この記事の目次
EC事業の価値の中心は、購入者のデータとメール配信リストにあることが多くあります。ところが、買い手が受け取ったその日から、同じように販促メールを送れるとは限りません。この記事は、個人情報保護法・特定電子メール法・モールの規約の3つを分けて、購入者情報とメール配信リストの引き継ぎで確認する点を整理します。
この記事の結論
- 個人情報保護法が許すのは、購入者データを「渡す」ところまでです。 メールで販促を続けられるかは、特定電子メール法の同意などの要件を別に確かめます。
- 売り手が取った同意が、買い手の配信にそのまま使えるかは、取得した資料では確認できませんでした。 同意の記録と、同意を取ったときの文言を、DDで読みます。
- モールで集めた購入者情報は、モールの規約が先に縛ります。 楽天市場出店規約は用途と第三者への提供を限っています。
この記事の対象:自社サイトやモールで商品を売るEC事業の買収を検討している方、売却を考えている運営者の方。
EC事業のM&A全体の見方は、EC・ネットショップのM&A DATAにまとめています。個人情報保護法そのものの整理(提供と利用の違い、DDでの開示の段階、承継後に使い道を変えるときの同意)は、Webサービス 売却 個人情報で扱っているので、ここでは繰り返しません。この記事は、ECに特有の購入者情報・メール配信同意・モールの規約に絞ります。なお、個別の法律判断ではありません。実際の契約や運用は、弁護士などの専門家に確認してください。
購入者データの扱いは、法律2つとモール規約の3層に分けて確かめる
結論: 個人情報保護法で「渡せる」と整理できても、メール配信とモールの規約は別の層です。3つを順に確かめます。
3つの層は、本記事の整理です。それぞれ、根拠になる文書と問いが違います。
| 層 | 根拠 | 問い |
|---|---|---|
| 個人情報の移転と利用 | 個人情報保護法(個人情報保護委員会のガイドライン通則編) | 買い手に渡してよいか。承継前の利用目的の範囲で使えるか |
| メールでの広告・宣伝 | 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)。通信販売の場合は特定商取引法も | 買い手が送る相手に、送ってよい根拠があるか |
| モール経由の顧客情報 | 楽天市場出店規約など、出店者とモールの契約 | モールの規約が、用途と第三者への提供をどう限っているか |
| 避けたい判断 | こうすればOK |
|---|---|
| 個人情報保護法の手続きを確認したので、配信リストはそのまま使えると考える | 個情法とは別に、特定電子メール法の同意の根拠を確かめる |
| 購入者のメールアドレスを、モールで集めたものも自社サイトで集めたものも同じ扱いにする | 集めた経路ごとに分け、モールで集めた分はモールの規約を先に読む |
| リストの件数をそのまま価格の根拠にする | 同意の記録が確認できる件数を、価格の根拠にする |
購入者情報は、自社EC・モール・配信リストの3区分で持ち主と根拠を確かめる
結論: 同じ「顧客データ」でも、集めた経路によって、縛る規約と同意の根拠が違います。DDでは経路ごとに分けて見ます。
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、氏名と組み合わせた連絡先(メールアドレスを含む)を個人情報の事例に挙げています。メールアドレスだけでも、特定の個人を識別できる場合は個人情報にあたります。また、ユーザーIDで整理された利用ログは、IDと個人情報を容易に照合できる場合、個人情報データベース等の事例とされています。購買履歴・サービス利用履歴は、個人関連情報の事例として挙げられています。つまり、会員IDや氏名に結び付いた購入履歴は、個人情報として扱う前提で見るほうが安全です。
次の区分は、本記事の整理(法律上の区分ではありません)です。
| 区分 | 例 | 主に確かめる根拠 | DDで見るもの |
|---|---|---|---|
| 自社EC(自社サイト・カート)の購入者情報 | 注文履歴、氏名、住所、メールアドレス | 個人情報保護法、売り手のプライバシーポリシー | 利用目的の記載、カートや決済サービスの契約 |
| モール経由の顧客情報 | 楽天市場などの注文に付随する顧客情報 | 各モールの出店規約 | モールの規約の該当条文、モール側で開示される項目 |
| メール配信リスト | メルマガの購読者、会員登録時にチェックを入れた人 | 特定電子メール法(通信販売の場合は特定商取引法も) | 同意の取得方法と時期の記録、配信停止の記録 |
自社ECとモールの両方で売っている事業では、同じ購入者が両方に出てきます。どちらの経路で集めた情報かを分けられないリストは、使える範囲を決められません。
個人情報保護法が許すのは「渡す」まで。メール配信を続けられるかは、特定電子メール法で別に確かめる
