解体 M&A 事業承継 廃業vs譲渡

解体業M&A事例集2026|産廃・運送・不動産が買う理由と売却の目安

「うちみたいな下請けの小さい解体屋を、いったい誰が買うんだ」——後継者がいない、自分も職人も歳をとった、元請の値下げも止まらない。畳むしかないのか、と出口を探す解体会社のオーナーは少なくありません。けれど、解体会社を「買いに来る側」は実在し、しかも構造的に増えています。本記事は公表されている解体M&Aの事例を買い手タイプ別(産廃・運送・ゼネコン・不動産)に整理し、「誰が・なぜ買うのか」と「あなたの会社のどの資産が評価されるのか」を事例で示します。相場の算定式は別記事に譲り、ここでは“買い手の事情”から逆引きします。

この記事の結論(先に要点だけ)

  • 解体会社の主な買い手は4タイプ——①産廃・環境/リサイクル(廃材を自社処理する前方統合)②運送・物流(重機回送・残土運搬の内製化)③ゼネコン・元請(下請の内製化)④不動産・解体内製化(更地化フローの取り込み)です[C-01]。実在の公表事例で特に①と③が強く確認できます[C-06a][C-06e]。
  • 買い手が見ているのは、建設業許可(解体工事業)・有資格者・優良元請との継続取引・産廃収集運搬許可・重機といった、決算書に出にくい“見えない資産”です[C-08]。
  • 公表事例の譲渡金額は「取得価額 非開示」が大半で、マッチングサイトに並ぶ金額も「希望額」であって成約額ではありません[C-02]。だから「事例=いくらで売れた」は出せず、語れるのは「誰が・なぜ買ったか」です。
  • 株式譲渡なら会社が持つ許可は原則そのまま引き継がれます。一方、産廃の収集運搬・処分業の許可は事業譲渡では引き継げず買い手が取り直しになる[C-09]ため、解体M&Aでは株式譲渡が選ばれやすい構造があります。
  • 次の一手は、事例の平均ではなく自社の概算評価を一度知ること。仲介に営業される前に、無料で「自社は誰に・いくらで売れそうか」をつかむのが安全です。

§1 解体工事業界とは — なぜ今「買われる側」と「買う側」が同時に増えているか

解体工事業とは、建物や構造物を取り壊し、発生する廃材の分別・搬出までを担う工事業で、請負金額や工事内容に応じて許可・登録が必要な「許認可ビジネス」です。この一文が、なぜ解体会社に買い手が付くのかの出発点になります。

需要そのものは細っていません。解体の建設業許可業者数は69,949業者(2025年3月末時点、前年比+3.6%)[C-05]と増え続けています。空き家の増加、老朽インフラの更新、再開発に伴う更地化——取り壊しの仕事は中長期で見込まれる一方、続ける体力(職人・後継者)が削られていく、というのが業界の基本構図です。

注:解体単独の市場規模(完成工事高)は公的区分での一次確定が難しいため、本記事では金額を断定せず、許可業者数を需要の規模感の代理指標として用います[C-05]。

許可が「強み」になるのは、許認可が二層構造で簡単には揃わないからです。請負金額500万円未満は建設リサイクル法の「解体工事業登録」、500万円以上は「建設業許可(解体工事業)」が必要で、解体は建設業法上の独立業種として整備されてきました[C-09]。新規参入では一朝一夕に積み上がらない許可・有資格者・元請取引——これらが「見えない資産」として、買い手がゼロから揃えるより「会社ごと買う」動機になります。

後継者問題も重なります。建設業の後継者不在率は57.3%(2025年)と全業種で最も高い水準[C-04]。売り手が増え、許認可という参入障壁を一括取得したい買い手も増える。だから今、解体業界では譲渡の「売り手」と「買い手」が同時に増えているのです。

解体業界の需要動向・将来性の全体像は、解体業の将来性 — 「なくなる」のではなく二極化して残るで俯瞰しています。本記事(売却事例)と併せてご覧ください。


§2 解体業のM&A動向と将来性 — 更地需要・人手不足が生む売り手有利

需要が堅調でも、すべての解体会社が安泰なわけではありません。むしろ「小規模ほど詰む」構図が進み、出口としてのM&A(譲渡)が現実的になっています。そして同じ流れが、買い手の動機を構造的に押し上げています。

