この記事の目次
後継者がいない。職人も自分も歳をとった。元請の値下げ要請も止まらない——。続けるのは限界、でも畳むには重機の処分も原状回復もある。そこで頭をよぎるのが「売れるなら売って引退したい。でも、いくらになるんだ?」という問いです。本記事は、解体工事会社の売却相場の「見方」と、税引後に残る「手取り」を、一次統計と実務目線でお伝えします。
この記事の結論(先に要点だけ)
- 解体会社に「これが相場」という明確な金額は存在しません[K01-02]。実務では年買法(時価純資産+利益の数年分。年数に一律の基準はない)で“目安”を置くことがあります[K01-01]。
- M&A総合研究所などの解説では、解体工事業の許認可・経験のある技術者・専用の機械・独自の技術・大きな債務がないことが評価に挙がります[K08-01]。
- 株式譲渡なら、会社が持つ許可は原則そのまま引き継がれます。一方産廃(収集運搬・処分)の許可は事業譲渡では引き継げず、買い手が取り直しになる[K09-03]ため、多くの解体M&Aで「株式譲渡」が選ばれます。
- 廃業は重機処分・原状回復・退職金で持ち出しになりがち。会社に値が付くなら、譲渡のほうが手元に残るお金が多い場合があります。
- 次の一手は、畳む前に自社の事業価値の目安を確認すること。仲介に相談する前に、自分で相場感をつかんでおくのが安全です。
解体工事業界とは — 需要構造と「許認可ビジネス」という強み
「解体業は斜陽だ」と思っていませんか。実は中長期で需要が見込まれ、許認可が参入障壁となる、値の付きやすい業種です。
解体工事業の建設業許可業者数は69,949業者(2025年3月末時点、前年比+3.6%)[K07-01]。建設業許可業者全体483,700業者[K07-02]のなかで増え続け、2019年の43,186から6年で約1.6倍に伸びました[K07-03]。
注:この69,949は「建設業許可(解体工事業)の許可業者数」です[K07-01]。1社が複数業種の許可を持つため「解体会社が約7万社」ではなく、許可保有数≠会社数です。
許可が強みになるのは、許認可が二層構造だからです。請負金額500万円未満は建設リサイクル法の「解体工事業登録」、500万円以上は「建設業許可(解体工事業)」が必要[K09-01]。さらに2014年の建設業法改正(2016年6月1日施行)で解体が独立業種となり、経過措置終了後は「とび・土工工事業」許可では解体を請け負えなくなりました[K09-02]。新規参入では一朝一夕に揃わない許可・登録・有資格者の蓄積が、M&A評価の土台になります。
PESTで見れば、政策=空き家対策・アスベスト規制強化、経済=人件費・処分費高騰、社会=職人の高齢化と採用難、技術=ICT施工。需要はあるのに続ける体力が削られ、後継者問題が重なる構図です。
解体業界の需要動向や将来性の全体像は、解体業の将来性 — 「なくなる」のではなく二極化して残るで俯瞰しています。本記事(相場・売却価格)と併せてご覧ください。
解体業界の動向と将来性 — なぜ今、M&A出口が増えているのか
需要が堅調でも、すべての解体会社が安泰ではありません。「小規模ほど詰む」構図が進み、出口としてM&A(譲渡)が現実的な選択肢になっています。
最大の背景は後継者問題です。建設業全体の後継者不在率は57.3%(2025年・帝国データバンク調査)で、比較対象の大分類8業種で最高[K04-01](全国・全業種では50.1%)。解体業単独の値ではなく、同じ調査の中分類「職別工事」は61.3%(参考値)です[K04-01]。ただしピークの71.4%(2018年)から14.1ポイント低下し、改善傾向にあり[K04-01]、「譲渡という出口を選ぶ会社が増えた」と読めます。
建設業の倒産は2025年度で2,047件(前年比+5.3%)と、12年ぶりに2,000件台に乗りました[K04-02]。2025年上半期の建設業倒産は986件で、年上半期として過去10年で最多となり、そのうち後継者難を要因とする倒産は69件(7.0%)と、2018年以降の上半期で最多でした[K04-03]。解体を含む「職別工事業」では倒産736件(前年比+16.0%)と増加しています[K04-04]。
注:解体工事業だけの倒産統計は公的区分がないため「職別工事業(解体を含む区分)の数値で近似」しています[K04-04]。
本記事の整理では、許可も職人も元請取引も揃っているうちのほうが、譲渡の選択肢は広がりやすくなります。業界の市場規模・担い手・倒産・M&Aの“今”の定点観測は解体工事業界の最新動向で整理しています。
解体会社の生き残り戦略 — 続ける/譲る/畳むの3択
