この記事の目次
個人事業主の廃業届とは、事業を廃止する個人事業主が、廃業した年分の所得税の確定申告期限までに納税地の所轄税務署へ提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」のことです。 開業時と同じ様式を使い、「届出の区分」欄で「廃業」にチェックを入れて提出します。本記事は中小企業のM&AプラットフォームM&A-WEBの編集視点から、書き終えた廃業届をどう出すかという提出の手続きに的を絞り、①e-Taxで提出する方法、②郵送・窓口での出し方と必要なもの、③マイナポータルとの関係、④提出期限、⑤提出後に受付を確認する方法を整理します。
結論先出し:出し方は「e-Tax・郵送・窓口の3ルート」です。国税庁の手続案内では、e-Taxで出す場合はパソコンのe-Taxソフトで届出書を作成して送信し、本人確認書類の提示・添付は不要です。書面(郵送・窓口)で出す場合は、マイナンバーを記載するため本人確認書類の提示または写しの添付が必要です(国税庁 A1-5)。2025年1月からは控えに収受日付印が押されないため、受付の記録はe-Taxの受信通知か、書面提出時のリーフレットで残します。
本記事のスコープと前提:本記事は個人事業主の公的書式の提出手順に関する一般情報です。個別の課税判定(自分が課税事業者か、青色申告を取りやめるべきか等)は税理士または所轄税務署の個別相談、廃業届の代理提出は行政書士、法人の解散・清算登記は司法書士、個別の法律相談は弁護士の領域です。各士業の境界を踏まえてご利用ください。
廃業届の「書き方」を詳しく知りたい方へ — 8項目の記入例・よくある記入ミス・様式の入手先、消費税の「事業廃止届出書」との違いは、別記事個人事業主の廃業届の書き方・記入例|提出先と記入時の注意点にまとめています。本記事では記入方法は要点に留め、提出の手続き(e-Tax・郵送・窓口・期限・提出後の確認)に集中します。
廃業届を出す前に — もし「事業を畳む」前に「譲り渡す」選択肢を比較したい場合は、関連記事廃業 vs 譲渡|手元に残る金額の比較を先にご覧ください。後継者不在でも譲渡可能なケースが少なくありません。
個人事業主の廃業届とは — 正式名称・対象・提出先
個人事業主の廃業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、所得税法第229条に基づき、納税地の所轄税務署へ提出する書類です。提出期限は、令和8年(2026年)1月1日以後の廃業はその年分の所得税の確定申告期限まで(緩和前は原則1か月以内)となります。最新の取扱いは国税庁で確認してください。 開業時と廃業時で同じ様式(兼用フォーム)を使い、「届出の区分」欄で「廃業」を選んで提出します。提出先は納税地を所轄する税務署長で、廃止する事務所・事業所の所在地が納税地と異なる場合でも、それ以外の税務署長への提出は不要です(国税庁 A1-5)。「個人事業の廃業届」「個人事業 廃業届」と呼ばれることもありますが、いずれも同じ書類を指します。
対象になる人 — 個人事業主・フリーランス・副業まで
廃業届の提出対象は、税務署に開業届を出して事業所得を生む事業を営み、それを廃止する個人事業主です。具体的には、ECサイト運営・Webデザイナー・ライター・コンサルタント・士業・飲食店経営・美容師・整体師などが該当します。サラリーマンが副業として開業届を出していた場合も対象です。
一方、法人(株式会社・合同会社)の解散は本届出書の対象外です。法人の場合は法務局での解散登記・清算結了登記が必要となり、司法書士または弁護士の領域です。本記事は個人事業主に特化しているため、法人解散の手続きは扱いません。
廃業届を出すと何が起こるか
廃業届は、税務署が「この個人事業主はもう事業を行っていない」と把握するための手続きです。提出により、翌年以降の確定申告書の自動送付が止まり、屋号・連絡先のステータスが税務署側で「廃業済み」に切り替わります。課税関係(消費税・青色申告承認など)の整理も、関連届出書とセットで進む形になります。
書き方の要点は8項目 — 記入例は書き方の記事へ
個人事業主の廃業届の書き方は、①提出先税務署 ②納税地 ③氏名・生年月日・個人番号 ④職業・屋号 ⑤届出の区分(廃業に〇) ⑥所得の種類 ⑦廃業の事由 ⑧廃業日の8項目を記入するのが基本です。本記事は提出の手続きに絞るため、各項目の記入例・よくある記入ミス・様式の入手先は、別記事個人事業主の廃業届の書き方・記入例|提出先と記入時の注意点で解説しています。 ここでは書き方には深入りせず、出し方(提出ルート)・必要なもの・期限・提出後の確認に焦点を当てます。