結論: 事業譲渡に伴う個人データの提供は、本人の同意なしにできる場合があります。しかし広告宣伝メールの送信は、別の法律が、受け取る側の同意などを要件にしています。
ガイドラインの趣旨は、次の2点です(詳しい整理はWebサービス 売却 個人情報にあります)。
- 事業の承継に伴って個人データが提供される場合、提供先は第三者に該当せず、あらかじめ本人の同意を得ることも、オプトアウトも要らずに提供できる。
- 承継後は、承継前の利用目的の達成に必要な範囲で取り扱う。範囲を超えるなら、あらかじめ本人の同意が必要になる。
ガイドラインには、利用目的を具体的に特定している事例として、「商品の発送、関連するアフターサービス、新商品・サービスに関する情報のお知らせのために利用いたします」という記載が挙げられています。売り手のプライバシーポリシーに同様の記載があれば、個人情報保護法の面では、お知らせの利用は承継前の利用目的の範囲に収まる可能性があります。
しかし、メールの送信は、特定電子メール法の問いが別に残ります。条文(第3条第1項)は、広告や宣伝のために送る電子メール(特定電子メール)を、次のどれかに当たる相手にしか送れないとしています。
| 送ってよい相手(第3条第1項) | 条文の内容 |
|---|---|
| 第1号 | あらかじめ、特定電子メールの送信を求める旨、または同意する旨を、送信者または送信委託者に対し通知した者 |
| 第2号 | 総務省令・内閣府令で定めるところにより、自己の電子メールアドレスを送信者または送信委託者に通知した者(名刺などで通知した場合) |
| 第3号 | 広告や宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者 |
| 第4号 | 総務省令・内閣府令で定めるところにより、自己の電子メールアドレスを公表している団体または個人(個人は営業を営む者に限る) |
通知を受けた側には、同意があったことを証する記録を保存する義務があります(第3条第2項)。総務省のパンフレットによれば、保存するのは、個別のメールアドレスについて同意を受けた際の状況を示す記録(時期と方法など)です。保存期間は、その記録に係る広告宣伝メールを最後に送信した日から1か月(措置命令を受けた場合は1年間)です。また、同意があっても、受信拒否の通知を受けたあとは、以後の送信が禁止されます(同条第3項)。
ここから、EC事業の譲渡で確かめる点が3つ出てきます。
- 売り手が取った同意は、買い手の配信に使えるか。 条文は、同意を「送信者又は送信委託者に対し」通知した者としています。売り手に対する同意が、買い手が送信者になったあとも使えるかは、取得した資料には記載がなく、確認できませんでした。同意を取ったときの画面の文言に、事業を承継した者が配信する旨が書かれているかを読みます。
- 取引関係にある者の例外を、買い手の配信に当てはめられるか。 第3号は、広告や宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者を挙げています。ただし、総務省のパンフレットは、通信販売などの電子メール広告には特定商取引法が適用され、取引関係にある者や名刺で通知した者への送信でも、請求・承諾なしには送信できないと注意しています(※1の注記)。ECの販促メールは、これに該当する可能性が高いと、本記事の整理では考えます。買い手が配信する相手が、買い手との取引関係にあたるかは、資料から確認できません。個別の確認が必要です。
- 同意の記録が、リストと一緒に引き継がれるか。 記録の保存義務があるのは、同意の通知を受けた送信者または送信委託者です(第3条第2項)。同意の時期と方法の記録が残っていないアドレスは、買い手が送信を続ける根拠を説明できなくなります。
パンフレットは2018年7月版で、特定商取引法側の細かい要件(請求・承諾の記録を3年間保存することなど)にも触れています。最新の施行規則やガイドラインは、契約の時点で改めて確認してください。
| 避けたい判断 | こうすればOK |
|---|---|
| 過去に購入した人なので、買収後もそのまま販促メールを送れると考える | 取引関係の例外を使えるか、特定商取引法の請求・承諾の要件を満たすかを、専門家に確認する |
| 同意のチェックボックスの文言を見ずに、リストを引き継ぐ | 同意を取ったときの文言と画面を入手し、承継先の配信が含まれるかを読む |
| 買収後、すぐに既存リスト全体へ初回の配信をする | 配信を再開する対象と、同意の取り直しの方法を、買収の前に決める |
同意を取り直すためのメールを送ること自体は、個人情報保護法の面では、承継前の利用目的に書かれていなくても目的外利用にあたらないとガイドラインは整理しています。ただし、その1通が特定電子メール法の定める「広告または宣伝」に当たるかは、内容によります。個別の確認が必要です。