続ける現実は利益率の低さとの戦いです。解体工事を含む職別工事業(代理指標)の売上高営業利益率は令和6年度で0.30%(建設業全体は1.20%)と薄く(令和4年度は▲0.42%の営業赤字)[K02-01]、自己資本比率も32.22%と建設業5区分で最も低い[K02-02]。CIICの集計対象は経営状況分析を申請した建設業専業の法人で、小規模な解体事業者を含む中小事業者全体を代表するとは限りません。利益率・社長年収の実態と「薄利でも高く売れる会社の財務」は解体業の利益率・社長年収はいくら?で詳しく解説しています。
注:解体単独ではなく「職別工事業(解体を含む区分)の数値で近似」しています[K02-01]。
薄利を変える「自走」(産廃中間処理への川下統合・特殊工法・ICT施工)には投資と時間、担い手が要ります。畳む(廃業)は重機処分・原状回復・退職金など出ていくお金が想像より大きくなりがちです。
そして譲る(M&A・譲渡)。「買われる強み」(許可・有資格者・産廃許可・元請取引・重機・低借入)が揃うなら、あなたの会社は「畳むしかない事業」ではなく「買われる資産」です。
廃業 vs 売却 — 手取りで比べると見え方が変わる
廃業は重機・原状回復・退職金など「持ち出し」になりやすく、許可・取引・職人も価値ゼロで消えます。売却なら条件次第で創業者利益が残り、個人保証の解除や雇用維持も交渉できます。
判断軸は「廃業して出ていくお金」と「売却して手元に残るお金(税引後の手取り)」を同じものさしで比べること。処分価格だけ見ていた方が、査定で「会社ごと売るほうが手取りが多い」と気づくことも多くあります。
図解F3:廃業(持ち出し)と譲渡(手取り)を同じものさしで比較。具体額は会社により異なります。
詳細は別記事で比較予定です(「解体業の廃業と売却の手取り徹底比較」※近日公開)。一般論は廃業と譲渡の比較も参考に。
自社の場合を確認する 事業の種類と状況から、売却価格の目安と価値を左右するポイントを確認できます。→ 事業価値を確認する
【M&A・投資視点】解体会社の売却相場と評価の決まり方
「うちはいくらで売れるのか」を、相場の見方と評価の仕組みから解きます。
まず大前提:解体に「明確な相場」は存在しない
解体会社に「相場はこの金額」という明確な数字は存在しません[K01-02]。仲介会社のサイトに並ぶ金額も「譲渡希望額」として掲載されたもので[K08-01]、成約額ではありません(上場企業の公表M&A事例でも取得価額は「非開示」が大半という実態は、解体業M&A事例集で買い手タイプ別に整理しています)。実務では次の式で“目安”を置くことがあります。
算定式①:年買法(目安を置く簡便な方法)
中小M&Aでは、年買法で目安を置くことがあります。
株式価値 = 時価純資産 + 利益の数年分(利益の種類にも年数にも一律の基準はない)[K01-01]
上乗せ部分が「のれん」——許可・有資格者・取引先など帳簿に出ない収益力の金額化です。年買法(年倍法)は、時価純資産に利益の数年分を加える簡便な評価方法です。利益の種類や加える年数に一律の基準はありません。中小M&Aガイドラインの参考資料では通常1〜3年とされる一方[K01-05]、民間の実務解説には2〜5年[K01-05]、3〜5年[K01-01]とする例もあります。比べるときは、加える利益の定義が資料で違う点に注意が必要です。参考資料は税引後利益又は経常利益等とし[K01-05]、民間の解説には営業利益や実質利益(過去の平均税引後利益とするものもある)を使うもの[K01-05]や、使う利益に決まりはなく営業利益・経常利益など税引前の利益が多いとするもの[K01-01]があります。これらは業界別の成約相場や標準倍率を示すものではありません。また、理論的な裏付けを持つ統一的な算定式ではなく、公認会計士協会のガイドラインにも記載がありません[K01-01]。実際の譲渡価格は、個別の収益性、事業の継続性、負債、契約条件などを踏まえた交渉によって決まります。
算定式②:3つのアプローチ
企業価値の算定方法には、コストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチの3種類があります[K01-04]。中小M&Aガイドラインは、中小M&Aでは「簿価純資産法」「時価純資産法」「類似会社比較法(マルチプル法)」で算定した価値を基に譲渡額を交渉するケースが多いとしています[K01-06]。なお「EV/EBITDA倍率」は、解体業に固有の倍率を示す一次資料が無いため、本記事では用いません。算定方法は企業価値の算定実務(年買法/EBITDA/DCF)をご覧ください。
価格を押し上げる「加点」と、下げる「減点」
加点される要素(M&A総合研究所・mastoryの解説)[K08-01]
- 解体工事業の許認可
- 経験のある技術者・専門的知識を持つ人材
