廃業・事業承継実務

個人事業主の廃業届の書き方・記入例|提出先と記入時の注意点

この記事の目次
  1. 廃業届とは — 1分でわかる定義と全体像
  2. 廃業届と消費税の「事業廃止届出書」の違い — 書類・対象者・記入欄
  3. 廃業届の必要書類とPDFダウンロード — どこから入手するか
  4. 廃業届の書き方 — 項目別8ポイント記入例
  5. 廃業届はどこに出す — 国税は税務署、都道府県税は別の手続き
  6. (補足)廃業届の出し方と収受日付印 — 手順の詳細は提出方法の記事へ
  7. 廃業届と一緒に出す書類 — 青色申告の取りやめ届出書ほか
  8. 廃業届を出さないとどうなるか — リスクと併せ届出のリマインド
  9. 廃業届を出す前に — 「事業譲渡(M&A)」という選択肢を検討する
  10. よくある質問(FAQ)
  11. まとめ — 廃業届の3原則と「出す前の譲渡」検討

廃業届とは、個人事業主(自営業者)が事業を廃止する際に、所轄の税務署へ提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」のことです。 本記事はこの届出書の書き方に絞り、項目別8ポイントの記入例・よくある記入ミス・提出先(税務署。都道府県税の届出は別の手続き)・様式の入手先を、国税庁の公式情報に沿って整理します。消費税の課税事業者だった方が追加で出す「事業廃止届出書」は所得税の廃業届とは別の書類なので、違いと記入欄もあわせて説明します。提出期限は、令和8年(2026年)1月1日以後に廃業した場合、その廃業した日の属する年分の所得税の確定申告期限まで(緩和前は廃止日から原則1か月以内)です。最新の期限は国税庁公式でご確認ください。e-Tax・郵送・窓口での出し方と提出後の確認は、別記事で扱います。本記事はM&AプラットフォームM&A-WEBの編集視点で執筆し、書式記入の手続的な説明に限定しています。個別の税務判断は税理士、登記が絡む法人解散は司法書士、廃業届の代理提出は行政書士へご相談ください。

本記事の対象スコープ: 個人事業主(フリーランス・自営業者を含む)の廃業届を主対象とします。法人(株式会社・合同会社)の解散・清算は別途、法務局での解散登記・清算結了登記が必要であり、本記事の対象外です。法人の場合は司法書士または弁護士へご相談ください。

廃業届を出す前に — もし「事業を畳む」前に「事業を譲る」選択肢を比較したい場合は、関連記事 廃業 vs 譲渡 — 手元に残る金額の比較 と、親hub記事 個人事業主の廃業と譲渡の全体像 を先にご覧ください。後継者不在でも譲渡可能なケースが少なくありません。

廃業届とは — 1分でわかる定義と全体像

廃業届とは、個人事業主(自営業者)が事業を廃止することを所轄の税務署へ知らせる「個人事業の開業・廃業等届出書」の通称です。 所得税法第229条に基づく届出書で、開業届と同じ様式(兼用フォーム)を使用し、「届出の区分」欄で「廃業」にチェックを入れて提出します。なお、提出期限は令和8年(2026年)1月1日以後の改正で見直されており、現行の期限は後述の「提出期限」で整理します。

廃業届の正式名称と根拠条文

廃業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。様式は国税庁が公開しており、開業時と廃業時の両方で同じ書式を使用します。根拠は所得税法第229条で、居住者は事業所得を生ずべき事業を廃止した場合に、納税地の所轄税務署長へ届出書を提出することとされています。提出期限は、国税庁の手続案内(A1-5)によれば、令和8年(2026年)1月1日以後に廃業した場合は「その事実があった日の属する年分の所得税の確定申告期限まで」とされ、緩和前は「廃止日から原則1か月以内」でした。なお、この「廃業届」は所得税の手続きであり、消費税の手続きである「事業廃止届出書」とは別の書類です。両者の違いは次章で整理します。

「自営業の廃業届」も「個人事業主の廃業届」も同じ書類

「自営業 廃業届」「個人事業主 廃業届」という言葉で検索する方が多いですが、これらは同じ「個人事業の開業・廃業等届出書」を指します。税法上は「自営業者」「フリーランス」という区分はなく、税務署に開業届を出して事業所得を申告してきた人はすべて「個人事業主」として扱われます。本記事では呼称を「個人事業主(自営業者を含む)」に統一して解説します。

廃業届の対象者

廃業届の提出対象は、税務署に開業届を提出した個人事業主(フリーランス・自営業者)です。具体的には、事業所得を生む事業(飲食店・小売・コンサルティング・士業・クリエイター・EC運営など)を営み、廃止する場合に提出します。サラリーマンの副業で開業届を出していた場合も対象となります。法人の解散は法務局での解散登記が必要で、本記事の対象外です。

廃業届を出すと何が起こるか

廃業届の提出は、税務署が「この個人事業主はもう事業を行っていない」と把握するための手続きです。提出により、翌年以降の確定申告書の自動送付が止まり、消費税の課税事業者だった場合は廃業日以降の消費税負担関係が整理されます。屋号・住所・連絡先が税務署側で「廃業済み」のステータスに切り替わり、青色申告承認の継続の要否なども、関連届出書とセットで整理されます。

