M&A売却(会社売却・事業売却)完全ガイド|流れ・期間・価格
M&A売却(会社売却・事業売却)完全ガイド|流れ・期間・価格
M&A売却とは、株式または事業を第三者に対価を得て譲渡し、経営権・事業主体を移転する取引のことです。 M&A(エムアンドエー、Mergers and Acquisitions)は「合併と買収」を指す言葉で、売り手から見れば「会社や事業を売る手段」を意味します。
後継者不在や体力的な限界、第二の人生の資金確保など、売却を検討する理由はさまざまですが、いざ進めようとすると「流れ・期間・相場・契約・税金」が分からず全体像を掴めない経営者は少なくありません。本記事では、M&A売却の意味と会社売却・事業売却の違いから、検討〜クロージング・PMIまでの全11ステップ、期間の目安、業種別の相場レンジと価格算定3手法、必要な手続き・契約書、税金と手取りの考え方までを1本にまとめて解説します。
本記事のスコープ:売上数億〜数十億円規模の中小企業(中小M&A)の売り手向けの一般情報です。上場企業のTOBや大型クロスボーダーM&Aは対象外です。税率・課税区分・契約条項などは制度や個別事情により変わるため、本記事は構造の理解を目的とした一般解説であり、個別の税務・法務判断は税理士・弁護士などの専門家への相談を前提としています。年度依存の統計・税率は公開時点(2026年6月)の公式情報に基づきますが、最新は各公式サイトでご確認ください。
§1 M&A売却とは(会社売却・事業売却の違いと手法)
M&A売却と一口に言っても「会社まるごと(会社売却)」と「事業の一部(事業売却)」では手法も税金も大きく異なります。まず言葉の定義と違いを整理し、株式譲渡・事業譲渡など主要4手法、そして中小企業ならではの後継者問題の文脈を押さえましょう。
M&A売却(会社売却・事業売却)とは、自社の株式または事業を第三者に有償で譲り渡し、経営権または事業の主体を移転する取引の総称です。 ここで言う「会社売却」は会社そのもの(=株式)を売ることを指し、多くの場合は株式譲渡で行われます。一方「事業売却」は会社が営む事業の全部または一部を切り出して売ることを指し、事業譲渡という手法が中心です。M&A(エムアンドエー)はもともと Mergers and Acquisitions(合併と買収)の略で、買い手側から見れば「買収」、売り手側から見れば「譲渡・売却」という、同じ取引を立場違いで呼んでいるにすぎません。
事業売却(事業譲渡)は、会社という器は手元に残したまま、特定の事業だけを譲渡できる点が特徴です。複数事業を持つ会社が不採算部門を整理したい場合や、後継者に本業だけを残したい場合などに用いられます。これに対し会社売却(株式譲渡)は、株式という器ごと譲渡するため、許認可や契約関係もそのまま新オーナーへ引き継がれます。「会社をやめたい・引退したい」という売り手の多くは、会社売却(株式譲渡)が選択肢の中心になります。
こうした「会社・事業を第三者へ譲る」という選択が、いま中小企業で着実に広がっています。後継者不在率(全国・全業種約27万社対象)は2025年で50.1%(前年比2.0pt低下、帝国データバンク調査・2026年6月時点で公表の最新値)と、なお半数の企業に後継者がいない状況です。一方で改善傾向も続いており、調査開始以来の比較では2017年比で16.4pt低下しました(出典:帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査」https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/ )。さらに同調査の2024年速報値では、事業承継の方法として内部昇格が36.4%と同族承継32.2%を初めて上回り、M&Aほかが20.5%、外部招聘が7.5%と、親族外・第三者への「脱ファミリー化」が進んでいます。後継者がいない、あるいは親族に継がせる前提が崩れたとき、廃業ではなくM&A売却で会社や雇用を残す選択が現実的なものになってきた、という背景があります。
廃業と譲渡で「手元に残る金額」がどう変わるかは、廃業と譲渡、手元に残る金額の比較で詳しく整理しています。Webサイト・メディア事業の売却視点についてはWebサイト M&A の売却視点はこちらも参考にしてください。
§1-1 M&A・会社売却・事業売却の違い(比較表)
会社売却(株式譲渡)は「株式という器ごと」、事業売却(事業譲渡)は「事業という中身だけ」を譲渡する点が最大の違いです。 この違いは、対価を誰が受け取るか・許認可がそのまま引き継げるか・消費税がかかるか・簿外債務がついてくるか、といった実務面に直結します。
| 比較軸 | 会社売却(株式譲渡) | 事業売却(事業譲渡) |
|---|---|---|
| 譲渡の対象範囲 | 会社の株式(会社まるごと) | 事業の全部または一部(資産・負債を選んで) |
| 対価の受領者 | 株主(オーナー個人など) | 会社(法人) |
| 許認可・契約の承継 | 原則として自動的に引き継がれる | 個別に再取得・再契約の手続きが必要 |
| 簿外債務・偶発債務 | 原則として引き継がれる | 承継した資産・負債のみが移転 |
| 消費税 | 非課税 | 課税(土地・有価証券・債権は非課税、建物等の有形資産・棚卸資産・営業権は課税) |
| 手続きの難易度 | 比較的シンプル | 資産・契約の個別移転で手続きが煩雑になりやすい |
