解体工事業の許可は承継できる?M&Aで引き継ぐ実務2026
会社をたためば、長年積み上げた建設業許可も、産廃許可も、有資格者も——すべてゼロに戻ります。後継者がいないから廃業を考える。でも「許可ごと誰かに引き継げないか」と頭をよぎる。あるいは買い手側として「許可と職人ごと取り込めるなら買いたい」と考える。本記事は、解体に必要な許認可を3層に分け、株式譲渡と事業譲渡で許可がどう承継・維持・消滅するかをスキーム別に整理します。許可の「取り方」ではなく、M&A・事業承継で「許可ごと引き継ぐ/維持する」実務に絞ってお伝えします。
この記事の結論(先に要点だけ)
- 解体工事業の許認可承継とは、会社が持つ「解体工事業登録・建設業許可(解体工事業)・産業廃棄物処理業許可」をM&Aや事業承継で次の担い手に引き継ぐことです。解体の許認可はこの3層からなります[C-01]。
- 株式譲渡なら法人格が存続するため、許可は会社に帰属したまま原則維持されます(経管・専技の兼務者が退任する場合は変更届などの対応)[C-02]。
- 事業譲渡・合併・分割では、建設業許可は令和2年(2020年)10月施行の「事前認可」(建設業法17条の2)を承継日より前に受ければ、許可番号ごと引き継げます(全部承継が原則)[C-03]。
- ★ただし産業廃棄物処理業の許可は、建設業法の承継制度の対象外です。事業譲渡・合併・分割では承継者が新規に許可を取得する必要があり、自治体の運用にも差があります[C-06]。
- 許可は廃業すればゼロ、承継すれば値が付く“見えない資産”。可否や申請期限は許可行政庁・所管自治体で異なるため、個別は行政書士・許可行政庁へ確認のうえ、まずは自社の出口を整理することから始めましょう。
§1 解体工事に必要な許認可とは — 登録・建設業許可・産廃の3層構造
承継の話に入る前に、解体に「何の許可が・いつ必要か」を3層で押さえておきます。ここを混同すると、承継ミスの元になるからです。
解体工事業の許認可とは、請負金額や業務内容に応じて段階的に必要となる、解体工事業登録・建設業許可(解体工事業)・産業廃棄物処理業許可という3層の許認可をいいます。それぞれ根拠となる法律が異なります[C-01]。
第1層は解体工事業登録です。請負金額500万円未満で解体工事を営む場合に、建設リサイクル法に基づき工事を行う区域の都道府県へ登録します[C-01]。
第2層は建設業許可「解体工事業」です。1件の請負代金が500万円以上の解体を請け負うには、建設業許可が必要になります(軽微な工事=建築一式以外は500万円未満、建築一式は1,500万円未満であれば許可不要。いずれも消費税込み)[C-05]。解体工事業は、もともと「とび・土工・コンクリート工事業」に含まれていましたが、平成28年(2016年)6月1日に独立した業種として新設され、建設業の許可業種は28から29業種になりました。施工に関する経過措置は平成31年(2019年)5月31日で終了しており、2019年6月以降は、500万円以上の解体を請け負うには解体工事業の許可が必要です[C-01b]。許可は営業所の所在に応じて国土交通大臣許可または都道府県知事許可に分かれ、下請に出す金額に応じて一般・特定の区分があります。
第3層は産業廃棄物処理業許可です。解体で発生する廃材を運搬・処理するには、廃棄物処理法に基づく産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可が必要になります[C-01]。この第3層が、後述するとおり承継の最大の落とし穴になります。
このように解体は、請負金額で必要な許可が変わり、廃材処理に別の許可が要る「許認可ビジネス」です。新規参入では一朝一夕に揃わない許可・登録・有資格者の蓄積が、承継時には“見えない資産”として評価の土台になります。

図解F2:解体に必要な許認可の3層構造。請負金額・業務で必要な許認可が変わります。
解体業界の需要動向や将来性の全体像は、解体業の将来性 — 「なくなる」のではなく二極化して残るで俯瞰しています。本記事(許可の承継実務)と併せてご覧ください。
注:解体工事業の許可要件(経営業務管理責任者・専任技術者など)や登録の細目は、許可行政庁や所管自治体で運用が異なります。個別の要件・手続きは行政書士・許可行政庁へご確認ください。
§2 なぜ今「許可ごと承継」が増えているか — 許認可化・人手不足が生む買い手
承継スキームの各論に入る前に、なぜ「許可ごと譲る/買う」需要が高まっているのかを整理します。