結論先出し — 廃業届の5ステップ

廃業届の手続は、次の5ステップで完結します。

  1. 必要書類の確認 — 廃業届本体に加え、青色申告取りやめ届出書・消費税の事業廃止届出書・給与支払事務所等の廃止届出書などの該当書類を洗い出す
  2. PDF入手 — 国税庁公式サイトから「個人事業の開業・廃業等届出書」PDFをダウンロードする
  3. 記入 — 提出先税務署・納税地・氏名・職業・屋号・届出の区分(廃業に〇)・廃業の事由・廃業日など8項目を記入する
  4. 提出 — 納税地を所轄する税務署へ提出する(窓口・郵送・e-Tax。出し方の詳細は別記事)。提出期限は令和8年1月1日以後の廃業なら廃業年分の確定申告期限まで(緩和前は原則1か月以内)。国税とは別に、都道府県税(個人事業税など)の届出が必要かを自治体のサイトで確かめる
  5. 控え・記録の保管 — 提出事実が分かる記録(受信通知やリーフレット等)を、確定申告書類とあわせて保管する

各ステップの詳細は本文で順を追って解説します。なお、「廃業せずに譲渡すれば、事業の売却対価が手元に残る場合がある」という論点は後述の「廃業届を出す前に — 事業譲渡という選択肢」で扱います。

廃業届と消費税の「事業廃止届出書」の違い — 書類・対象者・記入欄

「廃業届」と呼ばれる書類には、所得税の『個人事業の開業・廃業等届出書』と、消費税の『事業廃止届出書』の2種類があり、両者は税目も対象者も異なります。 検索でよく混同される「事業廃止届出書」という名称も、ここで整理しておきます。

「個人事業の開業・廃業等届出書」と「事業廃止届出書」は別物

廃業時に登場する書類名が似ているため混乱しやすいですが、次のように整理できます。

書類名 税目 根拠法 対象者 提出期限
個人事業の開業・廃業等届出書(いわゆる廃業届) 所得税 所得税法第229条 すべての個人事業主 廃業年分の確定申告期限まで(令和8年1月1日以後の廃業/緩和前は原則1か月以内)
事業廃止届出書 消費税 消費税法第57条第1項第3号 消費税の課税事業者(課税事業者を選択している方を含む)のみ 事由が生じたら速やかに

つまり、「事業廃止届出書」は消費税の課税事業者だけが追加で提出する書類で、すべての個人事業主が出す「廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」とは別物です。白色申告で消費税の免税事業者だった方は、事業廃止届出書の提出は不要となるのが一般的です。国税庁の手続案内(A1-5)も、廃業届の備考で「消費税の課税事業者の方及び課税事業者を選択されている方で、廃止する事業のほかに課税売上に当たる所得(不動産所得等)のない方」は事業廃止届出書も提出するよう案内しています。様式も別で、廃業届は「個人事業の開業・廃業等届出書」の用紙、事業廃止届出書は消費税の用紙(国税庁「D1-14 事業廃止届出手続」)を使います。

事業廃止届出書の書き方 — 記載要領が示す主な3欄

事業廃止届出書は、提出者(納税地・氏名など)を書いたうえで、国税庁の「事業廃止届出書の記載要領等」が説明している次の欄を埋めます。

欄 書く内容
事業廃止年月日 事業を廃止した年月日
納税義務者となった年月日 先に提出した「消費税課税事業者選択届出書」または「消費税課税事業者届出書(基準期間用・特定期間用)」の「① 適用開始課税期間」欄の初日
参考事項 その他参考となる事項がある場合に記載

同じ記載要領は、個人事業者が控えを保管する場合は控えに個人番号を記載しないなど、個人番号の取扱いに注意するよう求めています。また、課税事業者が事業を廃止した場合は、廃止した日の属する課税期間の消費税の申告が必要であることも注記されています。「納税義務者となった年月日」が分からない場合は、手元の届出書の控えを確かめるか、所轄税務署に確認してください。

事業廃止届出書には連動する取扱いがある

消費税の事業廃止届出書を提出すると、消費税課税事業者選択不適用届出書・簡易課税制度選択不適用届出書などの不適用届出も、あわせて提出されたものとして取り扱われる扱いがあります(国税庁「D1-14 事業廃止届出手続」)。また、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録を事業廃止に伴って取り消す場合は、登録の取消しを求める届出書ではなく、この事業廃止届出書を提出する扱いとされています。

税理士法配慮: 自分が消費税の課税事業者に該当するか、廃止年の消費税申告(みなし譲渡を含む)が必要かといった個別の課税判定は、税理士または所轄税務署の個別相談(無料)でご確認ください。本記事は書類名の整理と一般的な提出区分の解説に留め、個別の課税関係を断定するものではありません。

廃業届の必要書類とPDFダウンロード — どこから入手するか

廃業届の様式は、国税庁公式PDFをダウンロードする方法と税務署窓口で書面を受け取る方法があり、e-Taxで出す場合はパソコンのe-Taxソフトで作成します。 一次情報である国税庁公式PDFを使うのが最も確実です。

廃業届PDFのダウンロード先(国税庁公式)

廃業届のPDFは、国税庁公式サイトの「申告・申請・届出等、用紙(手続の案内・様式)」ページから入手できます。

  • 国税庁公式PDF: 「個人事業の開業・廃業等届出書」(国税庁、検索ワード「個人事業 開業 廃業 届出書 国税庁」で公式ページに到達できます。本記事執筆時点の正本URLは年次で再構成される可能性があるため、必ず国税庁公式ドメイン nta.go.jp 配下のページからダウンロードしてください)
  • 記入用フォーム: PDFは入力可能タイプと、印刷後に手書きするタイプの両方が公開されています。e-Taxを使わない場合は、PCで入力→印刷→押印しないで税務署へ提出が可能です(押印義務は2021年改正で廃止)

