電気工事 M&A 事業承継 許認可承継

電気工事業の許可は承継できる?経管が抜けると即・継続不能=許可のタイムリミット【2026】

更新: 2026年6月14日

会社をたためば、長年の建設業許可(電気工事業)も、積み上げた経営事項審査(経審)の評点も施工実績も、長く支えてくれた有資格者も——すべてゼロに戻ります。しかも、たたむと決める前に、経営業務管理責任者(経管)であるあなた自身が引退・入院した瞬間、許可は要件を欠きます。後継者がいないから出口を探す。あるいは買い手側として「許可・経審・有資格者ごと取り込めるなら買いたい」と考える。本記事は、電気工事会社の建設業許可(指定建設業)・経審・経管・専任技術者(電気工事施工管理技士等)・電気工事業登録の主任電気工事士を、株式譲渡と事業譲渡でどう承継・維持・消滅するかと、経管・専任技術者が抜けたとき許可は何日で詰むのかを、スキーム別・逆算で整理します。許可の「取り方」ではなく、M&A・事業承継で「許可・経審・人材ごと引き継ぐ/維持する」実務に絞ってお伝えします。

この記事の結論(先に要点だけ)

  • 電気工事業は「指定建設業」7業種の一つで、特定建設業の専任技術者・監理技術者は国家資格者(1級電気工事施工管理技士等)・大臣特別認定者に限定され、指導監督的な実務経験のみでは要件を満たせません[C-01]。加えて電気工事の施工には電気工事業法の登録/みなし登録+各営業所の主任電気工事士(第一種/第二種電気工事士)が必要な、二重免許構造です[C-14]。
  • 経営業務管理責任者(経管=常勤役員等)・専任技術者は許可の必須要件で、満たさなくなると要件を欠きます。退任・死亡などで不在になった場合、後任を立てて事実発生から原則2週間以内に変更届を出せば許可は継続できますが、後任を立てられなければ許可は失効・取消し対象になり得ます[C-15](建設業法7条1号/2号・11条4項/5項・29条1項1号。期限・運用は許可行政庁により異なります)。
  • 株式譲渡なら法人格が存続するため、建設業許可・許可番号・経審評点・施工実績は会社に帰属したまま原則継続します(経管・専技兼務者の退任時は変更届などの対応)[C-05]。
  • 事業譲渡・合併・分割では、建設業許可は当然には移転できません。令和2年(2020年)10月施行の「事前認可」(建設業法17条の2)を承継日より前に受ければ、許可・許可番号・経審結果ごと地位を引き継げますが、認可を受けない/要件を満たさない場合は買い手の再取得まで無許可の空白が生じ、経審の受審し直し・実績の積み直しになり得ます[C-04][C-04b]。
  • 許可・経審・人材は廃業すればゼロ、承継すれば値が付く“見えない時限資産”。しかも経管・有資格者が生きているうち・在籍するうちにしか売れません。可否や申請期限は許可行政庁で異なるため、個別は行政書士・許可行政庁へ確認のうえ、まずは自社の出口を整理することから始めましょう。

§1 電気工事の建設業許可とは — 指定建設業+電気工事業登録の二重免許(経管・専任技術者・主任電気工事士)

承継の話に入る前に、電気工事の許可が「何で構成され、なぜ希少性が高いのか」を押さえておきます。経管・専任技術者・主任電気工事士を混同すると、承継ミスの元になるからです。

電気工事の建設業許可とは、電気の配線・設備工事を一定規模以上で請け負うために必要な、指定建設業「電気工事業」の建設業許可をいいます。ただし電気工事会社は、これとは別に電気工事業法の登録(みなし登録)も必要で、許可の維持には経営業務管理責任者(経管)・専任技術者・主任電気工事士という複数の人材要件が深く関わります。順に分けて理解しておきます。

第1点は、建設業許可「電気工事業」が「指定建設業」7業種の一つだということです。指定建設業は、土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業の7業種で(建設業法施行令第5条の2)、施工技術の総合性などから特に施工の適正を確保すべきとされています[C-01]。この指定建設業について特定建設業の許可を受けようとする場合、設置しなければならない専任技術者は、国家資格者(1級電気工事施工管理技士等)または国土交通大臣の特別認定者に限定され、指導監督的な実務経験のみでは要件を満たせません[C-01]。1級・2級電気工事施工管理技士は、技術検定(建設業法第27条)に基づく国家資格で、電気工事業の専任技術者・監理技術者・主任技術者になり得ます(指定建設業ゆえ、特定建設業の専任技術者・監理技術者は1級が必須)[C-02]。ここが塗装工事業との決定的な違いです。塗装工事業は指定建設業ではないため、実務経験を積み重ねた者でも専任技術者になり得ますが、電気工事はそれが認められません。だからこそ電気工事は、有資格者そのものが希少な資産になりやすいのです。

第2点は、許可の必須要件としての経営業務管理責任者(経管)と専任技術者です。建設業許可には、経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する常勤役員等(経管)を置くこと(建設業法7条1号)と、営業所ごとに専任技術者(営業所技術者)を専任で置くこと(同2号)が求められます[C-15]。中小の電気工事会社では、経管を社長一人が兼ねていることが少なくありません。この点が、後述する「許可のタイムリミット」の核心になります。

第3点は、電気工事業法による登録/みなし登録と主任電気工事士です。電気工事の施工には、建設業許可とは別に電気工事業法(適正化法)の登録が必要で、各営業所に主任電気工事士を選任しなければなりません。主任電気工事士になれるのは、①第一種電気工事士、または②第二種電気工事士の免状を受けた後に電気工事に関し3年以上の実務経験を有する者に限定されます。建設業許可を受けた事業者が電気工事業も営む場合は「みなし登録電気工事業者」として届け出ます(電気工事業法第34条)[C-14]。ここで重要なのは、電気工事施工管理技士は主任電気工事士にはなれないという点です。専任技術者(建設業許可)の要件と、主任電気工事士(電気工事業登録)の要件は別系統であり、混同は致命的です。