第一に、許認可化が参入障壁=価値になりました。2019年6月以降、500万円以上の解体には解体工事業の許可が必須になり[C-01b]、ゼロから許可・有資格者を揃えるには時間がかかります。だからこそ「会社ごと(=許可ごと)取り込みたい」買い手が動きやすくなっています。
第二に、後継者問題と人手不足です。建設業の後継者不在率は57.3%(2025年)で全業種のなかでも高い水準にあります(ピークの71.4%(2018年)からは改善傾向)[共通REF]。職人の高齢化と採用難も重なり、「人材・許可ごと買う」動機が買い手側に生まれています。解体の建設業許可業者数自体は69,949業者(2025年3月末・前年比+3.6%)と増えており[共通REF]、需要そのものは細っていません。
第三に、買い手のタイプの広がりです。廃材を自社で処理したい産廃・リサイクル系、下請を内製化したいゼネコン・元請、更地化フローを取り込みたい不動産系など、解体会社を「許可ごと」欲しがる買い手は構造的に増える傾向があるとみられます。誰が・なぜ解体会社を買うのかは、解体業M&A事例集 — 産廃・運送・不動産が買う理由で買い手タイプ別に整理しています。
需要は堅調でも続ける体力が削られ、後継者問題が重なる——許可と職人が健在なうちに「許可ごと譲る」需要と「許可ごと買う」需要が、同時に高まっている地合いといえます(将来の件数増を断定するものではなく、あくまで足元の傾向です)。
§3 株式譲渡 vs 事業譲渡 — スキーム別・許可はどう承継・維持・消滅するか
ここが本記事の中核です。3層の許認可が、M&Aのスキーム別にどう動くのかを整理します。金額や相場の話ではなく、「許可がどのスキームで残り、どのスキームで手続きが要るか」をマトリクスで逆引きできるようにします。
株式譲渡 — 法人格が変わらないので許可は原則維持
株式譲渡は、株主(オーナー)が交代するだけで会社そのものは存続します。法人格が変わらないため、建設業許可も許可番号も、解体工事業登録も、産廃許可も、会社に帰属したまま原則として継続します[C-02]。買い手から見れば、許可をまとめて引き継げるのが株式譲渡の大きな利点です。
ただし、許可の「要件」は維持し続ける必要があります。たとえば経営業務管理責任者(経管)や専任技術者(専技)を旧オーナーが兼務していた場合、その人が退任すると要件が欠けかねません。役員変更・経管/専技の変更などは別途、変更届などの対応が必要です[C-02][C-03b]。
事業譲渡・合併・分割 — 建設業法17条の2の「事前認可」が必須
事業譲渡・合併・分割では、会社の器が変わるため、許可は当然には移りません。ここで使えるのが、令和2年(2020年)10月1日施行の「事業承継等に関する認可制度」(建設業法17条の2)です[C-03]。
この制度では、譲渡人と譲受人があらかじめ(承継日より前に)許可行政庁の認可を受けたとき、承継日に譲受人が譲渡人の「建設業者としての地位」を承継できます[C-03]。改正前は、いったん廃業届を出して買い手が新規に許可を取り直す必要があり、その間に無許可の空白期間が生じていました。事前認可を受けることで、許可番号や経営事項審査の結果も含め、空白を生じることなく地位を引き継げるようになっています[C-03][C-03e]。
ただし、いくつかの制約があります。
- 全部承継が原則です。承継者は被承継者の建設業の「全て」を承継する必要があり、一部の業種だけを承継することはできません(不要な業種は承継日より前に一部廃業届を出すなどの対応が必要です)[C-03b]。
- 一般・特定の組合せ制約があります。ある業種について一般建設業の許可を受けている者が、同一業種で特定建設業の許可を有する者の地位を承継することはできません(その逆も同様)[C-03b]。
- 承継者が許可要件を備えていることが必要です。承継される業種の営業所技術者などは、承継予定日に原則として業種ごとに引き続き常勤している必要があります[C-03b]。
- 承継者は許可番号を引き継げるほか、被承継者の決算報告(事業年度終了届)の提出義務も承継します[C-03e]。
申請期限には注意が必要です。事前認可の申請受付期限は許可行政庁によって異なります。関東地方整備局の手引では、事業承継の事前認可申請は「承継予定日の90日前まで」(標準処理期間90日)とされています[C-03c]。これはあくまで大臣許可窓口の一例で、都道府県知事許可や他の地方整備局では期限・運用が異なります。「実行してから手続き」では間に合わないため、スケジュールの逆算と、許可行政庁・行政書士への個別確認が欠かせません。
相続・法人成り — 17条の3(相続は死後30日以内)
