Web制作 M&A 事業承継 売却相場

Web制作会社の売却相場2026|年買法と保守ストックでいくらになるか

更新: 2026年8月4日

代表の自分がエースで、顧客も技術者も「自分に紐付いている」。AIの台頭で受託単価は下がり、後継者は見つからない——。「このまま続けるのが限界なら、会社ごと売れるなら売りたい。でも、いくらになるのか」。Web制作会社のオーナーが抱えるこの問いに、本記事は一次統計と実務目線で答えます。

本記事は「Web制作会社という法人(会社)の売却・事業譲渡・株式譲渡」が主題です。 Webサイト1個の譲渡(アセットM&A)は「サイトM&Aの相場ガイド」をご覧ください。両者は対象が違います。

この記事の結論(先に要点だけ)

  • Web制作会社に「これが相場」という1つの正解金額はありません[C-04]。実務では年買法(時価純資産+営業権)EBITDA倍率で”目安”を置きます[C-02][C-03]。
  • 情報サービス業の営業利益率は平均10.79%/中央値6.79%(JISA・2025年版・回答300社)[C-01]が目安。粗利率は受託30%台〜自社SaaS70%超まで幅があり、一括りにできません。
  • 価格を大きく動かすのは技術者数と定着度・月額保守(リカーリング)の割合・顧客契約の継続性・ソースコード/IPの帰属。属人会社ゆえに、ここが大手仲介の定型フォーマットでは見えない部分です。
  • 株式譲渡ならプログラムの著作財産権は自動承継。事業譲渡だと個別譲渡が必要で、第三者下請のコードは譲渡特約がない限り残ります——これがWeb制作M&Aで株式譲渡が多い法務的理由です。
  • 次の一手は、畳む前に自社の概算評価を一度知ること。仲介に営業される前に、無料で相場感をつかむのが安全です。

§1 Web制作会社のM&Aとは — 市場規模と売却の基本

Web制作会社のM&Aは、いま活発です。2025年(暦年)の日本企業のM&Aは5,115件(前年比+8.8%)で初めて5,000件を超え、2年連続で過去最多を更新しました[C-04]。IT・情報サービス業界に絞った直近の公表値では、2024年に377件(前年342件/レコフM&Aデータベース「ソフト・情報」業種を日本M&Aセンターが集計・公表ベース)[C-04]と年々増えており、買収による「技術者の一括獲得」「特定領域の即時参入」が定着しています。

最大のドライバーは人材不足です。経済産業省の委託調査(2019年公表)の試算では、2030年時点のIT人材の需給ギャップは、IT需要の伸びが「高位」の条件で約78.7万人、「中位」で約44.9万人、「低位」で約16.4万人とされています(いずれも生産性上昇率0.7%の場合)[C-07]。よく引用される「2030年に最大約79万人不足」は、このうち高位シナリオの数値です。生成AIの普及前に置かれた前提に基づく試算のため幅をもって読む必要はありますが、自社で採用するより、技術者チームごと買うほうが早い——こうした「人を買う」需要が、Web制作会社に値を付けます。

一方で、Web制作会社の売却を考える際、最初に押さえるべきは「会社ごと売る(会社M&A)」と「サイト1個を譲る(アセットM&A)」は別物、という点です。本記事で扱うのは前者です。売り手の皆さんが持っているのは「会社」という法人で、その事業・技術者・顧客契約・知的財産をまとめて譲渡するかたちをとります。

注:総件数5,115件[C-04]はMARR(レコフデータ運営)の集計(2025年1〜12月・公表ベース)、IT・情報サービス業界377件は日本M&Aセンターの2024年集計(レコフM&Aデータベースの業種区分「ソフト・情報」・経営権の移転を伴うものに限る)です。集計主体・対象年が異なるため、両者を単純に比較はできません。また377件は、買い手が開示義務を負う上場企業等の案件のみを集計した数字です(同社は非上場どうしのM&Aを加味すればIT全体でより多いと述べています)。参考値としてお読みください。

注:この「IT・情報サービス業界」は、本記事で倒産件数[C-05]・後継者不在率[C-06]の母数として用いる東京商工リサーチの「情報通信業」(産業大分類)とは業種区分が異なります。同じラベルで並べて比較できる数字ではありません。

Web制作会社という業界そのものの全体像(AIによる構造変化・人材不足・後継者不在から「続ける/売る/買う」を判断する視点)は、Web制作会社の将来性2026|AIで淘汰される会社と残る会社の分かれ目で俯瞰します。本記事は「相場・売却価格」に絞ってお読みください。