廃業届の提出方法は3つ — e-Tax・郵送・窓口と必要なもの
個人事業主の廃業届の出し方は、e-Tax(国税電子申告・納税システム)でオンライン提出する方法・郵送する方法・税務署窓口に持参する方法の3ルートです。 どのルートを選ぶかで、準備する「必要なもの」が変わります。まず3ルートの違いを比べ、ルート別の必要なものを表で確認します。
3ルートの比較
| 提出方法 | 受付の記録 | 主なメリット | 主なデメリット |
|---|---|---|---|
| e-Tax | 受信通知(氏名・受付番号・受付日時) | 税務署へ行かずに出せる。本人確認書類の提示・添付が不要 | 初回はe-Taxソフトのインストールや電子証明書の準備が必要。Macでは使えない |
| 郵送 | リーフレットの返送(返信用封筒を同封した場合) | 平日に窓口へ行けなくても出せる | 受付の記録が届くまで時間がかかる |
| 窓口持参 | リーフレットの交付(希望者) | 記入漏れをその場で確認・訂正できる | 平日の受付時間に行く必要がある |
出し方ルート別の「必要なもの」チェック
個人事業主が廃業届を出すときに、ルート別に準備する必要なものは次のとおりです。
| 出し方 | 必要なもの | 控え(提出の証跡) |
|---|---|---|
| e-Tax(オンライン) | 利用者識別番号・電子証明書(マイナンバーカード等)、e-Taxソフトを入れたWindowsパソコンとカードの読み取り環境 | 送信後にメッセージボックスへ届く受信通知(PDF保存・印刷) |
| 郵送 | 廃業届の原本、本人確認書類の写し、返信用封筒(任意) | 提出前に自分でコピーを取って保管。返信用封筒同封で受付の事実を示すリーフレットの返送を受けられる場合あり |
| 窓口持参 | 廃業届、本人確認書類(提示) | 提出前に自分でコピーを取って保管 |
必要なものの注意(2025年〜の重要変更):従来は紙で提出すると控えに「収受日付印(収受印)」が押されて返却されましたが、収受日付印の押なつは令和7年(2025年)1月1日提出分から廃止されています。窓口でも郵送でも、控えに収受印は押されません。提出した日付・事実を残したい場合は、提出前に自分でコピーを取るか、受信通知がデータで残るe-Taxを利用するのが確実です。書面でマイナンバーを記載した届出書を出すときは、その都度、本人確認書類の提示または写しの添付が必要で、e-Taxの場合は不要です(国税庁 A1-5)。
個人事業主にe-Taxが向くケース
平日の日中に税務署へ行きにくいフリーランス・副業者には、e-Taxが有力な選択肢になります。e-Taxはメンテナンス時間を除き24時間利用でき、提出記録も受信通知として残ります。ただし国税庁の案内では、廃業届はパソコンのe-Taxソフトで作成する手続きで、e-TaxソフトはWindows用です。Macしかない場合や準備が間に合わない場合は、郵送・窓口を選びます。次章で具体的な手順を解説します。
個人事業主が廃業届を郵送で出す場合の実務
廃業届を郵送で出す個人事業主は、廃業届の原本を納税地の所轄税務署へ送付します。 2025年1月以降は控えに収受印が押されないため、提出前に自分でコピーを取って保管するのが基本です。受付の事実を示すリーフレット(提出日・税務署名が記載されたもの。当分の間の対応とされています)の返送を希望する場合は、宛名・切手を記入した返信用封筒を同封します。マイナンバーを記載した書面を出すため、本人確認書類の写しも同封します。郵送の場合、提出日として扱われる日付の考え方(消印日か到達日か等)は窓口・郵送で異なる場合があるため、期限ギリギリの郵送は避け、余裕を持って送付してください。送った記録を残したい場合は、追跡できる送り方を選ぶと安心です。
窓口に持参する場合の受付時間
税務署の総合窓口の受付時間は、令和8年10月1日から原則として9時から15時までです。受付時間外でも開庁時間内(8時30分から17時まで)であれば手続きはできますが、国税庁は可能な限り受付時間内の来署を求めています。土日祝日と年末年始(12月29日から1月3日)は執務を行っていません(国税庁 A1-5)。窓口では本人確認書類を提示し、受付の記録が欲しい場合はリーフレットの交付を希望してください。
e-Taxで廃業届を提出する方法 — 準備と手順