(出典:株式譲渡と事業譲渡の課税区分・承継の違いは国税庁の課税区分(後述§6)およびM&Aキャピタルパートナーズ解説 https://www.ma-cp.com/about-ma/stock-and-business-transfer-tax/ を整理)
会社売却(株式譲渡)は許認可や契約が原則そのまま承継されるため、許認可業種や多数の取引先契約を抱える会社で進めやすい一方、簿外債務もセットで引き継がれるという点に買い手が神経を使います。事業売却(事業譲渡)は欲しい資産・負債だけを選んで承継できる代わりに、契約・許認可を一つひとつ移し替える手間が発生します。なお「中小M&Aの大半は株式譲渡」と説明されることがありますが、これは大手仲介の自社成約実績調査などに基づく民間データであり、政府の一次統計で割合が示されているわけではありません。中小M&Aガイドライン(中小企業庁)でも株式譲渡は主要な手法と位置づけられていますが、具体的な構成比は提示されていない点に留意してください。
§1-2 売却手法4種(株式譲渡・事業譲渡・会社分割・合併)
M&A売却の手法は大きく4つに整理できます。自社の状況に近いものはどれか、当たりをつけるための一覧が次の表です。
| 手法 | 概要 | 手続きの複雑度 | 簿外債務リスク | 役員・従業員の引継ぎ | 想定される局面 |
|---|---|---|---|---|---|
| 株式譲渡 | 株式を譲渡し会社ごと移転 | 比較的シンプル | 原則引き継がれる | 雇用関係はそのまま維持されやすい | 会社まるごと譲渡したい・引退したい |
| 事業譲渡 | 事業の全部/一部を選んで移転 | 個別承継で煩雑になりやすい | 承継対象に限定できる | 個別に転籍・再雇用の手続き | 一部事業のみ譲りたい・不採算部門の整理 |
| 会社分割 | 事業を分割し別会社へ承継 | 組織再編手続きが必要 | 分割対象の範囲に依存 | 包括承継で移りやすい | 事業を切り出して再編・グループ内整理 |
| 合併 | 複数の会社を1つに統合 | 組織再編手続きが必要 | 包括的に承継 | 包括承継 | 経営統合・グループ再編 |
中小M&Aの実務で中心になるのは株式譲渡と事業譲渡で、会社分割・合併は組織再編の色合いが強く、グループ内整理や戦略的統合の場面で検討されることが多い手法です。許認可をそのまま活かしたい場合は株式譲渡寄り、複数事業のうち一部だけを譲りたい場合は事業譲渡、不動産や特定資産の扱いが論点になる場合は個別の検討が必要になります。
ただし、どの手法が有利かは税負担・債務・許認可・従業員への影響などが複雑に絡み合うため、「あなたの場合は株式譲渡が得」といった断定はできません。税効果は会社の財務状況や個別事情で変わるため、手法選択は税理士・M&Aアドバイザーへの確認を前提に進めてください。会社売却(株式譲渡)の進め方やノウハウは本記事§2以降で、各手法の詳しい比較は専門家相談とあわせて検討するのが現実的です。
§1-3 中小企業のM&A売却と後継者問題(規模特化)
中小企業のM&A売却は、後継者不在・経営者の高齢化・連帯保証からの解放・廃業回避といった「出口」の課題を、第三者への譲渡で解決する手段として広がっています。 売上数億〜数十億円規模の中小企業では、買い手探しから条件交渉まで専門家のサポートを前提に進めるのが一般的で、売主完全無料の支援サービスも増えています。
中小M&Aの市場は拡大基調にあります。登録支援機関を通じた中小M&A(資本金1億円以下の法人・個人事業主が当事者となり最終契約に至った件数)の譲渡側件数は、2021年度3,403件→2022年度4,036件→2023年度4,681件→2024年度4,940件と年々増加しています(出典:中小企業庁・M&A支援機関登録制度の統計 https://ma-shienkikan.go.jp/statistics-report 、2026年6月時点で公表の最新値)。買い手側件数も2022年度3,871件→2023年度4,505件→2024年度4,708件と伸びており、売り手・買い手の双方で第三者承継が定着しつつあることが分かります。
業種による差も大きく、2025年の後継者不在率は建設業が57.3%と最も高く、製造業が42.4%と最も低い結果でした(帝国データバンク調査 https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/ )。都道府県別では三重県33.9%が最低、秋田県73.7%が最高と、地域差も顕著です。後継者がいない場合の選択肢は、(1)廃業する、(2)第三者にM&Aで譲渡する、の大きく2つに集約されます。事業承継全体の進め方や3つの方法(親族内・従業員・第三者)の比較は、事業承継とは|3つの方法・進め方で体系的に解説しています。
廃業の場合は、設備の処分費用や原状回復費、従業員への対応コストが発生し、これまで築いた取引先・雇用・ノウハウも失われます。一方でM&A売却の場合は、譲渡対価が手元に残り、雇用や取引関係を新オーナーのもとで継続できる可能性があります。どちらが手元に多くのキャッシュを残せるかは個別の財務状況によりますが、「廃業ありきで考えていたが、譲渡の方が手元に残るのではないか」と気づくことが、中小M&A検討の最初のきっかけになるケースは少なくありません。詳しい比較は廃業と譲渡、手元に残る金額の比較で整理しています。
§2 M&A売却の流れ(検討からクロージング・PMIまで全11ステップ)
M&A売却は大きく「準備フェーズ」「マッチング・交渉フェーズ」「最終契約・クロージングフェーズ」「PMIフェーズ」の4フェーズ・全11ステップで進みます。各ステップの目的と売り手がやるべきことを順に見ていきましょう。