買い手が増える背景①:更地化・資源循環の需要。空き家・老朽インフラ・再開発に伴う取り壊しと、その廃材処理の需要は成長基調にあると、買い手企業自身がM&Aの動機として語っています[C-03]。後述の事例でも、買い手は「解体から廃棄物処理まで一気通貫」「再開発の大型物件まで取り込む」と説明しており[C-06b][C-06e]、解体は廃材処理・再開発フローの“入口”として取り込む価値があると見られています。

注:更地需要・資源循環需要の「成長」は買い手企業の説明や業界解説に基づく方向性であり、具体的な伸び幅を断定するものではありません[C-03]。

買い手が増える背景②:人手不足と後継者問題建設業の後継者不在率57.3%[C-04]に象徴される担い手不足は、売り手を生むだけでなく、ゼネコンや元請にとっては「下請解体を自前で確保したい」という内製化の動機になります。職人も許可も元請取引も健在なうちに会社ごと取り込めるM&Aは、買い手にとって時間を買う合理的な手段です。

ここから整理できる買い手の動機ドライバーは4本です——①産廃・環境/リサイクルが廃材処理を自社に取り込む「前方統合」、②運送・物流が重機回送・残土運搬を内製化する「周辺取り込み」、③ゼネコン・元請が下請解体を取り込む「下請内製化」、④不動産・解体内製化が更地化〜再開発フローを取り込む動き[C-01]。次の§3.5で、このうち実在の公表事例で接地できるものを見ていきます。


§3 解体会社の生き残り戦略 — 続ける/譲る/畳むの3択と「売れる会社」の条件

事例を読む前に、自社が「売れる側」かどうかの目線を持っておくと、事例の見え方が変わります。出口は大きく3択です。

続ける——需要はあっても、薄利と人手不足の中で投資(産廃中間処理への川下統合・特殊工法・ICT施工)を続けられるかが問われます。担い手の確保が前提です。

畳む(廃業)——重機の処分、原状回復、退職金など出ていくお金がかさみ、許可・取引・職人といった資産は価値ゼロで消えます。廃業と売却を手取りで比べると結論が変わることも多く、損得は解体業は廃業と売却どちらが得か(手取りで比較)で詳しく扱っています。

譲る(M&A・譲渡)——「買われる強み」が揃うなら、あなたの会社は「畳むしかない事業」ではなく「買われる資産」です。買い手が評価する強みは、次のような“数字に出ない資産”です[C-08]。

  • 建設業許可(解体工事業)・解体工事業登録の有効性
  • 産業廃棄物(収集運搬・処分)許可の保有と範囲
  • 1級・2級施工管理技士など有資格者の在籍と定着
  • 優良な元請・取引先との継続取引(一社依存でないこと)
  • 自社重機・車両、特殊工法・実績、無借金・低借入

これらは新規参入者がゼロから揃えるのに時間がかかるからこそ、買い手が「会社ごと買いたい」と考える対象になります。自社の棚卸しをしたうえで、次章の事例を「誰が、こういう資産を欲しがるのか」という目で読んでみてください。


§3.5 買い手タイプ別 解体M&A事例ギャラリー — 誰が・なぜ買ったのか

ここからが本記事の核です。公表されている解体M&Aの事例を買い手タイプ別に並べ、「買収の動機」と「評価された資産」を抽出します。

金額についての前提(先にお読みください):以下の事例は上場・準大手企業の適時開示やプレスリリースで公表されたものですが、取得価額は「相手先との合意により非開示」が大半です[C-02]。つまり「この事例はいくらで売れた」という成約額は公表されていません。本章は金額を語るためではなく、「誰が・なぜ・どんな資産を狙って買ったか」を示すために事例を用います。社名を出すのは公表済みの事例に限っています。

買い手タイプ① 産廃・環境/リサイクル業者(前方統合)— 解体の廃材を自社で処理して一気通貫

最も実例が多いのがこのタイプです。解体現場では大量のコンクリートガラ・木くず等が発生します。これを自社の収集運搬・中間処理まで取り込めば、廃棄物処理の収益を逃さず資源循環を一気通貫できる——これが産廃・環境企業が解体会社を買う最大の動機です。