§2 Web制作業界の動向と将来性 — AI・人材不足が変える売り時

売却を検討するタイミングを見極めるには、業界の追い風と逆風を並べて見る必要があります。

逆風は、AIと単価低下です。 生成AIによるコーディング支援が普及するなか、従来の受託制作は工程そのものが変わろうとしています。「Web制作会社はなくなるのか」という不安が、検索でも大きな広がりを見せています。属人的な受託案件への依存度が高い会社ほど、この波の影響を受けます。

一方で、追い風も確実にあります。 それは、AIで代替できない保守・運用契約(月額リカーリング)と、顧客ごとのドメイン知識、そして技術者そのものの価値が相対的に高まることです。AIがコードを書く時代でも、「誰が責任を持って保守し、障害に対応し、顧客と伴走するか」は変わりません。

売り時を示す数字が2つあります。ひとつは後継者不在率です。東京商工リサーチの2025年調査では、情報通信業の後継者不在率は77.06%で10産業中トップ(同調査の全産業平均は62.60%)[C-06]。もうひとつは倒産で、情報通信業の倒産は2024年(暦年)に425件と11年ぶりに400件を超えたあと、2025年(暦年)も438件(前年比+3.0%)で4年連続の増加(TSR集計)[C-05]となり、事業淘汰が進んでいます。

注:後継者不在率は調査機関で集計口径が異なります。ここで並べた77.06%と62.60%はいずれも東京商工リサーチの同一調査(2025年11月公表・16万9,136社)の数値です。一方、帝国データバンクの2025年調査では全業種の不在率は50.1%(7年連続改善)[C-06]で、母集団・定義が異なるため両社の数値を直接比較することはできません。いずれの調査でも「後継者難」が深刻であることは共通しています。

注:倒産件数は集計期間で数字が変わります。暦年(1〜12月)では2025年438件(+3.0%)ですが、年度(2025年4月〜2026年3月)では432件(前年度比▲6.0%)と4年ぶりに減少しています[C-05]。増加基調が続いているか反転したかは、今後の集計で確認が必要です。

つまり、「技術者に価値がある今、AIで構造が変わる前」に、会社ごと売却先を探すのが、現実的なタイミングの目安です。

AIで淘汰される会社と残る会社の分かれ目、業界全体の将来予測はWeb制作会社の将来性2026で整理します。本記事は「相場・売却価格への影響」に絞っています。


§3 Web制作会社はいくらで売れる? — 相場の決まり方と査定変数

まず大前提:Web制作に「明確な相場」は存在しない

Web制作会社の売却額は、上場企業の株価のように「○○円」と決まって公表されるものではありません。中小M&Aでは、売り手と買い手が個別に評価額を出して合意するため、成約額の多くは非開示です[C-11]。そのため「相場」と呼べるのは、評価の「決まり方(ロジック)」と「目安のレンジ」にすぎません。

算定式①:年買法(中小M&Aの定番)

中小M&Aで最も一般的なのが年買法です。

企業価値 = 時価純資産 + 営業権(のれん) 営業権 = 実質利益(過去2〜5年の平均税引後利益)× 評価倍率(2〜5倍)[C-03]

「時価純資産」は、貸借対照表の純資産から含み益(土地の時価評価など)を調整したものです。「営業権(のれん)」は、超過利益(同業他社より多く稼ぐ力)に対して付く金額で、税引後利益の2〜5倍が実務的な目安とされています[C-03]。税務上ののれん償却期間(5年)との整合で、3〜5倍になることが多いです。

注:年買法は実務慣行であり、理論的な根拠は必ずしも厚くありません[C-03]。あくまで「目安を置くための枠組み」として使います。

算定式②:EBITDA(営業利益)倍率

もうひとつよく使われるのがEBITDA(利払い・税引前・償却前利益)倍率、または簡易に営業利益倍率です。

  • 中小企業:3〜5倍程度が一般的(上場企業は8〜10倍)[C-02]
  • 日本M&Aセンターの自社成約ベースでは全業界平均約5.4倍[C-02]

中小企業は株式の流動性が低いため、上場企業より非流動性ディスカウント(概ね2〜3割程度)がかかり、倍率は低めに出ます[C-02]。Web制作会社では、後述の保守契約の割合が高いほど「継続的収益」が評価され、倍率が上振れしやすくなります。

