電気工事 M&A 事業承継 業界動向

電気工事業界の最新動向2026|後継者不在57.3%・2024年問題・倒産最多が迫る再編の波

「電気工事業界は今どうなっているのか」——倒産が増えている、人手が足りない、後継者がいない、銅や電線が値上がりしている……断片的な見出しは目にしても、出典付きで整理された全体像はなかなか見当たりません。本記事は、電気工事業界の“今”を①市場の捉え方 ②担い手 ③足元の経営環境 ④下請構造・単価 ⑤M&A・事業承継という5つの定点観測項目で、公的統計・調査会社データをもとに中立に整理します。「だから将来どうなるか/今が売り時か」という解釈やEV・再エネ・データセンターの中長期見通しは断定せず、その判断は電気工事業の将来性をはじめ各専門記事へご案内します。まずは事実を一望し、自分の関心に応じて次に読むべき記事への地図を手に入れてください。

この記事の結論(先に「今の事実」だけ)

本記事は「業界の今=直近マクロ動向」を中立に定点観測するものです。将来性の解釈・中長期見通し・売り時/買い時の判断は将来性ハブへ。

  • 市場規模:電気工事業単独の市場規模(金額)を示す官庁統計は存在せず[C-02]、建設業許可業者数(電気工事業)65,497業者(2025年3月末・前年比+1.8%)・建設業全体483,700業者(同+0.9%)・建設投資で需要規模を近似します[C-10b][C-10]。
  • 担い手:建設業就業者は1997年685万人から 2024年477万人へ減り、55歳以上36.7%・29歳以下11.7%と高齢化が進むうえ、電気の有資格者(主任電気工事士・電気主任技術者)も希少化(2030年に第3種電気主任技術者が約2,000人不足見込み)です[C-03][C-04][C-12]。
  • 経営環境:設備工事業(電気工事を含む近似)の営業利益率は 令和4年度=0.35%(黒字・自己資本比率42.64%・粗利29.46%=5区分最高) で、粗利は厚いが営業利益は薄い構造。加えて2024年問題・公共工事設計労務単価13年連続上昇(24,852円・+6.0%)・銅/電線/資材高という原価圧があります[C-05][C-05b][C-05c][C-11r][C-12b]。
  • 事業承継:建設業の 後継者不在率57.3%(全業種最高水準)、休廃業・解散は2024年69,019件(建設業8,162件が業種別最多・黒字51.1%・経営者平均71.3歳)で、「畳む」以外に第三者承継(M&A・令和6年度成約2,132件・過去最高)という出口が広がっています[C-01][C-08b][C-09][C-11]。

電気工事業界の今2026定点観測ダッシュボード:市場規模は許可業者数65497で近似・担い手477万・55歳以上36.7%・電気主任技術者2000人不足・設備営業利益率0.35%黒字・後継者不在57.3%・休廃業8162件

図解F1:電気工事業界の“今”の定点観測ダッシュボード。市場規模は電気工事単独の金額統計が無く、許可業者数・建設投資で近似。利益率は設備工事業(電気工事含む近似)の令和4年度0.35%(黒字)。将来性の解釈は別記事へ。


§1 電気工事業界の市場規模と事業者数 — 「電気工事単独の統計は無い」という前提から

まず「電気工事業の市場規模は何兆円か」という問いから入りましょう。ただし、ここには最初に押さえておくべき注意点があります。何が分かって何が分からないかを、正直に確認します。

電気工事業とは、建築物や構造物の電気設備(配線・受変電・照明・動力・通信など)を施工し、保守する許認可ビジネスです。日本標準産業分類では「建設業>中分類08 設備工事業>081 電気工事業」に分類されます[C-02]。請負金額500万円以上の電気工事には建設業許可(電気工事業)が必要で、電気工事業は土木・建築・電気など指定建設業7業種の一つです[C-09b]。さらに、後述のとおり電気工事業法に基づく登録(みなし登録)と各営業所の主任電気工事士という、もう一つの免許の層が重なる労働集約型の業種です[C-09b]。

