システム開発SES契約と技術者

SES会社 買収 注意点|契約・派遣許可・稼働の3点を確かめる順番と、待機1人で粗利が動く試算

この記事の目次
  1. この記事の結論
  2. SESの売上は、技術者・契約・適法な運営の3つがそろって引き継げる売上になる
  3. 契約が準委任・請負・派遣のどれかは、題名ではなく指揮命令の実態で決まる
  4. 派遣の許可がある会社は、株式譲渡なら許可が法人に残り、事業譲渡は要領上、譲り受ける側の許可の有無で手続が分かれる
  5. 実態が派遣と見られる現場が見つかると、無許可の論点が顧客側にも及ぶ
  6. 技術者別の単価・原価・待機を1枚の表にすると、引き継げる粗利が見える
  7. 主要顧客の契約は、更新の履歴と技術者の交代条件を顧客別に並べる
  8. 技術者と顧客の離脱は、説明の順番と、誰が窓口かの把握で減らす
  9. まとめ:3つの確認を、技術者別・顧客別の一覧で進める
  10. よくある質問(FAQ)
  11. 出典

SES会社の売却案件では、「技術者が○人、稼働率は高く、長期の契約が中心」という説明がよくあります。買い手が知りたいのは、その売上が買収後も同じように続くのか、続かない部分はどこか、です。この記事は、SESの売上を引き継げる売上かどうかを、契約の型、派遣の許可、技術者別の粗利と労働時間、顧客と技術者の引継ぎの順に確かめる方法に絞ります。

この記事の結論

  • SESの売上は、技術者・契約・適法な運営の3つがそろって初めて引き継げる売上として説明できます。 売上の合計より先に、この3つを一覧にします。
  • 契約が準委任でも請負でも、実態が派遣なら許可の有無が論点になります。 許可は、株式譲渡では法人に残ります。事業譲渡は、業務取扱要領が合併・分割に準じて扱うとしており、譲り受ける側が許可を持っているかで手続が分かれると読めます(手続は労働局に確認)。
  • 技術者別の単価・原価・待機を1枚の表にすると、待機1人で粗利が大きく動くことが見えます。 仮の数字の試算で示します。

この記事の対象:SES(技術者を顧客の現場で稼働させる事業)を営む会社の買収を検討している方と、売却を考え始めた経営者。

システム開発会社全体の見方はシステム開発会社のM&A DATAにまとめています。偽装請負かどうかを見る37号告示の観点、準委任の再委託、取適法、株式譲渡と事業譲渡で動く11項目の比較は、システム開発会社のM&Aでの契約の引継ぎで扱っています。この記事は、それらを繰り返さず、SESの売上を引き継げるかの確認に進みます。

SESの売上は、技術者・契約・適法な運営の3つがそろって引き継げる売上になる

結論: 技術者が在籍していても、契約が続かなければ売上は残りません。契約があっても、運営が適法でなければ、買い手は簿外の債務と顧客の離脱を見込む必要が出ます。

本記事の整理では、SESとは、技術者を顧客の現場で稼働させ、その稼働に対して報酬を受ける事業を指します。法令で定義された用語としては扱わず、個々の会社の契約が民法や労働者派遣法のどれに当たるかは、次の章で契約ごとに見ます。

3つの要素 確かめること 主な資料
技術者 在籍・定着・稼働の実態。雇用か、業務委託か 雇用契約書、技術者別の一覧、勤怠
契約 契約の型(請負・準委任・派遣)、更新の履歴、顧客の窓口 基本契約書、個別契約書、注文書
適法な運営 実態が契約の型と合うか。派遣の許可。労働時間の管理 指示の経路が分かる資料、許可証、36協定、勤怠
避けたい判断 こうすればOK
技術者の人数と稼働率だけで、売上が続くと見る 技術者別に、契約の型・更新の履歴・原価を並べて見る
契約書の題名が準委任なので、問題はないと見る 題名ではなく、現場での指示の経路と労働時間の管理で確かめる
売上が大きい顧客の契約を、一括で「長期」と見る 顧客別に、個別契約の期間と更新の履歴を一覧にする

