飲食店M&Aの事例集|公開された売却・買収ケースを業態×譲渡額×買い手タイプで集計

更新: 2026年5月24日

飲食店M&Aの事例集|公開された売却・買収ケースを業態×譲渡額×買い手タイプで集計

飲食店M&Aの事例とは、上場企業の適時開示・公式プレスリリース・M&A仲介の公開案件など、公表された情報で確認できる飲食店の売却・買収ケースのことです。 本記事はM&A仲介プラットフォームM&A-WEBの編集視点から、公表された飲食店M&A事例だけを集め、業態×譲渡額帯×買い手タイプの3軸で集計・パターン化します。公表事例のみを扱い、特定店舗の査定額逆算や非公開案件の推測はしません。結論を先に示すと、公表された飲食店M&Aは①上場・大手チェーンによる業態拡大・ロールアップ、②後継者不在の中小店の第三者承継、③個人による独立目的の小規模買収、の3類型に大別されます。自店に近い譲渡額の試算は、本記事の事例傾向を参考にしたうえでM&A-WEBの無料相談(売主完全無料)へお寄せください。飲食店M&Aの流れ・相場・スキーム・税務の体系的な解説は、親記事の飲食店M&A完全ガイドで扱っています。

飲食店M&Aの事例にはどんなものがあるか — 3類型の結論先出し

公表されている飲食店M&A事例は、買い手のタイプと目的で3類型に整理できます。本記事はこの3類型を軸に、固有名詞・公表数値を出典付きで集計します。

第一の類型は、上場・大手チェーンによる業態拡大・ロールアップです。吉野家ホールディングス・壱番屋・コロワイド・サンマルクホールディングスのような上場外食企業が、ラーメン店・カフェ・牛カツ専門店などの中堅チェーンを子会社化し、新たな収益の柱や業態ポートフォリオの拡充を狙うケースです。譲渡額が公表される場合は数十億〜数百億円規模になることもあり、多くは適時開示で確認できます。

第二の類型は、後継者不在の中小飲食店の第三者承継です。経営者の高齢化・後継者不在を背景に、個人事業や小規模法人の飲食店を第三者へ事業譲渡・株式譲渡するケースです。M&A仲介プラットフォームの公開案件として、業態・希望価格帯・所在エリアが匿名化された形で掲載されることが一般的です。

第三の類型は、個人による独立目的の小規模買収です。脱サラ独立や第二創業を目指す個人が、居抜き案件や小規模店舗を買収するケースです。初期投資を抑えて飲食業に参入する手段として、サイト売買と並ぶ「個人M&A」のエントリーポイントとなっています。

この3類型は、譲渡額帯と買い手の性質で明確に分かれます。本記事では§3で上場・大手の公開事例、§4で中小・個人レベルの公開案件、§5で業態×買い手タイプの集計マトリクス、§6で後継者不在の承継事例、§7で事例から読む成功・留意ポイントの順に整理します。

公開事例集計の方法と出典範囲 — なぜ公表情報だけを扱うのか

本記事の集計対象は、信頼性を担保できる公表情報に限定しています。具体的には次の3つの情報源だけを採用しています。

第一に、上場企業の適時開示(決算短信・子会社取得に関する開示)と公式プレスリリースです。上場企業が他社を子会社化する場合、金融商品取引法に基づく適時開示が義務付けられているため、買い手・対象企業・スキーム・取得価額(開示される場合)が公表されます。本記事の§3で扱う大手事例は、すべてこの一次情報または一次情報を報じた報道に基づきます。

第二に、M&A仲介・マッチングプラットフォームの公開案件です。バトンズや飲食店ドットコムなどが公開している譲渡案件・成約事例は、店舗を特定できない形(業態・エリア・希望価格帯のみ)で掲載されています。本記事の§4ではこれを業態・価格帯の傾向として集計します。

第三に、調査会社の公表統計です。帝国データバンクなどが公表する飲食店の倒産・休廃業統計は、市場背景と承継ニーズの裏付けとして§6で参照します。

一方、本記事が扱わない情報を明記します。第一に、非公開のM&A案件(当事者が公表していない取引)は対象外です。第二に、特定店舗の査定額を公表情報から逆算することはしません。第三に、自店の譲渡額を断定する記述はしません。これらは個別査定の領域であり、店舗の現地確認・財務精査・賃借条件の確認を経て初めて精度が出るものだからです。自店の相場感はM&A-WEBの無料相談(売主完全無料)で個別査定として確認することをおすすめします。