電気工事単独の「市場規模○兆円」を示す官庁統計は存在しない

結論から言えば、電気工事業だけを切り出して金額(市場規模)を示す官庁統計は存在しません[C-02]。電気工事業は日本標準産業分類で「設備工事業」のなかに位置づけられますが、経済センサスや建設工事施工統計は母数の定義が異なり、電気工事だけを切り出した金額は公的には整理されていないのです[C-02]。そのため、「電気工事市場は○兆円」と断定する記事を見かけたら、その金額がどの統計に基づくのかを確かめたほうがよい、というのが中立な見方です。本記事は金額を断定しません。

だから「許可業者数」「建設投資」で需要規模を近似する

金額が出せない代わりに、需要規模の近似として参照できるのが許可業者数です。建設業許可業者数(電気工事業)は65,497業者(2025年3月末・前年比+1.8%)で、平成12年(2000年)の53,743業者からは緩やかな増加基調(対平成12年+21.9%)にあります[C-10b]。電気工事業を含む建設業全体の許可業者数も令和7年3月末で483,700業者(前年同月比+0.9%=微増)と底堅く推移しています[C-10]。

注:この65,497は「建設業許可(電気工事業)の許可業者数」であって、会社数ではありません。1社が複数業種の許可を持つため(複数業種の許可保有が全体の54.0%、1業種のみの保有が46.0%)、許可保有数≠会社数です[C-10b]。業者数の増加は「需要が一定の規模で存在し、近年も縮小していない」ことの近似として扱うに留め、「成長している/斜陽だ」という評価はここではしません。

許可業者数が一定の規模で底堅く続いているという事実は確かですが、その“先”——伸びるのか、二極化するのか、という解釈は別の話です。国がEV充電インフラや再生可能エネルギー、データセンターの新増設を政策的に後押ししているという報道や見通しもありますが、それを電気工事の追い風としてどう読むか・将来性の見立ては、電気工事業の将来性で扱っています[C-15]。相場や売却価格の目安は電気工事会社のM&A相場へ。


§2 担い手の動向 — 就業者の減少・高齢化と電気の有資格者の希少化

需要規模の近似に続いて、担い手=人の動向を見ます。需要があっても、施工する有資格者がいなければ工事は回りません。電気工事は資格の壁が高いぶん、この制約が重い業種です。

建設業就業者の減少と高齢化

電気工事業単独の就業者統計には公的区分がないため、ここでは「電気工事業の担い手となる建設業就業者全体」の動向で接地します。建設業就業者は1997年の685万人をピークに減少が続き、2024年は477万人(ピーク比約69.6%)です[C-03]。技能者に絞ると、1997年の464万人から約303万人まで減っています[C-03]。

担い手は減るだけでなく高齢化しています。建設業就業者は55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%(2024年・全産業は55歳以上32.4%/29歳以下16.9%)と若年層が薄く[C-04]、技能者に絞ると60歳以上が全体の約25.8%を占め、10年後にはその大半が引退する見込みとされています[C-04b]。

注:55歳以上36.7%は就業者ベース(2024年)、25.8%は技能者ベース(令和6年)と、対象が異なる指標です。いずれも「建設業全体の高齢化」を示すもので、電気工事業単独の数値ではありません。混同しないよう併記しています。

電気の有資格者の希少化(電気工事固有)

建設業全体の人手不足に加えて、電気工事には電気の有資格者が二重に希少化するという固有の制約があります。

電気工事業を営むには、各営業所に主任電気工事士(第一種電気工事士、または第二種電気工事士+免状取得後3年以上の実務経験)を置く必要があります[C-09b]。さらに電気工事業は指定建設業であるため、特定建設業の専任技術者・監理技術者は1級電気工事施工管理技士などの国家資格者に限定されます[C-09b]。加えて、電気設備の保安を担う電気主任技術者は、2030年に第3種が約2,000人不足する見込みとされています(経済産業省2017年調査ベース。有資格者が必要な受電設備は2030年に約909,000件へ増加する見込み)[C-12]。

注:電気主任技術者(電気事業法)・電気工事士(電気工事士法)・電気工事施工管理技士(建設業法)は、それぞれ根拠法の異なる別資格です。混同しないよう注意が必要ですが、いずれも有資格者の高齢化・入職者の減少という構造のなかにあり、「電気の有資格者全般が希少化している」という方向は共通しています[C-12]。電気主任技術者の不足見込みは2017年調査を出典とする「見込み」であり、確定値ではありません。