  • 大栄環境(東証・産廃/環境)× 海成(千葉市):海成は関東で建物総合解体業と産業廃棄物の収集運搬業を行う会社で、大栄環境が議決権100%を取得して完全子会社化しました(株式譲渡、2025年1月実行)。取得価額は相手先との合意により非開示です[C-06a]。解体と産廃収運を併せ持つ会社を取り込む、典型的な前方統合です。
  • 鈴木商会(北海道大手リサイクル)× 木村工務店(釧路):木村工務店は建造物解体業と産業廃棄物処理業を営む会社で、鈴木商会が全株式を取得して完全子会社化しました(2021年公表)。金額は非開示[C-06b]。鈴木商会は「道東エリアにおける解体から産業廃棄物の処理に至る一気通貫した事業展開」を狙いに挙げており、資源循環の取り込みが目的です。
  • 成友興業(名証メイン・建設/産廃/汚染土壌処理)× 栄興産業(東京都江戸川区):栄興産業は産業廃棄物処理業・再生砕石販売業を手がける会社で、成友興業が全株式(議決権100%)を取得して子会社化しました(2024年公表)。取得価額は非公表[C-06d]。解体・建設で生じる廃材の処理と再生(再生砕石)を取り込む、産廃側からの前方統合です。
  • TOKAI(TOKAIホールディングス子会社)× ウッドリサイクル(岐阜・下呂市):ウッドリサイクルは木造解体材等の中間処理・木材チップ製造を行う会社で、TOKAIが株式取得で子会社化しました(2022年公表)。取得価額は非開示[C-06c]。これは純粋な解体会社というより「解体由来の廃材を資源化する事業」の取り込みで、木材チップを活用した発電事業への展開も視野に入れていると説明されています。

買い手タイプ② 運送・物流(周辺取り込み)— 重機回送・残土運搬の内製化〔動機の類型〕

このタイプは、本調査の範囲で解体会社買収の独立した公表事例を確認できませんでした。したがってここでは実名事例を挙げず、買い手動機の「類型」として整理します[C-01]。

運送・物流業者にとって解体は、重機の回送、残土・廃材の運搬、有資格ドライバーや車両の相互活用といったリソース面で隣接します。運搬の内製化や稼働率向上を狙って解体・建設周辺へ事業を広げる動きは想定されますが、本記事では公表事例が確認できない以上、実在の取引として断定はしません。この類型に該当する具体的な動きについては、個別にご相談いただくのが近道です。

買い手タイプ③ ゼネコン・元請/建設グループ(下請内製化)— 人手不足への垂直統合

発注額の低下と職人不足に直面するゼネコン・元請にとって、信頼できる下請解体を自前で抱えることは施工リソースの確保に直結します。

  • カシワバラ・コーポレーション(建設/改修グループ)× 小椋組(東京・八王子):小椋組は再開発などの大型物件・プラント設備を対象とした大規模解体工事を強みとする会社で、カシワバラが全株式を取得して完全子会社化しました(2024年6月実行)。取得価額は非開示[C-06e]。カシワバラは、老朽化したプラント設備を解体し新たな設備へ転換する需要の高まりを背景に挙げており[C-07]、大型・再開発・プラント解体の取り込みと、M&Aを通じた事業拡大をねらった事例といえます。

買い手タイプ④ 不動産・解体内製化/再開発フローの取り込み

不動産・再開発の担い手が、解体〜更地化の工程を自社・グループで完結させたいというニーズも、買い手動機の一つです。前掲のカシワバラ×小椋組は、再開発・プラントなどの大型解体を取り込む点で、建設・改修グループによる解体機能の取り込み(④再開発・大型解体フロー)に当たります[C-06e]。一方、純粋な不動産業・PEファンドによる解体会社単独買収の公表事例は本調査で確定できなかったため、このタイプは①③ほど事例が厚くない点を正直にお断りしておきます。なお、マッチングプラットフォームに掲載される解体関連の譲渡案件は「譲渡希望額」(数百万円から十数億円規模まで幅広い)で表示されますが、これは売り手の希望であって成約額ではありません[C-02]。