第4点は、経営事項審査(経審)です。経審は、公共性のある施設・工作物の建設工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が受けなければならない、建設業法第27条の23に基づく客観的事項の審査制度です[C-03]。経営状況・経営規模・技術力(Z=技術職員数や有資格者数等)・社会性などを点数化(P点)したもので、公共工事やゼネコン・サブコンとの元請取引の「入口」になります。なお、1件の請負代金が500万円未満の軽微な工事(建築一式は1,500万円未満等/いずれも消費税込み)は建設業許可なしでも施工できますが[C-06]、一定規模以上を請け負う電気工事会社にとっては、許可・経審・有資格者が事業の土台になります。

電気工事=二重免許の構造図:①建設業許可(指定建設業)=経管+専任技術者(国家資格者)/②電気工事業登録=主任電気工事士(第一種/第二種電気工事士)。どれか1つ欠けると許可・登録が維持できない

図解F2:電気工事は二重免許構造。①建設業許可(指定建設業)=経管+専任技術者(国家資格者)/②電気工事業登録=主任電気工事士(第一種/第二種電気工事士)。専任技術者と主任電気工事士は別系統で、どれか1つ欠けると許可・登録の維持に支障が生じ得ます。

このように電気工事は、指定建設業ゆえに有資格者の確保が許可維持に直結し、さらに電気工事業登録の主任電気工事士が別系統で必要な「二重免許ビジネス」です。新規参入では一朝一夕に揃わないこれらの蓄積が、承継時には“見えない資産”として評価の土台になります。

電気工事業界の需要動向や将来性の全体像は、電気工事の将来性 — 需要動向と二極化で俯瞰しています。本記事(許可の承継実務)と併せてご覧ください。買い手目線で「ゼロから許可・資格を取って独立開業するか、許可・経審ごと会社を買収するか」を比較したい方は、電気工事業の参入は独立開業かM&A買収かもご覧ください。許可・有資格者・継続取引が実際の買収でどう評価されたか(公表事例)は電気工事会社のM&A・事業承継 成約事例(誰が・なぜ買うのか)で確認できます。

注:電気工事の許可要件(経管・専任技術者など)や経審の細目、電気工事業登録・主任電気工事士の要件は、許可行政庁・所管行政庁で運用が異なる場合があります。個別の要件・手続きは行政書士・許可行政庁へご確認ください。


§2 なぜ今「許可ごと承継」が増えているか — 二重免許の希少性・後継者不在・人手不足が生む買い手

承継スキームの各論に入る前に、なぜ「許可・人材ごと譲る/買う」需要が高まっているのかを整理します。

第一に、二重免許の希少性が参入障壁=価値になっています。電気工事は指定建設業ゆえ、特定建設業の専任技術者・監理技術者が国家資格者(1級電気工事施工管理技士等)に限定され、実務経験のみでは要件を満たせません[C-01][C-02]。さらに電気工事業登録の主任電気工事士(第一種/第二種電気工事士)も別系統で必要です[C-14]。有資格者が二重に効くため、ゼロから許可・登録・経審・人材を揃えるには時間がかかります。だからこそ「会社ごと(=許可・有資格者ごと)取り込みたい」買い手が動きやすくなっています。

第二に、後継者問題と人手不足です。建設業の後継者不在率は57.3%(2025年)で、全業種のなかでも最も高い水準にあります(ピークの71.4%(2018年)からは改善傾向/全国平均は50.1%)[C-07]。職人の高齢化と採用難も重なり、「人材・許可・経審ごと買う」動機が買い手側に生まれています。建設業許可業者数自体は令和7年(2025年)3月末で483,700業者(前年同月比+0.9%)と底堅く推移しており[C-08]、需要そのものが細っているわけではありません。

第三に、買い手のタイプの広がりです。電気設備の更新需要に加え、再生可能エネルギー・データセンターの電源工事・EV充電インフラ・GX(省エネ)改修などの需要は中長期で堅調とみられ、こうした需要を取り込みたい同業・サブコン・ビル管理・通信工事・空調設備・太陽光/再エネ事業者・ゼネコンなどが、電気工事会社を「許可・有資格者ごと」欲しがる傾向があります(将来の件数増を断定するものではなく、あくまで足元の方向性です)[C-08]。

需要は堅調でも続ける体力が削られ、後継者問題が重なる——許可・有資格者が健在なうちに「許可ごと譲る」需要と「許可ごと買う」需要が、同時に高まっている地合いといえます。


§3 株式譲渡 vs 事業譲渡 — スキーム別・許可/経審/実績/経管/専任技術者/主任電気工事士はどう残る・消えるか

ここが本記事の中核です。電気工事の許可・経審・施工実績・経管・専任技術者・主任電気工事士が、M&Aのスキーム別にどう動くのかを整理します。金額や相場の話ではなく、「何がどのスキームで残り、どのスキームで手続きが要るか」をマトリクスで逆引きできるようにします。

株式譲渡 — 法人格が変わらないので許可も経審も実績も原則そのまま残る

株式譲渡は、株主(オーナー)が交代するだけで会社そのものは存続します。法人格が変わらないため、建設業許可も許可番号も、会社に蓄積された経審評点も、施工実績も、会社に帰属したまま原則として継続します[C-05]。電気工事業の登録(みなし登録)も法人格不変で会社に残ります。買い手から見れば、許可・経審・実績をまとめて取り込めるのが株式譲渡の大きな利点で、事業譲渡より高値・短期になりやすい構造的理由がここにあります。

ただし、許可の「要件」は維持し続ける必要があります。たとえば経営業務管理責任者(経管)や専任技術者を旧オーナーが兼務していた場合、その人が退任すると要件が欠けかねません。役員変更・経管/専技の変更などは別途、変更届などの対応が必要です[C-05][C-15]。とくに電気工事は指定建設業ゆえ、専任技術者=1級電気工事施工管理技士等の常勤性維持が許可維持の前提になります。加えて、各営業所の主任電気工事士(第一種/第二種電気工事士)の維持も必要です。有資格者が一斉に退職すれば、株式譲渡で許可が会社に残っていても、許可・登録の維持に支障が生じうる点には注意が必要です[C-02][C-14]。