ここで確認できるのは「担い手が減り高齢化し、電気の有資格者が二重に希少」という現状の事実までです。「だから売り手有利になる」「有資格者ごと買われる」といったM&A的な解釈は§4で軽く触れるに留め、人手不足を踏まえた将来見通しは電気工事業の将来性へ、利益率・年収への影響は電気工事業の利益率・年収へご案内します。


§3 足元の経営環境 — 利益率(黒字だが薄利)・倒産・2024年問題・原価高(労務単価・資材)

需要は底堅い一方で、足元の経営環境は楽観できません。利益率・倒産・規制・原価という4点を、事実として並べます。

利益率は黒字だが薄い(設備工事業の近似で営業利益率0.35%)

電気工事業単独の財務統計が無いため、ここでは「設備工事業(電気工事を含む区分)」で近似します。設備工事業の売上高営業利益率は令和4年度で0.35%(黒字)で、建設業全体の0.33%とほぼ同水準です[C-05]。一方で自己資本比率は42.64%と、建設業5区分のなかで最も高い(最も健全な)水準[C-05b]、売上高総利益率(粗利率)も29.46%と5区分で最も高い水準にあります[C-05c]。

注:ここで読み取れるのは「粗利は厚い(29.46%)が、販管費や労務費を差し引いた営業利益は薄い(0.35%)」という構造です。つまり、人と段取り、そして有資格者をどう束ねるかが収益の鍵になります。なお、業界サイトでよく見る「電気工事の利益率20%」は売上原価だけを引いた粗利率(売上総利益率)のことが多く、販管費まで引いた営業利益率とは別物です。CIICの令和4年度データでいう営業利益率は0.35%であり、粗利率と営業利益率を混同しないよう注意が必要です[C-05][C-05c]。

「黒字だから安泰」「薄利だから将来がない」という解釈はここではしません。利益率の深掘りや電気工事士の年収の実態は電気工事業の利益率・年収、将来性の見立ては電気工事業の将来性へ。

倒産・休廃業は最多水準

倒産(資金繰り等で追い込まれて事業を止める)とは別に、自主的に事業をたたむ「休廃業・解散」も増えています。帝国データバンクによれば、2024年の全国の休廃業・解散は69,019件で2016年以降最多、業種別では建設業が8,162件(前年比+7.0%)で最多でした[C-08b]。注目すべきは、自主廃業する会社の約5割超(51.1%)が黒字、約65.1%が資産超過型、経営者の平均年齢は71.3歳[C-09]という点で、余力を残して畳む会社が少なくありません。

注:「倒産」と「休廃業」は別概念で、いずれも建設業全体の数字です(電気工事業単独の倒産の公的区分はありません)。件数は発行元(東京商工リサーチ/帝国データバンク)・年版で異なるため、本記事はそのつど発行元と年版を明記しています(ここで挙げた休廃業・解散はTDBの2024年集計)。黒字のまま畳む会社が5割超といった“解釈寄り”の論点(畳む余力があるうちに畳む、その許可・有資格者・元請取引という資産は買われうる、等)は、廃業と売却の損得を扱う廃業と売却どっちが得か電気工事業の将来性へ送ります。

電気工事業界の動向因果マップ:需要底堅い(許可65497)↕制約(人手不足685→477万・電気主任技術者2000人不足・後継者難57.3%・原価高24852円)→黒字だが薄利(設備営業利益率0.35%粗利29.46%)→第三者承継増2132件

図解F2:電気工事業界の“今”の因果マップ。底堅い需要と制約(人手不足・有資格者枯渇・後継者難・原価高)が黒字だが薄利(設備営業利益率0.35%/粗利29.46%)に重なり、動向としてM&A・第三者承継が増加。設備=電気工事含む近似・令和4年度、件数は発行元・年版で差。二極化/売り時の判断は将来性ハブへ。

2024年問題・労務単価・資材の原価圧

規制と原価の両面でも負担が増しています。令和6年(2024年)4月1日から、建設業に時間外労働の上限規制(原則 月45時間・年360時間/特別事情でも年720時間)が適用されました[C-11r]。いわゆる「2024年問題」で、労務管理やDX投資の負担増につながっています。