国税庁の手続案内(A1-5)では、廃業届をe-Taxで出す場合、「パソコンからe-Taxソフトで届出書を作成の上、e-Taxにより提出」するよう案内しています。 流れは「事前準備(利用者識別番号・電子証明書・e-Taxソフト)→ 届出書の作成 → 電子署名 → 送信 → 受信通知の確認」です。e-Taxの画面やソフトは更新されるため、最新の操作はe-Tax公式でご確認ください。
事前準備 — 利用者識別番号・電子証明書・e-Taxソフト
- 利用者識別番号:e-Taxを初めて使う場合は取得が必要です。「e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」から取得できます(国税庁 A1-5)。
- 電子証明書:送信するデータに電子署名を付けるため、マイナンバーカードなどの電子証明書を用意します(e-Taxソフトについて)。
- e-Taxソフト(ダウンロード型):e-Taxソフトのダウンロードコーナーから入手し、ルート証明書等と税目プログラムをインストールします。推奨環境はWindows 11で、Mac OSでは利用できません。
- ID・パスワード方式の注意:ID・パスワード方式のID・パスワードは、令和7年(2025年)10月1日より新規発行が停止されています(e-Tax公式)。これから利用を始める個人事業主は、マイナンバーカード方式が基本になります。
スマートフォンやWEB版で出せるか:インストール不要の「e-Taxソフト(WEB版)」で作成できる手続の一覧(パソコン用・スマートフォン用)には、2026年10月23日時点で「個人事業の開業・廃業等届出」は載っていません(作成可能な手続【パソコン】・【スマートフォン】)。スマートフォンだけで済ませる前提にはせず、提出前にe-Tax公式で対応状況を確かめてください。
Step 1 — e-Taxソフトで「個人事業の開業・廃業等届出書」を作成
e-Taxソフトを起動し、申請・届出の作成から「個人事業の開業・廃業等届出書」を選びます。この届出書は、e-Taxで提出できる申請・届出手続(申告所得税関係)のひとつとして用意されています(e-Tax 申請・届出手続)。
Step 2 — 届出区分「廃業」・廃業日・廃業の事由を入力
入力画面で、届出の区分を「廃業」に設定し、廃業日(事業を実際に停止した日)・廃業の事由・所得の種類などを入力します。入力する項目は紙の様式と同じです。各欄の考え方は個人事業主の廃業届の書き方・記入例|提出先と記入時の注意点を参照してください。
Step 3 — 電子署名
入力が終わったら、作成したデータに電子署名を付けます。マイナンバーカード方式では、ここでカードを読み取って署名します。e-Taxで提出する場合は、本人確認書類の提示や写しの添付は不要です。
Step 4 — 送信
署名したデータをe-Taxで送信します。e-Taxはメンテナンス時間を除き24時間利用できますが、大型メンテナンスで終日使えない日もあるため、利用可能時間のカレンダー(e-Taxの利用可能時間)を確認してから送ると安心です。
Step 5 — メッセージボックスで受信通知を確認
送信が完了すると、e-Taxのメッセージボックスに受信通知が格納されます。受信通知では、送信者の氏名又は名称、受付番号、受付日時を確認できます(国税庁 収受日付印の押なつについて)。受付番号が必要になることがあるため、送信データとあわせて保存しておきましょう。
注意点 — 初期設定の余裕と期限ギリギリ回避
e-Taxソフトのインストールや電子証明書の準備に、初回は時間がかかる場合があります。電子証明書(マイナンバーカードの署名用電子証明書)には有効期限があるため、切れている場合は先に更新が必要です。提出期限ギリギリではなく、余裕を持って準備するのが安全です。
同時提出書類のe-Tax送信について
同時提出書類のうち、青色申告の取りやめ届出書・事業廃止届出書(消費税)などは、e-Taxの申請・届出手続として用意されている様式もあります。対応様式かどうか・まとめて送信できるかはe-Tax上で都度確認してください(年次で対応状況が変わる可能性があるため、断定はできません)。各書類の該当条件は後述のチェックリストで整理します。
マイナポータルとの関係 — 廃業届を直接出せるか
マイナポータルは、e-Taxにログインするための入口として使えます。 e-Taxの案内では、マイナポータルの「外部サイトとの連携」機能でe-Taxと連携すると、利用者識別番号と暗証番号を入力せずにe-Taxにログインし、メッセージボックス等を確認できるとされています(e-Tax「マイナポータルとの連携」)。廃業届を送ったあとに受信通知を確かめるときにも使えます。