契約が準委任・請負・派遣のどれかは、題名ではなく指揮命令の実態で決まる

結論: 3つの型は、約束の中身が違います。ただし、どの型で結んだかではなく、現場で誰が指示を出しているかで、派遣に当たるかが判断されます。

型 法令上の定義 報酬の考え方 派遣法の許可
請負 当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその結果に報酬を支払うことを約する(民法632条)[3] 仕事の結果に対する報酬 契約の型としては対象外。実態が派遣に当たれば許可が要る[6]
準委任 法律行為でない事務の委託。委任の規定が準用される(民法643条、656条)[3] 特約がなければ報酬は請求できない。期間で定める場合や、履行の割合に応じる場合がある(同法648条)[3] 契約の型としては対象外。実態が派遣に当たれば許可が要る[6]
労働者派遣 自己の雇用する労働者を、その雇用関係の下で、他人の指揮命令を受けて、その他人のために労働に従事させること(労働者派遣法2条1号)[1] 派遣料金 事業として行うには厚生労働大臣の許可が必要(同法5条1項)[1]

区分については、厚生労働省のガイドが次のように説明しています。請負には、注文主と労働者との間に指揮命令関係が生じない点が、労働者派遣との違いです。この点は委任・準委任も同様で、準委任契約で行われる場合でも、実態として発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣事業に該当します。該当するかは契約の形式ではなく、37号告示に基づき実態に即して判断されます[6]。

買い手が契約書で確かめるのは、次の点です。

  • 契約の型と実態が合っているか。 準委任として売上を立てている現場で、顧客が技術者に直接指示を出していれば、売上の根拠である契約の型と実態が食い違います。確認の観点は契約の引継ぎの記事の表にあります。
  • 派遣として結んでいる契約があるか。 労働者派遣契約では、当事者が就業の場所、指揮命令者、派遣の期間などを定める必要があり(労働者派遣法26条1項)、派遣元は契約の締結に先立ち、許可を受けている旨を相手方に明示しなければなりません(同条3項)[1]。
  • 再委託先のフリーランスの扱い。 ガイドは、請負業者がフリーランス等に再委託し、双方に雇用関係がない場合は、労働者派遣法との関係では問題とならないとします。ただし、契約の名称にかかわらず、実態から労働者性が認められれば労働基準法等が適用され、さらに注文主の指揮命令を受けているなら、偽装請負になるとしています[6]。

派遣の許可がある会社は、株式譲渡なら許可が法人に残り、事業譲渡は要領上、譲り受ける側の許可の有無で手続が分かれる

結論: SES会社が派遣の許可を持っている場合、株式譲渡と事業譲渡で、許可の扱いが違います。許可の更新時期と財産的基礎も、買収の条件に入ります。

労働者派遣事業の許可は、事業を行おうとする者が受けます(労働者派遣法5条1項)[1]。許可の有効期間は3年で、更新後は5年です。更新の申請は、有効期間の満了する日の3か月前までに行います(同法10条、同法施行規則5条)[1][2]。

項目 株式譲渡 事業譲渡
許可の名義 法人が変わらないため、許可の名義も変わらない 業務取扱要領は、事業譲渡・譲受の場合を吸収分割に準じて取り扱うとし、吸収分割は吸収合併の場合に準じるとしている。合併では、存続法人が許可を受けておらず消滅法人が受けている場合に、新規の許可申請が必要。存続法人が受けている場合は新規申請は要らない[4]。これを事業譲渡に当てはめると、譲り受ける側が許可を持っているかで手続が分かれる(本記事の読み方。個別の手続は労働局に確認)
届出が要る変更 申請書の記載事項は、事業主の氏名・名称・住所、代表者、役員、事業所、派遣元責任者であり、株主は含まれない(法5条2項)。これらに変更があれば届出(法11条)。期限は、派遣元責任者の氏名・住所は30日以内、それ以外は10日以内(登記事項証明書を添付する場合は30日以内)[1][2] 譲渡側が派遣事業そのものを廃止する場合は廃止の届出を行い、届出があると許可は効力を失う(法13条)[1]。事業の一部だけを譲り、譲渡側の事業所数等が変わる場合は、変更の届出を行う(業務取扱要領)[4]
許可の更新 更新時に許可基準への適合が必要(法10条3項)[1] 同左

財産的基礎の基準は、業務取扱要領に次のように書かれています。許可を申請する事業主の基準資産額が、2,000万円に派遣事業を行う事業所の数を乗じた額以上であること。その基準資産額が負債の総額の7分の1以上であること。事業資金として自己名義の現金・預金が、1,500万円に事業所の数を乗じた額以上であること[4]。基準資産額は、資産の総額から繰延資産と営業権(のれん)を除き、負債の総額を引いた額とされているため、買収で計上したのれんは算入されません[4]。更新でも許可基準への適合が求められるため、本記事の整理では、買い手は、買収後の財務の動きが更新の審査に影響しないかを、更新の時期と合わせて確認することになります。小規模な事業主への暫定的な配慮措置は、要領や労働局の案内で個別に確認します。