労務原価も上昇しています。公共工事設計労務単価は令和7年3月適用分で13年連続上昇し、全国全職種加重平均は24,852円(前年度比+6.0%)でした[C-12b]。これは公共工事の積算単価であって電気工事業者の実支払賃金そのものではありませんが、人件費の上昇基調を示す一次的な目安になります[C-12b]。銅・電線・資材費についても、企業物価指数(非鉄金属・化学製品)の上昇基調に沿って高止まりしているとされます[C-13]。

注:銅・電線・資材の品目別の具体的な上昇率は公的には特定が難しく、本記事では数値を断定せず「高止まり傾向」という方向性のみをお伝えします[C-13]。

ここまでが足元の経営環境の事実です。これらを「だから二極化する」「淘汰される」と意味づけるのは別の記事の役割です。今後の見立ては電気工事業の将来性へ。


§3.5 下請構造と単価の実態 — 多重下請のなかの価格交渉力

なぜ電気工事は黒字でも薄利になりやすいのか。業界構造の側面から、サブキーワードの一角「電気工事 下請 単価」「現状」に応えて事実を整理します。

多重下請構造のなかにある

電気工事は、元請(ゼネコン・サブコン・ハウスメーカー・工務店・通信会社・管理会社・元請電気工事会社など)から下請・孫請へと仕事が流れる重層下請構造のなかにあることが多い業種です[C-14]。国土交通省は、下位の下請段階で重層化が進むことで「就労環境が悪化する」「労務費が不当に『中抜き』され、適正な対価が支払われないリスク」を指摘しています[C-14]。一方で、自社で元請地位(施主直請け・継続保守契約)を取れる会社や、受変電・系統連系・高難度案件を担える有資格者を抱える会社は、単価・利益率が相対的に高い側面もあります[C-14]。

単価・価格交渉力は小規模ほど弱い

この構造のなかでは、下請中心の小規模な事業者ほど元請に対する価格交渉力が弱く、資材の高止まりや労務単価の上昇を単価へ転嫁しにくくなります(買い手=元請の交渉力が強い構図)[C-14]。元請からの値下げ圧や相見積もりによる価格競争も、薄利の一因です[C-13][C-14]。

注:電気工事の単価そのものは案件・地域・元請/下請の別による差が大きく、一次の単価表は存在しないため、本記事では具体額を出しません。ここでは「重層下請構造のなかで小規模ほど交渉力が弱い」という構造の事実を示すに留めます。

「だから元請化・専門化(受変電/再エネ/保安)・有資格者の確保で交渉力を持てるか」という打ち手や、それが二極化につながるかという論点は電気工事業の将来性、利益率への影響は電気工事業の利益率・年収、参入時の単価競争は独立かM&A買収かへご案内します。


§4【M&A・投資視点】動向としてのM&A・事業承継 — 後継者不在と倒産・第三者承継の“今”

最後に、ここまでの動向がM&A・事業承継の側面でどう現れているかを、事実に絞って見ます。相場・評価・誰が買うか・売り時/買い時といった解釈は扱わず、各専門記事へご案内します。

後継者不在という供給側の事実

建設業の後継者不在率は57.3%(帝国データバンク2025・全業種で最高水準)です[C-01]。ピークの71.4%(2018年)からは14.1pt改善傾向にあり、全国平均(50.1%)よりは高いものの、§2で見た経営者の高齢化(休廃業企業の経営者平均71.3歳)と重なって、後継者がいない会社が一定数あるという供給側の事実があります[C-01][C-09]。電気工事は指定建設業の許可・電気工事業登録・主任電気工事士などの有資格者要件があるため、後継者や有資格者が抜けると許可も登録も維持できなくなるという構造もあります(手続の詳細は許認可承継の記事へ)[C-09b]。

第三者承継(M&A)が動向として増えている

「畳む(廃業)」以外の出口も広がっています。中小企業基盤整備機構の第三者承継(M&A)の成約は令和6年度に2,132件で過去最高を更新しました(全業種・うち成約譲渡企業の業種別で建設業が12.2%)[C-11]。後継者がいなくても「許可・電気工事業登録・有資格者ごと第三者に譲る」という選択肢が、動向として現実的になってきている、ということです。

だから「動向としてのM&A」が増えている

後継者不在(§4)・倒産や休廃業の増加(§3)・有資格者の枯渇(§2)・第三者承継の増加を並べると、電気工事業界でもM&A・事業承継が動向として増えていることが、事実として読み取れます。ただし、ここで断定できるのはそこまでです。

