はじめてのM&A用語解説

譲渡とは?売却・贈与・相続との違いと種類をわかりやすく解説

この記事の目次
  1. 結論|譲渡は「財産や権利を他人に移すこと」の総称
  2. 譲渡とは|意味と使われ方
  3. 売却・売買・贈与・相続との違い
  4. 譲渡の種類|何を移すかで分ける
  5. 譲渡と税金|どの税になるか
  6. M&Aでの「譲渡」
  7. 譲渡する前の確認点
  8. よくある質問
  9. まとめ|譲渡は総称。何を移すかで詳細を選ぶ

結論|譲渡は「財産や権利を他人に移すこと」の総称

譲渡(じょうと)とは、財産や権利を他人に移すことです。 有償か無償かは問いません。お金を受け取って渡す「売却」も、無償で渡す「贈与」も、広い意味では譲渡の一形態です。

契約書やM&Aの資料では「株式譲渡」「事業譲渡」のように、何を移すかを前につけて使います。税の世界では「譲渡所得」という言葉もあります。

本記事では、次の点を整理します。

  • 譲渡の意味と、使われる場面
  • 売却・売買・贈与・相続との違い
  • 何を移すかで分けた譲渡の種類
  • 譲渡にかかる税金の入口
  • M&Aでの譲渡

事業譲渡と株式譲渡それぞれの手続きや比較は、本記事では要点にとどめ、詳しい記事に案内します。税務・法務の個別の判断は、税理士・弁護士などの専門家に確認してください。

譲渡とは|意味と使われ方

結論:譲渡は、法律・税・ビジネスのどの場面でも「持っているものを他人に渡して、持ち主を変える」という意味で使われます。

国税庁のタックスアンサー(No.3105 譲渡所得の対象になるもの)は、税法上の「譲渡」を、有償か無償かを問わず資産の所有権が移転する行為として説明しています。売却のほか、交換、代物弁済(お金の代わりに財産で債務を返すこと)、法人への現物出資なども含まれます(出典:国税庁 No.3105、令和8年4月1日現在法令等、2026年10月23日確認)。

つまり、譲渡は広い言葉です。普段の会話で「会社を譲渡する」と言えば売る意味で使うことが多いものの、言葉そのものは売る場合に限りません。

「譲渡」の後ろには、次のように対象が付きます。

  • 株式譲渡(会社の株式を渡す)
  • 事業譲渡(事業を渡す)
  • 債権譲渡(お金を請求できる権利を渡す)
  • 不動産の譲渡(土地・建物を渡す)

売却・売買・贈与・相続との違い

結論:譲渡が一番広い言葉で、売却(売買)と贈与はその中の形です。相続は、人が亡くなったことで起きる承継なので、当事者が合意して渡す譲渡とは成り立ちが違います。

言葉 意味 対価 根拠・税の例
譲渡 財産や権利を他人に移すこと(総称) 問わない 税法上は有償無償を問わない(国税庁 No.3105)
売却・売買 財産を渡し、代金を受け取る約束 あり 民法555条。売る側から見て「売却」
贈与 財産を無償で与える約束 なし 民法549条。受け取る側に贈与税がかかる場合がある
相続 亡くなった人の権利義務を引き継ぐ なし 民法896条。相続税の対象になる場合がある

民法は、売買を「当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と定めています(民法555条)。贈与は「当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」ものです(民法549条)。相続人は「相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」とされています(民法896条)(出典:e-Gov法令検索 民法、2026年10月23日確認)。

見分けるポイントは2つです。

  1. 対価があるか。あれば売却・売買、なければ贈与です。
  2. 当事者の合意で渡すか。合意で渡すのが売却・贈与、亡くなったことで当然に引き継ぐのが相続です。

なお、譲渡と贈与は対立する言葉ではありません。無償の譲渡が贈与にあたります。「譲渡か贈与か」と迷ったときは、対価があるかどうかを見てください。

譲渡の種類|何を移すかで分ける

結論:譲渡は、何を移すかで種類が分かれます。種類によって、根拠となる法律や必要な手続きが変わります。

種類 移すもの 根拠の例 補足
株式譲渡 会社の株式 会社法127条 「株主は、その有する株式を譲渡することができる」。譲渡に会社の承認を要する株式もある
事業譲渡 事業(資産・契約・従業員など) 会社法467条 事業の全部などを譲渡するとき、株式会社は株主総会の決議が必要になる場合がある
債権譲渡 請求できる権利 民法466条 「債権は、譲り渡すことができる」
不動産の譲渡 土地・建物 国税庁 No.3105 税では譲渡所得の対象になる
その他の資産 機械、書画、Webサイトなど — 資産ごとに契約と名義変更が必要

(出典:e-Gov法令検索 会社法、民法、国税庁 No.3105、2026年10月23日確認)