個人事業として解体業を営んでいた方が亡くなった場合は、建設業法17条の3により、その相続人が死亡後30日以内に認可を申請し、認可を受けることで建設業者としての地位を承継できます[C-03d]。個人事業の法人成り(法人化)も、事業譲渡と同様に事前認可の枠組みで許可番号・経審結果を移行できる場合があります(個別の扱いは許可行政庁へ)[C-03d]。
スキーム別 承継マトリクス(本記事の中核)
3層の許可が、スキーム別にどう動くかをまとめると次のようになります。自社のケースを当てはめて逆引きしてください。
| 許可の層 \ スキーム | 株式譲渡(法人格存続) | 事業譲渡 | 合併・分割 | 相続(個人事業) | |———————|———————-|———-|————|——————| | ① 解体工事業登録(500万円未満・建設リサイクル法) | 会社に帰属したまま原則継続[C-02][C-01] | 会社単位の登録のため要確認(所管都道府県へ)[C-01] | 同左・要確認 | 個人事業の登録は要確認 | | ② 建設業許可「解体工事業」(500万円以上) | 会社に帰属したまま原則継続。経管/専技退任時は変更届[C-02][C-03b] | 17条の2の事前認可で許可番号ごと全部承継可[C-03] | 17条の2の事前認可で全部承継可[C-03] | 17条の3:死亡後30日以内の認可で承継[C-03d] | | ③ 産業廃棄物処理業許可(廃棄物処理法) | 会社に帰属したまま原則継続(届出は別途)[C-02][C-06] | ★承継されず承継者が新規許可を取得[C-06] | ★業許可は新規取得(施設は別途承継制度あり)[C-06][C-06b] | 業許可は要確認(施設には相続届出制度あり)[C-06b] |

図解F1:解体の許可3層×M&Aスキーム別の承継マトリクス。株式譲渡は会社に帰属したまま原則維持、事業譲渡・合併分割は建設業許可=事前認可で承継可・産廃=新規取得。可否・期限は行政庁により異なります。
なお、ここでは解体に特化して整理しています。建設業全般のM&A・建設業許可承継(経営事項審査の承継、全業種承継の原則、一般/特定の組合せ制約などの汎用論)は、建設業のM&A・許可承継の全体像で詳しく解説しています。
§3.5 産業廃棄物処理業許可の落とし穴 — 建設業法の承継制度では引き継げない
解体M&Aで最も見落とされやすいのが、ここです。許可を“3層まとめて”引き継げると思い込むと、承継後に廃材の運搬・処理ができない空白が生じかねません。
産業廃棄物処理業の許可は、廃棄物処理法という別の法律に基づく許可です。建設業法17条の2の承継制度の対象ではありません[C-06]。建設業許可を事前認可で引き継げても、産廃の「業」許可は同じ手続きでは移らない、ということです。
スキーム別に見ると次のようになります。
株式譲渡の場合は、法人格が存続するため、産廃許可も会社に帰属したまま原則として継続します(役員変更などの届出は別途必要です)[C-02][C-06]。
事業譲渡・合併・分割の場合は事情が異なります。環境省の通知(環循規発第2003301号)は、事業譲渡や法人の合併・分割に伴い、許可を受けている者に代わって同様の業を別の者が承継することとなる場合には、「当該承継する者において新規の許可の取得を要することとなる」と明記しています[C-06]。つまり、建設業許可のような地位承継制度が産廃の「業」許可にはなく、承継者(買い手)が新規に許可を取り直すのが原則です。
ただし運用面では一定の配慮があります。同通知では、吸収合併・吸収分割に伴い業を承継する場合、効力発生日の前であっても許可申請の審査事務を行って差し支えなく、許可は効力発生日以降に行う、とされています(事業譲渡も同様)[C-06b]。また、産業廃棄物処理「施設」の設置者については、業許可とは別に、譲受け等の許可・合併分割の認可・相続の届出といった承継制度が用意されています(「業」と「施設」で扱いが異なる点に注意)[C-06b]。
ここで生じるのが無許可の空白リスクです。新規取得には審査期間があり、許可は効力発生日以降に出る運用のため、段取りを誤ると承継後に運搬・処理ができない期間が生じうるのです[C-06c]。スケジュールの逆算が欠かせません。
さらに、第1層の解体工事業登録(建設リサイクル法)も会社単位の登録です。事業譲渡では会社の器が変わるため、500万円未満で営業する場合の登録の扱いは所管都道府県への確認が必要になります[C-01]。