国税庁以外のサイト(民間税理士事務所サイト等)にもPDFが転載されている場合がありますが、様式は年次で改定される可能性があるため、必ず国税庁公式ドメインから最新版を取得してください。

廃業届と併せて提出を検討すべき関連届出書

廃業届だけでなく、事業の状況に応じて以下の届出書も併せて提出します。

書類名 提出が必要なケース 提出期限 提出先
個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届本体) すべての廃業ケース 廃業年分の確定申告期限まで(令和8年1月1日以後の廃業/緩和前は原則1か月以内) 納税地の所轄税務署
所得税の青色申告の取りやめ届出書 青色申告で確定申告していた場合 取りやめようとする年の翌年3月15日まで 納税地の所轄税務署
消費税の事業廃止届出書 消費税の課税事業者だった場合 事由が生じた場合速やかに 納税地の所轄税務署
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 従業員に給与を支払っていた場合(※個人事業主は廃業届本体で代替できる扱いあり) 廃止の事実があった日から1か月以内 給与支払事務所の所在地の所轄税務署
所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書 予定納税が課されており、廃業で所得が大幅減になる見込みの場合 7月15日まで(第1期)/ 11月15日まで(第2期) 納税地の所轄税務署
都道府県税の届出(東京都などでは事業開始(廃止)等申告書) 個人事業税の対象になる事業を営んでいた場合など(国税の廃業届とは別の手続き) 自治体ごとに異なる(廃止後の短い期限が定められていることがある) 事業所の所在地の都道府県税事務所

なお、個別の課税関係(消費税・予定納税など)の判定は税理士の独占業務領域に属します。本記事は書式記入の手続的指南に留め、自社の課税関係が課税事業者か免税事業者か、青色申告を取りやめるべきか継続すべきかなどの個別判断は、税理士または所轄税務署の個別相談窓口(無料)でご確認ください。

廃業届の提出時に必要なもの(添付・持参するもの)

「廃業届 必要なもの」として、税務署へ提出する際に持参・同梱が望ましいものは以下です。

  • 本人確認書類: 個人番号(マイナンバー)を確認できる書類と身元確認書類が必要です。書面で提出する場合、窓口では提示、郵送では写しの添付が求められます。具体的には、マイナンバーカード(1枚で番号確認・身元確認の両方が可能)、またはマイナンバーが記載された住民票等+運転免許証等の組み合わせです
  • 印鑑: 押印義務は2021年改正で廃止されましたが、記入の訂正用に念のため持参すると安心です
  • 控え用の同じ書類1部: 自分の記録用に、提出する書類と同じ内容の控えを手元に残しておきます(後述のとおり、2025年1月から税務署の収受日付印は控えに押されなくなりました)
  • 郵送の場合: 切手を貼った返信用封筒を同封すると、当分の間の対応として、提出日・税務署名を記載したリーフレットが返送されます

提出時に課税関係や青色申告の経過処理について不明点がある場合は、税務署の総合案内(電話・窓口とも無料)で確認できます。法律相談に該当する論点(取引相手とのトラブル等)は弁護士、税務判断は税理士、書類作成代行は行政書士へ、と専門家を使い分けてください。

廃業届の書き方 — 項目別8ポイント記入例

廃業届の書き方は、提出先税務署・納税地・氏名・職業・屋号・届出の区分・廃業の事由・廃業日の8項目を、国税庁公式PDFのフォーマットに沿って正確に記入することが基本です。 本セクションは記入例の表と、項目別の記入ポイントを解説します。

廃業届の記入例(8項目の一覧)

項目 記入する内容 記入例
① 提出先税務署・提出日 納税地を所轄する税務署名と、提出(郵送)する日 「〇〇税務署長」/令和〇年〇月〇日
② 納税地 住所地・居所地・事業所等のうち該当するものにチェックし、住所・電話番号を記入 住所地にチェック、住民票の住所
③ 氏名・生年月日・個人番号 戸籍上の氏名(ふりがな)、生年月日、マイナンバー12桁 個人番号カードを見ながら転記
④ 職業・屋号 廃業時点の職業名。屋号は登録していた場合だけ 職業「Webデザイナー」/屋号「〇〇デザイン」
⑤ 届出の区分 「廃業」に〇。事業を譲り渡す場合は「事業を譲り渡した場合」 「廃業」に〇
⑥ 所得の種類 廃業する事業の所得区分 「事業(農業以外)所得」
⑦ 廃業の事由 廃業する理由を簡潔に 「健康上の理由により廃業」
⑧ 開業・廃業等日 事業を最終的に止めた日(提出日とは別) 最後の取引日・店舗を閉じた日

表は項目の対応を示す参考です。実際の様式は国税庁公式PDFを必ずダウンロードして使用してください。

① 提出先税務署と提出日

書類最上部の「○○税務署長」欄に、自分の納税地を所轄する税務署名を記入します。提出日欄は実際に窓口へ持参する日(または郵送投函日)を西暦または和暦で記入します。納税地と所轄税務署の対応は、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」ページで郵便番号や住所から検索できます。納税地と異なる地域の税務署に提出すると差し戻しになるため、必ず所轄を確認してください。

② 納税地

「納税地」欄では、住所地・居所地・事業所等のうち該当するものにチェックを入れ、郵便番号・住所・電話番号を記入します。原則は住所地(住民票の住所)です。住所と異なる場所で事業を営んでいた場合、開業時に「事業所等」を納税地としていれば、ここも事業所所在地を記入します。

「上記以外の住所地・事業所等」欄には、納税地以外に住所地・事業所がある場合に記入します。納税地として住所地を選び、別途店舗・事務所がある場合は、店舗の所在地をこちらに記入する形です。