公表情報には更新の遅れや報道時点の数値という制約があるため、本記事の数値は各事例の公表時点のものです。最新の数値は各社の適時開示・公式リリースを直接ご確認ください。

上場・大手チェーンによる飲食店買収事例(5件、出典付き)

上場外食企業による飲食店M&Aは、適時開示・公式プレスリリースで詳細が公表されるため、事例として最も追いやすい類型です。2024〜2025年に公表された代表的な5件を、買い手/対象/業態/スキーム/公表額/狙いの順に整理します。

事例1: 吉野家ホールディングス × キラメキノ未来(鶏白湯ラーメン)

牛丼チェーンの吉野家ホールディングスは、京都のラーメン店「キラメキノトリ」を運営するキラメキノ未来を子会社化しました。2024年12月26日に株式取得契約を締結し、2025年1月7日付で全株式を取得して完全子会社化しています。取得額は非公表です。

対象のキラメキノ未来は2013年開業のラーメンチェーンで、鶏白湯ラーメンと台湾まぜそばを主力に、京都府・大阪府・奈良県・滋賀県で22店舗(買収時点)を展開していました。買収の狙いは、吉野家HDがラーメンを牛丼・うどんに次ぐ第3の収益源に育てる方針のもと、2024年5月に取得したラーメンスープ・麺の製造会社である宝産業とのシナジー創出にあります。この買収により吉野家HDのラーメン事業は国内95店舗・海外34店舗の合計129店舗となりました。

このケースは、上場チェーンが特定業態(ラーメン)の店舗網を一気に拡大するためにブランドごと取得する典型例です。

事例2: 壱番屋 × GAKU(夜パフェ専門店)

カレーチェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」を展開する壱番屋は、札幌の夜パフェ専門店を運営するGAKUを連結子会社化しました。2025年12月29日付で全株式を取得しており、取得価額は非公表です。

対象のGAKUは2015年に札幌で夜パフェ専門店を開業し、国内で9店舗を展開していました。壱番屋がスイーツ店を手掛けるのは初めてで、「食のエンターテインメント企業」を目指す長期ビジョンのもと、主力のカレー以外に業態を広げる狙いです。壱番屋は2020年からM&Aで事業領域を拡大してきており、ジンギスカン・ラーメン・モツ鍋に続く新業態の取得として位置付けられます。

このケースは、上場チェーンが既存業態と異なる新業態(スイーツ)へ進出するために専門店を取得する多角化型の例です。

事例3: コロワイド × C-United(カフェ3ブランド)

外食大手のコロワイドは、「珈琲館」「カフェ・ベローチェ」「カフェ・ド・クリエ」を運営するC-Unitedを買収すると2026年3月10日に発表しました。子会社のコロワイドMDを通じて投資ファンドから全株式を取得し、4月1日付で完全子会社化しています。取得額は440億9200万円と公表されました。

C-Unitedは3つのカフェブランドを軸に2026年2月末時点で全国563店舗を展開しており、2021年に投資会社が複数の老舗カフェチェーンを統合して設立したロールアップ型の企業です。コロワイドは中期経営計画で連結売上収益5000億円を目指しており、客層・客単価の異なる3ブランドで業態ポートフォリオを拡充する狙いです。

このケースは、投資ファンドがロールアップで束ねたカフェチェーンを上場企業が一括取得する大型再編の例で、公表額が確認できる数少ない高額事例です。

事例4: サンマルクホールディングス × ジーホールディングス(牛カツ「京都勝牛」)

「サンマルクカフェ」「鎌倉パスタ」を展開するサンマルクホールディングスは、牛カツ定食「京都勝牛」を運営するジーホールディングスを子会社化しました。2024年10月4日に発表し、11月1日付で全株式を取得しています。取得額は約112億円(普通株式110億円+アドバイザリー費用等約2億円)で、同社として過去最大のM&Aと報じられました。

ジーホールディングスは牛カツ定食「京都勝牛」やカフェ業態「NICK STOCK」などを展開し、2024年7月期の売上高は92億円でした。狙いは訪日客の取り込みと海外進出の強化で、「サンマルクカフェ」「鎌倉パスタ」に続く第3の飲食ブランド確立の一環です。

このケースは、上場チェーンが海外展開力を持つ成長業態を高額で取得する成長投資型の例です。

事例5: ワイエスフード × KINKA FAMILY JAPAN(寿司居酒屋)