まず全体像を簡易版でつかむと、M&A売却の流れは次の通りです(要点版)。
- 意向整理・初期相談
- 仲介・FA契約とノンネームシート作成
- バリュエーション(企業価値評価)とIM作成
- 買い手候補の打診・選定
- トップ面談・条件交渉
- 基本合意(LOI/MOU)
- デューデリジェンス(DD)
- 最終条件交渉
- 最終契約(株式譲渡契約/事業譲渡契約)の締結
- クロージング(決済・経営権移転)
- PMI(経営統合・引継ぎ)
上場仲介ストライクの公表でも、相談から最終契約までの期間は標準的なケースで6ヶ月から1年程度、工程は相談・意向確認→秘密保持契約→仲介依頼契約→候補探索・初期接触→トップ面談・条件交渉→基本合意→デューデリジェンス→最終条件確定→最終契約・調印・決済→業務引継ぎという段階で整理されています(出典:ストライク「会社売却(譲渡)の流れ」https://www.strike.co.jp/about_ma/sell_process.html )。本記事ではこれを4フェーズ11ステップに再整理して解説します。
フェーズ1:準備フェーズ
①意向整理・初期相談 — 何を・なぜ・いつまでに売りたいのかを整理し、M&A仲介会社やFA(フィナンシャル・アドバイザー)、事業承継・引継ぎ支援センターなどへ初期相談します。この段階で秘密保持契約(NDA)を結ぶのが通常です。NDA(Non-Disclosure Agreement)とは、検討段階で開示する情報を外部に漏らさないことを約束する契約です。
②仲介・FA契約とノンネームシート作成 — 支援者との契約(アドバイザリー契約・仲介契約)を結び、社名を伏せた概要資料「ノンネームシート」を作成します。ノンネームシートは、買い手候補に最初に見せる「匿名の企業概要」で、業種・地域・規模・特徴などを社名が特定されない範囲で記載します。なお、依頼先となるM&A仲介会社の比較・選び方はM&A仲介会社のおすすめ比較ランキング|手数料・選び方で詳しく解説しています。
ノンネームシートとIM(企業概要書)の作り方はノンネームシート・IM作成の実務で詳しく解説しています。
③バリュエーション(企業価値評価)とIM作成 — 自社の企業価値を算定し、買い手候補へ提示する詳細資料IM(Information Memorandum=企業概要書)を作成します。IMは社名を開示したうえで、財務・事業・組織などを詳細にまとめた資料です。
企業価値の算定方法はバリュエーション3方式の実務詳細で深掘りできます。
フェーズ2:マッチング・交渉フェーズ
④買い手候補の打診・選定 — ノンネームシートをもとに買い手候補へ打診し、関心を示した候補にはNDA締結のうえIMを開示します。複数の候補を比較できる状態を作ることが、後の条件交渉で有利に働きやすくなります。
⑤トップ面談・条件交渉 — 売り手・買い手の経営者同士が直接会い、経営理念や従業員の処遇、事業の方向性などをすり合わせます。価格だけでなく「誰に託すか」を確認する重要な場です。
⑥基本合意(LOI/MOU) — 主要な条件(価格の目安・スキーム・スケジュール・独占交渉権など)について大枠の合意を文書化します。LOI(Letter of Intent/意向表明書・基本合意書)は、独占交渉権など一部の条項を除き、価格などの主要条件には原則として法的拘束力を持たないことが多い点が特徴です(拘束力の詳細は§5参照)。
基本合意書(MOU)と意向表明書(LOI)の違い・どの条項に法的拘束力があるかは、基本合意書(MOU)とはと意向表明書(LOI)とはで詳しく整理しています。
フェーズ3:最終契約・クロージングフェーズ
⑦デューデリジェンス(DD) — 買い手が、財務・税務・法務・労務・事業などの観点から売り手企業を詳細に調査します。DD(Due Diligence)で簿外債務や係争、未払い残業代などが発覚すると、価格の見直しや破談につながることがあります。
⑧最終条件交渉 — DDの結果を踏まえ、価格・表明保証・補償・従業員の処遇などの最終条件を詰めます。
DD後の価格調整や売主側のカウンター戦略はDD後の価格交渉と売主カウンターで解説しています。
⑨最終契約の締結 — 株式譲渡契約(SPA)または事業譲渡契約を締結します。ここで初めて全条項に法的拘束力が生じます。
フェーズ4:クロージング・PMIフェーズ
⑩クロージング(決済・経営権移転) — 譲渡対価の決済と株式・事業の引渡しを行い、経営権が買い手へ移転します。
⑪PMI(経営統合・引継ぎ) — PMI(Post Merger Integration)とは、クロージング後の経営統合・引継ぎのプロセスです。取引先・従業員への説明、業務の引継ぎ、システム統合などを進め、想定したシナジーを実現していく段階です。売り手経営者が一定期間引継ぎに関与する(ロックアップ)ケースもあります。
自社が今どの段階にいて、次に何を準備すべきかは、専門家との初回相談で整理するのが近道です。自社のM&A売却の進め方を無料相談で確認する(売主完全無料)
§2-1 各ステップの所要期間とポイント(売り手・買い手別)
各ステップで売り手が準備すべきものと、起こりやすい注意点をチェックリストで確認しておきましょう。
| フェーズ | 売り手がやること | 買い手がやること | 主な必要書類 |
|---|---|---|---|
| 準備 | 意向整理・支援者選定・自社資料の整備 | (初期接触前) | 決算書3期分・株主名簿・許認可一覧 |