③ 氏名・生年月日・個人番号(マイナンバー)

「氏名」「生年月日」「個人番号(マイナンバー)」を記入します。個人番号は12桁すべてを記入し、通知カードまたは個人番号カードを参照して誤記がないか確認します。氏名は戸籍上の正式表記(ふりがな含む)を用います。

④ 職業・屋号

「職業」欄には、廃業時点で営んでいた事業の職業名(例: ライター、ITコンサルタント、飲食店経営、美容師、ECサイト運営、Webデザイナー等)を記入します。「屋号」欄は、屋号を登録していた場合のみ記入します。屋号がない個人事業主は空欄で構いません。

⑤ 届出の区分(廃業にチェック)

「届出の区分」欄では、「廃業」のチェックボックスに〇を付けます。同欄には「事業の引継ぎを受けた場合」や「事業を譲り渡した場合」の選択肢もあり、廃業ではなく事業譲渡で別の方へ承継する場合は「事業を譲り渡した場合」にチェックを入れる別ルートが用意されています。この点は後述の「廃業届を出す前に — 事業譲渡という選択肢」で詳述します。複数事業のうち一部だけをやめる「一部廃業」の場合は、区分の「一部」を選び、廃止する事業名を括弧書きで簡記します。

⑥ 所得の種類

「所得の種類」欄では、廃業対象の事業がどの所得区分に該当するかを記入します。一般的な個人事業主は「事業(農業)所得」または「事業(農業以外)所得」、不動産賃貸業を行っていた場合は「不動産所得」、山林の伐採・譲渡で生じた所得を申告していた場合は「山林所得」を選択します。

⑦ 廃業の事由

「廃業の事由」欄には、なぜ廃業するのかを簡潔に記入します。記入例:

  • 「個人事業の廃業のため」
  • 「事業不振のため廃業」
  • 「健康上の理由により廃業」
  • 「事業を会社に法人化したため(法人成り)」
  • 「事業を○○氏に譲渡したため」

法人成りの場合は、別途個人事業の廃業届と法人の設立届出書を併用します。事業譲渡の場合は譲り渡し相手の氏名(または法人名)を記入することが多く、譲渡契約書と整合する文言を選びましょう。

⑧ 開業日/廃業日

「開業・廃業等日」欄に、廃業日(事業を最終的に停止した日)を記入します。廃業日は「最後の取引日」「店舗を閉じた日」「事業継続を止めた日」など、客観的に特定できる日にしてください。提出日と廃業日は別の概念です。届出期限は、令和8年1月1日以後の廃業なら廃業年分の確定申告期限まで(緩和前は廃業日から原則1か月以内)です。

よくある記入ミス5例

廃業届で実務上よく見られる記入ミスを5つ整理します。

  1. 廃業日と提出日の混同: 廃業日は「事業を実際に止めた日」、提出日は「税務署へ持参・郵送する日」。両者は必ず異なります
  2. 屋号未記入: 屋号を登録していた場合に空欄にすると、税務署側で過去の屋号取引と紐付けにくくなります
  3. 個人番号の漏れ: 個人番号欄を空白にしたまま提出すると差し戻しになるケースがあります
  4. 所轄税務署の誤認: 引越し後に住所変更届を出していない場合、旧住所の税務署へ提出すると差し戻しになることがあります
  5. 届出の区分の選択ミス: 「廃業」と「事業を譲り渡した場合」の使い分けが曖昧なまま「廃業」にチェックすると、譲渡契約相手の住所欄等を埋め忘れ、事後対応が増えることがあります

廃業届はどこに出す — 国税は税務署、都道府県税は別の手続き

国税の廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出先は、納税地を所轄する税務署です。都道府県税(個人事業税など)の届出は、これとは別の手続きで、対象になるか・様式・期限は自治体ごとに違います。 「廃業届 どこに出す」「税務署 廃業届」と調べるときは、この2つを分けて確かめます。

提出先① 税務署(所得税の廃業届)

廃業届本体(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出先は、廃業時点で納税地となっている住所を所轄する税務署です。納税地が住所地である個人事業主の場合、住民票の住所を所轄する税務署が提出先になります。納税地が事業所等の場合は、事業所所在地を所轄する税務署です。

所轄税務署は国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」ページから、郵便番号・住所・地図検索で特定できます。引越しで納税地が変わっている場合は、先に納税地の異動手続きを行い、納税地を切り替えた上で新所轄税務署に廃業届を出す手順となります。なお、廃止する事務所・事業所の所在地が納税地と異なる場合でも、納税地を所轄する税務署長以外の税務署長への提出は不要です(国税庁 A1-5)。

別の手続き:都道府県税(個人事業税など)の届出

個人事業税の対象になる事業を営んでいた場合などは、税務署への廃業届とは別に、都道府県税の届出が必要になることがあります。書類名は東京都などでは「事業開始(廃止)等申告書」ですが、対象になるか・様式・期限は自治体ごとに異なります(例: 東京都は都税事務所が窓口)。廃止後の短い期限が定められていることもあるため、事業所の所在地の都道府県税事務所のサイトで早めに確かめてください。

提出先 提出する書類 税目 提出期限の目安
税務署 個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届本体) 所得税(国税) 廃業年分の確定申告期限まで(令和8年1月1日以後の廃業/緩和前は原則1か月以内)
都道府県税事務所(別の手続き) 自治体の様式(東京都などでは事業開始(廃止)等申告書) 個人事業税など(地方税) 自治体ごとに異なる(各自治体のサイトで確認)