買い手のグループへの派遣には上限があります。 派遣元事業主は、関係派遣先への派遣割合を、事業年度の総労働時間で100分の80以下にしなければなりません(法23条の2)。関係派遣先には、派遣元を連結子会社とする親会社や、その連結子会社などが含まれます[1][4]。買収で買い手が親会社になる場合、買い手グループの現場への派遣は、この上限の対象になりえます。派遣以外の契約で行う部分は対象外です。

避けたい判断 こうすればOK
「許可は会社に付いているので、どちらの方式でも引き継げる」と見る 株式譲渡か事業譲渡か、譲り受ける側が許可を持つかを分けて、手続を労働局に確認する
派遣の許可がない会社の売上を、準委任の売上と同じに見る 許可がない会社で実態が派遣の現場がないか、現場ごとの指示の経路で確かめる
買収後に買い手グループへ技術者を回す前提で、人員計画を立てる 派遣として行う部分は、関係派遣先への派遣割合の上限を確認してから計画する

実態が派遣と見られる現場が見つかると、無許可の論点が顧客側にも及ぶ

結論: 偽装請負かどうかの判断基準は別の記事で扱っています。ここで押さえるのは、見つかったときに、売り手だけでなく顧客側にも論点が生じることです。

許可なく労働者派遣事業を行うことは、労働者派遣法5条1項に反します。受け入れる側も、許可を受けた派遣元以外から労働者派遣を受けてはならないとされています(同法24条の2)[1]。

さらに、違法な派遣を受け入れた側には、労働契約申込みみなし制度が関わります(同法40条の6)。次のような行為があると、その時点で、受け入れた側から派遣労働者に、その労働条件と同一の内容の労働契約の申込みがあったとみなされます[1][7]。

  • 許可を受けていない事業主から労働者派遣を受けること(24条の2違反)
  • 法律の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を結び、労働者派遣契約で定める事項を定めずに労働者派遣を受けること

ただし、受け入れた側が違法であることを知らず、かつ知らなかったことに過失がなかったときは、この制度は適用されません。みなされた申込みは、派遣労働者が承諾すれば労働契約が成立します[1][7]。

買い手にとっての意味は、次の3点です。

論点 見る資料 買い手の対応の例
売り手の簿外債務 派遣の許可の有無、現場の指示の経路 表明保証・補償で手当てできるかを交渉する
顧客が契約を続けるか 顧客との契約、現場の運用の記録 顧客の窓口と、運用を契約に合わせる計画を確認する。続くかどうかは、個別の契約と顧客の判断による
是正にかかる期間と費用 現場の数、契約の型を直す必要のある契約 是正をクロージング前の条件にするか、価格に反映するかを話し合う

個別の現場が派遣に当たるか、この制度が適用されるかは、労働局や社会保険労務士・弁護士などの専門家に確認してください。

技術者別の単価・原価・待機を1枚の表にすると、引き継げる粗利が見える

結論: SESの粗利は、稼働している技術者の数で決まります。待機の技術者は、売上がなく原価だけが残ります。月別・技術者別の表にして、待機の月数まで並べます。

売り手に求める表の列は、次のとおりです。

列 内容
技術者 個人名は出さず、記号で識別する
雇用形態 正社員・契約社員・業務委託
現場・顧客 配属先と、契約の型
月額単価 顧客への請求額
月の原価 給与、会社負担の社会保険料、外注費
月の粗利 単価から原価を引いた額
待機の月数 直近12か月で現場に配属されていない月数

仮の数字で、粗利の動き方を見てみます。次の表は説明のための仮の数字で、実在の会社のデータではありません。

技術者 月額単価(万円) 月の原価(万円) 月の粗利(万円) 状態
A 80 55 25 稼働
B 70 50 20 稼働
C 60 48 12 稼働
D 0 45 ▲45 待機
合計 210 198 12 稼働率75%

稼働している3人の粗利は57万円ですが、待機のDの原価が引かれて、合計は12万円です。さらに、稼働中のCの契約が終わって待機になると、合計の粗利は25+20-45-48で▲48万円になります。人数と稼働率が同じように見えても、待機の月数と、契約が終わる時期によって、引き継げる粗利は大きく動きます。

稼働率は、一つに決まった定義がありません。本記事の整理では、月末時点の「稼働している技術者数÷在籍している技術者数」とし、待機の人数と月数を併記します。売り手と買い手で定義を先にそろえます。