事業譲渡・合併・分割 — 許可は移転できず、事前認可or再取得=空白・経審/実績の再構築リスク

事業譲渡・合併・分割では、会社の器が変わるため、許可は当然には移りません。ここで使えるのが、令和2年(2020年)10月1日施行の「事業承継等に関する認可制度」(建設業法17条の2)です[C-04]。

この制度では、譲渡人と譲受人があらかじめ(承継日より前に)許可行政庁の認可を受けたとき、承継日に譲受人が譲渡人の「建設業者としての地位の全部」を承継できます[C-04]。改正前は、いったん新規に許可を取り直す必要があり、新しい許可が下りるまでの間に無許可の空白期間が生じて不利益が出ていました。事前認可を受けることで、許可番号や経審の結果も含めて、空白を生じることなく地位を引き継げるようになっています[C-04]。

逆にいえば、事前認可を受けない/要件を満たさない場合は、買い手が新規に許可を取得することになり得ます。その場合、許可が下りるまでの無許可の空白に加え、経審を受審し直し、施工実績もゼロから積み直すことになり得るため、これが大きな値引き要因になります[C-04b]。

事前認可には、いくつかの制約があります。

  • 全部承継が原則です。承継者は被承継者の建設業の「全て」を承継する必要があり、一部の業種だけを承継することはできません(不要な業種は承継日より前に一部廃業届を出すなどの対応が必要です)[C-04b]。
  • 一般・特定の組合せ制約があります。承継は、同一業種で一般・特定の区分が同一であれば可能ですが、区分が異なる場合は承継できません(異業種間の承継は可能です)[C-04b]。
  • 承継者・相続人が許可要件等を備えていることが必要です。承継される業種の営業所技術者などは、承継予定日に原則として業種ごとに引き続き常勤している必要があります[C-04b]。★電気工事は指定建設業ゆえ、承継先(買い手)が専任技術者=1級電気工事施工管理技士等(国家資格者)を具備していることが、事前認可の前提になります[C-01][C-04b]。
  • 電気工事業登録は承継先で別途対応が必要です。建設業許可の承継とは別に、承継先で電気工事業のみなし登録の届出と、各営業所の主任電気工事士(第一種/第二種電気工事士)の確保が求められます[C-14][C-04b]。
  • 承継者は許可番号を引き継げる(無許可業者へ承継される場合は従前の許可番号が引き継がれる)ほか、被承継者の決算報告(事業年度終了届)の提出義務も承継します[C-04b]。

申請期限には注意が必要です。事前認可の申請受付期限は許可行政庁によって異なります。関東地方整備局の手引では、事業承継の事前認可申請は「承継予定日の90日前まで」(標準処理期間90日)とされています[C-04c]。これはあくまで大臣許可窓口の一例で、都道府県知事許可や他の地方整備局では期限・運用が異なります。「実行してから手続き」では間に合わないため、スケジュールの逆算と、許可行政庁・行政書士への個別確認が欠かせません。

相続・法人成り — 17条の3(相続は死後30日以内)

個人事業として電気工事業を営んでいた方が亡くなった場合は、建設業法17条の3により、その相続人が死亡後30日以内に認可を申請し、認可を受けることで建設業者としての地位を承継できます[C-04d]。個人事業の法人成り(法人化)も、事業譲渡と同様に事前認可の枠組みで許可番号・経審結果を移行できる場合があります(個別の扱いは許可行政庁へ)[C-04d]。

スキーム別 承継マトリクス(本記事の中核)

電気工事の許可・経審・実績・経管・専任技術者・主任電気工事士が、スキーム別にどう動くかをまとめると次のようになります。自社のケースを当てはめて逆引きしてください。

| 承継される要素 \ スキーム | 株式譲渡(法人格存続) | 事業譲渡 | 合併・分割 | 相続(個人事業) | |—————————|———————-|———-|————|——————| | ① 建設業許可「電気工事業」(指定建設業)・許可番号 | 会社に帰属したまま原則継続。経管/専技兼務者の退任時は変更届[C-05][C-15] | 17条の2の事前認可(あらかじめ)で許可番号ごと全部承継可/認可を受けなければ買い手の新規取得=空白[C-04][C-04b] | 17条の2の事前認可で全部承継可[C-04] | 17条の3:死亡後30日以内の認可で承継[C-04d] | | ② 経審評点(27条の23・P点) | 会社に蓄積されたまま原則継続(買い手は経審ごと取り込める)[C-03][C-05] | 事前認可で地位の全部を承継すれば引き継げる/認可を受けなければ受審し直しになり得る[C-04][C-04b] | 同左[C-04b] | 認可で承継[C-04d] | | ③ 施工実績・元請継続取引 | 会社に蓄積されたまま原則継続[C-05] | 事前認可で地位を承継すれば原則引継/認可を受けなければゼロから積み直しになり得る[C-04b] | 同左[C-04b] | 認可で承継[C-04d] | | ④ 経営業務管理責任者(経管=常勤役員等) | 社長が経管を兼ねていた場合、退任で要件を欠く=後任で2週間以内に届出が必要・後任不在なら取消し対象[C-15][C-15b] | ★承継先が経管要件を具備していることが事前認可の前提[C-04b][C-15b] | 同左[C-04b][C-15b] | 相続人が許可要件を具備していること[C-04b] | | ⑤ 専任技術者(電気工事施工管理技士=国家資格者) | 会社に残るが、兼務退任・高齢有資格者の引退で常勤性が揺らぐ=常勤性維持が前提・不在なら2週間以内に変更届[C-02][C-15] | ★承継先が国家資格者を具備していることが事前認可の前提[C-01][C-04b] | 同左[C-01][C-04b] | 相続人が許可要件を具備していること[C-04b] | | ⑥ 電気工事業登録/みなし登録・主任電気工事士 | 法人格不変で会社に残る/許可失効で連動失効しうる。主任電気工事士の各営業所選任は維持必須[C-14][C-05] | 承継先で別途対応(みなし登録の届出+主任電気工事士の確保)が前提[C-14][C-04b] | 同左[C-14][C-04b] | 承継先で別途対応[C-14][C-04b] |