税務署へ廃業届を出しても、都道府県税の手続きが済んだことにはなりません。国税の廃業届とは別に、都道府県税の届出が必要かどうかを自治体のサイトで確かめておくのが安全です。

提出期限 — 廃業年分の確定申告期限まで(2026年〜の現行ルール)

廃業届本体の提出期限は、令和8年(2026年)1月1日以後に廃業した場合、その廃業した日の属する年分の所得税の確定申告期限までとされています(国税庁の手続案内 A1-5)。一般的な暦年課税の個人事業主であれば、廃業した年の翌年3月15日(休日に当たる場合は翌平日)が目安です。これは緩和前の「廃止日から原則1か月以内」というルールが、令和8年1月1日以後の改正で見直されたものです。提出期限の起算・延長の取扱いや、自分の廃業日がどちらのルールに該当するかは、提出時に国税庁公式サイトまたは所轄税務署で最新の取扱いをご確認ください。なお、期限が緩和されても、関連届出書(後述)の事務処理を滞らせないため、廃業後は早めに提出するのが安全です。

なお、期限超過による直接の罰則規定はありませんが、青色申告取りやめ届出書の期限(翌年3月15日まで)や消費税の事業廃止届出書(速やかに)と関連付いた事務処理に遅延が生じ、税務署からの問い合わせや、青色申告承認の取扱いをめぐる事後調整が増える可能性があります。期限超過による具体的な税務上の不利益の有無は、税理士または所轄税務署の個別相談で確認してください。

提出までの5ステップ(手順表)

廃業届を提出するまでの実務手順を5ステップで整理します。

ステップ 作業内容 所要時間目安 注意点
STEP 1 必要書類のリストアップ(廃業届本体+関連届出書を洗い出す) 30分 青色申告か否か、消費税課税事業者か否か、従業員雇用の有無で関連書類が変わる
STEP 2 国税庁公式PDFをダウンロード or 税務署窓口で受領 10分 必ず国税庁公式ドメインから最新版を取得
STEP 3 8項目を記入(PCで入力 or 手書き) 30〜60分 廃業日と提出日の混同・所轄税務署の誤認に注意
STEP 4 税務署へ提出(窓口/郵送/e-Tax)。都道府県税の届出が必要かは別に確認 30分〜1営業日 控え1部と本人確認書類を必ず持参・同梱。都道府県税は自治体ごとに対象・様式・期限を確認
STEP 5 提出事実が分かる記録を保管(受信通知・リーフレット等) 即日 確定申告書類と一括して保管が安全

5ステップを通じて、必要書類確認とPDF入手の事前準備が滑らかに進めば、当日窓口提出は30分程度で完了します。郵送・e-Taxを使う場合は、リーフレットの返送・電子受領通知の確認まで含めて1〜数営業日で完結します。

(補足)廃業届の出し方と収受日付印 — 手順の詳細は提出方法の記事へ

書き終えた廃業届は、所轄税務署の窓口に持参する・郵送する・e-Taxで送信する、のいずれかで提出します。 本記事は書き方が中心のため、出し方は要点だけをまとめます。

収受日付印(収受印)は2025年1月から控えに押されなくなりました

かつては税務署に書類を提出すると、控えに「収受日付印(収受印)」を押して返却してもらえました。しかし、2025年(令和7年)1月から、申告書・届出書等の控えへの収受日付印の押なつは行われていません(国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」、確認日 2026-10-23)。書面で提出する場合は、正本(提出用)のみを提出し、控えは必要に応じて自分で作成・保管します。

提出した事実を残す方法としては、以下が案内されています。

  • 窓口・郵送: 当分の間の対応として、希望者には提出日・税務署名を記載した「リーフレット」が交付・返送されます(郵送の場合は切手を貼った返信用封筒の同封が必要)。ただし税の種類や年分は記載されないため、自分でメモを残しておくと安心です
  • e-Tax: メッセージボックスに格納される「受信通知」で、送信者の氏名、受付番号、受付日時を確認できます

窓口・郵送・e-Taxの要点

  • 窓口: 記入漏れをその場で直せます。マイナンバーを記載した書面を出すときは本人確認書類を提示します。総合窓口の受付時間は、令和8年10月1日から原則9時〜15時です(開庁時間は8時30分〜17時、国税庁 A1-5)
  • 郵送: 正本と本人確認書類の写しを所轄税務署へ送ります。リーフレットが欲しい場合は、切手を貼った返信用封筒を同封します
  • e-Tax: 国税庁の案内では、パソコンのe-Taxソフトで届出書を作成して送信します。本人確認書類の提示や写しの添付は不要です

e-Taxの準備と手順、マイナポータルとの関係、郵送・窓口の注意点、提出期限と提出後の確認は、個人事業主の廃業届の提出方法|e-Tax・郵送・窓口の手続きと期限で詳しく解説しています。廃業届の作成・提出を他人に代理で頼む場合、書類作成の代行は行政書士、税務代理は税理士の業務です。

廃業届と一緒に出す書類 — 青色申告の取りやめ届出書ほか

青色申告で確定申告していた個人事業主が廃業する場合は、廃業届と一緒に「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出するのが一般的です。 「青色申告 廃業届」で検索する方の関心はこの同時提出にあります。状況別の同時提出書類を整理します。

青色申告の取りやめ届出書 — 青色申告だった場合

青色申告で確定申告していた個人事業主が廃業する場合、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出します。提出期限は、取りやめようとする年の翌年3月15日までですが、通常は廃業届と同時に提出する運用が多いです。廃業届本体の期限(令和8年1月1日以後の廃業なら廃業年分の確定申告期限まで/緩和前は原則1か月以内)と書類ごとに期限の建付けが異なる点に注意してください。なお、白色申告だった個人事業主は、この取りやめ届出書の提出は不要です。