労働時間と残業代は、簿外債務として見る

中小M&Aガイドライン(第3版)は、株式譲渡は法人格に変動がないため、未払残業代など貸借対照表の数字に表れない簿外債務や、紛争に関する損害賠償債務など将来発生しうる偶発債務のリスクが、比較的高くなりやすいとしています。事業譲渡は、承継する財産を選べるため、簿外債務や偶発債務のリスクを比較的遮断しやすいとされています[8]。

本記事の整理では、SESは顧客の現場で働く形態のため、労働時間の把握が自社と顧客に分かれやすい事業です。確認する点は次のとおりです。

  • 労働基準法32条は、休憩時間を除き、1週間40時間、1日8時間を超えて労働させてはならないと定めています。これを超えるには、労働者の過半数を代表する者などとの書面による協定(36協定)の届出が必要です(同法36条)。時間外労働には割増賃金を支払う必要があります(同法37条)[5]。
  • 賃金の請求権の時効は、同法115条で5年とされていますが、当分の間は3年です(附則143条)。さかのぼって確認する期間の目安になります。
  • 顧客に提出している稼働報告(月の合計時間など)と、自社の勤怠記録が一致しているかを確かめます。

主要顧客の契約は、更新の履歴と技術者の交代条件を顧客別に並べる

結論: 「長期契約が中心」という説明は、顧客別の一覧にして確かめます。支配権の変動や再委託の条項は、別の記事で扱っているので、ここでは一覧の作り方に絞ります。

列 内容
顧客 売上の大きい順
契約の型 請負・準委任・派遣
個別契約の期間と更新の履歴 直近の更新の回数と、終了した契約の有無
配属の技術者数 売上構成比とあわせて
技術者の交代の条件 契約書に定めがあるか
チェンジオブコントロール条項・再委託の条項 有無と内容
顧客側の窓口 誰が、どの技術者を通じてつながっているか

チェンジオブコントロール(COC)条項は、中小M&Aガイドラインでは、企業の株主の異動や支配権の変動などにより、契約の相手方に解除権が発生することなどを定める条項とされています[8]。この条項の有無と内容は、契約書の文言で確認します。

主要取引先への説明について、中小PMIガイドラインは、成立直後に譲渡側経営者とともに主要取引先を訪問すること、継続取引が解消されて事業継続に影響しうる場合には、基本合意後からクロージング前に訪問、説明することも検討することを示しています。失敗例には、主要取引先への事前説明を怠り、取引が縮小・停止された例が載っています[9]。

技術者と顧客の離脱は、説明の順番と、誰が窓口かの把握で減らす

結論: 離脱を完全に防ぐ方法はありません。説明の順番を決め、技術者と顧客のつながりを事前に書き出しておくことで、備えができます。

中小PMIガイドラインは、従業員への対応として次の取組を挙げています[9]。

  • 基本合意の後、キーパーソンに一人ずつ個別に説明し、協力を要請する。情報流出に注意し、必要に応じて秘密保持の誓約書を取る
  • M&Aに関する情報を、遅滞なく、全員に、同時に、正確に伝える
  • 説明会のあと、一人ひとりと個別面談を行い、不安や思いを聞く
  • 従来の業務のやり方を否定しない

失敗例には、噂が先に広まって多くの従業員が離職した例、従業員の担当業務や取引先対応を把握していなかったため、一部の従業員の退職に伴って重要な技術や取引先を失った例が載っています[9]。

SESでは、技術者ごとに「顧客の現場のキーマンとの関係」が違います。本記事の整理では、次を書き出しておくと、説明の順番を決めやすくなります。

書き出すこと 使いどころ
技術者ごとの、顧客側の窓口と、現場のリーダーを務めているか 先に個別に説明する技術者を決める
顧客との契約の更新時期 説明の時期と、更新の交渉の時期を重ねすぎない
売り手の経営者が、顧客との関係の窓口になっているか 経営者の残る期間と、引継ぎの役割を決める
事業譲渡の場合の、技術者の承諾 使用者の権利を第三者に譲り渡すには労働者の承諾が必要(民法625条1項)[3]。技術者ごとに承諾を得る計画を立てる