電気工事の許可・経審・実績・経管・専任技術者・電気工事業登録×M&Aスキーム別の承継分岐:株式譲渡は会社に帰属したまま原則継続、事業譲渡・合併分割は許可は移転不可で事前認可or再取得・経審/実績は再構築・電気工事業登録は別途対応・専任技術者と主任電気工事士の確保が前提

図解F1:電気工事の許可・経審・実績・経管・専任技術者・電気工事業登録×M&Aスキーム別の承継分岐。株式譲渡=会社に残り原則継続/事業譲渡=許可は移転不可・事前認可or再取得・電気工事業登録は別途対応・専任技術者と主任電気工事士の確保が前提。可否・期限は許可行政庁により異なります。

なお、ここでは電気工事に特化して整理しています。建設業全般のM&A・建設業許可承継(株式譲渡と事業譲渡の汎用的な違い、デューデリジェンス(DD)、基本合意などの全体像)は、建設業のM&A・許可承継の全体像で詳しく解説しています。


§3.5 許可のタイムリミット — 経管・専任技術者が1日でも抜けると要件欠落、2週間以内に後任で変更届を出せなければ即・継続不能

電気工事M&Aで最も見落とされやすいのが、ここです。許可“だけ”を引き継げても、経管・専任技術者(許可の根幹人材)を確保し続けられなければ、許可は維持できません。しかもその猶予は、驚くほど短いのです。

繰り返しになりますが、経営業務管理責任者(経管=常勤役員等・建設業法7条1号)・専任技術者(同2号)は、建設業許可の必須要件です[C-15]。常勤・営業所ごとが前提であり、これらを満たさなくなると、その時点で許可の要件を欠きます。

退任・死亡・健康問題などで経管や専任技術者が不在になった場合、法は次のように定めています。後任を立てられる場合は、7条1号・2号の基準を満たさなくなったときから2週間以内に届出を行えば(建設業法11条5項。営業所技術者の交代は同4項)、従前の許可を継続できます[C-15]。一方、要件を欠いたまま後任を立てられなければ、建設業法29条1項1号により許可は取消し対象になり得ます。取り消されれば500万円以上の工事が請けられなくなり、事実上の廃業に追い込まれます。そして廃業に至る場合は、建設業法12条により30日以内に廃業等の届出が必要です[C-15]。

問題は、多くの中小電気工事会社では、経管を社長一人が兼ねていることです。経管は経営経験等の要件があり「誰でもすぐなれる」わけではありません。社長の引退・入院・急逝で、許可が即・要件欠落に陥りやすいのが実情です。なお、令和2年の法改正で、経管は「常勤役員等+これを直接補佐する者」を置くチーム型(補佐体制)でも要件を充たし得るようになりました[C-15b]。ただし補佐者には財務管理・労務管理・業務運営の経験など相応の要件があり、実務上は厳しい面もあります。「社長一人なら必ず詰む」とは言えませんが、「後任の道を確保しておかなければ詰みやすい」のは確かです。

さらに電気工事の場合は、電気工事業登録の主任電気工事士も各営業所に選任が必須です。第一種電気工事士、または第二種電気工事士(免状取得後3年以上の実務経験)が抜ければ、登録の維持にも支障が生じます[C-14]。建設業許可の専任技術者とは別系統で、二重に効くのです。

許可のタイムリミット逆算タイムライン:経管/専任技術者が不在に→原則2週間以内に後任で変更届→出せれば許可継続/出せなければ失効・取消し対象=事実上の廃業(30日以内に廃業届)。だから人材が生きているうちに株式譲渡で許可・経審・実績ごと残す

図解F3:許可のタイムリミット逆算タイムライン。経管/専任技術者が不在になると要件を欠き、原則2週間以内に後任で変更届を出せれば許可継続、出せなければ失効・取消し対象=事実上の廃業(30日以内に廃業届)。だから“人材が生きているうち・在籍するうち”に株式譲渡で許可・経審・実績ごと残すのが確実です。期限・運用は許可行政庁により異なります。

ここから、売り手・買い手それぞれに示唆があります。

売り手の方への示唆。まず、経管・専任技術者・主任電気工事士の年齢・常勤性・後任候補の有無を“見える化”しておくことです。とくに経管が社長一人なら、最優先で承継スキームを決めること。「畳んでから考える」では、経管が抜けた瞬間に許可が要件を欠き、間に合わなくなります。経管・有資格者が生きているうち・在籍するうちに、株式譲渡で会社ごと許可・経審・実績・人材を残すのが、最も確実な出口です。

買い手の方への示唆。経管・専任技術者・主任電気工事士の承継可否を、early DD(初期の精査)の段階で確認しておくことです。名義借り・属人化・退職予定は、致命的な減点要因になり得ます(詳しくは§4で後述します)。許可・経審の数字だけを見て安心せず、許可を支える人材が承継後も残るかまで踏み込むことが欠かせません。

「許可は引き継げる」と決めつけず、「許可を維持できる人材を承継後も確保できるか」「いつまでに動けば間に合うか」まで踏み込むこと。それが電気工事M&Aの成否を分けます(具体的な要件・期限・様式・可否は許可行政庁・行政書士へご確認ください。期限・運用は許可行政庁により異なります)。

▶ 経管・許可・人材をまとめて承継できるか、間に合ううちに無料で相談する

「経管が自分しかいない」「有資格者が高齢になってきた」——間に合わなくなる前に、許可・経審・専任技術者・主任電気工事士をまとめて承継できるか、許可の棚卸しを含めてご相談いただけます(個別の申請手続き・可否・期限は行政書士・許可行政庁への確認が前提です)。 → 許可・経管・人材をまとめて承継できるか無料で相談する