利益率の目安:JISAの実態データ

評価額の計算に欠かせないのが利益率です。情報サービス産業協会(JISA)の「基本統計調査 2025年版」(2024年度実績・回答企業300社)によると、売上高営業利益率は平均(加重平均)10.79%/中央値6.79%[C-01]です。この平均と中央値の乖離が何を意味するか、そして「1人当たり営業利益」でどう読み直すかはWeb制作会社の利益率と社長年収で詳しく分解しています。

平均と中央値が大きく離れているのは、利益率のばらつきが大きいからです[C-01]。粗利率で見ても、人月ビジネス中心の受託開発と、自社パッケージやSaaSを抱える会社とでは水準が大きく開きます(実務上は受託30%台〜自社プロダクト70%超まで幅があるといわれますが、業態別の粗利率を業界横断で集計した公表統計はなく、あくまで目安です)。つまり「IT業界だから高利益」とは言えず、個社の商流と事業構造で利益率が決まる——これがWeb制作会社の評価で最も重要な前提です。

Web制作会社の売却相場の決まり方:①年買法=時価純資産+営業権(実質利益×評価倍率2〜5倍)/②EBITDA倍率=中小3〜5倍・上場8〜10倍・全業界平均約5.4倍。前提となる利益率は情報サービス業の売上高営業利益率 平均10.79%・中央値6.79%(JISA基本統計調査2025年版)。粗利率は事業構造で開きが大きく業界平均では語れない

価格を大きく動かす4つの査定変数(ここが差別化の核)

大手仲介の記事では「時価純資産+営業利益×2〜5倍」という定型フォーマットが示されますが、Web制作会社ではその倍率を何倍にするかを、次の4変数が決めます。これが本記事の核心です。

1. 技術者数・平均年齢・定着度:買収後の最大リスクは「キーエンジニアの退職」です。技術者が辞めれば、買った価値は瞬時に蒸発します。定着度が高く、年齢構成が若いチームほど評価は上がり、反対に代表1人に依存する会社は倍率が下がります。 2. 保守・運用契約(月額リカーリング)の割合:売上に占めるストック収益(毎月入ってくる保守・運用費)の割合が高いほど、「継続的収益=金融化可能」と評価され倍率が上振れします。新規案件の獲得に依存する(フロー収益)会社は割安です。 3. 顧客契約の継続性:口約束か書面か、受注残(バックログ)が見えるか、特定業種(EC・金融・医療など)への深さがあるか。長期契約とドメインの深さは営業権を押し上げます。 4. ソースコード・IPの帰属:プログラムの著作権が会社に帰属しているか。創業者の個人GitHubや個人メールに紐付いたAWSルートアカウントは「実は会社の資産ではなかった」になる、最も発見しにくいリスクです。

Web制作会社に固有の査定変数4つ:①技術者数・平均年齢・定着度(↑複数体制・低離職/↓代表がエース)②月額保守リカーリングの割合(↑ストック売上比率が高い/↓フロー収益中心)③顧客契約の継続性(↑書面・長期・受注残が見える/↓口約束・一社依存)④ソースコード・IPの帰属(↑著作権が法人帰属/↓個人GitHub・個人AWSに紐付)

実務の現実:技術者3名の零細でも、月額保守が売上の4割を占め、技術者が定着していればEBITDA 4〜5倍がつくことがあります。逆に、新規案件依存で代表がエースなら、2倍に届かないこともあります。「属人会社だから値が付かない」は誤解で、属人性をどう構造化して残せるかが評価を決めます。

自社データで見る市場の厚み

ma-platform(M&A-WEB)が扱うIT/Web系の売り案件は、EC、Webサービス・アプリ・システム、Webサイト・Webメディア、Web制作・デザイン・システムを合わせて92件(SNS・YouTubeを除く狭義・重複排除の実数・2026年8月3日時点・当社調べ)[C-08]です。当社が扱う飲食系25件・建設系13件と比べて数倍の厚みがあり、買い手ニーズが厚い領域だといえます。ただしこれらの案件は「アセット/システム譲渡」が大半で、Web制作会社(法人)の株式譲渡の件数ではありません[C-08]。また掲載額は「希望額」であって成約額ではなく[C-08]、あくまで市場の流動性の目安としてお読みください(実際の掲載案件は募集中のWeb制作・システム開発のM&A案件を見るからご覧いただけます)。