建設業全体のM&A・許可承継の進め方を俯瞰したい場合は建設業のM&A・許可承継の全体像も参考になります。掲載中の案件は掲載中の建設・電気関連のM&A案件一覧からご覧いただけます。

編集部より:動向の数字を、読みすぎない

「電気工事業界の動向は?」と尋ねられると、つい後継者不在57.3%・倒産増・有資格者枯渇・資材高といった数字を並べたくなります。ですが建設・電気工事領域のM&Aの現場で痛感するのは、こうしたマクロの動向は“売りに出る会社が増えている”という供給側の事実として現れる一方、ある会社が高く売れるか・続けられるか・買う価値があるかは、業界の動向ではなく、その会社が指定建設業の許可・1級電気工事施工管理技士・主任電気工事士・電気工事業登録・元請の継続取引・経審の点数をどれだけ束ねて持っているかで決まる、という点です。電気工事は資格の壁が二重に高いぶん、有資格者を抱える会社の希少価値が際立ちます。「業界が薄利だから/倒産が増えているから自社も先がない」と早合点するのも、「EVや再エネで安泰」と楽観するのも、同じくらい危うい。動向は“地ならし”として正しく押さえ、最後の判断は個社の状態と、将来性・相場・承継・廃業損得といった専門の物差しで——というのが現場の順序です。(※本コラムは当社の建設・電気工事領域におけるM&A実務での一般的な所感です)

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§5 よくある質問(FAQ)

Q1. 電気工事業界の今の動向はどうなっていますか? A. 要点は5つです。①市場規模は電気工事単独の官庁統計が無く、許可業者数(電気工事業)65,497業者(2025年3月末・+1.8%)・建設業全体483,700業者(同+0.9%)で需要規模を近似[C-02][C-10b][C-10] ②担い手は建設業就業者が1997年685万人から2024年477万人へ減り、高齢化(55歳以上36.7%)と電気の有資格者の希少化(第3種電気主任技術者が2030年に約2,000人不足見込み)が進行[C-03][C-04][C-12] ③設備工事業(電気工事含む近似)の営業利益率は令和4年度で0.35%(黒字・粗利29.46%)と薄利、倒産・休廃業も最多水準[C-05][C-08b] ④多重下請のなか小規模ほど価格交渉力が弱い[C-14] ⑤後継者不在57.3%・第三者承継2,132件と事業承継が動く[C-01][C-11]。将来性の解釈は電気工事業の将来性へ。

Q2. 電気工事業の市場規模はどのくらいですか? A. 電気工事業だけを切り出して金額(市場規模)を示す官庁統計は存在しません[C-02]。電気工事業は日本標準産業分類で「設備工事業」に含まれ、経済センサスや施工統計とも母数定義が異なるためです。本記事では「○兆円」と断定せず、建設業許可業者数(電気工事業)65,497業者(2025年3月末・+1.8%)[C-10b]や建設業全体483,700業者(同+0.9%)[C-10]、建設投資で需要規模を近似しています。許可保有数は会社数とは一致しません(複数業種の許可保有が54.0%)[C-10b]。

Q3. 電気工事業は人手不足ですか・有資格者は足りていますか? A. 担い手は構造的に減り、高齢化しています。建設業就業者は1997年685万人から2024年477万人へ減少し[C-03]、55歳以上が36.7%・29歳以下が11.7%と若手が薄く[C-04]、技能者は60歳以上が約25.8%を占め10年後に大半の引退が見込まれます[C-04b]。電気工事はさらに、主任電気工事士・1級電気工事施工管理技士・電気主任技術者といった有資格者が必要で、その電気主任技術者も2030年に第3種が約2,000人不足する見込み(経産省2017年調査ベース・見込み)とされ、有資格者が二重に希少化しています[C-09b][C-12]。いずれも建設業全体/全国の値で、電気工事業の担い手もこの母集団に含まれます。