一方で、マイナポータルの画面で廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を作って直接提出できる、という案内は、国税庁・e-Taxの公式ページでは確認できませんでした(2026年10月23日時点)。国税庁の手続案内(A1-5)が示す電子提出の方法は、パソコンのe-Taxソフトで作成してe-Taxで送る形です。マイナポータル経由でログインできるe-Taxソフト(WEB版)でも、作成できる手続の一覧に廃業届は載っていません。「マイナポータルで廃業届を出す」と考えるより、「e-Taxで出し、マイナポータルはログインや受信通知の確認に使う」と整理しておくのが安全です。
- 法人成りの場合:国税庁「廃業する場合」では、個人事業を新しく設立した法人に引き継ぐ場合の法人設立届出書などは、マイナポータルを利用する「法人設立ワンストップサービス」が便利と案内されています。これは法人側の届出の話で、個人事業の廃業届そのものとは別です。
- 都道府県税事務所への申告:個人事業税の事業廃止の申告をオンラインで受け付けているかは、自治体ごとに確認が必要です。マイナポータルの「ぴったりサービス」では地域別に申請・届出を検索でき、一部の手続はオンラインで申請を完了できます(ぴったりサービスについて)。
提出期限 — 廃業届と同時提出書類の期限
廃業届本体の提出期限は、令和8年1月1日以後の廃業はその年分の確定申告期限まで(緩和前は原則1か月以内。最新は国税庁で確認)ですが、同時提出書類は書類ごとに期限が異なるため、期限のズレを時系列で押さえることが重要です。 個人事業主が混同しやすいポイントを整理します。なお、提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、その翌日が期限となります(国税庁 A1-5)。
同時提出書類の期限を時系列で整理
廃業届本体は令和8年1月1日以後の廃業はその年分の確定申告期限まで(緩和前は原則1か月以内。最新は国税庁で確認)ですが、青色申告の取りやめ届出書は翌年3月15日まで、消費税の事業廃止届出書は「速やかに」と、期限の性質が異なります。
| 書類 | 期限の性質 | 起算・期日 |
|---|---|---|
| 廃業届本体 | 期日あり | 令和8年1月1日以後の廃業はその年分の確定申告期限まで(緩和前は原則1か月以内)。最新は国税庁で確認 |
| 青色申告の取りやめ届出書 | 期日あり | 取りやめる年の翌年3月15日まで |
| 消費税の事業廃止届出書 | 速やかに | 事由が生じたら速やかに |
| 予定納税の減額申請書 | 期日あり | 第1期7月15日 / 第2期11月15日 |
| 源泉所得税の納付(従業員雇用時) | 期日あり | 廃業日(最後の支払日)の翌月10日まで |
「廃業届本体だけ早く出して、同時提出書類を忘れる」というパターンが起こりやすいため、廃業を決めた段階で次章のチェックリストに沿って必要書類を一括で洗い出すのが安全です。
個人事業主に多いミス — 廃業日と提出日の混同・所轄の誤認
廃業日は「事業を実際に止めた日」、提出日は「税務署へ持参・郵送・送信する日」です。両者は別の概念で、令和8年1月1日以後の廃業はその年分の確定申告期限までに届け出ます(緩和前は原則1か月以内。最新は国税庁で確認)。また、引越しで納税地が変わっているのに旧住所の税務署へ出してしまうミスも個人事業主に多く見られます。納税地が変わっている場合は、先に納税地の異動手続きを行ってから廃業届を提出します。
期限超過の扱い
廃業届の期限超過に対する直接の罰則規定は所得税法の届出条文には設けられていませんが、青色申告の取扱いや消費税の事務処理など、関連手続が連鎖的に滞る可能性があります。「罰則がない=放置してよい」ではなく、廃業日から速やかに提出するのが安全です。具体的な税務上の影響の有無は、税理士または所轄税務署の個別相談で確認してください。
(補足)廃業届と一緒に出す書類 — チェックリスト
個人事業主が廃業届と同時に提出を検討する書類は、青色申告の取りやめ届出書・消費税の事業廃止届出書・予定納税額の減額申請書・インボイス登録の取消届出書などです。 どれが必要かは、青色申告か否か・消費税の課税事業者か否か・従業員雇用の有無・インボイス登録の有無といった条件で変わります。まず一覧で全体像を把握し、その後に重点書類を個別に解説します。