実務上の示唆は2つです。1つは、許可をまとめて維持したい場合に株式譲渡が選好される構造的理由がここにある、ということ。もう1つは、産廃の承継・新規取得の段取りは所管自治体(都道府県・政令市)で運用に差があるため、所管自治体・行政書士へ個別に確認しておくべきだ、ということです。「承継される」と決めつけず、「承継者が新規取得を要する場合がある/要個別確認」として進めるのが安全です。

図解F3:建設業許可は事前認可で承継できても、産廃許可は建設業法の承継制度の対象外。事業譲渡・合併・分割では新規取得が必要になる場合があり、審査期間中の無許可の空白に注意。自治体運用で差があります。
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§4【M&A・投資視点】許認可という“見えない資産”の価値と、承継させる準備
ここからは、許可を「資産」として見る視点です。許可・有資格者・産廃許可は、決算書に金額では載りません。けれど廃業すればゼロになり、承継すれば買い手が欲しがる価値になる“見えない資産”です。だからこそ出口は、「たたむ」より先に「許可ごと譲る」を検討する価値があります。
買い手は許可をどう見るか — チェックポイント3つ
1. 許認可の質と承継可否。建設業許可(解体工事業)・解体工事業登録・産廃許可がそろっているか、そして承継可能か。株式譲渡なら原則継続、事業譲渡なら建設業許可は事前認可・産廃は別手続き——承継可否がスキーム設計に直結します[C-02][C-03][C-06]。 2. 有資格者の定着と常勤性。経管・専技などの有資格者が承継後も要件を満たし続けられるか。属人化や名義借りに頼った運用は、それだけで評価を下げる要因になります[C-03b][C-07]。 3. 許可リスク・簿外リスク。許可の有効期限・更新漏れはないか。承継者は許可番号や決算報告の提出義務を引き継ぐため[C-03e]、許可まわりの整理状態がそのまま評価に響きます。
編集部より:買い手が最初に確認するのは“許可・有資格者・産廃が承継できるか”です
実際の建設・解体領域のM&Aで、買い手が初期に確認するのは、まず「許可・有資格者(経管/専技)・産廃許可を、選んだスキームで承継できるか」です。「株式譲渡なら許可をまとめて維持できる」点が選好される一方、事業譲渡を選ぶ場面では、産廃許可の手当て(廃掃法の承継制度か新規取得か)を逆算しておかないと、承継後に運搬・処理ができない空白が生じかねません。許可の名義借り運用や有資格者の属人化は、それだけで評価を大きく下げます。許可の「取り方」だけ読んでも、この“買い手が許可をどう見るか”は見えてこないのです。(※本コラムは当社の建設・解体領域におけるM&A実務での一般的な所感です)
売り手が承継前に整える準備3つ
1. 3層の許可を棚卸しする。解体工事業登録・建設業許可(解体工事業)・産廃許可の有効期限と、有資格者の在籍・常勤性を一覧にして「見える化」します。“まとめて承継できる状態”ほど高く評価されます。 2. スキーム選択を早期に決める。許可をまとめて維持したいなら株式譲渡が有利な場面が多く、事業譲渡を選ぶなら産廃の手当て(新規取得の審査期間)を逆算しておきます[C-06c]。 3. 申請期限から逆算する。事業譲渡の事前認可は行政庁により申請期限が異なります(関東地方整備局の手引では90日前など)[C-03c]。「実行してから手続き」では間に合わないため、早めに許可行政庁・行政書士へ相談しておきます。
相場・評価の決まり方は別記事へ
許可が承継できる前提なら、許可・有資格者の有無が評価を左右します(解体では1級施工管理技士が1名増えるだけで評価が大きく動くこともあるとされます)[C-07]。ただし、具体的な相場の算定式(年買法やEBITDA倍率)と税引後の手取りは、解体工事会社のM&A相場・売却価格の目安で詳しく解説しています。本記事では「許可・有資格者の有無が評価を左右する」という定性的な整理に留めます。
なお税務について。個人株主が株式売却で得た利益には、申告分離課税で20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が課されます。事業譲渡は課税の入口が異なるため、個別の税額は税理士へご確認ください[C-08]。
ひとつ注意点があります。「M&Aで事業承継税制を使って節税できる」という理解は正しくありません。事業承継税制(贈与・相続による株式取得の納税猶予制度)は親族内・社内承継の制度であり、第三者へのM&A売却とは別物です[C-09]。混同しないようにしてください。