- 専用の機械・設備、他社にない解体技術、施工実績
- 大きな債務がなく、経営が健全であること
本記事の整理では、産業廃棄物処理業の許可や元請との継続取引も、買い手が確認する材料になります。
減点[K08-03]
- 評価の過程で懸念されるリスクが見つかると、価格は下がりやすい
- 本記事の整理では、借入・債務の過大、デューデリジェンス(買収監査)で見つかる簿外債務・事故歴・近隣トラブルなどがこれに当たります
図解F1:企業価値=時価純資産+利益の数年分(年買法の目安で、利益の種類にも年数にも一律の基準はありません)。年買法は理論的な裏付けを持つ統一的な算定式ではありません。
編集部より:現場で「価格を分ける」のは、決算書に出ない部分です
解体会社の評価は売上の大小だけでは決まりません。最後に効くのは、許可(建設業・産廃)の持ち方、有資格者・職人の定着、元請取引の継続、重機が自社か、近隣クレーム・事故歴のきれいさ——いずれも帳簿に表れにくい要素ばかり。ここを整えるだけで買い手の見る目は変わり、価格にも交渉のしやすさにも直結します。(※本コラムは本記事の整理による一般的な見方で、個別の取引データに基づくものではありません)
3Cで見る:買い手は何を狙っているか
買い手(同業・周辺業種)が欲しいのは、ゼロから揃えると時間のかかる許可・有資格者・営業エリア・元請枠です。許可と人材を「会社ごと」得られるM&Aの効率は、内製化や自前拡大には代えがたく、自社の強みを言語化できれば価値が明確になります。
許認可の承継 — ここがスキーム選択の分かれ目(最重要)
株式譲渡は株主が変わるだけで法人格は変わらず、会社が持つ許可は会社に残り、原則として継続します(経管・専技の体制維持が前提)。
事業譲渡は異なります。建設業許可は、令和2年(2020年)10月施行の改正建設業法で、事前認可による地位承継の制度が新設されました(17条の2・3)[K03-01]。従前は廃業+新規申請で空白期間が生じましたが、改正後は事業承継(譲渡・合併・分割)はあらかじめ認可を受けること、相続は死亡後30日以内に認可を申請することで、地位を空白なく承継できます(承継者が許可要件を満たすことが前提)[K03-01]。事前認可の申請期限は許可行政庁ごとに異なり、関東地方整備局の手引では申請の受付を承継予定日の90日前までとしています[K03-02]。ただし承継は建設業の「全部」が対象で、一部のみの承継はできません[K03-03]。
解体ならではの落とし穴がここです。★産業廃棄物の収集運搬業・処分業の許可は、事業譲渡・合併・分割では承継されず、買い手(承継者)が新規に取得しなければなりません[K09-03]。環境省の通知でも「当該承継する者において新規の許可の取得を要する」と明記されています[K09-03]。建設業許可のような「業の地位承継制度」が産廃許可にはないためで、この差が解体M&Aで株式譲渡が選ばれやすい理由です。許可3層(解体工事業登録・建設業許可・産廃許可)がスキーム別にどう承継・維持されるかの実務手順は、解体工事業の許可は承継できる?M&Aで引き継ぐ実務で逆引きできます。
図解F2:株式譲渡なら建設業許可も産廃許可も会社に残り原則継続。事業譲渡は建設業許可=事前認可で承継可(全部承継)・産廃許可=買い手が新規取得。
手取り(税引後)の考え方
個人株主が株式売却で得た利益には、申告分離課税で税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が課されます[K06-01](計算は取得費等で変わるため税理士へ)。
「M&Aで事業承継税制を使って節税できる」は正しくありません。事業承継税制(贈与・相続による株式取得の納税猶予制度)は親族内・社内承継の制度で、第三者へのM&A売却とは別物です[K05-03]。むしろ税制適用後に第三者へ売却すると猶予の取消事由になります[K05-03]。(国税庁タックスアンサーNo.4148〈令和8年4月1日現在法令等〉では、法人版・特例措置の特例承継計画の提出期限は令和9年(2027年)9月30日です[K05-02]。期限は改正で変わりうるため最新情報をご確認ください。)
仲介手数料と期間
中小M&Aガイドラインによると、仲介者・FAの成功報酬にはレーマン方式が多く用いられます。ガイドラインが示す一例は、基準となる価額の5億円以下の部分5%、5億円超10億円以下4%、10億円超50億円以下3%、50億円超100億円以下2%、100億円超1%で、階層の価額・割合は仲介者・FAにより異なります[K10-02]。基準となる価額には譲渡額・移動総資産額・純資産額などがあり、どれを使うかで報酬額は大きく変わりえます[K10-03]。手数料には着手金・月額報酬・中間金・成功報酬があり、最低手数料を設けている仲介者・FAも多いため、依頼前に算出方法を確認する必要があります(ガイドラインの具体例では300万円・500万円・1,000万円〈税抜〉の設定例が示されています)[K10-04]。