同時提出書類チェックリスト(該当条件 × 期限 × 提出先 × e-Tax可否)
| 書類名 | 該当条件 | 提出期限 | 提出先 | e-Tax |
|---|---|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届本体) | すべての廃業 | 令和8年1月1日以後の廃業はその年分の確定申告期限まで(緩和前は原則1か月以内)。最新は国税庁で確認 | 納税地の所轄税務署 | ✓ |
| 所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 青色申告で確定申告していた場合 | 取りやめる年の翌年3月15日まで | 納税地の所轄税務署 | ✓ |
| 消費税の事業廃止届出書 | 消費税の課税事業者だった場合 | 事由が生じたら速やかに | 納税地の所轄税務署 | ✓ |
| 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書 | 予定納税があり廃業で所得が大幅減になる見込みの場合 | 第1期7月15日 / 第2期11月15日まで | 納税地の所轄税務署 | △ |
| 適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める届出書 | インボイス登録事業者だった場合 | 取消しを求める課税期間の初日から起算して15日前の日まで | 納税地の所轄税務署 | △ |
e-Tax可否の「△」は、対応状況が様式・時期により変わる可能性がある書類です。提出時にe-Tax上で対応様式を確認してください。
なお、従業員に給与を支払っていた個人事業主の「給与支払事務所等の廃止届出書」については、廃業届本体(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出すれば、別途の提出が不要になる扱いがあります。この点は後述の重点解説で詳しく触れます。
青色申告・消費税の届出(要点)
- 青色申告だった場合:「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を、取りやめようとする年の翌年3月15日(その年分の確定申告期限)までに出します。廃業届本体と期限の建付けが異なる点に注意してください(国税庁 廃業する場合)。
- 消費税の課税事業者だった場合:「消費税の事業廃止届出書」を事由が生じたら速やかに出します(国税庁 D1-14)。この届出書を出すと、消費税課税事業者選択不適用届出書などの不適用届出も併せて提出されたものとして扱われ、事業廃止に伴うインボイス登録の取消しも、登録取消しの届出書ではなくこの届出書で行う扱いです。用紙・記入欄は所得税の廃業届とは別で、記入欄は書き方の記事で整理しています。
税理士法配慮:自分が青色申告の取りやめ届出書や消費税の事業廃止届出書を出す対象か、廃止年の消費税申告が必要かといった個別の判定は、税理士または所轄税務署の個別相談で確認してください。
給与支払事務所等の廃止届出書 — 従業員を雇っていた場合(個人事業主の特例)
従業員に給与を支払っていた事業者は、本来「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を、廃止の事実があった日から1か月以内に提出します。
ただし、個人事業主の場合は「個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届本体)」を提出すれば、この給与支払事務所等の廃止届出書を別途提出する必要はありません(所得税法第229条・第230条、国税庁 A2-7)。廃業届本体に給与支払事務所の廃止が含まれる扱いになるためです。
ただし、廃止届が不要でも、源泉所得税の納付義務は別途残ります。最後に支払った給与等の源泉所得税は、原則として廃業日(最後の支払日)の翌月10日までに納付する必要があります(納期の特例を受けていた場合の取扱いを含め、詳細は所轄税務署で確認してください)。従業員を雇っていた個人事業主は、年末調整・退職金の手続きなど別の実務も発生するため、不明点は税理士または所轄税務署の個別相談で確認してください。
その他
予定納税が課されていて廃業により所得が大幅に減る見込みの場合は「予定納税額の減額申請書」が論点になります。自分のケースで何が必要かは、税理士または所轄税務署の個別相談で確認してください。