楽天市場の顧客情報は、出店規約が用途と第三者への提供を限っている
結論: 楽天市場で集めた顧客情報は、出店規約の条文が、広告メールの方法と退店後の利用を縛っています。買い手への提供が認められるかは、条文だけでは決まりません。
「楽天市場憲章・楽天市場出店規約」(2026年6月1日最終改定)は、楽天グループ株式会社を「甲」、出店者を「乙」として、顧客情報について次のように定めています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第16条第3項 | 出店者は、顧客情報を、規約が認め、かつ顧客の承諾が得られた範囲に限って利用する。第三者に顧客情報を、有償・無償を問わず漏洩・開示・提供その他取り扱わせてはならない。ただし、決済業務と配送業務を委託している決済業者・配送業者には、同等の守秘義務を課したうえで、代金決済と配送に必要な範囲で開示できる |
| 第16条第4項 | 出店者は、契約終了後、楽天が書面で特に承諾した場合を除き、顧客情報を利用できない。契約終了にあたって、楽天の管理下にある顧客情報を抽出してはならない |
| 第16条第5項 | 出店者は、個人情報取扱事業者にあたるかどうかを問わず、個人情報保護法に定める個人情報取扱事業者としての義務を遵守する |
| 第18条第1項第8号 | モールの利用を通じて取得した電子メールアドレスに対し、R-Mail以外の方法で、広告・宣伝を内容とする電子メールを配信する行為は禁止 |
| 第18条第1項第9号 | 契約終了後に、出店ページ運営に関連して取得したメールアドレスその他の顧客情報を利用する行為(広告・宣伝メールの配信を含む)は禁止 |
「楽天市場出店」の規約案内のページも、楽天市場で集めた顧客情報に自社サイトの広告を行うことなどは禁止されている、退店時に顧客データの抽出は行っていないと説明しています。また、楽天の「プラットフォームの透明性及び公平性の向上に関する取り組みについて」のページは、クレジットカード情報とメールアドレスは店舗に開示していないと書いています。つまり、モールで集めた購入者のメールアドレスは、そもそも出店者の手元に配信リストとして残っていない場合があります。
ここから、本記事の整理として次のことが言えます。
- モールの購入者を、自社サイトの配信リストに加えて送る形は、規約で禁止されている行為にあたるおそれがあります。 買い手が買収後にやりたいことが、これに当たらないかを、売買契約の前に確認します。
- 事業譲渡で買い手に顧客情報を渡すことが、第16条第3項の例外に当たるかは、条文には書かれていません。 条文の例外は決済業者と配送業者だけです。契約者変更の手続き(Amazon セラーアカウント 譲渡で扱っています)の中で、顧客情報の扱いも楽天に確認します。
- 契約終了後は、顧客情報を利用できません。 契約者の変更ではなく、旧店舗を閉じて買い手が新規に出店する形では、旧店舗の顧客情報が買い手に引き継がれないと、規約からは読めます。
| 避けたい判断 | こうすればOK |
|---|---|
| モールの購入者のリストを、売買契約で引き渡す対象にする | モールが認めている範囲を、規約の条文と楽天への確認で特定してから、対象を決める |
| 旧店舗を閉じて、買い手が新規出店する形でも、旧店舗の顧客情報を使えると考える | 契約終了後の顧客情報の利用が禁止されていることを、前提に計画を立てる |
Amazonについては、購入者リストの引き継ぎを定めた記載が確認できなかった
結論: 取得できたAmazonのポリシーは、購入者情報の用途を厳しく限っていますが、事業譲渡での引き継ぎを定めた記載は確認できませんでした。引き継げる前提で価格をつけません。
取得できたAmazonの文書は、次の2つです。いずれも、AmazonサービスAPIに関わる文書で、本文にAPIへの言及があります。
- 適正利用規約(Acceptable Use Policy): 購入者の個人識別情報を、出品者出荷または税務上・規制上の要件など法的要件を満たす目的以外で使ってはいけないと定めています(第4.1項)。また、AmazonサービスAPIまたは外部のデータサービスから取得したデータを使って、購入者を商品マーケティングの対象にしてはいけないと定めています(第4.2項)。
- データ保護ポリシー: 個人識別情報の保持は、必要な期間(注文の配送後30日以内)に限るとしています。法律上の要件がある場合は例外です(第2.1項)。
データ保護ポリシーの対象は、AmazonサービスAPIで取得したデータを扱うソリューションプロバイダー(開発者やサービスプロバイダー)と説明されていました。適正利用規約も、冒頭でソリューションプロバイダーが遵守するものと定めています(合併・買収・事業所有権の移転で情報の使い方が変わるときは30日以内にAmazonへ通知する、という規定(第3.11項)も、ソリューションプロバイダー向けです)。出店者が自分で受けた注文の購入者情報に、これらがそのまま当てはまるかは、判断できません。Amazonの契約本文(Amazonサービスビジネスソリューション契約)の顧客情報に関する条項と、セラーセントラルの購入者への連絡ルールは、取得できていません。