買い手タイプ別 比較表(本章の要約)

| 買い手タイプ | 主な買収動機 | 特に評価する資産 | シナジー | 注意点 | |—|—|—|—|—| | ① 産廃・環境/リサイクル | 廃材を自社処理する前方統合・資源循環の一気通貫[C-06a][C-06b] | 産廃収集運搬・処分許可、中間処理設備、解体の受注網 | 解体→収運→中間処理を内部化し収益を逃さない | 産廃許可は事業譲渡で承継不可=株式譲渡が前提になりやすい[C-09] | | ② 運送・物流 | 重機回送・残土運搬の内製化〔動機の類型・実名事例なし〕[C-01] | 車両・有資格ドライバー、運搬リソース | 運搬の稼働率向上・周辺取り込み | 公表事例が確認できず定性にとどまる | | ③ ゼネコン・元請 | 人手不足下の下請内製化・施工リソース確保[C-06e][C-07] | 解体の許可・有資格者・施工実績 | 大型・再開発解体の取り込み | 元請依存の解消・取引継続性の確認が論点 | | ④ 不動産・解体内製化 | 更地化〜再開発フローの取り込み[C-06e] | 大型・特殊解体の実績、エリア | 再開発の入口工程を内部化 | 純不動産単独の公表事例は薄い |

解体会社の買い手4タイプ:①産廃=廃材を自社処理 ②運送=回送/残土の内製化 ③ゼネコン=下請内製化 ④不動産=更地化フロー取り込み

図解F1:解体会社の主な買い手4タイプと買収動機。社名・金額の扱いは本文・Claims Ledger準拠(金額は非開示/希望額)。

公表事例の金額は希望額/開示額で成約額とは限らない

図解F3:公表事例の金額は「希望額/開示額」であり、成約額とは限りません。取得価額は非開示が多く、自社の値は個別査定でしか分かりません。

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§4【M&A・投資視点】買い手の動機から逆算する評価ポイントと売却の目安

事例の金額をうらやむより、「買い手がなぜその会社を選んだか」を逆算すれば、自社をどう整えれば高く売れるかが見えてきます。前章の事例に共通するのは、買い手が「許可・有資格者・元請取引・産廃連携」という見えない資産を狙っていたという事実です[C-08]。

買い手が見る順番(チェックポイント3つ)

1. 許認可の質と承継可否。建設業許可(解体工事業)・解体工事業登録に加え、産廃収集運搬・処分許可の有無と範囲を最初に確認します。重要なのは承継方法で、株式譲渡なら会社帰属の許可は原則そのまま継続しますが、産廃許可は事業譲渡・合併・分割では承継されず、買い手が新規取得を要します[C-09]。これが解体M&Aで株式譲渡が選ばれやすい構造的理由です。 2. 有資格者・職人の定着と元請の優良継続取引。1級施工管理技士などの有資格者は希少で、1名の在籍が評価額を数千万円単位で動かすこともあります[C-08]。一方、社長個人の人脈に依存した取引や一社依存は減点要素です。 3. 重機・車両の状態と簿外リスク。重機が自社所有かリースか、原状回復責任・近隣クレーム・事故歴・過大リースといった簿外リスクは、デューデリジェンス(買収監査)で確認される項目です。

買い手が見る順:①許認可②有資格者・元請取引③重機・簿外リスク → 整えると評価が上がる

図解F2:買い手が確認する順番(①許認可→②有資格者・元請との継続取引→③重機・簿外リスクの整理)。整えるほど評価が上がりやすくなります。

売り手が整えておく準備ポイント3つ

1. 「見えない資産」を見える化する。建設業許可・解体工事業登録・産廃許可の有効期限と範囲、有資格者の在籍状況を一覧にしておくと、買い手の評価が早く正確になります。 2. 決算の見え方と個人資産の分離。直近3期の決算整備、社長個人資産と会社資産の混在解消、個人保証の整理は、買い手が安心して値を付ける前提です。 3. 取引と職人の継続性を言語化する。元請取引の継続を示す資料、職人の定着実績を整理しておくと、「属人化していない=引き継げる」と伝わります。