提出後の確認 — 受付の記録と残る手続き
廃業届を出したら、「受け付けられた記録」を残し、同時に出すべき書類と、必要な場合は都道府県税の届出が済んでいるかを確かめます。 2025年(令和7年)1月から、税務署は申告書・届出書等の控えに収受日付印を押していません(国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」)。
| 出し方 | 受付の記録 | 確認すること |
|---|---|---|
| e-Tax | メッセージボックスの受信通知(氏名・受付番号・受付日時) | 受信通知と送信データを保存する。マイナポータル連携でログインして確認することもできる |
| 郵送 | 返信用封筒を同封した場合に返送されるリーフレット(提出日・税務署名) | リーフレットが届いたら、自分で作った控えと一緒に保管する |
| 窓口 | 希望者に交付されるリーフレット(提出日・税務署名) | その場で受け取り、控えと一緒に保管する |
リーフレットは当分の間の対応とされ、税の種類や年分は書かれないため、何の書類をいつ出したかを控えにメモしておくと後で確かめやすくなります。あわせて、次の点も確認してください。
- 青色申告の取りやめ届出書・消費税の事業廃止届出書など、該当する同時提出書類を出したか(前章のチェックリスト)
- 都道府県税(個人事業税など)の届出が必要な場合、済ませたか。国税の廃業届とは別の手続きで、対象・様式・期限は自治体のサイトで確認
- 従業員がいた場合、最後に支払った給与の源泉所得税を納付したか
廃業届を出す前に — 譲渡可否の最終チェック
廃業届を出すこと自体で事業資産の価値が消えるわけではありませんが、事業をやめれば、取引先や固定客を含めた事業そのものの対価は通常付きません。一方、事業を譲渡(M&A)すれば、買い手次第で売却対価が手元に残る場合があります。 個人事業主が廃業届を出す前に、一度だけ譲渡可否を確認する視点を提供します。廃業全体の選択肢を俯瞰したい場合は、親hub記事個人事業主の廃業と譲渡の全体像もご覧ください。
廃業届の届出区分には「事業を譲り渡した場合」もある
廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の「届出の区分」欄には、「廃業」だけでなく「事業を譲り渡した場合」という選択肢も用意されています。つまり、手続きの様式そのものが、事業を畳むルートと第三者へ譲り渡すルートの両方を想定しています。「廃業」にチェックを入れる前に、譲渡という別ルートが手続き上も存在することを知っておくと、選択の幅が広がります。
譲渡可能性が相応にあるケース(条件依存)
すべての事業が譲渡で売れるわけではありませんが、次のような条件が揃う場合、廃業ルートとは大きく異なる結果になり得ます。
- 継続収益のあるWebサイト・ECサイト・SaaS:ストック収益が見える資産は買い手が値付けしやすい傾向
- 固定客・常連客のある飲食店・サロン・小売店:売上の予測可能性が高く、買い手の参入リスクが低い傾向
- 特定資格・営業許可・地域シェアを持つ事業:買い手が新規取得すると時間とコストがかかる権利系資産がある場合
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」関連資料でも、後継者不在による黒字廃業の回避策として第三者承継が位置づけられています。「廃業より譲渡が必ず得」と断定はできませんが、条件次第で手元に残る金額が変わるため、提出前の比較が現実的です。
順序は「先に診断、後に廃業届」
廃業届を出してしまうと許認可・取引契約が整理され、その後に譲渡を試みても価値が大きく減じる場合があります。「先に譲渡可否を診断し、不成立確定後に廃業届を準備する」という順序が、選択肢を確保する実務的な進め方です。廃業コストと譲渡時の手取りレンジを業種別に比較した廃業 vs 譲渡|手元に残る金額の比較も、判断材料として参照してください。事業譲渡そのものの基礎はサイト売買とは|事業譲渡の入門ガイド、概算査定の方法は事業の概算査定方法ガイドで整理しています。
自社の場合を確認する:売却価格の目安は事業価値を確認するで確かめられます。
よくある質問(FAQ)
個人事業主の廃業届の出し方を教えてください