Q4. 電気工事業で倒産・廃業は増えていますか? A. 増加傾向です。帝国データバンクによれば2024年の全国の休廃業・解散は69,019件で2016年以降最多、業種別では建設業が8,162件(前年比+7.0%)で最多でした[C-08b]。自主廃業する会社の約5割超(51.1%)が黒字、約65.1%が資産超過型、経営者の平均年齢は71.3歳で、余力を残して畳む会社も多いのが実態です[C-09]。件数は発行元(TSR/TDB)・年版で異なり、「倒産」と「休廃業」は別概念で、いずれも建設業全体の数字です(電気工事業単独の公的区分はありません)。畳むか売るかの損得は廃業と売却どっちが得かへ。

Q5. 電気工事業の2024年問題とは何ですか? A. 建設業に5年間の猶予を経て、令和6年(2024年)4月1日から時間外労働の上限規制(原則 月45時間・年360時間/特別事情でも年720時間など)が適用されたことを指します[C-11r]。労務管理やDX投資の負担増につながっています。あわせて公共工事設計労務単価が13年連続上昇(令和7年3月適用分で全国全職種加重平均24,852円・前年度比+6.0%)するなど、労務原価の上昇基調も続いています(公共工事の積算単価であり実支払賃金そのものではありません)[C-12b]。

Q6. 電気工事業で後継者不在・事業承継(M&A)は増えていますか? A. 動向としては増えています。建設業の後継者不在率は57.3%(帝国データバンク2025・全業種最高水準)[C-01]で、経営者の高齢化(休廃業企業の平均71.3歳)と重なり[C-09]、「畳む」以外の出口として第三者承継(M&A)が現実的になっています。中小機構の第三者承継成約は令和6年度2,132件で過去最高を更新しました(全業種・建設業12.2%)[C-11]。電気工事は指定建設業の許可・電気工事業登録・有資格者要件があり、後継者や有資格者が抜けると許可・登録の維持が難しくなるため、許可・有資格者ごと譲るM&Aの実益が大きい構造です[C-09b]。ただし「増えている」という動向の事実までで、相場・評価・売り時/買い時の判断は別問題です。相場は電気工事会社のM&A相場、今が売り時かは電気工事業の将来性へ。

Q7. 電気工事業はこの先どうなりますか/今が売り時ですか? A. 本記事は「業界の今」の事実の定点観測に徹しており、将来予測や売り時/買い時の判断は意図的に扱っていません。需要見通し・二極化の見方・EV充電インフラ/再生可能エネルギー/データセンターの追い風の評価・「今が売り時か」の検討は電気工事業の将来性、売却の相場感は電気工事会社のM&A相場で扱っています。


§6 まとめ — “今の事実”を踏まえ、次にどこを読むか

電気工事業界の“今”を5つの定点観測項目で整理しました。要点は次の3つです。

1. 市場規模は電気工事単独の統計が無く、許可業者数(電気工事業)65,497業者(2025年3月末・+1.8%)・建設業全体483,700業者(同+0.9%)・建設投資で近似する[C-02][C-10b][C-10]。需要は一定の規模で底堅く続いている。 2. 担い手は1997年685万人から2024年477万人へ減り、55歳以上36.7%と高齢化、加えて主任電気工事士・電気主任技術者など電気の有資格者が二重に希少化している(第3種電気主任技術者は2030年に約2,000人不足見込み)[C-03][C-04][C-12]。 3. 設備工事業の営業利益率は令和4年度で0.35%(黒字・粗利29.46%=5区分最高・自己資本比率42.64%)と粗利は厚いが営業利益は薄く、倒産・休廃業は最多水準(建設業8,162件・経営者平均71.3歳)、労務単価13年連続上昇(24,852円・+6.0%)・資材高という原価圧も重なり、後継者不在57.3%・第三者承継2,132件と事業承継が動いている[C-05][C-05c][C-08b][C-09][C-12b][C-01][C-11]。

本記事は、これらを「だから将来こうなる」「今が売り時だ」「EVで必ず伸びる」と解釈することは意図的に避けました。その判断は会社ごとに異なり、別の記事の役割だからです。自分の関心に応じて、次の専門記事へ進んでください。

電気工事業界の今を踏まえ次にどこを読むかの関心別交通整理マップ:本記事=中立の定点観測から将来性・M&A相場・許認可承継・廃業vs売却・利益率・新規参入・M&A事例へ

図解F3:本記事=中立の定点観測を起点にした関心別の交通整理マップ。事実の定点観測はここまで、解釈・判断は各専門記事へ(最重要は将来性ハブ)。電気工事クラスター8本のハブ&スポーク双方向化の起点。