| マッチング | 候補の比較・トップ面談の準備 | 候補企業の検討・関心表明 | ノンネームシート・IM |
| 交渉 | 条件の優先順位整理・基本合意 | 買収方針・資金計画の確認 | 意向表明書・基本合意書 |
| DD・最終契約 | 資料提出・指摘事項への対応 | DD実施・最終条件の提示 | 各種証憑・契約書ドラフト |
| クロージング・PMI | 引継ぎ準備・従業員説明の段取り | 決済・統合計画の実行 | 最終契約書・クロージング書類 |
売り手の準備で差がつきやすいのが、初期段階での書類整備です。決算書や契約書、許認可、株主構成などをあらかじめ整理しておくと、DDがスムーズに進み、結果として期間短縮や信頼確保につながります。逆に、従業員への開示タイミングを誤ると情報漏洩・人材流出のリスクが高まるため、開示範囲はNDAを前提に仲介と設計するのが基本です(手続き・書類の詳細は§5を参照)。
§3 M&A売却にかかる期間(平均6〜12ヶ月・段階別スケジュール)
M&A売却は、相談開始から最終契約まで標準的なケースで6ヶ月〜1年程度かかるのが目安です。 上場仲介ストライクは、相談から最終契約に至るまでの期間を標準的なケースで6ヶ月から1年程度と公表しています(出典:ストライク https://www.strike.co.jp/about_ma/sell_process.html )。会社の規模・業種・買い手の見つかりやすさ・DDで発見される論点の多寡などにより、これより短くなることも長くなることもあります。仲介各社の一般的な説明では、小規模で4〜6ヶ月、難易度が高いケースで12〜18ヶ月程度といった目安が示されることもありますが、こうした細分レンジは公的な一次統計で確認できる数値ではないため、あくまで「目安」として捉えてください。
段階別のおおまかなスケジュール感は次の通りです(標準的なケースの目安。実際の期間は個別事情により変動します)。
| 段階 | 主な内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 準備フェーズ | 相談・支援者選定・資料整備・IM作成 | 1〜3ヶ月 |
| マッチング・交渉 | 候補打診・トップ面談・基本合意 | 2〜4ヶ月 |
| デューデリジェンス | 買い手による詳細調査 | 1〜2ヶ月 |
| 最終契約・クロージング | 最終交渉・契約締結・決済 | 1〜2ヶ月 |
期間が長期化する主な要因は、買い手候補が見つかりにくい、DDで簿外債務や係争などの論点が発覚する、売り手の価格期待が相場と乖離している、といったケースです。逆に期間を短縮するには、(1)売却を思い立った早い段階で支援者へ相談し、(2)決算書・契約書・許認可などの書類をあらかじめ整備し、(3)自社の概算価値や算定手法を把握して現実的な希望条件を持っておく、ことが有効とされます。ただし「必ず◯ヶ月で終わる」と約束できるものではなく、買い手とのご縁やDDの結果に左右される点は念頭に置いてください。
なお、後継者不在の解消が進む一方で(§1-3)、業績が下降してから慌てて売却に動くと、買い手探しに時間がかかり価格も下がりやすくなります。早めの準備が、結果として期間とコンディションの両面で売り手に有利に働きます。
§4 M&A売却の相場・価格はいくら(業種別レンジと算定3手法)
「会社はいくらで売れるのか」は最も気になる論点ですが、明確な定価相場はありません。ただし業種・規模別の目安レンジと、企業価値を算定する3つのアプローチを知れば、自社の概算感はつかめます。
会社・事業の売却価格に決まった定価相場はなく、中小M&Aの実務では「時価純資産+営業利益の2〜5年分」を目安に概算するのが一般的とされます(年買法。詳細は§4-1)。 最終的な価格は、買い手から見たシナジー・財務状況・成長性・交渉力などで大きく変わるため、同じ会社でも算定手法や買い手によって金額が振れる点が前提になります。
企業価値の算定には、大きく3つのアプローチがあります。
| アプローチ | 考え方 | 代表的な手法 | 向く局面 | 留意点 |
|---|---|---|---|---|
| コストアプローチ | 純資産(資産−負債)を基礎に評価 | 簿価純資産法・時価純資産法 | 中小・資産保有型の会社 | 将来の収益力が反映されにくい |
| マーケットアプローチ | 類似企業・類似取引と比較して評価 | 類似会社比較法(マルチプル) | 上場類似企業がある業種 | 比較対象の選定で結果が変わる |
| インカムアプローチ | 将来生み出すキャッシュフローを基礎に評価 | DCF法 | 成長性・収益力を評価したい場合 | 前提(将来予測)次第で大きく振れる |
中小M&Aガイドライン(中小企業庁)の参考資料でも、譲渡額の算定法として簿価純資産法・時価純資産法・類似会社比較法が示されています。実務では、これらに後述の年買法を組み合わせて「目安レンジ」を出し、そこから交渉で着地点を探っていく流れが一般的です。
業種別・規模別の概算売却価格のレンジについては、政府・公的な一次統計で裏付けられた相場表は存在しません。下表は、あくまで考え方を整理するための「目安・仮定」であり、実際の価格を保証するものではない点を強くお断りしたうえで掲載します。
| 業種カテゴリ | 価格を左右しやすい要素 |
|---|---|
| 製造業 | 設備・技術・取引先・有資格人材の有無 |
| IT・SaaS | 継続収益(ストック型売上)・成長率・開発体制 |
| 飲食・サービス | 立地・ブランド・店舗網・人材の定着 |