§4【M&A・投資視点】売却相場を決める3要素と売り手の磨き込み

M&A目線の論点:「エンジニアの退職届1枚で価値が蒸発する」

建設会社なら「建設業許可を承継できれば価値が残る」、飲食店なら「営業許可の地位承継で事業が続く」。しかしWeb制作会社に事業許可は原則ありません。価値のすべては「人×契約×知的財産」に宿り、これらは譲渡と同時に消滅するリスクを常にはらんでいます

だからこそ、Web制作M&Aでは人的デューデリジェンス(DD)・キーマン条項・アーンアウトが成約可否を握ります。キーエンジニアに2〜3年残留を約束させるアーンアウト条項やリテンションボーナスは、この業界の標準手口です。

買い手が見る3つのチェックポイント

1. 技術者チームの残留見込み:キーパーソンは誰か、クロージング後に残るか(キーマン条項・競業避止の有無) 2. 保守契約の引き継ぎ可能性:月額保守は顧客合意のもと引き継げるか、SLA(サービス品質保証)義務は債務引受になるか 3. ソースコード/IPのクリーンさ:著作権帰属は法人か、第三者下請のコードに譲渡特約はあるか、個人アカウント紐付けの資産はないか

スキーム選択:株式譲渡か事業譲渡か

Web制作会社では株式譲渡が選ばれることが多いです。理由は法務的です。

  • 株式譲渡:法人格は変わらず、プログラムの著作財産権も顧客契約も原則として自動承継されます。手続きが軽い。
  • 事業譲渡:事業を個別に譲渡するため、著作権は個別譲渡が必要です。第三者下請に発注したコードは、委託契約書に譲渡特約がない限り受託者に残留し、買い手は「数百件の契約を洗うDD」を迫られます。

この違いが「IT企業では株式譲渡が多い」という実態の根拠です。

著作権の帰属確認、下請・再委託契約の承継、顧客契約のチェンジオブコントロール条項といった引継ぎ実務の詳細は、Web制作会社のM&Aで著作権とソースコードは引き継げる?契約とIPの実務で扱います。本記事では「スキームの違いが価格にどう効くか」の要点にとどめています。

売り手が査定を上げるために今やるべき3つの磨き込み

1. 代表依存の解消:業務マニュアル化・権限委譲・第二人材の育成。代表がエースのままだと、買い手は「代表が辞めたら終わり」と買い控えます。 2. 保守契約の書面化・長期化:月額を年額に、自動更新に。リカーリングの見える化は評価の上振れに直結します。 3. IPハイジーン:創業者の個人GitHub・個人メール・AWSルートを法人Organizationに移管し、ドメインのWhois登録者を法人にする。これをしておかないとDDで「会社資産ではない」が発覚し、成約が遠のきます。

査定を上げる3つの磨き込み:STEP1 代表依存の解消(業務のマニュアル化・権限委譲・第二人材の育成)/STEP2 保守契約の書面化(口約束の保守を契約書に・月額から年額と自動更新へ・ストック収益の見える化)/STEP3 IPハイジーン(個人GitHubを法人Organizationへ・個人メールとAWSルートの移管・ドメインWhoisを法人名義に)

手取り(税引後)の考え方と仲介手数料

売却益には税金がかかります。株式譲渡なら株式譲渡所得として一律20.315%(所得税・復興特別所得税)の申告分離課税が原則です。個別の税務はケースによるため、譲渡前に税理士に試算してもらうことをお勧めします(本記事は一般論です)。

仲介手数料はレーマン方式(企業価値に対し段階的に3〜5%程度)や成功報酬型が一般的で、着手金の有無は仲介業者によります。期間は、情報開示から成約まで3〜6ヶ月程度を見込むのが現実的です。

業種を問わない中小M&Aのバリュエーション(評価手法の使い分け・DCF/類似会社比較との違い)の総論は、中小M&Aのバリュエーション実務はこちらで解説しています。本記事はWeb制作会社の値付けに絞っています。

査定・相場感を知りたい方へ:自社の概算評価額を知るには、まず無料の査定相談が安全な第一歩です。仲介に営業される前に、概算でも額感をつかんでおきましょう。 → Web制作会社の無料売却査定を相談する


§5 売却事例と成約パターン

参考になる大型事例はありますが、注意点があります。大型のIT系M&Aの多くは上場企業を対象としたTOB(公開買付)で、価格の決め方も「市場株価にプレミアムを上乗せする」方式(下の2例では公表前終値に対し約31%・約41%)です。市場価格という出発点がない中小のWeb制作会社とは前提が違い、そのまま相場の目安にはなりません。