廃業を選んだ場合、許可も経審も実績も人材もゼロに戻ります。廃業と売却の手取り損得は、電気工事会社の廃業と売却どちらが得かで比較しています。


§4【M&A・投資視点】許可・経審・経管/専任技術者という“見えない時限資産”の価値と、間に合ううちに承継させる準備

ここからは、許可を「資産」として見る視点です。許可(指定建設業)・経審評点・施工実績・経管・専任技術者・主任電気工事士は、決算書に金額では載りません。けれど廃業すればゼロになり、承継すれば買い手が欲しがる価値になる“見えない資産”です。しかも§3.5で見たとおり、経管・有資格者が生きているうちにしか売れない“時限資産”でもあります。だからこそ出口は、「たたむ」より先に「許可・経審・人材ごと譲る」を、しかも早めに検討する価値があります。

買い手は許可をどう見るか — チェックポイント3つ

1. 許認可の質と承継可否。建設業許可(電気工事業=指定建設業)・経審評点・施工実績に加え、電気工事業登録がそろっているか、そして承継可能か。株式譲渡なら許可・経審・実績ごと原則継続、事業譲渡なら事前認可+専任技術者・主任電気工事士の確保が前提——承継可否がスキーム設計に直結します[C-01][C-04][C-05][C-14]。 2. 経審評点・施工実績・元請継続取引。経審の技術力Z(有資格者数等)の評点や、公共・ゼネコン/サブコン取引の実績は、公共・元請取引の入口です。株式譲渡なら会社に蓄積されたまま丸ごと取り込めるかが評価のポイントになります[C-03]。 3. 経管・専任技術者・主任電気工事士の定着・年齢構成・常勤性、そして名義貸しでないか。指定建設業+二重免許ゆえ、有資格者の確保は許可・登録の維持に直結します。属人化や名義貸しに頼った運用、有資格者の退職予定は、それだけで評価を下げる要因になります[C-02][C-14][C-15]。

編集部より:買い手が最初に確認するのは“許可・経審・人材が承継できるか、名義貸しでないか”です

実際の建設・電気工事領域のM&Aで、買い手が最初に確認するのは、まず「許可・経審評点・施工実績・経管/専任技術者/主任電気工事士という許可の根幹人材を、選んだスキームで承継できるか」、そして「名義貸しでないか」です。株式譲渡なら許可も経審も実績も会社に残って丸ごと取り込めるため、事業譲渡より高値・短期になりやすい一方、事業譲渡を選ぶ場面では、事前認可と専任技術者・主任電気工事士の確保を逆算しておかないと、承継後に許可・登録維持ができず、経審も実績も積み直しになりかねません。とくに経管を社長一人が兼ねる中小では、社長の引退・健康問題で許可が即・要件欠落になり、後任を立てられず畳むしかなくなる例が後を絶ちません。許可の「取り方」だけ読んでも、この“経管が抜けた瞬間の時間切れ”と“買い手が名義貸し・属人化をどう見るか”は見えてこないのです。(※本コラムは当社の建設・電気工事領域におけるM&A実務での一般的な所感です)

名義貸し会社は、許可が承継できても“DD価値ゼロ”

ひとつ、売り手の方に強くお伝えしたい自己点検があります。名義貸し——つまり、専任技術者や主任電気工事士が「名前だけ」で実態として常勤していない状態は、買い手のDDで必ず露見し、価値ゼロ・破談になります。名義貸しは建設業法・電気工事業法上の禁止行為でもあります。「許可があるから売れる」と思っていても、その許可を支える人材が実在しなければ、買い手は承継後に許可・登録を維持できないと判断します。売却を考えるなら、名義貸し・属人化を解消し、実態のある常勤体制に整えることが前提です。これは推奨ではなく、避けられないリスクとして自己点検すべき論点です。

売り手が承継前に整える準備3つ

1. 許可・経審・実績・人材を棚卸しする。建設業許可(電気工事業)の有効期限・一般/特定、経審の受審状況・評点・有効期間、施工実績・元請継続取引、そして経管は誰か(社長一人でないか)、専任技術者となり得る有資格者の人数・年齢構成・常勤性、電気工事業登録・主任電気工事士の状況を一覧にして「見える化」します。“まとめて承継できる状態”ほど高く評価されます。 2. スキーム選択を早期に決める。許可・経審・実績・人材をまとめて維持したいなら株式譲渡が有利な場面が多く、事業譲渡を選ぶなら事前認可と専任技術者・主任電気工事士の確保(承継先の具備)を逆算しておきます[C-04b]。経管が社長一人なら、最優先で決めること。 3. 名義貸し・属人化を解消し、申請期限から逆算する。実態のある常勤体制に整えたうえで、事業譲渡の事前認可は行政庁により申請期限が異なります(関東地方整備局の手引では承継予定日の90日前など)[C-04c]。「実行してから手続き」では間に合わないため、早めに許可行政庁・行政書士へ相談しておきます。

相場・評価の決まり方は別記事へ

許可・経審・有資格者が承継できる前提なら、それらの有無が評価を大きく左右します。参考までに、電気工事業を含む「設備工事業」の売上高営業利益率は0.35%(令和4年度・黒字/建設業全体は0.33%)と薄い一方、売上高総利益率(粗利率)は29.46%で建設業5区分のなかで最も高く、自己資本比率も42.64%です[C-09]。粗利は厚いのに営業利益が薄いのは、労働集約で販管費・労務負担が重い構造を示しており、だからこそ「人(有資格者)と段取り(許可・経審・継続取引)」が値段の源泉になります(これは設備工事業ベースの近似値です)。ただし、具体的な相場の算定式(年買法やEBITDA倍率)と税引後の手取りは、電気工事会社の売却相場・査定額の決まり方で詳しく解説しています。本記事では「許可・経審・経管/専任技術者の有無と承継スキームが評価を左右する」という定性的な整理に留めます。

なお税務について。個人株主が株式売却で得た利益には、申告分離課税で20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が課されます。事業譲渡は課税の入口が異なるため、個別の税額は税理士へご確認ください[C-10]。