確認できた範囲から言えるのは、次の点です。Amazonで注文を受けた購入者のデータは、配信リストとして買い手に引き渡す対象と考えない、というのが本記事の整理です。引き継げるかどうかは、Amazonに個別に確認してください。
DDでは、同意の記録・集めた経路・規約の3点を、データの現物より先に見る
結論: 配信リストの価値は、アドレスの数ではなく、送信の根拠が説明できる数で決まります。DDでは、書類で見られるものから先に確認します。
| 確認項目 | 見る資料 | 分かること |
|---|---|---|
| 同意の記録 | 同意の取得画面のスクリーンショット、取得日時と方法のログ | 特定電子メール法の同意を、アドレスごとに説明できるか |
| 同意の文言 | チェックボックスと注意書きの文言、プライバシーポリシー | 承継先の配信を含むか。利用目的の範囲 |
| 配信停止の記録 | 配信停止の受付記録、停止したアドレスの除外状況 | 受信拒否者へ送らない仕組みがあるか |
| 集めた経路 | 自社サイト・モール・イベント・外部購入などの区分 | 経路ごとに使える根拠が変わる。外部から得たリストの扱い |
| モール規約への適合 | モールの規約の該当条文、過去のモールからの指摘 | 規約違反の利用がないか |
| 配信ツールの契約 | メール配信サービスの契約者名義と、データの置き場 | 買収後に名義とデータを移せるか |
見せる範囲は、初めは集計値と項目一覧にとどめ、実データは契約を結んでから閲覧のみで見せます。段階の分け方と、交渉段階での個人データの提供に必要な契約の中身は、Webサービス 売却 個人情報の整理に従います。
次の例は仮の数字で、考え方を示すためのものです。配信リストが10,000件あり、確認の結果が次のとおりだったとします。
| 区分(仮) | 件数(仮) | 本記事の整理 |
|---|---|---|
| 同意の記録を確認できたアドレス | 4,000件 | 送信の根拠を説明しやすい。承継先の配信が含まれるかは、文言で確認する |
| 購入履歴はあるが、同意の記録がないアドレス | 3,000件 | 取引関係の例外などを使えるか、専門家に確認してから判断する |
| モールの注文で得た、または由来が不明なアドレス | 3,000件 | 規約や取得経路の確認が取れるまで、価値に含めない |
合計は10,000件です。価格の交渉で、10,000件を一括して価値の根拠にするのではなく、区分ごとに扱いを分けます。
売買契約には、同意の記録の引き渡しと、確認できなかったときの調整を書く
結論: 買い手が配信を始める前に、リストの根拠が崩れるリスクがあります。契約でその負担を決めておきます。
| 決めておくこと | 考え方 |
|---|---|
| 同意の記録の引き渡し | アドレスの引き渡しと同時に、同意の取得時期・方法の記録、配信停止の記録も引き渡す |
| 表明保証 | 同意の取得方法、モール規約に反して集めたものがないことを、売り手が表明する |
| 確認できなかった分の価格調整 | 同意などを確認できなかったアドレスを、価格から外すか、減額するか、引き渡し対象から除くか |
| 引き渡し前の配信の扱い | 譲渡の前後で、売り手が配信を続けるか。受信拒否の受付をどちらが担うか |
| 同意の取り直し | 買い手が同意を取り直す場合の方法と時期。取り直しの結果で価格を変えるか |
| 承継後の利用 | 買い手が使いたい用途(新サービスの案内など)が、承継前の利用目的の範囲かの確認 |
条項の書き方は、事案によって変わります。弁護士などの専門家に確認してください。
自社の場合を確認する 売却の準備として自社の事業価値を見たいとき → 事業価値を確認する
まとめ
- 個人情報保護法は、事業承継に伴う購入者データの提供を、本人の同意なしにできる場合があると整理しています。ただし、これは「渡す」話で、メールの送信は別の問いです。
- 特定電子メール法は、同意などの根拠を持つ相手にしか広告宣伝メールを送れないとしています。売り手が取った同意を、買い手がそのまま使えるかは、取得した資料では確認できませんでした。
- モールで集めた顧客情報は、モールの規約が先に縛ります。楽天市場出店規約は、用途、第三者への提供、契約終了後の利用を限っています。
よくある質問(FAQ)
Q1. ECサイトを事業譲渡するとき、購入者の同意は取らなければなりませんか? A. 個人情報保護法のガイドライン(通則編)は、事業の承継に伴う個人データの提供について、本人の同意もオプトアウトも要らずに提供できると整理しています。ただしこれは「渡す」側の話です。メールで販促を続けるには、特定電子メール法の同意などの要件を別に確かめます。モールで集めた顧客情報は、モールの規約が別に縛ります。契約の形による違いは専門家に確認してください。