| 卸売・小売 | 在庫・仕入先/販売先網・利益率 |
具体的な金額レンジは、同じ業種・規模でも収益力・取引先・成長性で大きく異なるため、「製造業なら◯億円」といった断定的な相場提示はできません。自社の概算価値を知るには、算定手法の理解に加えて、複数の専門家・買い手候補の見立てを比較するのが現実的です。
自社の概算売却価格を把握する第一歩として、自社の概算売却価格を無料査定で確認する(個別評価は仲介・税理士同席が前提)。評価方法の実務的な使い分けはバリュエーション3方式の実務詳細で深掘りできます。Webサイト・メディアの売却査定の流れはサイト売買での売却査定依頼の流れ、Web資産の相場の考え方はWebサイトの売却相場の考え方も参考にしてください。個別の評価指標では、本業の収益力を測るEBITDAとは、買収プレミアムの会計処理を扱うのれんとはもあわせてご覧ください。
§4-1 年買法の計算式と試算例(時価純資産+営業利益2〜5年)
年買法(年倍法)は、中小M&Aの実務でよく用いられる簡便な価格の目安で、「時価純資産+営業利益(または営業キャッシュフロー)×2〜5年分」で概算するのが一般的とされます。 「営業利益の何年分を上乗せするか(年数)」は、事業の安定性・成長性・買い手から見た魅力などによって2〜5年の範囲で調整されるのが通例です。
ここで、年買法の考え方を理解するための試算例を示します(あくまで計算の仕組みを説明するための仮定の数値であり、特定の会社の価格を示すものではありません)。
【試算例】(仮定)
・時価純資産:2億円
・営業利益:5,000万円
・上乗せ年数:3年と仮定
→ 概算目安 = 時価純資産2億円 +(営業利益5,000万円 × 3年)= 3億5,000万円※上乗せ年数を2年と仮定すれば3億円、5年と仮定すれば4億5,000万円となり、同じ会社でも年数の置き方で目安が大きく振れます。
なお、年買法の「営業利益×2〜5年」という計算式は実務慣行・民間解説に基づくものであり、政府の一次資料で確認できる算定式ではありません(中小企業庁の参考資料が示すのは簿価純資産法・時価純資産法・類似会社比較法です)。そのため年買法は「概算の入口」として使い、最終的な価格はDCF法や類似会社比較法も併用し、買い手との交渉で決まるのが実態です。年買法だけを盲信すると、成長性の高い事業を安く見積もってしまう・資産は厚いが収益が薄い会社を過大評価してしまう、といった歪みが生じうる点には注意が必要です。具体的な価格の見立ては、仲介会社や税理士など複数の専門家の評価を比較して判断してください。
§5 M&A売却に必要な手続き・書類・契約書(NDAから最終契約まで)
M&A売却では、検討の各段階で複数の契約書を順に締結し、あわせて多くの書類を準備します。何を・いつ・どの順で用意するかを把握しておくと、交渉が滞りなく進みます。
まず、売り手が早めに整えておきたい主な書類は次の通りです。
- 決算書・税務申告書(直近3期分が目安)
- 株主名簿・定款・登記事項証明書
- 主要な取引先・賃貸借・リース等の契約書
- 許認可・免許の一覧と有効期限
- 従業員名簿・就業規則・労務関連資料
- 不動産・設備など主要資産のリスト
- 係争・保証・簿外債務に関する自主整理メモ
これらを早期に整理しておくと、DD(デューデリジェンス)での指摘が減り、買い手の信頼確保と期間短縮の両方につながります。
M&A売却で登場する代表的な契約書は5種類です。それぞれの役割・法的拘束力・締結時期を整理したのが次の表です。
| 契約書 | 主な役割 | 法的拘束力 | 一般的な締結時期 |
|---|---|---|---|
| 秘密保持契約(NDA) | 開示情報の漏洩・目的外利用を禁止 | あり(守秘義務として拘束) | 初期相談・情報開示の前 |
| アドバイザリー契約/仲介契約 | 仲介会社・FAへの業務委託と報酬の取り決め | あり | 支援者を起用する段階 |
| 意向表明書(LOI) | 買い手が買収の意向・希望条件を表明 | 原則なし(独占交渉権など一部条項を除く) | 候補選定〜基本合意の前後 |
| 基本合意書(MOU) | 主要条件・スケジュール・独占交渉権の大枠合意 | 価格等の主要条件は原則拘束力なし/独占交渉権・秘密保持は拘束 | DD前 |
| 最終契約(SPA・事業譲渡契約) | 譲渡の最終条件を確定し取引を成立させる | あり(全条項に拘束力) | DD後・クロージング前 |
ポイントは、基本合意書(MOU)や意向表明書(LOI)は、独占交渉権や秘密保持といった一部条項を除き、価格などの主要条件には原則として法的拘束力がない場合が多いという点です。逆に、最終契約(株式譲渡契約・事業譲渡契約)はすべての条項に拘束力が生じます。最終契約には、表明保証(開示した情報が正しいことの保証)、補償(保証違反時の損害の埋め合わせ)、競業避止(売り手が同じ事業を再開しない約束)、アーンアウト(将来の業績に応じた追加対価)、ロックアップ(売り手経営者の一定期間の関与)といった条項が論点になります。
これらの条項は、設計次第で売り手の手取りやリスクに大きく影響します。ただし、契約書の雛形・具体的な条文・相手方への対抗案文といった個別の作成や助言は法律上の専門領域であり、本記事では役割と論点の紹介にとどめます。条項の交渉・作成は弁護士に依頼してください。DD後の最終条件交渉で売り手がどうカウンターを打つかはDD後の価格交渉と売主カウンターで解説しています。