とんこつラーメン「九州筑豊ラーメン山小屋」を展開するワイエスフードは、カナダ発の寿司居酒屋「KINKA」を運営するKINKA FAMILY JAPANを連結子会社化しました。2025年12月12日に取締役会で決議し、12月19日付で株式の80%を取得しています。取得額は非公表です。

対象のKINKA FAMILY JAPANは渋谷・六本木の2店舗で寿司居酒屋を運営し、2024年12月期の売上高は3億8600万円でした。狙いは、多様なジャンルを取り込む総合フードプラットフォームへの進化で、首都圏の需要深耕とインバウンド需要の高い都市への展開を見据えています。

このケースは、ラーメン主体の上場企業が異業態(寿司居酒屋)を取得して総合外食化を進める多角化型の例です。なお5件すべてが上場企業の開示・公式リリースに基づく公表事例であり、取得価額が公表されたのはコロワイド(約440.9億円)とサンマルクHD(約112億円)の2件です。

中小・個人レベルの公開譲渡・買収案件

上場企業のM&Aと異なり、中小飲食店の譲渡は個社名が公表されないのが通例です。ただし、M&A仲介・マッチングプラットフォームでは、店舗を特定できない形(業態・所在エリア・希望価格帯)で公開案件が掲載されています。本セクションでは、この公開案件の傾向を価格帯で整理します。

公開案件に見る業態と価格帯の傾向

汎用M&Aマッチングプラットフォームのバトンズの飲食店譲渡案件では、ラーメン店・居酒屋・カフェ・寿司/日本料理店・焼肉店など幅広い業態の公開案件が掲載されています。公開案件の希望価格帯を見ると、おおむね次の3帯に分布する傾向があります。

価格帯 おおよその目安 よく見られる案件の特徴
低価格帯 〜600万円程度 小規模店・居抜き造作中心・個人の独立向け
中価格帯 1,400万〜2,000万円程度 黒字運営・好立地・営業権込みの事業譲渡
高価格帯 5,000万〜8,000万円程度 複数店舗・法人・インバウンド需要のある立地

公開案件には「黒字運営」「好立地」を謳うものが目立ち、月商規模は1,000万円〜1億円程度が一般的です。これらはあくまで売り手の希望価格帯であり、実際の成約額は買い手との交渉・デューデリジェンスの結果で変動します。

個人でも飲食店M&Aに参入できる

中小・個人レベルの案件で重要なのは、買い手として個人も参入できる点です。脱サラ独立で物件をゼロから借りて内装工事を発注すると2,000万〜5,000万円の初期投資が必要になるところ、居抜き案件や小規模店舗の買収なら初期投資を大きく抑えられます。低価格帯の公開案件は、まさにこの個人買い手をターゲットにしたものが多くを占めます。

個人が会社や店舗を買う際の進め方・資金調達・注意点は、買い手目線の解説記事個人が会社を買う方法で詳しく扱っています。飲食店の買収を検討している個人の方は、まず公開案件で業態・価格帯の相場感を掴んだうえで、買い手登録のあるプラットフォームや仲介に相談するのが現実的な第一歩です。

なお、公開案件の価格帯はプラットフォームや時期によって変動します。本記事の価格帯はバトンズの公開案件を閲覧した時点の傾向であり、特定店舗の査定額を示すものではありません。

【独自集計】業態×買い手タイプの事例マトリクス

公表事例を「業態」と「買い手タイプ」の2軸で整理すると、飲食店M&Aがどの組み合わせで動きやすいかが可視化できます。本セクションでは、ma-platform独自の事例集計マトリクスを提示します。

業態 × 買い手タイプのマトリクス

行を業態、列を買い手タイプとし、各セルに公表事例から観察された傾向(◎多い/○あり/△稀)と代表事例を記載します。

業態 \ 買い手タイプ 上場チェーン 地域・中堅チェーン 個人・第二創業 異業種・多角化参入
居酒屋・酒場 ○(寿司居酒屋KINKA等)
ラーメン ◎(吉野家HD×キラメキノ未来)
カフェ ◎(コロワイド×C-United)
焼肉・牛カツ ◎(サンマルクHD×京都勝牛)
スイーツ・専門店 ○(壱番屋×GAKU)

