バー・スナック売却時の税金

スナック 売却 税金|個人経営・法人の株式譲渡・事業譲渡、課税される人と税目が変わる3パターン

この記事の目次
  1. この記事の結論
  2. 税金は、個人経営の事業譲渡・法人の株式譲渡・法人の事業譲渡の3パターンに分かれる
  3. 個人経営のスナックは、売る資産ごとに所得の区分が分かれる
  4. 法人のスナックを株式譲渡で売ると、課税されるのはオーナー個人の譲渡益
  5. 法人のスナックを事業譲渡で売ると、対価は会社に入り、オーナーへの還流で別の課税が生じる
  6. 手取りは、売却代金から税・返済・費用を引いて見る
  7. 税理士に確認することは、4点にまとめられる
  8. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)
  10. 出典

この記事の結論

  • スナックの売却にかかる税金は、「誰が」「何を」売るかで3パターンに分かれます。 個人経営の事業譲渡、法人の株式譲渡、法人の事業譲渡で、課税される人と税目が違います。
  • 個人経営は資産ごとに所得の区分が分かれ、法人の事業譲渡は法人とオーナー個人の二段で見ます。 区分の根拠は国税庁と中小企業庁の資料で確認できる範囲に限り、個別の税額はこの記事では出しません。
  • 手取りは、売却代金から税・返済・費用を引いて見ます。 税の試算は、資産の一覧を持って税理士に依頼します。

この記事の対象:個人経営または法人のスナック・バーの売却を考えているオーナー。飲食店舗の営業資産(内装・機器・酒の在庫・賃借権など)の売却に限り、Webサービスの売却は扱いません。

スナック・バー業界全体の売却相場や許認可の論点は、バー・スナックのM&A DATAにまとめています。この記事は、そのうち売却にかかる税金の区分だけを深く扱います。確認日は2026-10-18で、国税庁のタックスアンサーは「令和8年4月1日現在法令等」と表示されている内容に基づきます。

税金は、個人経営の事業譲渡・法人の株式譲渡・法人の事業譲渡の3パターンに分かれる

結論: 先に決めるのは税率ではなく、自分の店がどのパターンかです。パターンによって、課税される人(個人か法人か)と税目が変わります。

中小M&Aガイドライン(第3版)は、中小M&Aの実務では株式譲渡か事業譲渡が選ばれることが多いとし、個人事業主の中小M&Aは事業譲渡(営業譲渡)の手法を用いるのが通常だと説明しています。この整理を土台にすると、スナックの売却は次の3パターンです。

パターン 売る人・売るもの 対価を受け取る人 主な税目(資料で確認できた範囲)
個人経営の事業譲渡 個人事業主が、店の資産・権利を売る 個人事業主 所得税(資産ごとに譲渡所得・事業所得など)、消費税(課税事業者の場合)
法人の株式譲渡 オーナー(株主)が、会社の株式を売る オーナー個人 所得税等(株式等の譲渡益の申告分離課税)
法人の事業譲渡 会社が、店の事業を売る 会社(法人) 法人税等、消費税(課税事業者の場合)。オーナーが受け取る段階で別の課税
避けたい判断 こうすればOK
「売却の税金は一律○%」と考えて手取りを見積もる 個人経営か法人か、株式譲渡か事業譲渡かを先に決め、パターンごとに税目を確認する
譲渡の方法を決めずに、税の話だけを先に進める 方法によって課税される人が変わるので、方法の候補ごとに税理士へ試算を頼む
個人経営の店を「株を売る」前提で考える 個人経営は株式がないので、事業譲渡として、売る資産の一覧から整理する

譲渡の方法ごとの許認可や賃貸借の扱いは、税とは別に確認が必要です。許認可はバー・スナックの許認可の引き継ぎ、賃貸借はスナック 店舗 譲渡 賃貸借契約で扱っています。