  • 住友商事によるSCSK完全子会社化:TOB価格1株5,700円、買付代金約8,818億円(2025年10月発表)[C-09]
  • NTTによるNTTデータ完全子会社化:TOB価格1株4,000円、買付代金約2兆3,712億円(2025年5月発表・日本企業過去最大級)[C-10]

これらは親子上場の解消やグループ再編が目的で、中小のWeb制作会社の売却相場の参考にはなりません[C-09][C-10]。

一方、中小規模のWeb制作・システム開発会社の買収は、案件そのものは公表されても取得価額が開示されないケースが大半です(たとえば電通デジタルによる電通デジタルアンカーの完全子会社化も価額は非開示)[C-11]。上場企業には一定規模を超える取得について適時開示の義務がありますが、非上場どうしの中小M&Aにはそれがないためです。だからこそ、中小の売却価格は「事例の金額」ではなく「評価ロジック」から逆算するほかありません。

買い手の目的は大きく4タイプに分かれます。(1) DX加速・技術者獲得(2) 特定領域(EC・WordPress・LP等)の即時参入(3) 制作→運用→マーケの垂直統合(4) 事業承継。自社がどのタイプの買い手にとって魅力的かを考えることが、適正な評価額を想定する出発点になります。なお買い手側で「そもそもゼロから起業するのと会社を買うのとどちらが早いか」を迷っている場合はWeb制作会社は起業と買収どっちを先にご覧ください。

技術者と顧客契約を残したまま売れた会社に何が共通するのか、成約条件の傾向は別稿「Web制作会社の売却・第三者承継 事例傾向2026」で扱います。

買い手の方へ:技術者チーム・顧客基盤・保守契約を会社ごと取得したい方は、募集中のWeb制作・システム開発のM&A案件を見るをご覧ください。


§6 よくある質問(FAQ)

Q1. Web制作会社はいくらで売れますか? 明確な相場はなく、年買法(時価純資産+営業権=税引後利益×2〜5倍)またはEBITDA倍率(中小3〜5倍)で目安を置きます[C-02][C-03]。技術者・保守契約・IP帰属で大きく動きます。

Q2. 技術者だけの零細Web制作会社でも売れますか? 売れます。技術者の定着度と月額保守の割合が高ければ、零細でもEBITDA 4〜5倍がつくことがあります。反対に代表1人に依存する会社は割安です。

Q3. 売却相場の決まり方は? 「時価純資産+のれん」と「営業利益(EBITDA)×倍率」の2本柱で、のれん・倍率を個社の商流・技術者・継続収益で決めます。利益率は平均10.79%/中央値6.79%(JISA 2025年版)[C-01]が目安。

Q4. 株式譲渡と事業譲渡はどちらが良いですか? Web制作会社では株式譲渡が多いです。株式譲渡は著作財産権が自動承継され手続きが軽い。事業譲渡は個別譲渡が必要でDDが重くなります。個社の状況で判断が必要です。

Q5. 高く売るために今からできることは? 代表依存の解消(マニュアル化・権限委譲)、保守契約の書面化・長期化、IPハイジーン(個人アカウントの法人移管)の3点が効果的です。

Q6. 売却にかかる税金は? 株式譲渡なら株式譲渡所得として原則20.315%の申告分離課税。個別の税務はケースによるため、税理士に試算を依頼してください(本記事は一般論)。


§7 まとめ — 畳む前に、まず査定を

Web制作会社の売却相場は「時価純資産+営業権(税引後利益×2〜5倍)」と「EBITDA(中小3〜5倍)」が目安[C-02][C-03]ですが、実額を決めるのは技術者の定着・月額保守のストック・顧客契約の継続性・ソースコード/IPの帰属です。情報サービス業の利益率は平均10.79%/中央値6.79%(JISA 2025年版・回答300社)[C-01]を参考にしつつ、自社の商流と事業構造で読んでください。

売り時は「技術者に価値がある今」です。情報通信業の後継者不在率は産業別で最も高い77.06%(TSR・2025年調査)[C-06]、倒産も2025年(暦年)438件と4年連続で増加[C-05]しており、AIで構造が変わる前に出口を描くことが現実的です。