このマトリクスから読み取れる傾向は次の3点です。第一に、ラーメン・カフェ・焼肉系は上場チェーンによる取得が活発です。店舗網を一気に拡大できる業態として、上場企業の買収ターゲットになりやすいことが公表事例から確認できます。第二に、居酒屋・ラーメン・カフェは個人・第二創業の買い手も厚い層を形成しています。中小・個人案件として公開されることが多く、買い手の裾野が広い業態です。第三に、スイーツ・専門店は異業態への多角化として取得される傾向があり、壱番屋のように本業と異なる業態へ進出する手段になっています。

譲渡額帯の分布

買い手タイプ別に、公表事例で観察される譲渡額帯の分布を整理します。額が公表されない案件も多いため、これは公表額のある事例と公開案件の希望価格帯から見た傾向です。

譲渡額帯 主な買い手タイプ 代表的なパターン
〜数百万円 個人・第二創業 居抜き造作中心の小規模店買収
数百万〜数千万円 個人・地域チェーン 営業権込みの中小飲食店の事業譲渡
数千万〜数億円 地域・中堅チェーン 複数店舗・法人の株式譲渡
数十億〜数百億円 上場チェーン 中堅チェーンの子会社化(適時開示で公表)

公表額が確認できるのは主に上場チェーンによる数十億〜数百億円規模の大型案件で、コロワイド×C-United(約440.9億円)やサンマルクHD×京都勝牛(約112億円)がこの帯に該当します。一方、中小・個人案件の譲渡額は公表されないことが多く、公開案件の希望価格帯(数百万〜数千万円)から傾向を読み取るしかありません。

自店がどの額帯に位置するかは、業態・月商・立地・営業利益・賃借条件によって個別に変わります。具体的な相場の考え方は飲食店売却の相場で業態別レンジを解説しています。

自店に近い事例の相場を確認したい方へ。 上記の集計はあくまで公表事例から見た傾向です。自店の業態・月商・立地に近い譲渡額の目安は、店舗の現地確認と財務精査を経た個別査定でないと精度が出ません。M&A-WEBの無料相談(売主完全無料)では、店舗業態別の相場と買い手傾向を踏まえた事前査定を売主完全無料で提示します。

後継者不在の飲食店はどう承継されているか — 事業承継事例

後継者不在を背景とした飲食店の第三者承継は、近年の飲食店M&Aの大きな動機となっています。市場統計を背景に、「閉店」ではなく「承継」という選択肢が広がる状況を、事例ベースで整理します。

市場背景 — 飲食店の倒産は過去最多

帝国データバンクの調査では、2024年の飲食店の倒産件数は894件で過去最多を更新しました。前年(768件)比で16.4%増加し、コロナ禍の2020年(780件)を上回っています。業態別では「酒場、ビヤホール」(212件)が最も多く、ラーメン店を含む「中華料理店、その他の東洋料理店」(158件)、「西洋料理店」(123件)が続きました。

負債規模では「1000万〜5000万円未満」が692件(構成比77.4%)と最多で、1億円未満の小規模倒産が9割近くを占めています。倒産増加の背景には、各種支援策の縮小・終了、物価高、人手不足による人件費負担の増加があると分析されています。

この統計が示すのは、小規模の飲食店ほど資金繰りに行き詰まりやすいという構造です。しかし、倒産・廃業を選ぶ前に、営業継続中であれば第三者への事業譲渡という選択肢があります。

「閉店」ではなく「承継」を選ぶパターン

後継者不在の飲食店が第三者承継に至るパターンは、公表事例と公開案件から次のように整理できます。

第一に、個人事業の小規模店を個人買い手へ承継するパターンです。店主の高齢化・体力的限界で店じまいを検討していたところ、居抜きや営業権込みの譲渡で個人買い手に引き継ぐケースです。マッチングプラットフォームの公開案件として最も多く見られる類型です。

第二に、中小法人の複数店舗のうち不採算店舗を地域チェーンへ譲渡するパターンです。経営資源を主力店に集中するため、一部店舗を切り離して同業の中堅チェーンへ譲渡するケースです。

第三に、地域の名店を上場・中堅チェーンが取得して存続させるパターンです。吉野家HDによるキラメキノ未来の子会社化のように、地域で評価を確立したブランドが大手グループ入りすることで、屋号と従業員を残したまま成長フェーズに入る事例です。

これらに共通するのは、「閉店して原状回復費を負担する」のではなく、「営業権・屋号・従業員を残したまま承継する」ことで、売り手・買い手・従業員のいずれにも利点が生まれる構造です。後継者不在の承継全般の論点は後継者不在の会社を買うでも扱っています。