期間について、中小M&Aガイドラインは、個別のケースにより異なるものの、希望する譲り受け側とのマッチングには通常、数か月〜1年程度の時間がかかるとしています[K10-01]。
売却前に整えると評価が上がる10項目(チェックリスト)
次の項目を点検すると、買い手の評価と交渉のしやすさが変わります。自社に当てはめてください。
- 建設業許可(解体工事業)の有効期限・更新状況
- 1級・2級施工管理技士など有資格者の在籍と定着
- 産業廃棄物(収集運搬・処分)許可の保有状況と範囲
- 直近3期分の決算書の整備(見え方の改善)
- 簿外債務・未払残業・原状回復責任など隠れ負債の有無
- 係争・事故歴・近隣クレームの履歴と対応状況
- 重機・車両の台帳と所有/リースの区分
- 元請・主要取引先への依存度(取引の継続性)
- 会社名義と社長個人資産の混在の解消
- 経営業務管理責任者・専任技術者の体制(許可要件の維持)
自社の場合を確認する 事業の種類と状況から、売却価格の目安と価値を左右するポイントを確認できます。→ 事業価値を確認する
買い手側の動きや進め方は、建設業のM&A・許可承継の全体像やM&A売却の流れ・期間・費用も参考に。掲載中の案件は解体の売却案件一覧(建設業全体の案件も見る)からご覧いただけます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 解体工事会社のM&A相場はいくらですか? A. 解体に「明確な相場」は存在しません[K01-02]。実務では年買法(時価純資産に利益の数年分を加える簡便な評価方法)で目安を置くことがあります[K01-01]。利益の種類や加える年数に一律の基準はなく、理論的な裏付けを持つ統一的な算定式でもありません[K01-01]。仲介サイトの金額は譲渡希望額で成約額ではありません。自社の目安は、M&A-WEBの事業価値の確認で見られます。
Q2. 解体業の売却価格はどうやって決まりますか? A. 年買法(時価純資産に利益の数年分を加える簡便な評価方法)で目安を置くことがありますが、実際の譲渡価格は収益性・事業の継続性・負債・契約条件などを踏まえた交渉で決まります。M&A総合研究所の解説では、解体工事業の許認可、経験のある技術者、専用の機械、独自の解体技術、大きな債務がないことが売却に有利に働くとされます[K08-01]。評価の過程で懸念されるリスクが見つかれば、価格は下がりやすくなります[K08-03]。
Q3. 解体業は廃業と売却、どちらが得ですか? A. 廃業は重機処分・原状回復・退職金で持ち出しになりやすく、売却なら創業者利益や雇用維持が残せます。「出ていくお金」と「手元に残るお金(税引後)」を同じものさしで比べてください(→「廃業 vs 売却」)。
Q4. 後継者がいない解体会社でも売れますか? A. 売れる場合があります。建設業全体の後継者不在率は57.3%(2025年・帝国データバンク調査。解体業単独の値ではありません)と高く[K04-01]、後継者難による倒産も増えています[K04-03]。買い手は許認可や有資格者・人材をまとめて得られる点をM&Aの利点に挙げます[K08-01]。許可・人材・取引が残っているうちのほうが、買い手に示せる材料は多くなります。
Q5. 解体工事業の許可はM&Aで引き継げますか? A. スキームによります。株式譲渡なら許可は会社に残り原則継続。事業譲渡では建設業許可は令和2年改正で事前認可による承継が可能ですが(申請期限は許可行政庁ごとに異なり、関東地方整備局の手引では申請の受付は承継予定日の90日前まで)[K03-01][K03-02]、産廃の収集運搬業・処分業の許可は承継されず、買い手が新規取得する必要があります[K09-03]。扱いは行政書士・行政庁にご確認ください。
Q6. 株式譲渡と事業譲渡、どちらがいいですか? A. 解体業では、建設業許可も産廃許可も会社に残る株式譲渡が選ばれやすいです。事業譲渡だと産廃許可を買い手が取り直し[K09-03]、建設業許可も事前認可(全部承継が前提)が必要[K03-01][K03-03]。簿外債務の引き継ぎなど他の要素もあり、専門家を交えた検討を。
Q7. 解体業のM&Aにかかる期間・費用はどのくらいですか? A. 中小M&Aガイドラインは、希望する譲り受け側とのマッチングに通常、数か月〜1年程度の時間がかかるとしています[K10-01]。仲介者・FAの成功報酬にはレーマン方式が多く用いられますが、料率や基準となる価額は会社ごとに異なり、最低手数料を設ける会社も多くあります[K10-02][K10-04]。個人の株式譲渡益には20.315%の税が課されます[K06-01]。