また、補足として、中小企業等経営強化法の「経営力向上計画」の認定を受けると、建設業法上の許認可の承継の特例など法的支援を受けられる場合があるとされています[C-10]。対象や要件は計画策定の手引き・中小企業庁で確認が必要なため、本記事では補足扱いとし、利用可否は専門家へご確認ください。
買い手側の動きや進め方は、会社売却(M&A)の進め方・流れや廃業なら許可は消える — 廃業と売却どちらが得かも参考になります。掲載中の案件は建設・不動産・住宅のM&A案件一覧(解体で検索)からご覧いただけます。
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§5 よくある質問(FAQ)
Q1. 解体工事業の許可はM&Aで引き継げますか? A. スキームによります。株式譲渡なら、許可は会社に帰属したまま原則として継続します[C-02]。事業譲渡・合併・分割では、建設業許可は令和2年改正の事前認可(建設業法17条の2)を承継日より前に受ければ承継できます(全部承継が原則)[C-03]。ただし産廃許可は別制度です[C-06]。可否・手続きは許可行政庁・行政書士へご確認ください。
Q2. 株式譲渡と事業譲渡で、解体の許可の扱いはどう違いますか? A. 株式譲渡は法人格が変わらないため、3層の許可(登録・建設業許可・産廃)が会社に残り原則維持されます[C-02]。事業譲渡は会社の器が変わるため、建設業許可は事前認可が必要で、産廃許可は承継者の新規取得が原則になります[C-03][C-06]。許可をまとめて維持したい場合に株式譲渡が選ばれやすいのはこのためです。
Q3. 解体工事業登録(建設リサイクル法)はM&Aで承継できますか? A. 解体工事業登録は会社単位の登録です。株式譲渡なら会社に帰属したまま原則継続しますが[C-02]、事業譲渡では会社の器が変わるため、500万円未満で営業する場合の登録の扱いは所管都道府県への確認が必要です[C-01]。個別は所管自治体・行政書士へご確認ください。
Q4. 事業譲渡で建設業許可を引き継ぐ手続きと期限は? A. 建設業法17条の2の事前認可を、承継日より前にあらかじめ許可行政庁へ申請し、認可を受けてから承継を実行します[C-03]。申請期限は許可行政庁により異なり、関東地方整備局の手引では承継予定日の90日前まで(標準処理期間90日)とされています[C-03c]。都道府県知事許可など他の行政庁では期限が異なるため、早めに確認してスケジュールを逆算してください。
Q5. 産業廃棄物処理業の許可も、解体会社のM&Aで一緒に承継されますか? A. 株式譲渡なら会社に帰属したまま原則継続しますが、事業譲渡・合併・分割では建設業法の承継制度の対象外で、承継者が新規に許可を取得するのが原則です(環境省 環循規発第2003301号)[C-06]。新規取得には審査期間があり、段取りを誤ると無許可の空白が生じうるため、所管自治体・行政書士への早期確認が必要です[C-06c]。
Q6. 許可を引き継がずに廃業すると、どうなりますか? A. 会社をたためば、解体工事業登録も建設業許可も産廃許可も、有資格者も価値ゼロで消えます。承継すれば次の担い手に引き継がれ対価が残ります。廃業と売却の損得は廃業と売却どちらが得かで比較しています。「たたむしかない」と決める前に、許可ごと譲れないかを確認するのが安全です。
Q7. 経営業務管理責任者(経管)・専任技術者(専技)がいなくなると、許可はどうなりますか? A. 経管・専技は建設業許可の要件です。株式譲渡で許可が会社に残る場合でも、これらの有資格者が退任して要件を欠くと許可の維持に影響します。退任に伴う変更届などの対応が必要になるため[C-02][C-03b]、承継後も要件を満たせる体制かを事前に確認してください。具体的な要件・手続きは許可行政庁・行政書士へご確認ください。
§6 まとめ — 続ける/継がせる/売る、どの出口でも許可を守る一手
最後に要点を3つ。
- 解体の許可は3層(①解体工事業登録=500万円未満・建設リサイクル法/②建設業許可「解体工事業」=500万円以上/③産業廃棄物処理業許可=廃棄物処理法)[C-01]。
- 株式譲渡なら法人格が存続するため許可は原則維持。事業譲渡・合併・分割では建設業許可は事前認可(17条の2)で承継可、相続は死亡後30日以内の認可(17条の3)[C-02][C-03][C-03d]。
- ★産業廃棄物処理業許可は建設業法の承継制度の対象外で、事業譲渡では承継者の新規取得が原則。自治体運用に差があり、要個別確認です[C-06]。
出口別のチェックリストにすると、こうなります。
売り手の方
- ☐ 3層の許可(登録・建設業許可・産廃)の有効期限と有資格者を棚卸ししたか