なお、中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月公表)では、仲介者・FAは契約締結前に、手数料の算定基準・提供する具体的業務・担当者の保有資格・経験年数や成約実績などを具体的に説明する義務を負うとされています(出典:中小企業庁・経済産業省 https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240830002/20240830002.html )。アドバイザリー契約・仲介契約を結ぶ前に、これらの説明を受けて条件を書面で確認することが、売り手保護の観点から重要です。
§6 M&A売却にかかる税金と手取り(現金化・節税の考え方)
会社売却(株式譲渡)で個人株主が得た譲渡所得には、申告分離課税として合計20.315%の税率がかかるのが原則です。 その内訳は、所得税15%+復興特別所得税0.315%(基準所得税額×2.1%)+住民税5%です(出典:国税庁タックスアンサーNo.1463 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm )。上場株式等・一般株式等(非上場)とも同率で、復興特別所得税は平成25年から令和19年まで課税されます。譲渡所得は「譲渡価額−(取得費+譲渡費用)」で計算され、その金額に対して上記の税率がかかる構造です。
【モデルケース】譲渡価額1億円・株式譲渡の手取り概算 たとえば、非上場の中小企業を株式譲渡で1億円で売却し、取得費(資本金等)が500万円、譲渡費用(仲介手数料等)が500万円だったとします。譲渡所得は「1億円−(500万円+500万円)=9,000万円」となり、これに20.315%を乗じた約1,828万円が税額、手取りは譲渡対価1億円から税額を差し引いた約8,172万円が目安になります。これは構造を理解するための一般的なモデルであり、取得費・譲渡費用や各種特例の適用で実際の税額は変わります。
譲渡価額別に、取得費+譲渡費用を対価の10%と仮置きした場合の概算手取り(株式譲渡・個人株主)は次のとおりです。
| 譲渡価額 | 概算 譲渡所得 | 税額(20.315%) | 概算手取り |
|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 約2,700万円 | 約549万円 | 約2,451万円 |
| 5,000万円 | 約4,500万円 | 約914万円 | 約4,086万円 |
| 1億円 | 約9,000万円 | 約1,828万円 | 約8,172万円 |
| 3億円 | 約2億7,000万円 | 約5,485万円 | 約2億4,515万円 |
上表は取得費+譲渡費用を対価の10%と仮置きした概算で、実際は資本金額・累積利益・各種特例で大きく変わります。正確な手取りは税理士の試算を前提にしてください。
税率や課税区分は税制改正により変わる可能性があります。本記事は2026年6月時点で有効な国税庁公表情報に基づいていますが、実際の申告時には最新の税制を公式情報でご確認ください。
会社売却(株式譲渡)と事業売却(事業譲渡)では、消費税の扱いも異なります。株式譲渡の場合、株式(有価証券)の譲渡は消費税の非課税取引にあたるため、売却対価に消費税はかかりません。消費税の非課税取引には、土地や有価証券・商品券などの譲渡、預貯金や貸付金の利子、社会保険医療などが含まれます(出典:国税庁タックスアンサーNo.6209 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6209.htm )。
一方、事業譲渡(営業の譲渡)は、課税資産と非課税資産を一括して譲渡するものとして、対価を合理的に区分して課税されます。非課税となるのは土地・有価証券・債権で、課税されるのは建物等の有形固定資産(土地以外)・棚卸資産・営業権(のれん)・特許権等です。国税庁の質疑応答事例の設例では、営業権10億円+有形固定資産10億円=合計20億円が課税対象、土地20億円は非課税と整理されています(出典:国税庁・質疑応答事例 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/14/01.htm 、令和7年8月1日現在)。
| 区分 | 会社売却(株式譲渡) | 事業売却(事業譲渡) |
|---|---|---|
| 課税される主体 | 株主(個人株主は譲渡所得課税) | 会社(法人税の対象) |
| 株式譲渡所得の税率 | 申告分離課税 合計20.315% | (株式譲渡ではないため対象外) |
| 消費税 | 非課税 | 課税(土地・有価証券・債権は非課税/建物等・棚卸資産・営業権は課税) |
事業譲渡の場合、譲渡益は会社の利益として法人税等の対象になります。法人にかかる実効税率はおおむね約30%前後とされますが、会社の規模や所在自治体によって変動するため、ここでは「約」を付した一般的な水準としてのみ示します。具体的な税額の計算は、会社の状況によって大きく異なるため税理士へご相談ください。
「会社を売却すると現金がいくら残るか」という関心については、(1)株式譲渡では譲渡対価が株主個人に入り、上記の譲渡所得課税を差し引いた額が手元に残る、(2)事業譲渡では対価が会社に入り、法人税等を経たうえで株主が受け取るには配当・退職金・清算などの追加ステップが必要になる、という違いがあります。役員退職金を活用して手取りを設計するスキームなども存在しますが、これらは個別の税効果が大きく、適否は会社ごとに異なります。本記事では「あなたの場合は手取りが◯円」といった個別の試算は行いません。手取りの最大化や節税の検討は、税理士と進めてください。