まとめ — 畳む前に、自社の事業価値を確認する
- 「明確な相場」はありません[K01-02]が、年買法(時価純資産+利益の数年分。年数に一律の基準はない)で目安を置くことがあります[K01-01]。
- M&A総合研究所などの解説では、許認可・技術者・専用の機械・独自の技術・債務の少なさが評価に挙がります[K08-01]。
- 株式譲渡なら許可は会社に残って継続。事業譲渡では産廃許可を買い手が取り直しになる[K09-03]ため、株式譲渡が好まれます。
- 建設業全体の後継者不在率は57.3%と高い一方[K04-01]、許可と人材を求める買い手もいます。本記事の整理では、許可も職人も揃っているうちのほうが、譲渡の選択肢は広がりやすくなります。
許可・職人・取引は、廃業すれば価値ゼロで消えますが、譲渡なら次の担い手に引き継がれ、対価が残ります。自社の値段を知ることが、後悔しない出口選びの第一歩です。
免責
本記事は解体工事会社のM&Aに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の査定額や成約・売却を保証するものではありません。記載した相場・算定式・倍率はあくまで目安・事例・レンジであり、実際の成約価格を保証するものではありません。個別の税務の取り扱いは税理士、許認可の承継可否は行政書士・行政庁、契約・法務に関する事項は弁護士へご相談ください。M&A-WEBは、事業価値の目安を確認する機能と、売却案件・買収ニーズを探せるサービスを提供しています。
出典
- [K01-01] 年買法(年倍法)の算式「株式価値=時価純資産+利益×3年~5年」(年数はケースごとに異なる/用いる利益に決まりはなく、営業利益・経常利益など税引前の概念が多い)・確立した理論は見たことがない・日本公認会計士協会のガイドラインには言及がない — マクサス・コーポレートアドバイザリー「『年買法(年倍法)』には理論的根拠なし ~M&Aの株価算定で年買法(年倍法)を使う場合の問題点と、残余利益モデル(残余利益方式)との関係を解説~」: https://www.maxus.co.jp/columns/3725 (確認日 2026-10-23)
- [K01-02][K01-04] 解体工事会社の売却価格の相場として具体的な数字を提示することは不可能/バリュエーションの方法はコストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチの3種類/設備・専門的知識を有する人材の有無・実績などが主な評価対象 — mastory「解体工事業界のM&A・事業承継の動向!M&Aの流れ・注意点・事例も紹介」: https://mastory.jp/%E8%A7%A3%E4%BD%93%E5%B7%A5%E4%BA%8BMA (確認日 2026-10-23)
- [K01-05] 年買法で加える利益と年数の資料ごとの違い — 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」参考資料2「中小M&Aの譲渡額の算定方法」(数年分の任意の利益〈税引後利益又は経常利益等〉を加算する場合がある。利益の種類と年数〈通常1年~3年〉は事例ごとに異なり、交渉によって決まるケースが多い): https://www.meti.go.jp/files/900016261.pdf / M&A総合研究所「事業譲渡の営業権」(営業権=実質利益〈過去2〜5年の平均税引き後の利益〉×評価倍率〈2〜5倍〉): https://masouken.com/事業譲渡の営業権 / M&Aサクシード(時価純資産+営業利益×2〜5年分): https://ma-succeed.jp/content/knowledge/post-12490 / よくわかるM&A(時価純資産+実質利益×2〜5年分): https://co-ad.jp/blog/ma_value/45/(確認日 2026-10-23)