個人経営のスナックは、売る資産ごとに所得の区分が分かれる

結論: 個人経営の売却は「店を丸ごと1つの所得」と考えず、資産ごとに区分を確認します。国税庁の資料で区分が確認できるのは、機械器具、事業の棚卸資産、取得価額の小さい減価償却資産、取引慣行のある借家権です。

国税庁のタックスアンサー No.3105 は、譲渡所得の対象となる資産に、機械器具や取引慣行のある借家権などが含まれるとしています。一方で、事業所得者が商品や原材料などの棚卸資産を譲渡した場合の所得は事業所得、取得価額が10万円未満の減価償却資産などを譲渡した場合の所得は事業所得または雑所得になると説明しています。スナックに当てはめると、次のように整理できます。

売る資産(例) 国税庁の資料で確認できる区分 この記事で言えないこと
厨房機器・音響機器などの機械器具 譲渡所得の対象になる資産に「機械器具」が含まれる(No.3105) 個々の機器が小額資産などに当たるかは、取得価額や償却の方法で変わる
酒・ボトル・原材料の在庫 事業所得者が棚卸資産を譲渡した場合の所得は事業所得(No.3105) 在庫を買い手へいくらで渡すかの値決め
取得価額が10万円未満などの減価償却資産 事業所得または雑所得(No.3105) 個々の資産がこの範囲に入るかの判定
賃借権(居抜きの権利) 「取引慣行のある借家権」は譲渡所得の対象になる資産に含まれる(No.3105) その店の賃借権が取引慣行のある借家権に当たるか
カウンター・内装などの造作 本記事では区分を確定できない 建物に付属する設備として扱うかなど、税理士の確認が必要

譲渡所得になる資産の場合、国税庁のタックスアンサー No.1460 によると、土地・建物・株式等以外の資産の譲渡益から、特別控除額(最高50万円)を引いて譲渡所得の金額を出します。所有期間が5年以下か5年を超えるかで短期・長期に分かれ、他の所得と合算して税額を計算し、長期譲渡所得の金額は合算する際にその2分の1になると説明されています。控除額や合算の仕組みの説明であって、個別の税額は資産ごとの取得費や、ほかの所得で変わります。

個人経営の売却で、廃業した場合と比べるときの考え方は、スナック・バー廃業vs譲渡にまとめています。

法人のスナックを株式譲渡で売ると、課税されるのはオーナー個人の譲渡益

結論: 株式譲渡の税金は、株を売ったオーナー個人にかかります。国税庁の資料では、上場していない会社の株式の譲渡益は、他の所得と分けて税額を計算する申告分離課税です。

中小M&Aガイドライン(第3版)は、株式譲渡の場合、株主である経営者個人の税金は、譲渡益に対する分離課税(税率20.315%)で課税関係が終了すると説明しています。国税庁のタックスアンサー No.1463 は、上場株式等以外の株式(一般株式等)の譲渡益を、総収入金額(譲渡価額)から必要経費(取得費+委託手数料等)を引いて計算し、税率は所得税15%と住民税5%の合計20%、さらに復興特別所得税を所得税と併せて申告・納付する(平成25年から令和29年までの各年分)と説明しています。

項目 国税庁・中小企業庁の資料で確認できること
課税される人 株式を売ったオーナー個人
課税の方式 申告分離課税(他の所得と分けて計算)
税率 所得税15%+住民税5%の合計20%に、復興特別所得税が加わる(ガイドラインは合計20.315%と説明)
譲渡益の計算 総収入金額(譲渡価額)− 必要経費(取得費+委託手数料等)

譲渡益は、取得費がいくらかで変わります。創業時の出資額や株式の取得の経緯は、オーナーによって違うため、この記事では例の金額で計算せず、取得費の根拠になる書類を税理士に見せる形で閉じます。

株式を売ると店の法人格は変わりませんが、簿外債務・偶発債務のリスクが事業譲渡より高くなりやすいとガイドラインは説明しています。株式譲渡のDDの論点は、ハブのバー・スナックのM&A DATAで扱っています。