自分が青色申告か白色申告か、取りやめ届出書が必要かどうかの最終判定は、税理士または所轄税務署の個別相談(無料)で確認してください。

状況別の同時提出書類リマインド

廃業届と同時に提出を検討すべき関連届出書を、状況別に整理します。

  • 青色申告で確定申告していた場合 → 所得税の青色申告の取りやめ届出書(翌年3月15日まで/通常は廃業届と同時)
  • 消費税の課税事業者だった場合 → 消費税の事業廃止届出書(速やかに)
  • 従業員に給与を支払っていた場合 → 給与支払事務所等の廃止届出書。ただし個人事業主は、廃業届本体(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出すれば別途提出が不要になる扱いがあります(所得税法第229条・第230条)
  • 予定納税が課されている場合 → 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書(第1期7月15日、第2期11月15日まで)
  • インボイス登録事業者だった場合 → 事業廃止届出書(消費税)。事業廃止に伴うインボイス登録の取消しは、登録取消の届出書ではなく事業廃止届出書を提出する扱い

ほとんどの個人事業主は「廃業届本体+青色申告取りやめ届出書」の2点が主軸で、消費税課税事業者・インボイス登録事業者だけが追加書類を要する構造です。自分のケースで何が必要かは税理士または所轄税務署の個別相談で確認してください。

廃業届を出さないとどうなるか — リスクと併せ届出のリマインド

廃業届を出さなくても直接的な罰則規定はありませんが、青色申告承認の取扱い・確定申告書の自動送付・消費税の課税事業者判定など、関連する税務処理で不利益が生じる可能性があります。 廃業した事実があるのに届出を怠ると、税務署側は「事業が継続している」前提で書類を送り続けるため、放置するほど整理が複雑化します。

廃業届を出さない場合に起こり得ること

廃業届を提出せずに事業を実質的に停止した場合、以下のような事象が起こり得ます。

  • 確定申告書の自動送付が止まらない: 翌年以降も税務署から確定申告書類(事業所得用)が送付され続け、「事業を続けているかどうか」の問い合わせが届く可能性があります
  • 青色申告承認の継続判断が宙に浮く: 廃業届と一緒に「青色申告取りやめ届出書」を出さないと、青色申告承認の状態が継続したまま放置される形になります
  • 消費税の課税事業者だった場合の整理: 消費税課税事業者だった場合、「消費税の事業廃止届出書」を出さないと、課税事業者としての義務(消費税の確定申告)が継続している扱いになる可能性があります
  • 都道府県税の手続き漏れ: 自治体で廃止の届出が必要な場合に出していないと、地方税側で事業継続中とみなされる可能性があります
  • 再開業時の手続が複雑化: 廃業から数年後に再度開業する場合、過去の届出履歴が整理されていないと、税務署側で経過確認に時間がかかります

これらは個別の状況により具体的な不利益の有無や程度が異なるため、自分のケースが該当するか不安な場合は、税理士または所轄税務署の個別相談窓口で確認してください。

「罰則がない」と「不利益がない」は別の話

廃業届の不提出に対する直接的な罰則(過料・加算税等)は所得税法の届出書条文には設けられていません。しかし、青色申告承認の取扱い、消費税の課税関係の混乱、住民税・国保保険料の課税ベースとなる所得計算の遅延など、周辺の税務処理で不利益が生じる場合があります。「罰則がない=放置して良い」ではなく、「届出を怠ると周辺手続が連鎖的に滞る」という理解が実態に近いです。

廃業届を出す前に — 「事業譲渡(M&A)」という選択肢を検討する

廃業届は、事業をやめたことを税務署に届け出る手続きです。届け出ること自体で事業資産の価値が消えるわけではありませんが、事業をやめれば、設備や在庫を個別に処分した額は残っても、取引先や固定客を含めた事業そのものの対価は通常付きません。一方、事業を譲渡(M&A)すれば、買い手次第で売却対価(手取り)が手元に残る場合があります。 本セクションは、廃業届を提出する前に「廃業 vs 譲渡」を比較する視点を提供します。

廃業届の届出区分には「事業を譲り渡した場合」もある

廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の「届出の区分」欄には、「廃業」だけでなく「事業を譲り渡した場合」という選択肢も用意されています。手続きの様式そのものが、事業を畳むルートと第三者へ譲り渡すルートの両方を想定しているということです。「廃業」にチェックを入れる前に、譲渡という別ルートが手続き上も存在することを知っておくと、選択の幅が広がります。

廃業と譲渡の違い — どこで分かれるか

廃業と譲渡の最大の違いは、「事業が継続するかどうか」と「売り手の手元に金額が残るかどうか」の2点です。

項目 廃業 事業譲渡(M&A)
事業の継続 完全停止 買い手が引き継いで継続
売り手の手取り 在庫・設備などの処分額(事業そのものの対価は通常付かない) 事業の売却対価が手元に残る場合がある
必要な手続 廃業届+関連届出書 譲渡契約書・引継ぎ・買い手探し
期間 1〜数か月 数か月〜1年程度
取引コスト ほぼゼロ(廃棄費用は別) 仲介手数料等(成約時のみのケースが多い)
屋号・取引先・従業員 消滅 多くの場合、買い手が引継ぎ

数値や期間は案件ごとに大きく異なります。自社の規模・業種・収益性で「廃業の方が早い」「譲渡の方が手元に残る」が変わるため、断定はできません。一般論としては、営業利益が黒字で続いている事業・固定客がいる事業・継続収益のあるWebサイト等は、譲渡で値がつく可能性が相応にあります。