- [K01-06][K10-01][K10-02][K10-03][K10-04] 中小M&Aでは簿価純資産法・時価純資産法・類似会社比較法で算定した株式価値・事業価値を基に譲渡額を交渉するケースが多い/希望する譲り受け側とのマッチングには通常、数か月~1年程度の時間を要する/成功報酬の基準となる価額(譲渡額・移動総資産額・純資産額)/レーマン方式の一例(5億円以下の部分5%・5億円超10億円以下4%・10億円超50億円以下3%・50億円超100億円以下2%・100億円超1%。各階層の価額・割合は仲介者・FAにより異なる)/最低手数料を設けている仲介者・FAは多い/具体例の最低手数料300万円・500万円・1,000万円(税抜) — 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)―第三者への円滑な事業引継ぎに向けて―」第1章Ⅰ4(1)(p.30)・Ⅱ(3)・Ⅴ1(4)・Ⅴ2・Ⅴ3: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf (確認日 2026-10-23)
- [K02-01][K02-02] 職別工事業(解体を含む代理指標)の売上高営業利益率0.30%(令和6年度・建設業全体1.20%。令和4年度は▲0.42%の営業赤字、令和5年度は▲0.11%)・自己資本比率32.22%(令和6年度・5区分で最低)/集計対象は経営状況分析を申請した建設業専業の法人(大会社を除く)— 建設業情報管理センター(CIIC)「建設業の経営分析(令和6年度)」(令和8年2月発行)図表14・図表25: https://www.ciic.or.jp/wp-content/uploads/2026/02/bunseki_R06.pdf (確認日 2026-10-22)/令和4年度: https://www.ciic.or.jp/wp-content/uploads/2024/01/bunseki_R04.pdf
- [K03-01][K03-02][K03-03] 改正建設業法(令和2年10月施行)による地位承継の事前認可制度(17条の2・3)。事業承継はあらかじめ認可を受ける、相続は死亡後30日以内に認可を申請する(17条の3第1項)。関東地方整備局の手引では事業承継の申請受付は承継予定日の90日前まで(標準処理期間90日)・相続の申請受付は死亡後30日以内・建設業の全部の承継が対象 — 国土交通省 関東地方整備局「事業承継等の事前認可制度」(手引): https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000877209.pdf / 国土交通省「建設業者の地位の承継について(建設業法第17条の2・3)」(改正建設業法の説明資料): https://www.mlit.go.jp/common/001365753.pdf / e-Gov法令検索「建設業法」17条の2・17条の3: https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100 (確認日 2026-10-23)
- [K04-01] 建設業全体の後継者不在率57.3%(2025年・比較対象の大分類8業種で最高/ピーク71.4%(2018)から改善。解体業単独の値ではない/中分類「職別工事」61.3%は参考値)— 帝国データバンク「後継者不在率動向調査2025」: https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
- [K04-02] 建設業の倒産2,047件(2025年度・前年度比5.3%増。2013年度以来12年ぶりの2,000件台)— 東京商工リサーチ「2025年度(令和7年度)の全国企業倒産1万505件」: https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1202724_1610.html (確認日 2026-10-23)
- [K04-03] 建設業の倒産(2025年上半期・負債1,000万円以上・法的整理)986件(前年同期917件を7.5%上回り、年上半期として過去10年で最多)、「後継者難」を要因とした倒産69件・7.0%(「人手不足」54件とともに2018年以降の上半期ベースで最多)— 帝国データバンク「『建設業』の倒産動向(2025年上半期)」: https://www.tdb.co.jp/report/industry/20250706_kensetsu25y/ (確認日 2026-10-23)
- [K04-04] 職別工事業の倒産736件(2024年1-12月・前年比16.0%増)— 東京商工リサーチ「建設業の倒産 過去10年間で最多 資材高、人手不足に『2024年問題』が追い打ち」: https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1200839_1527.html (確認日 2026-10-23)