編集部より:事例の金額より、「何を買われたか」を見てください

公表事例の取得価額がほぼ非開示である以上、「いくらで売れたか」を事例から学ぶことはできません。それより大切なのは、買い手が最初に確認するのが「許可と有資格者が承継できるか」と「元請取引が引き継げるか」だという点です。逆に、名義借り的な許可運用や社長個人への依存は評価を大きく下げます。事例の金額をうらやむより、自社のこの部分を整えるほうが、実際の交渉ではよほど効きます。(※本コラムは当社の建設・解体領域におけるM&A実務での知見に基づく一般的な所感です)

相場の目安 — 事例から「いくら」は出せない

率直に言えば、公表事例の金額は非開示が大半で、マッチングサイトの金額も希望額ですから、事例から「解体会社は◯◯円で売れる」と相場を出すことはできません[C-02]。中小M&Aでは年買法などで目安を置きますが、算定式(年買法・EBITDA倍率等)の詳しい見方は兄弟記事に整理しています。本記事では「事例の平均ではなく、自社の許可・職人・取引を踏まえた個別査定でしか自社の値は分からない」という点だけ押さえてください。

解体会社のM&A相場・算定式・税引後の手取りの詳細は、解体工事会社のM&A相場2026|売却価格の目安と手取りを公開で解説しています。「自社はいくらか」を考える前に、相場の“見方”を押さえておくと判断がぶれません。

手取り(税引後)と「事業承継税制」の誤解

「いくらで売れるか」は「いくら残るか」とは別です。個人株主が株式売却で得た利益には、申告分離課税で税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が課されます[C-10](実際の税額は取得費等で変わるため税理士へ)。

そして重要な誤解の整理です。「M&Aで事業承継税制を使って節税できる」は正しくありません。事業承継税制(贈与・相続による株式取得の納税猶予制度)は親族内・社内承継のための制度で、第三者へのM&A売却とは別物です[C-11]。法人版・特例措置の特例承継計画の提出期限は令和8年度税制改正で延長され令和9年(2027年)9月30日、適用期限は令和9年(2027年)12月31日ですが[C-11]、これらはあくまで親族・社内承継の文脈の期限で、第三者へ会社を売る場合の節税策ではない点に注意してください。

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掲載中の案件は建設・不動産・住宅のM&A案件一覧からご覧いただけます(解体関連は「解体」で検索)。買い手として解体・建設の譲受を検討する方は買い手として相談することもできます。


§5 よくある質問(FAQ)

Q1. 解体業はいくらで売れますか? A. 公表事例の取得価額はほとんどが非開示で、マッチングサイトの金額も「希望額」のため、事例から「いくらで売れる」とは言えません[C-02]。中小M&Aでは年買法などで目安を置きますが、自社の値は許可・職人・取引を踏まえた個別査定でしか分かりません。相場の見方は解体会社のM&A相場をご覧ください。

Q2. 解体会社を買うのはどんな会社ですか? A. 主に4タイプです——①産廃・環境/リサイクル(廃材を自社処理する前方統合)②運送・物流(重機回送・残土運搬の内製化)③ゼネコン・元請(下請内製化)④不動産・解体内製化(更地化フローの取り込み)[C-01]。実在の公表事例では特に①産廃と③元請が確認できます[C-06a][C-06e]。

Q3. なぜ産廃業者が解体会社を買収するのですか? A. 解体現場で発生する大量の廃材を、自社の収集運搬・中間処理まで取り込めば、廃棄物処理の収益を逃さず資源循環を一気通貫できるためです。実際に大栄環境×海成、鈴木商会×木村工務店など、産廃・環境企業が解体会社を子会社化した事例が公表されています[C-06a][C-06b]。同じ前方統合の動きは、産廃・再生砕石の会社を取り込む形(成友興業×栄興産業)でも見られます[C-06d]。

Q4. 事例の譲渡金額が非開示なのはなぜですか? A. 上場企業の適時開示でも、取得価額は「相手先との合意により非開示」とされることが多いためです[C-02]。マッチングサイトの金額は売り手の希望額で、これも成約額ではありません。したがって本記事では金額を断定せず、「誰が・なぜ買ったか」を中心に整理しています。

Q5. 後継者がいない小規模な解体会社でも売れますか? A. 可能性は十分にあります。建設業の後継者不在率は57.3%と高く[C-04]、買い手は許可・人材・元請枠を一括取得できるM&Aを求めています。許可と職人・取引が健在なうちほど、買い手の評価が上がります。