後継者不在でも譲渡可能なケース

「後継者がいない」「家族に継ぐ意思がない」「自分の体力的に続けられない」という状況でも、第三者への譲渡は可能です。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」も、後継者不在による黒字廃業の回避策として第三者承継を位置付けています。具体的に譲渡可能性が高いケース:

  • 継続収益のあるWebサイト・ECサイト・SaaS: ストック収益が見える資産は買い手が値付けしやすい
  • 固定客・常連客のある飲食店・サロン・小売店: 売上の予測可能性が高く、買い手にとって参入リスクが低い
  • 特定資格・営業許可・地域シェアを持つ事業: 買い手が新規取得すると時間とコストがかかる権利系資産がある
  • 法人成りせず個人事業のまま続けてきた長期運営事業: 事業実績の見える化さえできれば、譲渡候補先は意外と多い

逆に、赤字が続き買い手から見て価値の付けようがない事業、資格者の人的属性に強く依存し譲渡しても再現性が低い事業などは、廃業の方が合理的なケースもあります。「廃業 vs 譲渡」のどちらが自社に向いているかは、業種・規模・収益状況・買い手市場の厚みによって変わります。断定的に「譲渡の方が必ず得」とは言えず、両方の選択肢を比較した上で意思決定するのが安全です。

関連記事への誘導 — 廃業 vs 譲渡の手取り比較

廃業した場合の経済的影響と、譲渡した場合の手取りレンジを具体的に比較した記事を別途用意しています。

自社の場合を確認する:売却価格の目安は事業価値を確認するで確かめられます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 廃業届の書き方は? 何を記入すれば良いですか

廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)には、①提出先税務署 ②納税地(住所・電話番号) ③氏名・生年月日・個人番号 ④職業・屋号 ⑤届出の区分(「廃業」にチェック) ⑥所得の種類 ⑦廃業の事由 ⑧廃業日 の8項目を記入します。様式は国税庁公式PDFをダウンロードして使用し、押印は不要です。詳しい記入例は本記事の「廃業届の書き方 — 項目別8ポイント記入例」をご参照ください。本記事はM&AプラットフォームM&A-WEBの「個人事業主の廃業と譲渡」hubの一部です。

Q2. 廃業届はどこに出すのですか

国税の廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は、納税地を所轄する税務署に提出します。これとは別の手続きとして、個人事業税などの都道府県税の届出(東京都などでは「事業開始(廃止)等申告書」)が必要になる場合があります。対象になるか・様式・期限は自治体ごとに違うため、事業所の所在地の都道府県税事務所のサイトで確かめてください。所轄税務署は国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」ページから郵便番号・住所で検索できます。

Q3. 「事業廃止届出書」と「廃業届」は同じものですか

別物です。すべての個人事業主が出す「廃業届」の正式名称は所得税の「個人事業の開業・廃業等届出書」(所得税法第229条)です。一方「事業廃止届出書」は消費税の書類(消費税法第57条第1項第3号)で、消費税の課税事業者だった個人事業主だけが追加で提出します。用紙も記入欄も別で、廃業届は届出の区分で「廃業」を選び廃業日などを書くのに対し、事業廃止届出書は「事業廃止年月日」「納税義務者となった年月日」などを書きます。白色申告で消費税の免税事業者だった方は、事業廃止届出書の提出は不要となるのが一般的です。自分が課税事業者に該当するかの判定は税理士または所轄税務署の個別相談でご確認ください。

Q4. 消費税の事業廃止届出書はどう書けばよいですか

事業廃止届出書は、提出者の納税地・氏名などを書いたうえで、「事業廃止年月日」に事業を廃止した年月日、「納税義務者となった年月日」に先に提出した消費税課税事業者選択届出書または消費税課税事業者届出書の「適用開始課税期間」の初日、「参考事項」に参考となる事項を記入します(国税庁「事業廃止届出書の記載要領等」)。控えを保管する場合は、控えに個人番号を書かないよう注意してください。所得税の廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)とは別の用紙です。自分が提出の対象になるかの判定は、税理士または所轄税務署でご確認ください。

Q5. 廃業届の提出に必要なものは何ですか

廃業届の提出には、廃業届本体(個人事業の開業・廃業等届出書)と本人確認書類が必要です。本人確認はマイナンバーカード1枚で番号確認・身元確認の両方が可能で、ない場合はマイナンバー記載の住民票等と運転免許証等の組み合わせになります。窓口では提示、郵送では写しの添付が求められます。なお、2025年1月から税務署の収受日付印(収受印)は控えに押されなくなったため、郵送時は切手を貼った返信用封筒を同封すると、提出日・税務署名を記載したリーフレットが返送されます。

Q6. 青色申告をしていた場合、廃業届と一緒に出す書類はありますか

青色申告で確定申告していた個人事業主が廃業する場合は、廃業届と一緒に「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出するのが一般的です。提出期限は取りやめようとする年の翌年3月15日までですが、通常は廃業届と同時に税務署へ提出します。白色申告だった方は提出不要です。自分が取りやめ届出書を提出すべきかどうかの個別判定は、税理士または所轄税務署の個別相談(無料)でご確認ください。

Q7. 自営業の廃業届と個人事業主の廃業届は違うのですか

同じです。「自営業」も「フリーランス」も、税務署に開業届を出して事業所得を申告してきた人は税法上すべて「個人事業主」として扱われます。したがって自営業者が出す廃業届も、個人事業主が出す廃業届も、同じ「個人事業の開業・廃業等届出書」です。書類・提出先・記入方法に違いはありません。