Q2. 売り手が取っていたメルマガの同意は、買い手にそのまま引き継がれますか? A. 特定電子メール法の条文は、同意を「送信者又は送信委託者に対し」通知した者を送信できる相手としています。売り手に対する同意が、買い手が送信者になったあとも使えるかは、取得した資料には記載がなく、確認できませんでした。同意を取ったときの文言に承継先への配信が含まれているかを読み、個別に専門家に確認してください。
Q3. 買収後、すでに購入履歴のある顧客に販促メールを送ってもよいですか? A. 購入履歴があることだけでは決まりません。特定電子メール法には取引関係にある者への例外がありますが、総務省のパンフレットは、通信販売などの電子メール広告には特定商取引法が適用され、請求・承諾なしには送信できないと注意しています。買い手が送る相手が、買い手との取引関係にあたるかも資料からは確認できないため、個別の確認が必要です。
Q4. 楽天市場で集めた購入者情報を、譲渡先の買い手に渡せますか? A. 楽天市場出店規約の第16条は、顧客情報を第三者に提供・開示・取り扱わせることを、決済業者と配送業者に必要な範囲で開示する場合を除いて禁じています。事業譲渡で買い手に渡すことが例外になるかは、条文だけでは判断できません。契約者変更の手続きの中で、顧客情報の扱いを楽天に確認してください。
Q5. Amazonで得た購入者情報は、買い手に渡せますか? A. 取得できたAmazonの適正利用規約とデータ保護ポリシーは、AmazonサービスAPIに関わる文書で、出店者の事業譲渡を想定した規定ではありません。購入者の個人識別情報を出品者出荷や法的要件のためにしか使えないこと、保持は注文の配送後30日以内とされていることが書かれています。出品者が購入者リストを事業譲渡で買い手に渡せるかを直接定めた記載は、確認できませんでした。モールに個別に確認してください。
Q6. 配信リストは、価格にどう反映すればよいですか? A. リストの件数ではなく、同意の記録が確認できる件数を基準に考えるのが安全です。同意の記録がない分や、モール規約で使えない分は、価値に含めない前提で価格を決めます。確認できたかどうかで価格を調整する条項を、売買契約に入れておきます。条項の書き方は、弁護士などの専門家に確認してください。
出典
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(平成28年11月、令和8年6月一部改正) https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
- 総務省・消費者庁「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント 広告宣伝メールに係るオプトイン方式の規制などについて」(2018年7月) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/pdf/m_mail_pamphlet.pdf
- e-Gov法令検索「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成十四年法律第二十六号)」(令和7年6月1日施行) https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0100000026
- 楽天「楽天市場憲章・楽天市場出店規約」(2026年6月1日最終改定。「出店審査や規約、取扱商材の注意事項|楽天市場出店」に掲載) https://www.rakuten.co.jp/ec/open/attention/pdf/disclosure/01_kiyaku_guideline.pdf
- 楽天「出店審査や規約、取扱商材の注意事項|楽天市場出店」 https://www.rakuten.co.jp/ec/open/attention/
- 楽天「プラットフォームの透明性及び公平性の向上に関する取り組みについて|楽天市場出店」 https://www.rakuten.co.jp/ec/digitalplatform/
- Amazon セラーセントラル「適正利用規約(Acceptable Use Policy)」 https://sellercentral.amazon.com/solution-provider/policy?policyType=AUP&locale=ja_JP
- Amazon セラーセントラル「データ保護ポリシー」 https://sellercentral.amazon.co.jp/solution-provider/policy?policyType=DPP&locale=ja_JP