法人のスナックを事業譲渡で売ると、対価は会社に入り、オーナーへの還流で別の課税が生じる

結論: 法人の事業譲渡は、会社の段階とオーナー個人の段階の二段で税金を見ます。株式譲渡のように「譲渡益に対する20%前後で終わり」とは限りません。

中小M&Aガイドライン(第3版)は、事業譲渡の場合、株主である経営者個人の税金について、譲渡対価は法人に帰属するため、益金に対して法人税等の課税が生じると説明しています。その後、株主である経営者へ配当や役員報酬などで還流する場合には総合課税の対象になることから、分離課税となる役員退職慰労金の支給と併せて検討することもあり得ると説明しています。

段階 課税される人 確認すること
会社が事業を売る 会社 益金に対する法人税等。国税庁のタックスアンサー No.5759 によれば、資本金1億円以下の法人などは、年800万円以下の部分とそれを超える部分で税率が分かれる
会社が対価を受け取り、消費税の課税事業者である 会社 減価償却資産等は消費税の課税売上になる(ガイドライン)。課税対象は事業として対価を得て行う資産の譲渡等で、権利などの無形資産も資産に含まれる(No.6105)
オーナーが会社から資金を受け取る オーナー個人 配当・役員報酬は総合課税、役員退職慰労金は分離課税とガイドラインが整理。どの形でいくら受け取るかは税理士と設計する

消費税は、国税庁のタックスアンサー No.6931 によれば、課税事業者が事業用の資産を譲渡した場合は課税され、土地や借地権の譲渡は非課税です。株式の譲渡は、国税庁のタックスアンサー No.6201 で、有価証券等の譲渡として非課税取引に挙げられています。株式譲渡と事業譲渡では、消費税の取り扱いも変わります。

個人経営でも法人でも、消費税の納税義務は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば原則として免除されます(No.6501)。ただし、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合や、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合、課税事業者選択届出書を提出している場合などは、免除されません。自分の店が課税事業者かどうかは、売却の方法を決める前に確認します。

手取りは、売却代金から税・返済・費用を引いて見る

結論: 売却代金は手取りではありません。税の額は、本記事では計算せず、税理士に試算を頼みます。

本記事の整理では、手取りを次の式で見ます。数字を入れず、引くものの項目だけを示します。

項目 内容 確認先
売却代金 譲渡対価の合計(株式譲渡なら株式の対価、事業譲渡なら資産・権利の対価) 売買契約書
− 税 上の3パターンのうち、自分の店の課税 税理士
− 借入・リースの清算 売却時に返す借入、残りのリース 金融機関・リース会社の残高資料
− 譲渡にかかる費用 仲介の手数料、登記や書類の費用など 契約している支援機関の手数料の説明
= 手元に残る額 廃業した場合と、同じ前提で比べる 税理士

中小M&Aガイドライン(第3版)は、中小M&Aにより株主である経営者個人に所得が生じた場合には、所得税・住民税のほか、会社の社会保険に加入していないときは国民健康保険料や後期高齢者医療保険料にも影響があるため留意が必要としています。手取りを見るときは、税だけでなく、こうした負担の変化も含めて税理士に確認します。

売却相場の読み方はスナック・バーの売却相場で扱っています。

税理士に確認することは、4点にまとめられる

結論: 税理士に渡す資料は、決算書、資産の一覧、借入とリースの残高、譲渡方法の候補です。確認する点は、所得の区分、消費税、オーナー個人への課税、税額の試算の4つです。

渡す資料 確認する点
直近の決算書・確定申告書 課税事業者かどうか、事業の損益、ほかの所得
固定資産台帳(または資産の一覧)と取得時期 資産ごとの所得の区分、短期・長期の別、取得費
借入・リースの残高資料 売却時の清算額、手取りの計算
売却方法の候補(株式譲渡・事業譲渡)と対象資産の一覧 課税される人(個人か法人か)、消費税、オーナーへの還流の設計
株主の状況・出資の経緯(法人の場合) 株式の取得費、譲渡益の計算