ひとつ注意点があります。「M&Aで事業承継税制を使って節税できる」という理解は正しくありません。事業承継税制(贈与・相続による株式取得の納税猶予制度)は親族内・社内承継の制度であり、第三者へのM&A売却とは別物です(特例措置は、特例承継計画の提出期限が令和8年(2026年)3月31日で既に到来済み・特例措置自体の適用期限は令和9年(2027年)12月31日)[C-11]。混同しないようにしてください。

廃業との損得は電気工事会社の廃業と売却どちらが得か、業界の将来性は電気工事の将来性も参考になります。掲載中の案件は建設・電気関連のM&A案件一覧(「電気」で検索)からご覧いただけます。

▶ 許可・経審・人材ごと、出口を相談する

売り手の方は「経管・許可・経審ごと残す出口」を、買い手の方は「許可・有資格者ごと取り込める案件」を、それぞれ無料でご相談いただけます。 → 売り手の方:経管・許可・経審ごと残す出口を無料相談する → 買い手の方:許可・有資格者ごと取り込める案件を相談する


§5 よくある質問(FAQ)

Q1. 電気工事の建設業許可は、M&A・事業承継で引き継げますか? A. スキームによります。株式譲渡なら、許可は会社に帰属したまま原則として継続します[C-05]。事業譲渡・合併・分割では、令和2年改正の事前認可(建設業法17条の2)を承継日より前に受ければ、許可・許可番号・経審結果ごと地位を承継できます(全部承継が原則)[C-04]。認可を受けない/要件を満たさない場合は、買い手の新規取得=無許可の空白・経審の受審し直し・実績の積み直しになり得ます[C-04b]。可否・手続きは許可行政庁・行政書士へご確認ください。

Q2. 経営業務管理責任者(経管)が抜けると、電気工事の許可はどうなりますか?何日以内に何をすればよいですか? A. 経管(常勤役員等)は建設業許可の必須要件で、退任・死亡などで不在になると、その時点で要件を欠きます[C-15]。後任を立てられる場合は、基準を満たさなくなったときから2週間以内に届出を行えば許可を継続できます(建設業法11条5項。専任技術者の交代は同4項)[C-15]。後任を立てられなければ、許可は取消し対象になり得ます(同29条1項1号)。廃業に至る場合は30日以内に廃業等の届出が必要です(同12条)。なお令和2年改正で「常勤役員等+補佐者」のチーム型でも要件を充たし得ますが、補佐者にも相応の要件があり実務上は厳しい面があります[C-15b]。期限・様式・運用は許可行政庁により異なるため、個別は行政書士・許可行政庁へご確認ください。

Q3. 株式譲渡と事業譲渡で、電気工事の許可・経審・実績の扱いはどう違いますか? A. 株式譲渡は法人格が変わらないため、建設業許可・許可番号・経審評点・施工実績が会社に残り原則維持されます[C-05]。事業譲渡は会社の器が変わるため、許可は当然には移転できず、事前認可を受ければ承継可・受けなければ買い手の新規取得(再取得)になります[C-04][C-04b]。許可・経審・実績をまとめて維持したい場合に株式譲渡が選ばれやすいのはこのためです。

Q4. 事業譲渡で建設業許可を引き継ぐ手続きと期限は?(事前認可制度) A. 建設業法17条の2の事前認可を、承継日より前にあらかじめ許可行政庁へ申請し、認可を受けてから承継を実行します[C-04]。申請期限は許可行政庁により異なり、関東地方整備局の手引では承継予定日の90日前まで(標準処理期間90日)とされています[C-04c]。都道府県知事許可など他の行政庁では期限が異なるため、早めに確認してスケジュールを逆算してください。

Q5. 電気工事業の登録(主任電気工事士)は、M&Aで引き継げますか? A. 電気工事の施工には、建設業許可とは別に電気工事業法の登録(みなし登録)が必要で、各営業所に主任電気工事士を選任します。主任電気工事士は第一種電気工事士、または第二種電気工事士で免状取得後3年以上の実務経験者に限定されます(電気工事施工管理技士は主任電気工事士になれません)[C-14]。株式譲渡なら法人格不変で会社に残りますが、事業譲渡・合併・分割・相続では承継先で別途、みなし登録の届出と主任電気工事士の確保が必要です[C-14][C-04b]。建設業許可の専任技術者要件とは別系統である点に注意してください。

Q6. 経営事項審査(経審)の評点や施工実績は、M&Aで承継されますか?名義貸しの会社でも売れますか? A. 経審は建設業法27条の23の客観的評価制度です[C-03]。株式譲渡なら、会社に蓄積された経審評点・施工実績はそのまま会社に残り原則継続します[C-05]。事業譲渡・合併・分割では、事前認可を受けて「地位の全部」を承継すれば経審結果・実績も引き継げますが、認可を受けなければ受審し直し・実績の積み直しになり得ます[C-04][C-04b]。なお、専任技術者や主任電気工事士が名前だけで実態のない名義貸しの会社は、買い手のDDで露見し、許可が承継できても評価されず破談になり得ます(名義貸しは建設業法・電気工事業法上の禁止行為でもあります)。売却前に実態のある常勤体制に整えることが前提です。

Q7. 専任技術者(電気工事施工管理技士)が承継後にいなくなると、許可はどうなりますか? A. 専任技術者は建設業許可の要件です。株式譲渡で許可が会社に残る場合でも、旧経営者が兼務していた有資格者の退任や高齢有資格者の引退で要件を欠くと、後任を立てて2週間以内に変更届を出す必要があり、後任を立てられなければ許可の維持に支障が生じうるため注意が必要です[C-02][C-15]。指定建設業ゆえ、承継後も国家資格者を確保できる体制かを事前に確認してください。具体的な要件・手続きは許可行政庁・行政書士へご確認ください。