Q6. 解体工事業の許可や産廃許可は引き継げますか? A. スキームによります。株式譲渡なら会社が持つ許可は会社に残り原則継続します。一方、産廃の収集運搬・処分業の許可は事業譲渡・合併・分割では承継されず、買い手が新規取得する必要があります[C-09]。この差が、解体M&Aで株式譲渡が選ばれやすい理由です。具体的な可否は行政書士・行政庁にご確認ください。

Q7. M&Aの売却で事業承継税制は使えますか? A. 第三者へのM&A売却には原則使えません。事業承継税制は贈与・相続による株式取得の納税猶予制度で、親族内・社内承継のための制度だからです[C-11]。第三者へ会社を売る場合は、個人株主の株式譲渡益に申告分離課税20.315%が課される領域になります[C-10]。詳細は税理士へご相談ください。


§6 まとめ — 「誰に売れるか」が分かったら、まず査定を

  • 解体会社の買い手は4タイプ(産廃・運送・ゼネコン・不動産)で、実在の公表事例では特に産廃の前方統合と元請の下請内製化が確認できます[C-01][C-06a][C-06e]。
  • 値が付くのは、許可・有資格者・元請取引・産廃許可・重機という“数字に出ない資産”です[C-08]。畳めばゼロで消える資産も、譲渡なら次の担い手に引き継がれ対価が残ります。
  • 公表事例の金額は非開示が大半、サイトの金額も希望額で、成約額ではありません[C-02]。自社の値は事例の平均ではなく個別査定でしか分かりません。

売り手チェックリスト(譲渡を考えるなら、まずここから)

  • ☐ 建設業許可(解体工事業)・解体工事業登録の有効期限と更新状況
  • ☐ 産業廃棄物(収集運搬・処分)許可の保有と範囲
  • ☐ 1級・2級施工管理技士など有資格者の在籍と定着
  • ☐ 優良な元請・取引先との継続取引(一社依存になっていないか)
  • ☐ 重機・車両の台帳と所有/リースの区分・状態
  • ☐ 簿外債務・原状回復責任・近隣クレーム・事故歴の整理
  • ☐ 直近3期の決算整備と、社長個人資産・個人保証の分離

「うちを誰が買うのか」という問いには、産廃・運送・ゼネコン・不動産という構造的な買い手がいる、という答えがあります。あとは、自社のどの資産が誰に響くかを知るだけです。

▶ 畳む前に、まず自社の値段を知る

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免責

本記事は解体工事会社のM&A・譲渡に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の査定額や成約・売却を保証するものではありません。記載した事例の金額は開示額・希望額であり、また非開示のものも含まれます。いずれも実際の成約価格を保証・推定するものではありません。個別の税務の取り扱いは税理士、許認可の承継可否は行政書士・行政庁、契約・法務に関する事項は弁護士へご相談ください。本記事には当社サービス(無料売却相談)へのご案内を含みます。


