか(空白期間は?)。 A. 株式譲渡なら法人格が変わらないため深夜酒類提供届は原則継続し、空白は生じにくくなります。一方、事業譲渡・個人事業の譲渡では、買い手が深夜酒類提供届を新規に出し直すことになり、届出は営業を開始しようとする日の10日前までに提出します[C-15]。譲渡側の廃業届と譲受側の新規届出を同時に提出すると、最大10日間、深夜営業ができない空白が生じうるため、引き継ぎ前に早めに新規届出を準備して空白を最小化するのが実務上のポイントです。必要書類・期限・運用は所轄警察署(生活安全課)により異なるため、事前にご確認ください。


§6 まとめ — 続ける/継がせる/売る/買う、許可と届出の承継ギャップを前提に動く

最後に要点を3つ。

  • バー・スナックの許認可は、飲食店営業許可(食品衛生法)を土台に、深夜0時以降に酒を出すなら深夜酒類提供届(風営法・届出)、接待を伴うなら風俗営業許可(風営法・許可)が重なる3層です[C-01][C-15]。”許可”と”届出”は別物で、承継の可否がまったく違います。
  • 保健所の飲食店営業許可は引き継げます。株式譲渡なら法人格不変で許可は会社に残り原則手続き不要/事業譲渡は2023年12月13日から、相続・合併・分割は2021年6月1日から、地位承継届で承継できます[C-03][C-05]。「2021年改正で事業譲渡の地位承継が可能になった」は誤りです[C-03]。
  • だが深夜酒類提供届は一身専属で承継できず、買い手が新規届出をやり直します(10日前・無届50万円以下の罰金・同時提出で最大10日の深夜営業空白)。接待の風俗営業許可は相続・合併・分割のみで、事業譲渡・法人成りでは引き継げません[C-15]。個人事業は株式譲渡が使えず事業譲渡=営業許可は地位承継届・深夜届/風営許可は完全やり直しです[C-06]。

出口別のチェックリストにすると、こうなります。

売り手の方

  • ☐ 飲食店営業許可の有効期限・許可番号、食品衛生責任者は誰か・承継後の再選任候補を棚卸ししたか
  • ☐ 深夜0時以降に酒を出すか(深夜酒類提供届の有無)・接待を伴うか(風俗営業許可の有無)を棚卸ししたか
  • ☐ 自分は法人か個人事業か(=株式譲渡が使えるか/事業譲渡=営業許可は地位承継届・深夜届/風営許可はやり直しか)を確認したか
  • ☐ 事業譲渡なら全部譲渡か(一部は営業許可の地位承継届の対象外)/譲渡契約書・覚書等は揃うかを確認したか
  • ☐ 営業許可の地位承継届は管轄保健所で、深夜届の新規届出・風営許可の新規申請は所轄警察署で、段取り(必要書類・期限・審査)を確認したか
  • ☐ 廃業して原状回復する前に、許可・造作・常連ごと譲れないか(居抜き)を確認したか

買い手の方

  • ☐ 深夜営業・接待の再開時期(深夜届10日前・最大10日空白/風営許可は事業譲渡では承継不可・新規申請の審査)を逆算したか
  • ☐ 営業許可が選んだスキームで承継できるか(株式譲渡=原則継続/事業譲渡=地位承継届・全部譲渡か・契約書が揃うか)を早期に確認したか
  • ☐ 造作・賃貸借契約(造作譲渡の可否・原状回復義務)・常連・ボトルキープ・ママ/マスターの集客力は残るかを確認したか

バー・スナックを譲ろうとすると、必ずぶつかる疑問があります——「営業許可や深夜営業の届出は引き継げるのか、それとも買い手が取り直すしかないのか」。ここで多くの人が見落とすのが、バー・スナックには性質の異なる3つの許認可があり、承継の可否がまったく違うという点です。保健所の飲食店営業許可(食品衛生法)は引き継げます——株式譲渡なら法人格が変わらず許可は会社に残り原則手続き不要、事業譲渡でも2023年12月13日施行の地位承継届(手数料無料・営業の全部譲渡が条件・譲渡契約書等の添付が必要)で承継でき、相続・合併・分割は2021年6月1日から届出で承継できます(必要書類・期限・運用は管轄保健所により異なります)。だが、深夜0時以降に酒を出す『深夜酒類提供飲食店営業』は風営法上の”届出”で、一身専属=承継が一切できず、経営者交代・事業譲渡・相続・法人成りでも買い手が新規届出をやり直します(営業開始の10日前まで・無届は50万円以下の罰金・同時提出で最大10日の深夜営業空白)。接待を伴うスナックの『風俗営業許可』は、承継が相続・合併・分割の承認申請の3パターンに限られ、事業譲渡・法人成りでは引き継げません(株式譲渡+代表者変更なら法人格不変で継続)。バー・スナックの価値は、決算書に載りにくい営業許可・造作・好立地・常連・ボトルキープという”引き継げる資産”にあります——だが、許可と届出の承継ギャップを知らずに居抜きで買うと、深夜に酒が出せない・接待できない店を掴みかねません。続ける・継がせる・売る・買う、どの出口でも、まずは自店の3許認可(営業許可・深夜届・風営許可)の有無と、自分が株式譲渡を使えるのか(法人)/事業譲渡=営業許可は地位承継届・深夜届/風営許可は完全やり直しになるのか(個人事業)を確認することから始めましょう。なお営業許可の事業譲渡による地位承継は2023年12月13日からであり「2021年改正で事業譲渡の地位承継が可能になった」とする情報は誤り、また深夜酒類提供は”許可”ではなく”届出”で承継できない点にご注意ください。