税務の判断は、個別の事情で変わります。この記事は国税庁と中小企業庁の資料で確認できた区分を整理したもので、個別の税務の助言ではありません。具体的な取り扱いは、税理士に確認してください。

まとめ

  • スナックの売却にかかる税金は、個人経営の事業譲渡、法人の株式譲渡、法人の事業譲渡の3パターンで、課税される人と税目が変わります。先に、自分の店のパターンを決めます。
  • 個人経営は売る資産ごとに所得の区分を確認し、法人の株式譲渡はオーナー個人の譲渡益、法人の事業譲渡は会社とオーナー個人の二段で見ます。
  • 手取りは、売却代金から税・借入やリースの清算・費用を引いて見ます。税額は資産の一覧を持って税理士に試算を頼み、廃業した場合と同じ前提で比べます。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 個人経営のスナックを売ると、税金は何にかかりますか? A. 個人事業の中小M&Aは事業譲渡の手法を使うのが通常と、中小M&Aガイドライン(第3版)は説明しています。事業譲渡では、売る資産ごとに所得の区分が分かれます。国税庁のタックスアンサーでは、機械器具などは譲渡所得、事業の棚卸資産(酒の在庫など)は事業所得とされています。内装や賃借権がどの区分になるかは個別の確認が必要なので、税理士に資産の一覧を見せて確かめます。

Q2. 法人のスナックを株式譲渡で売ると、税金は誰にかかりますか? A. 株式を売るオーナー個人にかかります。国税庁のタックスアンサーでは、上場株式等以外の株式(一般株式等)の譲渡益は申告分離課税で、税率は所得税15%と住民税5%の合計20%、これに復興特別所得税が加わります。中小M&Aガイドライン(第3版)は、この合計を20.315%と説明しています。

Q3. 法人のスナックを事業譲渡で売ると、税金はどうなりますか? A. 譲渡対価は法人に入るため、法人税等の課税関係が生じると、中小M&Aガイドライン(第3版)は説明しています。減価償却資産などの譲渡は消費税の課税売上になるため、課税事業者であれば消費税も確認します。オーナー個人が対価を受け取る場面(配当、役員報酬、役員退職慰労金など)では別の課税関係が生じるので、税理士と全体の流れで確認します。

Q4. 個人経営のスナックの売却に、消費税はかかりますか? A. 課税事業者かどうかで変わります。国税庁のタックスアンサーでは、課税事業者が事業用の資産を譲渡した場合は消費税が課税され、免税事業者が譲渡した場合は課税されないと説明されています。土地や借地権の譲渡は非課税です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、インボイスの登録などで免税にならない場合があるため、自分の区分は税理士に確認します。

Q5. 売却代金がそのまま手取りになりますか? A. なりません。本記事の整理では、売却代金から、譲渡にかかる税、借入やリースの清算、譲渡にかかる費用を引いたものが手元に残る額です。税の額は資産の内訳や取得費、ほかの所得で変わるため、本記事では計算しません。税理士に試算を依頼して、同じ前提で廃業の場合と比べます。

Q6. 税理士には何を渡して、何を確認すればよいですか? A. 直近の決算書や確定申告書、固定資産台帳(または資産の一覧)、借入とリースの残高、売却の候補になっている方法(株式譲渡・事業譲渡)と対象資産の一覧を渡します。確認するのは、各資産の所得の区分、消費税の課税関係、オーナー個人への課税、税額の試算の4点です。

出典

  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」(令和6年8月) https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf
  • 国税庁 タックスアンサー「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.1460 譲渡所得(土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1460.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.6931 消費税等と譲渡所得」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6931.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.6105 課税の対象」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6105.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.6201 非課税となる取引」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6201.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.6501 納税義務の免除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.5759 法人税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm

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