- ☐ 想定スキーム(株式譲渡/事業譲渡)を早期に決めたか
- ☐ 事業譲渡なら申請期限(行政庁差)から逆算したか/産廃の段取りを確認したか
- ☐ 廃業する前に、許可ごと譲れないかを確認したか
買い手の方
- ☐ 許可・有資格者・産廃許可が、選んだスキームで承継できるかをearly DDで確認したか
- ☐ 産廃が新規取得になる場合の審査期間を逆算したか
会社をたためば、長年の許可も有資格者もゼロに戻ります。でも許可は“見えない資産”です。株式譲渡なら法人格ごと原則維持でき、事業譲渡でも承継日より前に事前認可を受ければ許可番号ごと引き継げます。ただし産廃許可は別制度——ここを見落とさないことが肝心です。続ける・継がせる・売る、どの出口でも、まずは自社の3層の許可をどう守れるかを確認することから始めましょう。
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相場は解体会社のM&A相場・売却価格の目安、誰が買うのかは解体業M&A事例集、建設業全般の許可承継は建設業のM&A・許可承継の全体像をご覧ください。
免責
本記事は解体工事業の許認可承継・M&A・事業承継に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の許可の承継可否・申請期限・承継成否を保証するものではありません。許可の承継可否・申請期限・運用は、許可行政庁(国土交通大臣=地方整備局/都道府県知事)および所管自治体・許可の種類により異なります。許認可の承継申請・個別の可否判断は行政書士・許可行政庁・所管自治体へ、法務に関する事項は弁護士へ、税務の取り扱いは税理士へご相談ください。本記事の内容は当社が許認可の代理・代行を行うことを示すものではありません。また、本記事には当社サービス(無料相談)へのご案内を含みます。
出典
- [C-01][C-05] 軽微な建設工事(建築一式以外500万円未満・建築一式1,500万円未満/消費税込み)・解体の許認可の枠組み — 国土交通省「建設業の許可とは」: https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000080.html / 建設業許可制度: https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000284.html
- [C-01b] 解体工事業の業種新設(平成28年6月1日・28→29業種)と経過措置終了(平成31年5月31日/2019年6月以降は500万円以上の解体に許可が必要)— 国土交通省「建設業の許可とは」/北陸地方整備局 経過措置: https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000080.html / https://www.hrr.mlit.go.jp/kensei/sangyo/kensetsu/kyoka/190327kaitaikeikasochi.pdf
- [C-02] 株式譲渡は法人格存続のため許可は会社に帰属したまま原則継続(事業譲渡=事前認可が必要との対比。継続の明文ワンライナーは省庁になく一般法理として記述)— 国土交通省 建設業者の地位の承継 ほか: https://www.mlit.go.jp/common/001365753.pdf
- [C-03] 事業譲渡・合併・分割の事前認可による地位承継制度(建設業法17条の2・令和2年10月1日施行・あらかじめの認可で空白なく地位の全部を承継)— e-Gov 建設業法/国土交通省 建設業者の地位の承継: https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100 / https://www.mlit.go.jp/common/001365753.pdf
- [C-03b] 承継の制約(全部承継が原則・一部業種のみ承継不可・一般/特定の組合せ制約・承継者の許可要件具備・営業所技術者の常勤)— 関東地方整備局 建設業者の地位の承継(手引): https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000877209.pdf
- [C-03c] 事前認可申請の受付期限は行政庁差(関東地方整備局=承継予定日の90日前まで・標準処理期間90日)— 関東地方整備局 建設業者の地位の承継(手引): https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000877209.pdf