出典

  • [C-01] 解体会社の主な買い手は①産廃・環境/リサイクル ②運送・物流 ③ゼネコン・元請 ④不動産・解体内製化の4タイプ(①③は公表事例で接地・②④は事例薄/定性)— 下記C-06群の公表事例+仲介解説(T3>T4・attributed)
  • [C-02] 公表事例の譲渡金額は「取得価額 非開示」が大半/マッチングプラットフォーム掲載は「譲渡希望額」(数百万〜十数億円規模)で成約額ではない — 大栄環境IR/M&Aニュース(T3): https://www.nihon-ma.co.jp/news/20241206_9336-1/ / バトンズ 解体 売却案件一覧(T4・希望額): https://batonz.jp/sell_cases/?q=解体
  • [C-03] 空き家・老朽インフラ・更地化需要は成長基調(方向性・断定せず attributed+range)— 買い手企業の買収説明(カシワバラ等)+仲介解説(T3/T4)
  • [C-04] 建設業の後継者不在率57.3%(2025・全業種最高/ピーク71.4%(2018)から改善)— 帝国データバンク「後継者不在率動向調査2025」(T2): https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
  • [C-05] 解体の建設業許可業者数69,949(2025/3末・前年比+3.6%)。解体単独の市場規模(完成工事高)は公的区分での一次確定が難しく本記事では金額を断定しない — 国土交通省「建設業許可業者数調査(令和7年3月末)」(T1): https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001889275.pdf
  • [C-06a] 大栄環境(東証・産廃/環境)が海成(千葉市・建物総合解体+産廃収運)を株式譲渡で議決権100%取得し完全子会社化(2025年1月実行)。取得価額は相手先との合意により非開示 — 日本M&AセンターM&Aニュース/M&Aキャピタル成約事例#110(T3): https://www.nihon-ma.co.jp/news/20241206_9336-1/ / https://www.ma-cp.com/case/success/110/
  • [C-06b] 鈴木商会(北海道大手リサイクル)が木村工務店(釧路・建造物解体+産廃処理)の全株式を取得し完全子会社化(2021年公表・道東での解体〜産廃処理の一気通貫を企図)。金額非開示 — 鈴木商会 公式プレス(T3): https://www.suzuki-shokai.co.jp/news/press/1755.html
  • [C-06c] TOKAI(TOKAIホールディングス子会社)がウッドリサイクル(岐阜・下呂市/解体木材の中間処理・木材チップ製造)を株式取得で子会社化(2022年公表)。取得価額非開示 — 日本M&AセンターM&Aニュース(T3): https://www.nihon-ma.co.jp/news/20220527_3167-15/
  • [C-06d] 成友興業(名証メイン・建設/産廃/汚染土壌処理)が栄興産業(東京都江戸川区/産業廃棄物処理業・再生砕石販売業)の全株式(議決権100%)を取得し子会社化(2024年公表・株式譲渡実行日2024/9/2)。取得価額は秘密保持条項により非公開 — 日本M&AセンターM&Aニュース(T3): https://www.nihon-ma.co.jp/news/20240716_9170-1/
  • [C-06e] カシワバラ・コーポレーション(建設/改修グループ)が小椋組(東京都八王子市/解体工事業・環境事業、大型・再開発・プラント解体が強み)の全株式を取得し完全子会社化(2024年6月28日実行)。老朽プラントの解体・再建需要の高まりを背景に説明。取得価額の記載なし(非開示) — カシワバラ 公式お知らせ/日本M&AセンターM&Aニュース(T3): https://www.kashiwabara.co.jp/news/2024/07/01/post_100.html / https://www.nihon-ma.co.jp/news/20240701_1-1260/
  • [C-07] 建設・改修グループによる解体会社の取り込み(大型・再開発・プラント解体の取り込み、M&Aによる事業拡大)が見られる — C-06e(カシワバラ×小椋組)(T3)
  • [C-08] 解体は許可・有資格者・元請取引・産廃許可・重機が評価を左右する(1級施工管理技士は1名で評価額が数千万円単位で変動することも)— CINC Capital/M&A総研/船井総研(T3・attributed): https://www.cinc-capital.co.jp/column/industry/demolition-ma / https://www.masouken.com / https://ma.funaisoken.co.jp
  • [C-09] 株式譲渡なら会社帰属の許可は原則継続/産廃の収集運搬・処分業の許可は事業譲渡・合併・分割では承継されず買い手が新規取得(解体の許認可は500万円未満=解体工事業登録/500万円以上=建設業許可の二層)— 環境省 廃棄物規制課長通知(環循規発第2003301号)/国土交通省(T1): https://www.env.go.jp/content/900479532.pdf / https://www.mlit.go.jp/common/001365753.pdf
  • [C-10] 個人株主の株式譲渡益は申告分離課税20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)— 国税庁 タックスアンサー No.1463(T1): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
  • [C-11] 事業承継税制(法人版・特例措置)は贈与・相続による株式取得の納税猶予制度で第三者M&A売却とは別物/特例承継計画 提出期限 令和9年(2027)9月30日・適用期限 令和9年(2027)12月31日(令和8年度税制改正で計画提出期限を延長)— 東京都産業労働局(更新日2026-06-10)/中小企業庁 法人版事業承継税制(特例措置)(T1): https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/chushou/shoko/keiei/jigyoshokeizeisei/ (※国税庁No.4148は令和7年4月1日基準で計画提出期限が旧表記のため、提出期限の出典には用いない)