まとめ:3つの確認を、技術者別・顧客別の一覧で進める

SES会社の買収・売却では、契約の型、派遣の許可、技術者別の粗利と労働時間、顧客別の契約と窓口を、一覧にして確かめます。偽装請負の判断は、契約の題名ではなく、現場の実態で行われます。見つかったときは、売り手の簿外債務だけでなく、顧客の側にも論点が生じます。待機の技術者が1人増えるだけで粗利が大きく動くため、売上の合計より先に、技術者別の表を求めます。個別の判断が要る箇所は、弁護士・社会保険労務士・税理士などの専門家に確認してください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. SES会社を買うとき、最初に何を確認しますか? A. 技術者別の一覧(在籍・単価・原価・待機の月数)と、顧客別の契約書の一覧です。売上の合計より先に、誰がどの契約で稼働していて、その契約が準委任・請負・派遣のどれとして結ばれ、実態が合っているかを見ます。そのうえで、派遣の許可の有無と、労働時間の管理資料を確認します。

Q2. SES契約が準委任なら、労働者派遣の許可は要りませんか? A. 契約の題名では決まりません。厚生労働省のガイドは、委任・準委任を含めて、発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係がある場合は、契約の形式を問わず労働者派遣事業に該当するとしています。労働者派遣事業を行うには許可が必要です(労働者派遣法5条)。特定の現場が当たるかどうかの個別の判断は、労働局や社会保険労務士・弁護士などの専門家に確認してください。

Q3. 派遣の許可を持つSES会社を事業譲渡で買うと、許可も引き継げますか? A. 厚生労働省の業務取扱要領は、事業譲渡・譲受の場合を吸収分割に準じ、さらに吸収合併の場合に準じて取り扱うとしています。吸収合併の場合は、存続する法人が許可を受けていなければ新規の許可申請が要り、受けていれば新規申請は要らないと整理されています。事業譲渡では、譲り受ける側が許可を持っているかで手続が分かれる、というのが本記事の読み方です。手続は管轄の労働局に確認してください。株式譲渡では法人が変わらないため、許可の名義は変わりません。

Q4. 株式譲渡で買ったあと、買い手のグループ会社に技術者を派遣してもよいですか? A. 派遣として行う部分には制限があります。派遣元事業主は、関係派遣先(親会社などグループ内の会社)への派遣割合を、事業年度の総労働時間で100分の80以下にしなければなりません(労働者派遣法23条の2)。買収で買い手が親会社になれば、買い手とその連結子会社は関係派遣先に当たる可能性があります。準委任など派遣以外の契約で行う部分は、この規定の対象ではありません。

Q5. 稼働率は、どう計算すればよいですか? A. 一つに決まった定義はなく、会社ごとに違います。本記事の整理では、月末時点で「顧客の現場で稼働している技術者数÷在籍している技術者数」とし、待機の人数と月数を併記します。売り手と買い手で定義を先にそろえないと、同じ「稼働率」でも数字が比べられません。

Q6. 技術者の残業代は、買収後に問題になりますか? A. 中小M&Aガイドラインは、株式譲渡は法人格が変わらないため、未払残業代などの簿外債務のリスクが比較的高くなりやすいとしています。労働基準法37条は時間外労働に割増賃金を求めており、賃金の請求権の時効は、当分の間3年です(同法115条、附則143条)。顧客に出す稼働報告と自社の勤怠が一致しているか、36協定があるかを確認します。

Q7. 買収後に、技術者や顧客が離れないようにできますか? A. 離れないと保証することはできません。中小PMIガイドラインは、キーパーソンへの先行した個別の説明、全従業員への同時で正確な説明、主要取引先への速やかな説明を取組として挙げ、説明の前に噂が広まって従業員が離職した例や、主要取引先の取引が縮小した例を失敗例に載せています。誰が顧客の窓口か、誰が現場の要かを事前に書き出しておきます。

出典

  1. e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(昭和六十年法律第八十八号)第2条・第5条・第10条・第11条・第13条・第23条の2・第24条の2・第26条・第40条の6 https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
  2. e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則」(昭和六十一年労働省令第二十号)第5条・第8条・第18条の3 https://laws.e-gov.go.jp/law/361M50002000020
  3. e-Gov法令検索「民法」(明治二十九年法律第八十九号)第625条・第632条・第643条・第648条・第656条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  4. 厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」(令和8年10月1日適用版)第3(許可基準の財産的基礎、法人の合併等に際しての取扱い)・第4(関係派遣先に対する労働者派遣の制限等) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001683183.pdf
  5. e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和二十二年法律第四十九号)第32条・第36条・第37条・第115条・附則第143条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
  6. 厚生労働省・都道府県労働局「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」 https://www.mhlw.go.jp/content/001704228.pdf
  7. 厚生労働省「労働契約申込みみなし制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/000904257.pdf
  8. 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月)用語集、第1章 II 3(7)・(8) https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf
  9. 中小企業庁「中小PMIガイドライン」(令和4年3月)第2章 中小PMI各論 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/pmi_guideline.pdf

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