売り手が今やるべき3点:①代表依存の解消、②保守契約の長期書面化、③IPハイジーン(個人アカウント・コードの法人移管)。

まずは自社の概算評価を一度つかむこと。無料査定で相場感を知ったうえで、畳んだ場合の手取り(Web制作会社は廃業と売却どっちが得?)と並べ、「契約とソースコード帰属が引き継げる形になっているか」を点検し、業界そのものの見通しを確かめる——という順に進めてください。業界の“今”(市場の輪郭・生成AIの普及率・退出と倒産・後継者不在)を一次統計で押さえるならWeb制作業界の最新動向2026が起点になります。M&Aの評価手法そのものを広く知りたい方は、中小M&Aのバリュエーション実務も併せてご覧ください。

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免責

本記事は2026年時点の公開情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務・法務・評価判断を保証するものではありません。数値は出典機関の集計に基づく参考値です。実際の取引にあたっては、税理士・弁護士・M&Aアドバイザーなど専門家にご相談ください。

出典

  • [C-01] 情報サービス産業協会(JISA)「情報サービス産業 基本統計調査 2025年版」(2024年度実績・回答企業300社/売上高営業利益率は有効回答286社の加重平均10.79%・中央値6.79%〈図表2-39〉・2026年4月公表)https://www.jisa.or.jp/Portals/0/report/basic2025report.pdf
  • [C-02] 日本M&Aセンター(全業界EBITDA平均約5.4倍)https://www.nihon-ma.co.jp/columns/2022/x20220221/ / ma-la(中小3〜5倍/上場8〜10倍)https://ma-la.co.jp/m-and-a/ev-ebitda-multiple/
  • [C-03] M&A総合研究所(年買法・営業権=実質利益×2〜5倍)https://masouken.com/事業譲渡の営業権
  • [C-04] MARR「2025年のM&A回顧」(日本企業のM&A 5,115件・前年比+8.8%・2年連続過去最多/2024年は4,700件)https://www.marr.jp/marr/marr202602/entry/66036 / 日本M&Aセンター(IT・情報サービス業界377件・2024年集計〈前年342件〉/レコフM&Aデータベース「ソフト・情報」区分・経営権の移転を伴うもの・公表ベース。※東京商工リサーチの「情報通信業」区分[C-05][C-06]とは母数定義が異なります)https://www.nihon-ma.co.jp/columns/2024/x20241227-1/
  • [C-05] 東京商工リサーチ「2025年(令和7年)の全国企業倒産1万300件」(情報通信業438件・2025年暦年・前年比+3.0%・4年連続増加)https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1202288_1610.html / 同「2025年度(令和7年度)の全国企業倒産1万505件」(情報通信業432件・2025年度・前年度比▲6.0%・4年ぶり減少)https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1202724_1610.html / 同「『情報通信業』の倒産 11年ぶり400件超」(2024年暦年425件・前年比+21.7%)https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1200895_1527.html
  • [C-06] 東京商工リサーチ「2025年『後継者不在率』調査」(情報通信業77.06%・産業別最高/全産業62.60%・16万9,136社・2025年11月10日公表)https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201982_1527.html / 帝国データバンク(後継者不在率 全業種50.1%・2025・7年連続改善)https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
  • [C-07] 経済産業省「IT人材需給に関する調査」報告書(2019年4月・委託先:みずほ情報総研/2030年の需給ギャップ=高位78.7万人・中位44.9万人・低位16.4万人、生産性上昇率0.7%の場合)https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf
  • [C-08] ma-platform(M&A-WEB)/malist IT/Web系の売り案件92件(EC57・Webサービス・アプリ35・Webサイト・Webメディア18・Web制作・デザイン12の重複排除実数/SNS・YouTube除く狭義・2026年8月3日時点・希望額ベース/アセット・システム譲渡が大半で法人株式譲渡の件数ではない/当社調べ)https://ma-platform.com/malist/
  • [C-09] SCSK株式会社 適時開示「当社の親会社である住友商事株式会社の子会社であるSCインベストメンツ・マネジメント株式会社による当社株券等に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」(2025年10月29日/本公開買付価格 1株5,700円・買付代金881,799,308,100円)https://www.scsk.jp/news/2025/pdf/20251029_2.pdf
  • [C-10] NTTグループ リリース/「公開買付けの開始に関するお知らせ」(NTTデータ完全子会社化・本公開買付価格 1株4,000円・買付代金2,371,243,872,000円)https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/05/08/250508b.html (原文PDF: https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/05/08/pdf/250508ba.pdf )
  • [C-11] 日本M&Aセンター(中小IT系買収の取得価額は非開示が通例)https://www.nihon-ma.co.jp/news/20240112_4324-85/