廃業と事業譲渡で手元に残る金額がどう変わるかは、試算例を含めて廃業と事業譲渡の比較で詳しく解説しています。

事例から読む成功・留意ポイント

公表情報の範囲から、飲食店M&Aの成否を分ける要素を一般化して読み解きます。個別案件への助言ではなく、公表事例に共通して観察されるパターンとして整理します。

公表事例から読み取れる買い手の狙い(シナジー)

上場チェーンの公表事例を見ると、買い手の狙いには共通パターンがあります。第一に、同業態の店舗網拡大です。吉野家HDがラーメン事業を129店舗に拡大したように、特定業態のスケールを一気に獲得する狙いです。第二に、新業態への進出です。壱番屋がスイーツへ、ワイエスフードが寿司居酒屋へ進出したように、本業と異なる業態を取得して事業ポートフォリオを広げる狙いです。第三に、成長力・海外展開力の取り込みです。サンマルクHDが京都勝牛の海外展開力を評価したように、買い手にない成長エンジンを獲得する狙いです。

これらの狙いから読み取れるのは、買い手は「店舗単体」ではなく「ブランド・業態・成長性・人材」を含めて評価しているという点です。売り手側にとっては、屋号の認知度・業態の成長性・店長や従業員の残留意向が、買い手の評価を高める要素になると公表情報の範囲では読めます。

業態転換の有無と従業員引継ぎ

公表事例の多くは、買収後も屋号・業態をそのまま継続しています。吉野家HDによるキラメキノ未来のケースでも、屋号と従業員を残したまま成長フェーズに入ったと報じられています。これは、飲食店M&Aでは「ブランドと人材の連続性」が価値の源泉になりやすいことを示唆します。

一方、買収後に業態転換するケースもあります。この場合、内装造作の価値より立地・賃借権・席数規模が評価軸になります。売り手としては、自店が「ブランド継続型」で評価されるのか「物件権利型」で評価されるのかを、買い手のタイプから推し量ることが重要です。

留意ポイント — 断定はできないが共通する論点

公表情報の範囲では、飲食店M&Aで留意すべき論点として次が読み取れます。第一に、営業許可の承継です。株式譲渡では法人格維持で許可が継続しますが、居抜き売買・事業譲渡では譲受者が新規取得を要します。第二に、賃借権の処理です。賃貸人の承諾が必要なケースが多く、承諾交渉に時間を要します。第三に、従業員・取引先の引継ぎです。買収を機に従業員が離職するとオペレーションが不安定になります。

これらはいずれも個別案件で条件が異なり、「絶対にこうなる」という断定はできません。スキーム選択・営業許可・税務の体系的な解説は飲食店M&A完全ガイドを参照してください。個別案件の最終判断は、弁護士・税理士・行政書士などの専門家への相談を推奨します。

飲食店M&Aの事例にはどんなものがありますか?

公表されている飲食店M&Aの事例は、買い手のタイプで3類型に整理できます。第一に上場・大手チェーンによる業態拡大・ロールアップ(吉野家HD×キラメキノ未来、コロワイド×C-United等)、第二に後継者不在の中小店の第三者承継、第三に個人による独立目的の小規模買収です。上場企業の事例は適時開示・プレスリリースで詳細が公表され、中小・個人案件はマッチングプラットフォームの公開案件として業態・価格帯が確認できます。

ラーメン店のM&A事例はありますか?

あります。代表例として、吉野家ホールディングスが京都の鶏白湯ラーメン「キラメキノトリ」を運営するキラメキノ未来を2025年1月に完全子会社化し、ラーメン事業を国内95店舗・海外34店舗の合計129店舗に拡大した事例があります。取得額は非公表です。ラーメン業態は店舗網を一気に拡大できるため上場チェーンの買収ターゲットになりやすく、中小・個人レベルでも居抜き案件・公開案件が多く流通しています。

飲食店M&Aの譲渡額はどのくらいになりますか?

買い手タイプによって大きく異なります。上場チェーンによる大型案件では、コロワイド×C-Unitedの約440.9億円、サンマルクHD×京都勝牛の約112億円のように数十億〜数百億円規模で公表されることがあります。一方、中小・個人案件は譲渡額が公表されないことが多く、マッチングプラットフォームの公開案件では希望価格帯が数百万〜数千万円程度に分布しています。自店の譲渡額は業態・月商・立地・営業利益で変わるため、個別査定が必要です。

飲食店を買収するのはどんな会社ですか?