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本記事は電気工事業界の動向に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の将来予測・査定額・成約・売却を保証するものではありません。①電気工事業単独の市場規模は官庁統計が存在しないため、建設業許可業者数および建設投資による近似であり断定ではありません ②利益率は設備工事業(電気工事を含む区分)の令和4年度の近似値です ③倒産・休廃業の件数は発行元(TSR/TDB)・年版によって異なり、電気工事業単独の公的区分はありません ④銅・電線・資材の価格は方向性(高止まり傾向)の記載であり具体的な上昇率を断定するものではありません ⑤電気主任技術者の不足見込みは2017年調査を出典とする「見込み」です ⑥EV・再生可能エネルギー・データセンターに関する記載は政策方向性・見通しの存在を示すものであり、電気工事への波及や将来性の評価は各専門記事および専門家へご相談ください。許認可の承継可否は行政書士・行政庁・経済産業省、税務の取り扱いは税理士、契約・法務に関する事項は弁護士へご相談ください。本記事には当社サービス(無料相談)へのご案内を含みます。


出典

  • [C-01] 建設業の後継者不在率57.3%(2025・全業種最高水準/2018年ピーク71.4%から14.1pt改善・全国平均50.1%と混同しない)— 帝国データバンク「後継者不在率動向調査2025」(T2): https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
  • [C-02] 電気工事業単独の市場規模(金額)を直接示す官庁統計は存在しない(電気工事業081は日本標準産業分類で中分類08 設備工事業に含まれ、経済センサス・建設工事施工統計とも母数定義が異なる=許可業者数・建設投資で近似)— e-Stat 日本標準産業分類(電気工事業081)/経済センサス‐活動調査(建設業)/建設工事施工統計(T1): https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/10/03/081
  • [C-03] 建設業就業者 1997年685万人→2024年477万人(ピーク比約69.6%)/技能者464万→約303万人 — 日本建設業連合会「建設業の現状 4.建設労働」(T2): https://www.nikkenren.com/publication/handbook/chart6-4/index.html
  • [C-04] 建設業就業者の高齢化(55歳以上36.7%・29歳以下11.7%/全産業32.4%・16.9%)— 令和7年版 国土交通白書(T1): https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r06/hakusho/r07/html/n1111000.html
  • [C-04b] 60歳以上の技能者は全体の約25.8%(約1/4)で10年後に大半が引退する見込み(技能者ベース/就業者ベース36.7%とは対象が異なる)— 国土交通省「建設業を巡る現状と課題」令和7年(T1): https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001566406.pdf
  • [C-05] 設備工事業(電気工事含む近似)の売上高営業利益率0.35%(令和4年度・黒字/建設業全体0.33%)。※職別工事業の▲0.42%は別区分(塗装が属する)であり用いない — 建設業情報管理センター(CIIC)「建設業の経営分析(令和4年度)」図表75(T2): https://www.ciic.or.jp/wp-content/uploads/2024/01/bunseki_R04.pdf
  • [C-05b] 設備工事業の自己資本比率42.64%(建設業5区分で最も高い=健全/全体39.00%・職別29.79%)— CIIC 同(T2): https://www.ciic.or.jp/wp-content/uploads/2024/01/bunseki_R04.pdf
  • [C-05c] 設備工事業の売上高総利益率(粗利率)29.46%(建設業5区分中最も高い/職別27.64%・全体25.57%)。営業利益率0.35%とは別物 — CIIC 同 図表15/75(T2): https://www.ciic.or.jp/wp-content/uploads/2024/01/bunseki_R04.pdf
  • [C-08b] 2024年の全国 休廃業・解散 69,019件(2016年以降最多)・建設業8,162件(前年比+7.0%・業種別最多)— 帝国データバンク「2024年『休廃業・解散』動向調査」(T1): https://www.tdb.co.jp/report/economic/kyuhaigyo_kaisan2024/
  • [C-09] 自主廃業(休廃業・解散)企業の黒字割合51.1%・資産超過型65.1%・経営者平均71.3歳(2024)— 帝国データバンク 同(T1): https://www.tdb.co.jp/report/economic/kyuhaigyo_kaisan2024/