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免責

本記事は、バー・スナック(飲食店・深夜酒類提供店)の許認可承継・M&A・事業承継に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の許可・届出の承継可否・必要書類・提出期限・承継成否を保証するものではありません。飲食店営業許可の地位承継の可否・必要書類・提出期限・受付方法・株式譲渡時の届出要否・運用は管轄の保健所(自治体)により、深夜酒類提供飲食店営業の届出・風俗営業許可の要否・期限・審査・運用は所轄警察署(生活安全課・都道府県警)により異なります。「接待」に該当するかどうかの個別判断も所轄警察署によります。許認可の承継申請・個別の可否判断は行政書士・管轄保健所・所轄警察署へ、法務に関する事項は弁護士へ、税務の取り扱いは税理士へご相談ください。本記事の内容は、当社が許認可の代理・代行を行うことを示すものではありません。また、本記事には当社サービス(無料相談)へのご案内を含みます。


出典

  • [C-01] バー・スナックの営業に必要な飲食店営業許可は食品衛生法に基づく保健所の許可。2021年6月1日施行の食品衛生法改正で営業許可業種が再編(32種に整理)されHACCPに沿った衛生管理が制度化。建設業のような経営業務管理責任者・専任技術者・経営事項審査・指定建設業の人的・財務要件は無い — 厚生労働省「食品衛生法の改正(営業許可制度の見直し・HACCPに沿った衛生管理の制度化)」: https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000739154.pdf / 食品衛生法(e-Gov): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000233
  • [C-02] 食品衛生責任者は各施設に1名を専任で配置(令和3年6月1日から・1人が複数施設を兼任不可)。営業者が変わっても配置は必要で、変更したときは管轄保健所へ変更届(期限・様式は自治体差・例:江東区は10日以内) — 厚生労働省 食品衛生責任者: https://www.mhlw.go.jp/ / 江東区「食品衛生責任者に関する手続き」: https://www.city.koto.lg.jp/260404/fukushi/ese/shokuhin/6962.html
  • [C-03] 飲食店営業許可の事業譲渡による地位承継は令和5年(2023年)12月13日施行。営業の全部を譲渡する場合、譲受人は新たな許可取得なし・地位承継届で営業者の地位を承継できる。相続・合併・分割による地位承継は令和3年(2021年)6月1日施行。根拠=食品衛生法56条1項(譲渡・相続・合併・分割で地位承継)・2項(遅滞なく届出)。「2021年改正で事業譲渡の地位承継が可能になった」は誤り(事業譲渡は2023-12-13から) — 東京都保健医療局「事業譲渡における営業者の地位の承継」: https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/jigyojoto.html / 川崎市「食品営業の地位の承継」: https://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000130206.html / e-Gov 食品衛生法56条: https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000233
  • [C-04] 地位承継届は手数料無料(許可証の記載事項変更で書換え交付手数料が別途要る自治体例あり)・営業の全部譲渡が条件(一部譲渡は不可)・譲渡契約書や覚書等(譲渡の事実と意思が確認できる書類)の添付が必要・届出は遅滞なく。必要書類・提出期限・受付方法・運用は管轄保健所により異なる — 東京都保健医療局「事業譲渡における営業者の地位の承継」(全部譲渡が条件・譲渡契約書/覚書等の添付・遅滞なく): https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/jigyojoto.html / 川崎市(手数料無料): https://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000130206.html / 厚生労働省 食品衛生申請等システム: https://ifas.mhlw.go.jp/
  • [C-05] 株式譲渡は法人格不変のため飲食店営業許可・深夜届・風営許可が会社に帰属したまま原則継続・取り直しや地位承継届/新規届出は原則不要(食品衛生責任者・営業者情報・役員の変更があれば所要の届出。要管轄保健所/所轄警察確認)。事業譲渡・相続・合併・分割は営業許可は地位承継届が必要、の対比。食品衛生法56条1項は承継事由を「当該営業を譲渡し、又は…相続、合併若しくは分割があったとき」と列挙し株式譲渡は列挙外(法人格不変で営業者=会社が変わらないため)。株式譲渡=継続の省庁明文ワンライナーは無く一般法理として記述 — e-Gov 食品衛生法56条: https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000233