§6 まとめ — 続ける/継がせる/売る、どの出口でも“人材が生きているうち”に許可を守る一手

最後に要点を3つ。

  • 電気工事は指定建設業+電気工事業登録の二重免許で、特定建設業の専任技術者・監理技術者は国家資格者(1級電気工事施工管理技士等)に限定され、さらに各営業所に主任電気工事士(第一種/第二種電気工事士)が別系統で必要です(塗装工事業とは対照的)[C-01][C-02][C-14]。
  • 経管・専任技術者は許可の必須要件で、1日でも不在になると要件を欠きます。後任を立てて事実発生から2週間以内に変更届を出せば許可は継続できますが、出せなければ失効・取消し対象=許可のタイムリミット[C-15](期限・運用は許可行政庁により異なります)。
  • 株式譲渡なら法人格が存続するため、許可・許可番号・経審評点・施工実績は原則維持。事業譲渡・合併・分割では許可は移転できず、事前認可(17条の2)を受ければ承継可・受けなければ再取得=空白・再構築。相続は死亡後30日以内の認可(17条の3)[C-04][C-04b][C-04d][C-05]。

出口別のチェックリストにすると、こうなります。

売り手の方

  • ☐ 建設業許可(電気工事業)・経審の有効期限・評点、電気工事業登録、経管は誰か(社長一人でないか)、専任技術者・主任電気工事士となり得る有資格者の人数・年齢構成・常勤性を棚卸ししたか
  • ☐ 経管が社長一人なら、最優先で承継スキーム(株式譲渡/事業譲渡)を決めたか
  • ☐ 名義貸し・属人化を解消し、実態のある常勤体制に整えたか
  • ☐ 事業譲渡なら申請期限(行政庁差・90日前など)から逆算したか/承継先の専任技術者・主任電気工事士確保を確認したか
  • ☐ 廃業する前に、許可・経審・人材ごと譲れないかを確認したか

買い手の方

  • ☐ 許可・経審・施工実績・経管・専任技術者・主任電気工事士が、選んだスキームで承継できるかをearly DDで確認したか
  • ☐ 名義貸しでないか・有資格者が承継後も常勤を続けるかを確認したか/事業譲渡で再取得になる場合の審査期間・経審の受審し直しを逆算したか

会社をたためば、長年の許可も経審も実績も人材もゼロに戻ります。しかも、たたむと決める前に、経営業務管理責任者(経管)であるあなた自身が引退・入院した瞬間、許可は要件を欠きます。経管・専任技術者は許可の必須要件で、1日でも不在になれば、後任を立てて事実発生から2週間以内に変更届を出さなければ許可は失効・取消し対象になり得ます(建設業法7条1号・11条4項/5項。期限・様式・可否は許可行政庁により異なります)。電気工事は指定建設業+電気工事業登録の二重免許——許可・経審・経管・専任技術者・主任電気工事士は“見えない時限資産”であり、人材が生きているうちにしか売れません。株式譲渡なら法人格ごと許可・経審・実績が原則維持でき、事業譲渡でも承継日より前に事前認可を受ければ許可番号ごと引き継げます。ただし事業譲渡で事前認可を受けない/要件を満たさなければ、買い手の再取得まで無許可の空白が生じ、経審も実績も積み直しになり得ます。そして名義貸しの会社は、許可が承継できても買い手のDDで価値ゼロ・破談になります。続ける・継がせる・売る、どの出口でも、まずは自社の経管・許可・経審・有資格者をどう守れるか、そして“間に合ううちに”動けるかを確認することから始めましょう。

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相場は電気工事会社の売却相場・査定額の決まり方、廃業との損得は電気工事会社の廃業と売却どちらが得か、業界の将来性は電気工事の将来性、建設業全般の許可承継・DD・基本合意は建設業のM&A・許可承継の全体像をご覧ください。

有資格者の人件費が利益率をどう規定するか、電気工事業の利益率(粗利率29.46%/営業利益率約0.35%)と電気工事士・一人親方の年収の実態は電気工事業の利益率と年収はこちらで解説しています。


免責

本記事は電気工事の建設業許可承継・M&A・事業承継に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の許可の承継可否・申請期限・変更届の期限・承継成否を保証するものではありません。許可の承継可否・申請期限・変更届の期限・取消しの運用は、許可行政庁(国土交通大臣=地方整備局/都道府県知事)および許可の種類により異なります。また電気工事業の登録・主任電気工事士の取り扱いは所管行政庁の運用によります。許認可の承継申請・個別の可否判断は行政書士・許可行政庁へ、法務に関する事項は弁護士へ、税務の取り扱いは税理士へご相談ください。本記事の内容は当社が許認可の代理・代行を行うことを示すものではありません。また、本記事には当社サービス(無料相談)へのご案内を含みます。

許可・登録・専任技術者の承継が今これだけ問われる背景にある業界の足元の動向(後継者不在57.3%・経営者の高齢化・第三者承継の増加)を中立に押さえたい方は、電気工事業界の最新動向(後継者不在・2024年問題・倒産動向)をご覧ください。