会社法467条は、株式会社が「事業の全部の譲渡」や、一定の基準を超える「事業の重要な一部の譲渡」をするとき、効力発生日の前日までに株主総会の決議で契約の承認を受けなければならないと定めています。

種類別の詳しい解説は、次の記事が扱っています。

譲渡と税金|どの税になるか

結論:誰がどんな形で財産を渡すかで、かかる税が変わります。個人が売った場合は所得税・住民税(譲渡所得)、会社が売った場合は法人税など、贈与を受けた側には贈与税、相続で取得した側には相続税が、それぞれ問題になる場合があります。

場面 主な税 国税庁の説明(要点)
個人が資産を売って利益が出た 所得税・住民税(譲渡所得) 土地、建物、株式、機械器具などが対象。有償無償を問わず所有権が移転する行為が譲渡(No.3105)
個人が贈与を受けた 贈与税 暦年課税は、1年間の贈与額の合計から基礎控除110万円を引いた額に課税(No.4402)
相続・遺贈で取得した 相続税 基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数(No.4152)

(出典:国税庁タックスアンサー No.3105、No.4402、No.4152。いずれも令和8年4月1日現在法令等として確認した内容。2026年10月23日確認)

注意点が3つあります。

  • 贈与税は、原則として個人が贈与を受けたときの税です。法人から贈与を受けた場合は所得税の対象になると国税庁は説明しています(No.4402)。
  • 譲渡所得は、資産の種類によって計算や税率が異なります。たとえば土地・建物・上場株式などは別の課税方法です(No.3105)。
  • 会社(法人)が資産や事業を売った場合は譲渡所得にはならず、売却益が会社の所得として法人税などの対象になります(事業譲渡では売り手は会社です。詳しくは会社売却の税金)。

会社や事業を売る場合の具体的な税率と手取りの計算は、会社売却の税金で扱っています。自分のケースでどの税がいくらかかるかは、税理士に確認してください。

M&Aでの「譲渡」

結論:M&Aで「譲渡」と言うときは、多くの場合、株式譲渡か事業譲渡のことです。会社ごと渡すのが株式譲渡、事業の一部または全部を渡すのが事業譲渡です。

M&Aとは、会社や事業を売り買いして経営を引き継ぐ取引の総称です。基本はM&Aとは、売る側の全体像はM&A売却の完全ガイドで解説しています。

どちらの方法を選ぶかで、手続き、税、引き継げる範囲が変わります。選び方の整理は個人事業主と法人のスキーム比較にまとめています。

譲渡する前の確認点

結論:どの種類の譲渡でも、渡すものが自分のものか、相手に渡せる状態か、名義はどうなるかを先に確認します。

  • 何を渡すのかを、契約書で特定する(株式なら銘柄と数、事業なら範囲)
  • 売買代金や引き渡しの時期など、条件を書面に残す
  • 譲渡に承認や決議が必要でないか確認する(譲渡制限株式、事業譲渡など)
  • 名義変更や契約の引き継ぎが必要なものは、手続きの方法を確認する
  • 税の扱いを、譲渡する前に税理士へ確認する

よくある質問

譲渡とは何ですか?

財産や権利を他人に移すことです。有償か無償かは問いません。国税庁は、税法上の譲渡を、有償無償を問わず資産の所有権が移転する行為として説明しています。

譲渡と売却の違いは何ですか?

譲渡のほうが広い言葉です。売却は、代金を受け取って財産を渡す場合を、売る側から見た言い方です。譲渡には、代金を受け取らない贈与なども含まれます。

譲渡と贈与の違いは何ですか?

贈与は、財産を無償で与える約束で、譲渡の中の一形態です(民法549条)。対価があるかどうかで、売買と贈与を分けて考えます。

相続は譲渡にあたりますか?

一般に、相続は譲渡とは区別して扱います。相続は、亡くなった人の権利義務を相続人が当然に引き継ぐものです(民法896条)。当事者が合意して渡す売却や贈与とは成り立ちが異なります。税も、相続税の対象になる場合があります。

譲渡すると税金はかかりますか?

場合によります。個人が資産を売って利益が出れば譲渡所得として所得税・住民税が、会社が売った場合は売却益に法人税などが問題になります。贈与を受けた側には贈与税がかかる場合があります。個別のケースは税理士に確認してください。

まとめ|譲渡は総称。何を移すかで詳細を選ぶ

譲渡は、財産や権利を他人に移す広い言葉で、売却・贈与はその一形態です。

要点は次の3つです。

1. 譲渡は総称。 有償か無償かを問わず、持ち主が変わることを指します。

2. 違いは対価と成り立ちで見る。 対価があれば売却・売買、なければ贈与。相続は亡くなったことで起きる承継です。

3. 種類で根拠と手続きが変わる。 株式は会社法127条、事業は会社法467条、債権は民法466条が関わります。

次に読む記事は、目的で選べます。譲渡の全体像はM&Aとは、税の計算は会社売却の税金、スキーム選びは個人事業主と法人のスキーム比較です。

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