個人事業主の廃業届の出し方は、e-Tax・郵送・税務署窓口持参の3ルートがあります。いずれも「個人事業の開業・廃業等届出書」を納税地の所轄税務署へ提出します(提出期限は、令和8年1月1日以後の廃業はその年分の確定申告期限まで。緩和前は原則1か月以内で、最新は国税庁で確認)。e-Taxは国税庁の案内ではパソコンのe-Taxソフトで作成して送信し、本人確認書類の提示・添付は不要です。郵送・窓口の場合はマイナンバーを記載するため本人確認書類の提示または写しの添付が必要で、2025年から控えに収受印が押されなくなったため、自分で控えを取って保管するのが安全です。
個人事業主の廃業届をe-Taxで出すやり方を教えてください
国税庁の案内では、パソコンのe-Taxソフトで届出書を作成し、e-Taxで提出します。流れは、①事前準備(利用者識別番号・マイナンバーカードなどの電子証明書・e-Taxソフトのインストール。e-TaxソフトはWindows用でMacでは使えません) ②e-Taxソフトで「個人事業の開業・廃業等届出書」を作成し、届出区分「廃業」と廃業日・事由を入力 ③電子署名 ④送信 ⑤メッセージボックスで受信通知(受付番号・受付日時)を確認・保存、の5ステップです。ID・パスワード方式は令和7年10月1日より新規発行が停止されています。画面やソフトは更新されるため、最新の操作はe-Tax公式サイトでご確認ください。
個人事業主の廃業届に必要なものは何ですか
必要なものは出し方によって変わります。e-Taxの場合は、利用者識別番号・電子証明書(マイナンバーカード等)と、e-Taxソフトを入れたWindowsパソコンが必要です。郵送の場合は廃業届の正本と本人確認書類の写し(受付の記録が欲しい場合は切手を貼った返信用封筒も)、窓口の場合は廃業届と本人確認書類を用意します。2025年1月以降は控えに収受日付印が押されなくなったため、提出前に自分で控えを取って保管しておくことをおすすめします。なお、廃業届の記入方法(書き方の8項目)は個人事業主の廃業届の書き方・記入例|提出先と記入時の注意点をご参照ください。
個人事業主の廃業届は郵送で出せますか
はい、廃業届は郵送で出せます。廃業届の正本と本人確認書類の写しを納税地の所轄税務署へ送付します。2025年1月以降は控えに収受印が押されないため、提出前に自分で控えを取って保管してください。提出日・税務署名を記載したリーフレット(当分の間の対応)の返送を希望する場合は、宛名・切手を記入した返信用封筒を同封します。提出日として扱われる日付の考え方があるため、期限ギリギリの郵送は避け、余裕を持って送付するのが安全です。提出の記録を確実に残したい場合は、受信通知がデータで残るe-Taxの利用も検討してください。
マイナポータルから廃業届を提出できますか
マイナポータルは、「外部サイトとの連携」でe-Taxと連携すると、利用者識別番号と暗証番号を入力せずにe-Taxへログインし、メッセージボックス等を確認できる入口として使えます。一方、マイナポータルの画面で廃業届を作って直接提出できるという案内は、国税庁・e-Taxの公式ページでは確認できませんでした(2026年10月23日時点)。国税庁の案内する電子提出は、パソコンのe-Taxソフトで作成してe-Taxで送る方法です。提出前にe-Tax公式で最新の対応状況を確かめてください。
廃業届を出したあと、受け付けられたことはどう確認しますか
e-Taxで出した場合は、メッセージボックスに格納される受信通知で、送信者の氏名、受付番号、受付日時を確認できます。郵送・窓口の場合、2025年1月から控えに収受日付印は押されませんが、当分の間の対応として、希望すれば提出日・税務署名を記載したリーフレットが交付されます(郵送は切手を貼った返信用封筒の同封が必要)。リーフレットには税の種類や年分は書かれないため、自分で作った控えと一緒に保管しておくと安心です。
個人事業主の廃業届と一緒に出す書類は何ですか
個人事業主が廃業届と同時に提出を検討する主な書類は、青色申告で確定申告していた場合の「所得税の青色申告の取りやめ届出書」、消費税の課税事業者だった場合の「消費税の事業廃止届出書」、予定納税があり所得が大幅減になる場合の「予定納税額の減額申請書」などです。なお、従業員に給与を支払っていた場合の「給与支払事務所等の廃止届出書」は、個人事業主が廃業届本体を提出すれば別途提出が不要になる扱いです(ただし源泉所得税の納付義務は別途残ります)。どれが必要かは条件によって変わるため、個別判定は税理士または所轄税務署の個別相談でご確認ください。
青色申告をやめる届出はいつまでに出しますか