  • [C-09b] 電気工事業は建設業許可〔電気・指定建設業7業種の一つ・500万円以上〕+電気工事業法の登録/みなし登録(法34条)+各営業所の主任電気工事士〔第一種電気工事士、または第二種電気工事士+実務3年以上〕が必要な許認可ビジネスで、指定建設業ゆえ特定建設業の専任技術者・監理技術者は1級電気工事施工管理技士等の国家資格者に限定=二重免許構造 — 国土交通省「建設業の許可とは(指定建設業)」/経済産業省 関東東北産業保安監督部 みなし登録/登録電気工事業者(T1): https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000082.html / https://www.safety-kanto.meti.go.jp/electric/kojigyo/e_minashi_touroku01.html
  • [C-10] 建設業許可業者数は令和7年3月末で483,700業者(前年同月比+0.9%=微増)で底堅く、電気工事業はこの設備工事業のカテゴリーに含まれる — 国土交通省「建設業許可業者数調査(令和7年3月末)」(T1): https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001889275.pdf
  • [C-10b] 電気工事業の建設業許可業者数65,497業者(2025年3月末・前年比+1.8%/平成12年53,743→令和7年65,497・対平成12年+21.9%)。許可保有数≠会社数(1業種のみ222,560業者=46.0%/複数業種261,140業者=54.0%)— 国土交通省「建設業許可業者数調査(令和7年3月末)」表-3 業種別許可業者数の推移(T1): https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001889275.pdf
  • [C-11] 中小機構の第三者承継(M&A)成約 令和6年度2,132件(過去最高・全業種/成約譲渡企業の業種別で建設業12.2%)— 中小企業基盤整備機構 プレスリリース(2025-05-30)(T1): https://www.smrj.go.jp/press/2025/f7mbjf000000dnpt-att/20250530_press01.pdf
  • [C-11r] 令和6年(2024年)4月1日から建設業に時間外労働の上限規制が適用(5年間の猶予後/原則 月45時間・年360時間など)= 2024年問題 — 厚生労働省(T1): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html
  • [C-12] 経済産業省2017年調査で2030年に第3種電気主任技術者が約2,000人不足する見込み(有資格者が必要な受電設備は2030年に約909,000件へ増加見込み)。電気主任技術者(電気事業法)・電気工事士(電気工事士法)・電気工事施工管理技士(建設業法)は別資格 — 経済産業省 産業保安グループ 電力安全課 資料/日経エネルギーNext(T1>T2): https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/hoan_seido/pdf/008_02_00.pdf / https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00007/00022/
  • [C-12b] 公共工事設計労務単価は令和7年3月適用分で13年連続上昇・全国全職種加重平均24,852円・前年度比+6.0%(公共工事の積算単価=労務原価の方向性で電気工事業者の実支払賃金そのものではない)— 国土交通省 報道発表(令和7年2月14日)(T1): https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo14_hh_000001_00261.html
  • [C-13] 銅・電線・資材費は企業物価指数(非鉄金属・化学製品)の上昇基調に沿う高止まり(品目別の具体的な上昇率は公的に特定が難しく、本記事では方向性のみ)— 日本銀行 企業物価指数(T1・品目別実数は未特定): https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/
  • [C-14] 電気工事は元請(ゼネコン・サブコン・ハウスメーカー・工務店・通信会社・管理会社等)→下請の重層下請構造のなかにあり、国交省が「労務費の中抜き・適正な対価が支払われないリスク」を指摘。下請中心の小規模ほど価格交渉力が弱く原価上昇を単価へ転嫁しにくい(元請地位・受変電/高難度施工を担う有資格者保有は相対的に有利の側面も)— 国土交通省「重層下請構造の改善に向けた取組について」(T1): https://www.mlit.go.jp/common/001236203.pdf
  • [C-15] 国はEV充電インフラ(2030年30万口目標)・再生可能エネルギー(2040年度4〜5割・太陽光23〜29%)・省エネを政策的に後押しし、データセンター新増設で電力需要が増える見通し(2034年度8,524億kWh・2024年度比+6.2%)という政策方向性/見通しが存在する(本記事では存在のみ・解釈/評価は将来性記事へ)— 資源エネルギー庁 エネルギー基本計画の解説/データセンターの省エネ解説(T1): https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energykihonkeikaku2025_kaisetu03.html / https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/data_center2026.html