- [K05-02][K05-03] 事業承継税制(法人版・特例措置)は贈与・相続の納税猶予制度でM&A売却とは別物 — 中小企業庁 法人版事業承継税制(特例措置): https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zouyo_souzoku.html / 東京都産業労働局: https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/chushou/shoko/keiei/jigyoshokeizeisei/ / 特例承継計画の提出は平成30年4月1日から令和9年9月30日まで、特例措置の適用期限は令和9年12月31日まで — 国税庁 タックスアンサー No.4148「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)」(令和8年4月1日現在法令等): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4148.htm (確認日 2026-10-23)
- [K06-01] 個人の株式譲渡益は申告分離課税20.315% — 国税庁 タックスアンサー No.1463: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
- [K07-01][K07-02][K07-03] 解体工事業の建設業許可業者数69,949(2025/3末・+3.6%)/全体483,700/推移 — 国土交通省「建設業許可業者数調査(令和7年3月末)」: https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001889275.pdf
- [K08-01] 解体工事業は許認可が必要で、技術者の経験・専用機械が必要なことから売却額は高くなる傾向/経験豊富な技術者・独自の解体技術・許認可や設備・豊富な実績・大きな債務がなく経営が健全であることが有利な条件につながる/案件例の金額は「譲渡希望額」として掲載 — M&A総合研究所「解体工事のM&A・事業承継の最新動向を徹底解説!売却相場や成功のポイント」: https://masouken.com/%E8%A7%A3%E4%BD%93%E5%B7%A5%E4%BA%8B%E3%81%AEM&A / mastory「解体工事業界のM&A・事業承継の動向!M&Aの流れ・注意点・事例も紹介」(有資格者や人材をまとめて確保できる点を買収側のメリットに挙げる): https://mastory.jp/%E8%A7%A3%E4%BD%93%E5%B7%A5%E4%BA%8BMA (確認日 2026-10-23)
- [K08-03] バリュエーションで算定した価格をベースに交渉し、懸念されるリスクが発覚すれば価格は下がりやすい — mastory「解体工事業界のM&A・事業承継の動向!M&Aの流れ・注意点・事例も紹介」: https://mastory.jp/%E8%A7%A3%E4%BD%93%E5%B7%A5%E4%BA%8BMA (確認日 2026-10-23)
- [K09-01] 請負金額500万円以上の解体工事は建設業許可(解体工事業等)が必要、それ未満は建設リサイクル法の解体工事業登録(土木・建築・解体工事業の許可業者を除く)— 東京都都市整備局「建設リサイクル法:解体工事業者のみなさんへ」: https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/ryokuchi_keikan/shoshigen/recy/6 / 国土交通省「建設リサイクル法 質疑応答集」: https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/recycle/d11pdf/recyclehou/qanda/qanda2023.pdf (確認日 2026-10-23)
- [K09-02] 建設業法等の一部を改正する法律(平成26年法律第55号、平成26年6月4日公布)で「解体工事業」を新設、平成28年6月1日施行。施行時にとび・土工工事業の許可で解体工事業を営んでいた業者の経過措置は平成31年5月31日まで — 国土交通省 北陸地方整備局「建設業法等の改正」: https://www.hrr.mlit.go.jp/kensei/sangyo/kensetsu/kyoka/160601.html (確認日 2026-10-23)
- [K09-03] 産廃 収集運搬業・処分業の許可は事業譲渡・合併・分割で承継されず買い手が新規取得 — 環境省 廃棄物規制課長通知(環循規発第2003301号): https://www.env.go.jp/content/900479532.pdf