所得税の青色申告の取りやめ届出書の提出期限は、取りやめようとする年の翌年3月15日までです。廃業届本体(令和8年1月1日以後の廃業はその年分の確定申告期限まで。緩和前は原則1か月以内)とは提出期限が異なる点に注意してください。青色申告で確定申告していた個人事業主が対象です。自分が取りやめ届出書を提出すべきかどうかの個別判定は、税理士または所轄税務署の個別相談(無料)でご確認ください。
消費税の課税事業者だった場合の廃業手続きは何が違いますか
消費税の課税事業者だった個人事業主は、廃業届に加えて「消費税の事業廃止届出書」の提出を検討します。提出期限は「事由が生じたら速やかに」です。この届出書を出すと、消費税課税事業者選択不適用届出書などの不適用届出も併せて提出されたものとして扱われます。また、インボイス登録を事業廃止に伴って取り消す場合は、登録取消の届出書ではなくこの事業廃止届出書を提出する扱いです。自分が課税事業者に該当するか、廃止年の消費税申告が必要かの判定は、税理士または所轄税務署の個別相談でご確認ください。
廃業届を出す前にやっておくべきことはありますか
廃業届を出す前に「事業譲渡(M&A)」という選択肢を比較検討する余地があります。廃業では、設備や在庫などを個別に処分した額は残っても、取引先や固定客を含めた事業そのものの対価は通常付きません。譲渡すれば、買い手次第で事業の売却対価が手元に残る場合があります。継続収益のあるWebサイト・ECサイト、固定客のある飲食店・サロン、特定資格や許認可を持つ事業などは譲渡可能性が相応にある傾向です。廃業届の届出区分には「事業を譲り渡した場合」という選択肢も用意されています。詳細は関連記事廃業 vs 譲渡|手元に残る金額の比較をご覧ください。
まとめ — 出し方を選び、期限内に出して受付の記録を残す
個人事業主の廃業届で押さえるべき要点は、①出し方は e-Tax・郵送・窓口の3ルートから選ぶ(e-Taxはパソコンのe-Taxソフトで作成、マイナポータルはログインの入口)、②期限内に廃業届本体と該当する同時提出書類を出し、受付の記録を残す、③提出前に譲渡可否を一度診断する、の3点です。 手続きを正確に進めつつ、選択肢を狭めない順序を守ることが、後悔の少ない結末につながります。
第一に、個人事業主の廃業届の出し方は3ルートです。e-Taxなら本人確認書類の提示・添付が不要で、受信通知が提出の記録になります。郵送・窓口の場合は本人確認書類が必要で、2025年から控えに収受印が押されなくなったため、自分で控えを取り、リーフレットと一緒に保管するのが安全です。必要なものは出し方ごとに異なるため、本記事のルート別チェックで確認してください。
第二に、個人事業主の廃業は廃業届単体ではなく、青色申告の取りやめ・消費税の事業廃止など該当する同時提出書類とのセットで完結します。給与支払事務所等の廃止届は廃業届本体に含まれる扱いになる点(ただし源泉所得税の納付義務は残る点)も、個人事業主特有の整理です。本記事のチェックリストで、自分のケースに必要な書類を一括で洗い出してください。
第三に、廃業届を出す前に、譲渡で手元に残る金額を一度だけ診断することをおすすめします。届出区分には「事業を譲り渡した場合」も用意されており、条件次第では譲渡の方が手元に金額が残るケースがあります。
専門家を使い分けるべき場面
- 個別の課税判定・節税 → 税理士、または所轄税務署の個別相談(無料)
- 廃業届・関連届出書の代理作成・代理提出 → 行政書士
- 取引相手とのトラブル・法律相談 → 弁護士
- 法人の解散・清算登記 → 司法書士
- 事業譲渡(M&A)の買い手探し → M&Aプラットフォーム(M&A-WEB)
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- 飲食店M&Aの相場と進め方ガイド — 業種特化の譲渡実例傾向(飲食店・地域密着型サービス業)
本記事の専門領域と境界:本記事は、個人事業主の廃業届という公的書式の提出手順とe-Tax操作の一般情報提供に限定しています。個別の課税判定(自分が課税事業者か、青色申告を取りやめるべきか、予定納税の減額が妥当か等)は税理士法により税理士の独占業務、廃業届の代理作成・代理提出は行政書士法により行政書士の独占業務、法人の解散登記は司法書士の独占業務、個別の法律相談は弁護士法により弁護士の独占業務です。本記事の解説は一般情報提供であり、個別案件は各士業有資格者または所轄税務署の個別相談窓口へご相談ください。e-Taxの実画面・対応様式、収受日付印の取扱い等は年次で更新されるため、提出時にはe-Tax公式サイト・国税庁公式サイトで最新情報をご確認ください。