- [C-03d] 相続は建設業法17条の3により死亡後30日以内に認可申請し承継/法人成りも認可で番号・経審を移行可 — e-Gov 建設業法/国土交通省: https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100 / https://www.mlit.go.jp/common/001365753.pdf
- [C-03e] 承継者は許可番号を引き継ぎ、被承継者の決算報告(事業年度終了届)の提出義務も承継する — 関東地方整備局 建設業者の地位の承継(手引): https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000877209.pdf
- [C-06] ★産業廃棄物収集運搬業・処分業(特管含む)の許可は事業譲渡・合併・分割では承継されず承継者が新規取得を要する(「当該承継する者において新規の許可の取得を要することとなる」)— 環境省 廃棄物規制課長通知(環循規発第2003301号): https://www.env.go.jp/content/900479532.pdf
- [C-06b] 吸収合併・吸収分割では効力発生日前から審査事務可・許可は効力発生日以降(事業譲渡も同様)/産廃処理「施設」設置者には譲受け等の許可・合併分割の認可・相続の届出の承継制度がある — 環境省(環循規発第2003301号): https://www.env.go.jp/content/900479532.pdf
- [C-06c] 産廃の業許可は新規取得のため審査期間があり段取り次第で無許可の空白が生じうる(C-06/C-06bより導出)— 環境省(環循規発第2003301号)+所管自治体手引: https://www.env.go.jp/content/900479532.pdf
- [C-07] 解体の評価加点(許認可・有資格者・産廃許可・元請取引)と有資格者1名で評価が大きく動くこと — CINC Capital/M&A総研/船井総研(T3・attributed): https://www.cinc-capital.co.jp/column/industry/demolition-ma / https://www.masouken.com / https://ma.funaisoken.co.jp
- [C-08] 個人の株式譲渡益は申告分離課税20.315%(所得税15%+復興0.315%+住民税5%)— 国税庁 タックスアンサー No.1463: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
- [C-09] 事業承継税制(贈与・相続の納税猶予制度)は親族内・社内承継の制度で第三者M&A売却とは別物 — 中小企業庁 法人版事業承継税制(特例措置)/東京都産業労働局: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zouyo_souzoku.html / https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/chushou/shoko/keiei/jigyoshokeizeisei/
- [C-10] 中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定で建設業法上の許認可承継の特例等の法的支援を受けられる場合がある(対象・要件は手引き・中小企業庁で要確認)— 中小企業庁 経営力向上計画/J-Net21: https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/ / https://j-net21.smrj.go.jp/support/publicsupport/2019031901.html
- [共通REF] 解体の建設業許可業者数69,949(2025/3末・+3.6%)— 国土交通省「建設業許可業者数調査(令和7年3月末)」: https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001889275.pdf / 建設業の後継者不在率57.3%(2025・ピーク71.4%(2018)から改善)— 帝国データバンク「後継者不在率動向調査2025」: https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/