出典

  • [C-01] 電気工事業は指定建設業7業種の一つ(土木/建築/電気/管/鋼構造物/舗装/造園・建設業法施行令5条の2)。指定建設業の特定建設業許可で設置する専任技術者・監理技術者は国家資格者(1級電気工事施工管理技士等)または大臣特別認定者に限定され、指導監督的実務経験のみでは不可(建設業法15条2号)。塗装工事業は指定建設業でない点と対照 — 国土交通省「許可の要件」: https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000082.html / 建設業法(e-Gov): https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
  • [C-02] 1級・2級電気工事施工管理技士は技術検定(建設業法27条)に基づく国家資格で電気工事業の専任技術者・監理技術者・主任技術者になり得る(1級=特定の専技/監理・2級=一般の専技/主任)。承継後の常勤確保が許可維持の前提 — 国土交通省「専任技術者となり得る国家資格一覧」: https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001619998.pdf / 建設業振興基金 技術検定: https://www.fcip-shiken.jp/den1/
  • [C-03] 経営事項審査(経審)は建設業法27条の23の客観的評価制度(P点・技術力Z=有資格者数等)で公共工事直接請負の必須要件・元請評価の入口 — e-Gov 建設業法27条の23: https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100 / CIIC 経審制度: https://www.ciic.or.jp/kyoka/keiei/
  • [C-04] 事業譲渡・合併・分割は建設業法17条の2の事前認可(あらかじめ・承継日より前)で被承継者の建設業者としての地位の全部を承継できる(令和2年(2020年)10月1日施行・改正前は新規許可取り直しで空白期間が発生)。相続は17条の3 — e-Gov 建設業法17条の2/17条の3: https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100 / 国土交通省 建設業者の地位の承継: https://www.mlit.go.jp/common/001365753.pdf
  • [C-04b] 事前認可を受けない/要件を満たさない場合は買い手の新規取得=許可空白・経審受審し直し・実績積み直しになり得る。全部承継が原則(一部業種のみ不可)/同一業種で一般・特定区分が異なると承継不可(異業種間は可)/承継者・相続人が許可要件等(営業所技術者の常勤等)を具備/許可番号引継/決算報告の提出義務も承継。★承継先も指定建設業の専任技術者+電気工事業登録の主任電気工事士確保が事前認可の前提 — 関東地方整備局 建設業者の地位の承継(手引): https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000877209.pdf / 国土交通省: https://www.mlit.go.jp/common/001365753.pdf
  • [C-04c] 事前認可申請の受付期限は行政庁差(関東地方整備局=承継予定日の90日前まで・標準処理期間90日。大臣許可/知事許可・地方整備局で運用が異なる)— 関東地方整備局 建設業者の地位の承継(手引): https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000877209.pdf
  • [C-04d] 相続は建設業法17条の3により死亡後30日以内に認可申請し承継/法人成りも事前認可で番号・経審を移行可 — e-Gov 建設業法17条の3: https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100 / 国土交通省: https://www.mlit.go.jp/common/001365753.pdf
  • [C-05] 株式譲渡は法人格存続のため建設業許可・許可番号・経審評点・施工実績が会社に帰属したまま原則継続(経管/専技兼務者の退任時は変更届。指定建設業ゆえ専任技術者の常勤性維持+電気工事業登録・主任電気工事士の維持が前提。事業譲渡=事前認可が必要との対比。継続の明文ワンライナーは省庁になく一般法理として記述)— 国土交通省 建設業者の地位の承継 ほか: https://www.mlit.go.jp/common/001365753.pdf
  • [C-06] 軽微な建設工事(建設業許可不要)は1件の請負代金500万円未満(建築一式は1,500万円未満又は延べ面積150㎡未満の木造住宅/消費税込み)— 国土交通省「建設業の許可とは」: https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000080.html
  • [C-07] 建設業の後継者不在率57.3%(2025年・全業種最高/ピーク71.4%(2018年)から改善/全国平均50.1%)— 帝国データバンク「後継者不在率動向調査2025」: https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
  • [C-08] 建設業許可業者数は令和7年(2025年)3月末で483,700業者(前年同月比+0.9%)と底堅い(再エネ・データセンター電源・EV充電・GX省エネ改修需要は中長期堅調の方向性。電気工事単独の市場金額は示さない)— 国土交通省「建設業許可業者数調査(令和7年3月末)」: https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001889275.pdf
  • [C-09] 設備工事業(電気工事を含む近似)の売上高営業利益率0.35%(令和4年度・黒字/建設業全体0.33%)・売上高総利益率(粗利率)29.46%(5区分最高)・自己資本比率42.64% — CIIC「建設業の経営分析(令和4年度)」: https://www.ciic.or.jp/wp-content/uploads/2024/01/bunseki_R04.pdf
  • [C-10] 個人の株式譲渡益は申告分離課税20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)。事業譲渡は課税の入口が異なる(個別は税理士へ)— 国税庁 タックスアンサー No.1463: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
  • [C-11] 事業承継税制(特例措置)は親族内・社内承継の納税猶予制度で第三者M&A売却とは別物。特例措置は、特例承継計画の提出期限=令和8年(2026年)3月31日(既に到来済み)/特例措置自体の適用期限=令和9年(2027年)12月31日(贈与・相続)。※2026-06-14に国税庁No.4148で再確認:「平成30年4月1日から令和8年3月31日まで」(特例承継計画の提出)・「平成30年1月1日から令和9年12月31日まで」(適用)— 国税庁 No.4148: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4148.htm / 中小企業庁 法人版事業承継税制(特例措置): https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zouyo_souzoku.html
  • [C-14] 電気工事業法(適正化法)により電気工事の施工には電気工事業の登録/みなし登録が必要で、各営業所に主任電気工事士を選任。主任電気工事士は第一種電気工事士、または第二種電気工事士で免状取得後3年以上の実務経験者に限定(電気工事施工管理技士では主任電気工事士になれない)。建設業許可業者が電気工事業を営む場合はみなし登録(法34条)— 経済産業省 関東東北産業保安監督部「みなし登録電気工事業者」: https://www.safety-kanto.meti.go.jp/electric/kojigyo/e_minashi_touroku01.html / 経済産業省 電気工事業法の手引: https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/tebiki_13.html
  • [C-15] 経営業務管理責任者(経管=7条1号の常勤役員等)・専任技術者(7条2号=営業所技術者)は許可の必須要件。7条1号/2号の基準を満たさなくなったときは2週間以内に届出(11条5項)/営業所技術者が置かれなくなり代わるべき者があるときは2週間以内に変更届(11条4項)。要件を欠いたまま後任を立てられなければ29条1項1号により許可は取消し対象(500万円以上不可・事実上の廃業)。廃業等は30日以内に届出(12条)。様式・期限・運用は許可行政庁により異なる — e-Gov 建設業法7条・11条・12条・29条: https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100 / 国土交通省「許可の要件」: https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000082.html
  • [C-15b] 経管要件は令和2年改正で「常勤役員等+これを直接補佐する者」のチーム型(補佐体制)でも充たし得る(経営経験を建設業全体に緩和・29業種区分の撤廃)。ただし補佐者は財務管理・労務管理・業務運営の経験等の要件があり実務上は厳しく、社長=唯一の経管の中小は依然詰みやすい(法7条1号の基準は施行規則7条に委任)— 愛媛県「建設業法等の改正(令和2年10月1日施行)」: https://www.pref.ehime.jp/page/5825.html / 建設業法(e-Gov): https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100