なお、廃業(清算)した場合とM&A売却した場合では、手元に残る金額の考え方そのものが変わります。清算では資産売却・負債弁済の後に残余財産が分配され、M&A売却では譲渡対価が基礎になります。どちらが有利かはケースによります。
売却後の手取りの考え方を、自社のスキーム前提で整理したい場合は売却後の手取りの考え方をM&A-WEBに相談する(税理士同席前提)。
§7 M&A売却を成功させるポイントと相談先
高く・安全に売るためには、売り急がず、複数の候補を比較し、情報を整え、相場観を持って交渉に臨むことが基本です。あわせて、誰に相談するか(仲介・FA・マッチングプラットフォーム)の選択も結果を大きく左右します。
高く売るための主なポイントは次の4点に集約されます。
- 早期準備:思い立った段階で相談し、書類・財務を整えておく
- 複数候補の確保:1社に絞らず比較できる状態を作る
- 情報整備:簿外債務・係争・契約関係を自主的に棚卸ししておく
- 売り急がない:業績の状況を見据え、現実的な相場観で交渉する
一方で、中小M&Aには典型的な失敗パターンがあります。事前に防御策を講じておくことで、多くは回避またはダメージを軽減できます。
| 失敗パターン | 起こる理由 | 事前防御策 |
|---|---|---|
| 情報漏洩で従業員が流出しやすい | 検討段階の開示範囲・タイミングが曖昧なまま社内に伝わる | NDA締結を前提に開示範囲を限定、従業員開示はクロージング前後の段取りを仲介と設計 |
| 簿外債務の発覚で破談に至るケース | DD前に債務・係争・保証の棚卸しが不十分 | 売却検討の早期に簿外債務・偶発債務を自主棚卸しし、表明保証で開示済みにしておく |
| 相場観の不足から安値で売りやすい | 自社の概算価値や算定手法を把握しないまま提示額を受け入れる | 算定3手法と業種別の考え方で概算感を持ち、複数候補で比較してから判断 |
| 仲介の言い値で条件が悪化しやすい | 手数料体系・利益相反・両手仲介の構造を理解せず一任する | 中小M&Aガイドラインの手数料説明義務・利益相反禁止を確認し、条件を書面で精査 |
| PMI不全が表明保証違反につながるケース | 引継ぎ・統合の準備不足で契約上の前提が崩れる | クロージング前にPMI計画と引継ぎ範囲を契約条項と突き合わせ、専門家に確認 |
| 売却タイミングの遅れで企業価値が下がりやすい | 後継者不在・業績下降を放置し検討開始が遅れる | 早期準備を前提に、業績の状況を見据えた選択肢を仲介・税理士と検討 |
相談先には主に次の3類型があり、それぞれ手数料体系・立場・サポート範囲が異なります。各社の着手金・中間金・成功報酬といった具体的な料金水準やレーマン方式の計算は、M&A手数料の相場|着手金・中間金・成功報酬の料金体系タイプ別レンジとレーマン方式の早見表で体系別に整理しています。レーマン方式そのものの標準料率テーブル・取引額別の早見表はレーマン方式とはで解説しています。
| 相談先 | 立場・特徴 | 手数料の一般的傾向 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| M&A仲介(両手) | 売り手・買い手の間に立ち成約を支援 | 成功報酬中心(売主完全無料の例もある) | 双方仲介ゆえ利益相反の構造に注意 |
| FA(片手・アドバイザー) | 売り手または買い手の一方に立つ | 着手金+成功報酬の例が多い | 一方の利益に専念しやすい反面コスト負担 |
| マッチングプラットフォーム | 候補をオンラインで探索 | 比較的低コスト・成果報酬型 | 自走部分が多く専門サポートは限定的 |
ここで重要なのが、2024年8月に公表された中小M&Aガイドライン第3版です。第3版では、(1)手数料の透明化と契約締結前の説明義務の強化、(2)仲介者の利益相反行為を初めて具体的に列挙し仲介契約書への明記を求めたこと、(3)経営者保証の解除・移行を確実にするためM&A成立前に金融機関・士業・事業承継引継ぎ支援センターへ相談すること等を明記したこと、が大きな柱です(出典:中小企業庁・経済産業省 https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240830002/20240830002.html )。利益相反行為の禁止例としては、譲受側から追加手数料を取得して便宜(不当に低額な譲渡価額への誘導など)を図る行為や、一方当事者にのみ有利な情報の秘匿などが挙げられています。また、経営者保証については、譲渡側からの相談申出を拒むべきでなく、秘密保持条項の対象から相談先を除外すべきとされています。売り手としては、こうした売り手保護の枠組みを理解したうえで、説明を受け、条件を書面で確認することが安全な売却につながります。
M&A-WEBは、売主完全無料・買主成功報酬制を基本とし、中小M&Aガイドラインに沿った形で売り手の意思決定を支援しています。個社の優劣を断定するのではなく、上記の構造を踏まえて中立に比較したうえで、自社に合った進め方を選んでいただくことを大切にしています。
仲介・FAの選び方や自社のケースに合う進め方を整理したい場合は、M&A-WEBに売却相談する(売主完全無料・秘密厳守)。買い手としての検討は買い手としての相談はこちらからどうぞ。
§8 よくある質問(FAQ)
Q1. M&A売却とは何ですか?会社売却・事業売却との違いは?