  • [C-06] 個人事業のバー・スナックは株式(法人格)が無く株式譲渡は不可。第三者への譲渡は事業譲渡(造作譲渡)=営業許可は2023-12-13以降は地位承継届で承継、深夜届は新規届出やり直し・風営許可は新規許可申請。親族は相続(食品衛生法56条1項・風営許可は相続承認申請)/生前譲渡で整理。個人事業の譲渡・名義変更・税務の汎用は /column/kojin-jigyou-jouto/ へ — e-Gov 食品衛生法56条: https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000233 / 自治体保健所 地位承継 手引(個人営業者の相続・営業の事業譲渡を承継対象に列挙)
  • [C-08] 飲食店倒産はTDB2024暦年894件=過去最多/TSR2024年度907件=初の900件台(小零細89.5%)。TDBは暦年・TSRは年度と集計期間が異なるため併記。バー/スナックを含むナイト業態単独は中分類で明示されにくく飲食店全体値で代替(帰属明示・要原本注記)。後継者不在は全国50.1%(TDB2025) — 帝国データバンク「飲食店倒産動向(2024年)」: https://www.tdb.co.jp/report/industry/20250114-insyokutousan/ / 東京商工リサーチ「飲食業の倒産(2024年度)」: https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201142_1527.html / 帝国データバンク「後継者不在率動向調査2025」: https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
  • [C-09] 居抜きの造作譲渡料は経営状況と独立に立地・広さ・路面で決まる物件相場で、軽飲食(バー)はおおむね100万〜200万円が業界仲介の目安(飲食店ドットコムのカラオケ・パブ・スナック平均168.6万円・ばらつき大)。坪単価式「月家賃÷坪数=坪単価×60〜100倍」も業者の目安(いずれも公的統計なし。算定式の詳細はバー・スナックの売却相場記事へ) — 飲食店ドットコム(居抜き市場): https://www.inuki-info.com/knowledge/closeContent/detail/26 / 店サポ: https://misesapo.jp/archives/3901
  • [C-10] バー・スナックはFLコスト(酒・食材原価+人件費)が売上の約6割(約60%)が目安で、これにナイト固有のヘルプ人件費・歩合が乗るため低利益にとどまりやすい構造(営業利益率10%以下説等は業界二次情報・帰属明示。粗利率と営業利益率を混同しない) — 日本フードサービス協会 外食産業市場動向調査 / 中小企業庁 中小企業実態基本調査 / 厚生労働省 賃金構造基本統計調査(飲食関連職種)
  • [C-12] 株式譲渡なら法人格不変で営業許可・深夜届・風営許可は会社に残り手続き負担が小さい。個人事業は株式譲渡が使えず事業譲渡一択(法人成り単体では個人から法人へ営業者が変わるため深夜届/風営許可は承継不可)。法人で風俗営業許可を受けていれば法人そのものが変わらない限り役員変更に伴う変更届で済む。株式譲渡所得=申告分離20.315%との対比 — 国税庁 タックスアンサー No.1463: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm / 風俗営業承継解説(行政書士・風営法第7〜7条の3の承継構造)
  • [C-13] 個人株主の株式譲渡益は申告分離課税20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)。事業譲渡は課税の入口が異なる(個人=譲渡所得/事業所得・消費税。個別は税理士へ)。事業承継税制は親族内・社内承継の納税猶予制度で第三者へのM&A売却とは別物(節税スキームと誤誘導しない) — 国税庁 タックスアンサー No.1463: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm / 国税庁 No.4148(事業承継税制): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4148.htm
  • [C-15] 深夜0時以降の酒類提供=『深夜酒類提供飲食店営業』は公安委員会(所轄警察署)への”届出”(許可でない・風営法第33条・深夜は午前0時〜午前6時・営業開始の10日前まで・無届は50万円以下の罰金・接待は禁止)で、営業者の地位の承継(名義変更)ができず、経営者交代・事業譲渡・相続・法人成りでは譲渡側の廃業届+譲受側の新規届出をやり直す(同時提出で最大10日の深夜営業空白)。接待を伴う場合は別途『風俗営業許可』(1号・公安委員会の”許可”・風営法第3条1項)が必要で、承継は①相続承認申請(死亡後60日以内)②法人合併承認申請③法人(新設・吸収)分割承認申請の3パターンのみ=事業譲渡・法人成りでは承継不可(株式譲渡+代表者変更なら法人格不変で継続・役員変更届で済む)。風営許可の承継規定は風営法第7条〜第7条の3で、深夜届(第33条・届出制)はそもそも承継規定の対象外 — 愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続」(届出制・営業開始の10日前まで): https://www.pref.aichi.jp/police/shinsei/fuei/kyoka/hoan/shinyaeigyou.html / 風俗営業・深夜酒類提供承継解説(行政書士・名義変更不可=新規届出・承継3パターンのみ・株式譲渡は役員変更届で継続) / e-Gov 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律: https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122