Q8. 廃業届はe-Taxで出せますか

はい、廃業届はe-Tax(国税電子申告・納税システム)で提出できます。国税庁の案内では、パソコンでe-Taxソフトを使って届出書を作成し、e-Taxで送信します。e-Taxで出す場合は本人確認書類の提示や写しの添付は不要で、送信後はメッセージボックスの受信通知で受付番号・受付日時を確認できます。準備するもの・手順・マイナポータルとの関係は、個人事業主の廃業届の提出方法|e-Tax・郵送・窓口の手続きと期限で解説しています。

Q9. 廃業届を出さないとどうなりますか

廃業届を出さなくても直接的な罰則規定はありません。ただし、確定申告書の自動送付が止まらない、青色申告承認の継続関係が宙に浮く、消費税の課税事業者だった場合の事業廃止届出書との整合が崩れる、都道府県税事務所への申告漏れで地方税側に事業継続中とみなされる、再開業時に過去の届出履歴の整理に時間がかかる、などの不利益が生じる可能性があります。「罰則がない=放置して良い」ではなく、廃業した事実があれば速やかに届け出るのが安全です。具体的な不利益の有無は税理士または所轄税務署の個別相談で確認してください。

Q10. 廃業届を出す前に検討すべきことはありますか

廃業届を出す前に「事業譲渡(M&A)」という選択肢を検討する余地があります。廃業では、設備や在庫などを個別に処分した額は手元に残りますが、取引先や固定客を含めた事業そのものの対価は通常付きません。譲渡すれば、買い手次第で事業の売却対価が手元に残る場合があります。継続収益のあるWebサイト、固定客のある飲食店、特定資格・許認可を持つ事業などは譲渡可能性が高い傾向があります。廃業届の届出区分にも「事業を譲り渡した場合」が用意されています。詳細は関連記事廃業 vs 譲渡 — 手元に残る金額の比較と、親hub個人事業主の廃業と譲渡の全体像をご覧ください。

まとめ — 廃業届の3原則と「出す前の譲渡」検討

廃業届を出す前に押さえておきたい3原則は、①PDFは国税庁公式から最新版を取得する、②期限内(令和8年1月1日以後の廃業なら廃業年分の確定申告期限まで/緩和前は原則1か月以内)に税務署へ提出し、都道府県税の届出が必要かを自治体ごとに確かめる、③提出する前に「事業譲渡(M&A)」の選択肢を比較検討する、の3つです。 廃業届の提出は事業の終わらせ方の一形態に過ぎず、選択肢全体を俯瞰した上で意思決定することが、後悔の少ない結末につながります。

廃業届の手続まとめ(5ステップ再掲)

  1. 必要書類リストアップ — 廃業届本体+青色申告取りやめ届出書(青色申告の場合)+消費税の事業廃止届出書(課税事業者の場合)+給与支払事務所等の廃止届出書(従業員雇用主の場合・個人事業主は本体で代替可)
  2. PDF入手 — 国税庁公式サイトから「個人事業の開業・廃業等届出書」PDFをダウンロード
  3. 記入 — 8項目(提出先税務署・納税地・氏名・職業・屋号・届出の区分・廃業の事由・廃業日)を、本記事の「廃業届の書き方」の記入例を参照しながら正確に記入
  4. 提出 — 税務署へ(窓口/郵送/e-Tax)。所得税の届出期限は令和8年1月1日以後の廃業なら廃業年分の確定申告期限まで(緩和前は原則1か月以内)。都道府県税の届出は別の手続きで、対象・様式・期限を自治体のサイトで確認
  5. 記録の保管 — 提出事実が分かる記録(e-Tax受信通知・リーフレット等)を、確定申告書類と一括保管

専門家を使い分けるべき場面

廃業届の手続では、論点に応じて専門家を使い分けることが重要です。

  • 個別の課税関係・節税判断 → 税理士、または所轄税務署の個別相談(無料)
  • 廃業届・関連届出書の代理作成・代理提出 → 行政書士
  • 取引相手とのトラブル・法律相談 → 弁護士
  • 法人の解散・清算登記 → 司法書士
  • 事業譲渡(M&A)の買い手探し → M&Aプラットフォーム(M&A-WEB)

本記事は手続的な書式記入指南に限定しており、個別案件のご相談は各士業・専門サービスへお願いいたします。

関連記事 — 内部リンク集

廃業届の周辺テーマを深掘りしたい場合は、以下の関連記事をご覧ください。

廃業届を出す決断は、出してしまえば元に戻せません。本記事で書き方を理解した上で、提出前にもう一度、「譲渡で手元に残る金額」を確認する時間を取ることを編集部としてお勧めいたします。

本記事の専門領域と境界: 本記事は、廃業届という公的書式の記入指南と提出手続の一般情報提供に限定しています。個別の税務判断(特定の取引が課税対象か、消費税の事業廃止届出書の提出時期、青色申告の取扱い、みなし譲渡の有無等)は税理士法により税理士の独占業務、廃業届の代理作成・代理提出は行政書士法により行政書士の独占業務、法人の解散登記は司法書士の独占業務、個別の法律相談は弁護士法により弁護士の独占業務です。本記事の解説は一般情報提供であり、個別案件は各士業有資格者または所轄税務署・都道府県税事務所の個別相談窓口へご相談ください。収受日付印の押なつ廃止やe-Taxの様式・対応状況は年次で更新されるため、提出時には国税庁公式サイトで最新情報をご確認ください。

M&Aを知るに戻る