A. M&A売却とは、株式または事業を第三者に対価を得て譲渡し、経営権・事業主体を移転する取引です。会社売却は会社そのもの(株式)を売る株式譲渡が中心で許認可も原則そのまま引き継がれ、事業売却は事業の一部だけを売る事業譲渡が中心で資産・契約を個別に移転します。消費税は株式譲渡が非課税、事業譲渡が課税(土地等を除く)と異なります。
Q2. M&A売却の流れ(手順)を教えてください。
A. 売却は「準備→マッチング・交渉→最終契約・クロージング→PMI」の4フェーズ・全11ステップで進みます。具体的には、①意向整理・初期相談、②仲介契約・ノンネームシート、③バリュエーション・IM作成、④買い手打診、⑤トップ面談、⑥基本合意、⑦DD、⑧最終条件交渉、⑨最終契約、⑩クロージング、⑪PMIの順です(§2参照)。
Q3. M&Aによる会社売却にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的なケースで相談から最終契約まで6ヶ月〜1年程度が目安です(ストライク公表)。規模・業種・買い手の見つかりやすさ・DDの論点数により変動し、短いケースで4〜6ヶ月、難易度の高いケースで12〜18ヶ月程度とされることもあります(細分レンジは目安)。
Q4. 会社・事業の売却価格の相場はいくらですか?どう算定しますか?
A. 明確な定価相場はありません。中小M&Aでは「時価純資産+営業利益の2〜5年分」を目安とする年買法のほか、コスト・マーケット・インカムの3アプローチ(時価純資産法・類似会社比較法・DCF法など)で算定します。同じ会社でも手法や買い手で金額が振れるため、複数の専門家の見立てを比較するのが現実的です。
Q5. 年買法(年倍法)とはどのような計算方法ですか?
A. 年買法は中小M&Aでよく用いられる簡便な目安で、「時価純資産+営業利益(または営業CF)×2〜5年分」で概算します。上乗せ年数は事業の安定性・成長性などで2〜5年の範囲で調整されます。実務慣行に基づく目安であり、最終価格は他手法も併用し交渉で決まります(§4-1参照)。
Q6. M&A売却に必要な契約書(NDA・基本合意・最終契約)と手続きは?
A. 代表的な契約書はNDA・アドバイザリー契約・意向表明書(LOI)・基本合意書(MOU)・最終契約(SPA/事業譲渡契約)の5種です。基本合意は独占交渉権等を除き原則拘束力がない一方、最終契約は全条項に拘束力があります。具体的な条項の作成・交渉は弁護士へご相談ください。
Q7. 会社を売却すると現金(手取り)はいくら残りますか?税金は?
A. 株式譲渡では個人株主の譲渡所得に申告分離課税(合計20.315%)がかかり、対価から税額を差し引いた額が手元に残ります。事業譲渡では対価が会社に入り法人税等の対象となり、株主が受け取るには配当・退職金等の追加ステップが必要です。個別の手取り計算は税理士へご相談ください。
Q8. 中小企業の会社売却(M&A)はどう進めればよいですか?
A. まず意向を整理して支援者へ早期相談し、書類・財務を整えたうえで複数の買い手候補を比較するのが基本です。中小M&Aガイドライン第3版が定める手数料説明義務・利益相反禁止・経営者保証への配慮を理解し、条件を書面で確認しながら進めると安全です。売主完全無料の支援サービスも活用できます。
まとめ:M&A売却は「順に整理すれば」現実的な計画になる
M&A売却は「スキーム選択 × 流れの理解 × 価格の見立て × 契約・税金の把握 × 相談先の選定」という複数の意思決定を、順に整理することで、漠然とした不安を現実的な計画へと変えられます。本記事では、会社売却・事業売却の違いから全11ステップの流れ、相談から最終契約まで6ヶ月〜1年という期間の目安、業種別の考え方と年買法の試算、必要な契約書5種、税金(株式譲渡の20.315%・事業譲渡の消費税区分)と手取りの考え方までを一望しました。
まずは自社の概算価格を試算し、廃業した場合と比べて手元に残る金額を確認してから判断することをおすすめします。各論は、企業価値の算定ならバリュエーション3方式の実務詳細、買い手打診の準備ならノンネームシート・IM作成の実務、DD後の交渉ならDD後の価格交渉と売主カウンターで深掘りできます。廃業との比較は廃業と譲渡、手元に残る金額の比較、Web資産の売却視点はWebサイト M&A の売却視点はこちらもあわせてご覧ください。
個別の税務・契約判断は専門家を前提に、まずは無料相談で自社の売却の進め方を確認してみてください。