買い手は4タイプに整理できます。第一に上場チェーン(吉野家HD・壱番屋・コロワイド・サンマルクHD等)で、業態拡大や新業態進出を狙います。第二に地域・中堅チェーンで、ドミナント出店や業態補完を狙います。第三に個人・第二創業の買い手で、独立や業態転換を狙います。第四に異業種からの多角化参入です。公表事例ではラーメン・カフェ・焼肉系で上場チェーンの取得が活発で、居酒屋・ラーメン・カフェは個人買い手の層も厚いことが確認できます。

個人・小規模の飲食店でもM&A事例はありますか?

あります。中小・個人レベルの飲食店は個社名が公表されないのが通例ですが、M&A仲介・マッチングプラットフォームでは店舗を特定できない形(業態・エリア・希望価格帯)で多数の公開案件が掲載されています。希望価格帯はおおむね、低価格帯(〜600万円程度・居抜き中心)、中価格帯(1,400万〜2,000万円程度・黒字運営)、高価格帯(5,000万〜8,000万円程度・複数店舗)に分布します。個人の買い手も参入でき、サイト売買と並ぶ個人M&Aの入口になっています。

後継者不在の飲食店はどう承継されていますか?

「閉店」ではなく「第三者承継」を選ぶケースが増えています。帝国データバンクの調査では2024年の飲食店倒産は894件で過去最多となり、特に小規模店の資金繰り悪化が背景にあります。営業継続中であれば、個人事業の小規模店を個人買い手へ、中小法人の不採算店を地域チェーンへ、地域の名店を上場チェーンへ承継するパターンがあります。屋号・営業権・従業員を残したまま承継できる点が、廃業との大きな違いです。

まとめ — 公表事例を自店の判断材料につなげるために

飲食店M&Aの公表事例は、業態×譲渡額帯×買い手タイプの3軸で整理すると、明確なパターンが見えてきます。本記事では、上場・大手チェーンによる買収5件(吉野家HD×キラメキノ未来、壱番屋×GAKU、コロワイド×C-United、サンマルクHD×京都勝牛、ワイエスフード×KINKA)、中小・個人レベルの公開案件の価格帯傾向、業態×買い手タイプの集計マトリクス、後継者不在の承継事例、そして事例から読む成功・留意ポイントまでを、すべて公表情報の出典付きで集計しました。

事例から導ける3つの示唆は次のとおりです。第一に、ラーメン・カフェ・焼肉系は上場チェーンによる取得が活発で、店舗網拡大・新業態進出・成長力取り込みの狙いで動いています。第二に、居酒屋・ラーメン・カフェは個人・第二創業の買い手層も厚く、数百万〜数千万円の公開案件が多く流通しています。第三に、後継者不在でも「閉店」ではなく「承継」を選ぶことで、屋号・営業権・従業員を残せるケースがあります。

ただし、これらはあくまで公表事例から読み取れる傾向であり、自店の譲渡額を断定するものではありません。自店がどの額帯・どの買い手タイプに該当するかは、業態・月商・立地・営業利益・賃借条件によって個別に変わります。具体的な相場感は、店舗の現地確認と財務精査を経た個別査定でないと精度が出ません。

飲食店M&Aの流れ・相場・スキーム・税務の体系的な解説は親記事の飲食店M&A完全ガイド、業態別の相場レンジは飲食店売却の相場、居抜き売却の手続きは居抜き売却の進め方、買い手目線の進め方は個人が会社を買う方法、廃業との手取り比較は廃業と事業譲渡の比較で、それぞれ詳しく扱っています。

飲食店の売却・買収を無料相談。 自店に近い事例の相場と買い手傾向を確認したい方は、M&A-WEBの無料相談(売主完全無料)へお寄せください。売主完全無料・買主成約報酬制の料金体系で、店舗業態別の相場と買い手傾向を踏まえた事前査定を提示します。買い手として飲食店の取得を検討している方も、まずは公開案件で相場感を掴んだうえでお問い合わせからご相談いただけます。

本記事は公表された情報に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引・譲渡額・法的判断を保証するものではありません。各事例の数値は公表時点のものであり、最新の数値は各社の適時開示・公式リリースを直接ご確認ください。個別案件の最終判断は、弁護士・税理士・公認会計士・行政書士などの専門家への相談を推奨します。