塗装業は廃業と売却どっちが得?費用と手取りで比較【2026】
後継者がいない。職人も自分も歳をとった。元請の値下げ要請も、塗料や足場の原価高騰も止まらない——。「もう畳むしかない」と、廃業へ気持ちが傾いていませんか。けれど、廃業は静かに終われそうで、実は足場や車両の処分も、倉庫の原状回復も、退職金もかかります。そして畳めば、長年積み上げた建設業許可も、一級/二級塗装技能士も、元請取引も、価値ゼロで消えます。本記事は、塗装会社の廃業にかかる総額と、売却した場合に残る「手取り」を、同じ物差しで並べてお伝えします。
この記事の結論(先に要点だけ)
- 塗装業の廃業は「0円で静かに終わる」ものではありません。足場・車両の処分、倉庫・資材置場の原状回復、塗装機材・設備の処分、退職金、リース残債、法人の解散・清算(登記・官報公告・清算人)で、規模により持ち出しになりやすいのが実態です。
- 会社財産を株主に戻すと、資本金等の額を超える部分は「みなし配当」(配当所得・原則は総合課税)[C-02]として課税され得ます。一方、会社ごと売る株式譲渡なら税率は一律20.315%[C-03]。同じ企業価値でも“手取り”で差がつくことがあります。
- 売却なら、廃業で消える資産が残ります=創業者利益(手取り現金)・個人保証の見直し・職人の雇用・建設業許可(塗装工事業)と一級/二級塗装技能士・元請取引の承継[C-07][C-13][C-12]。
- 分水嶺は「技能を継ぐ若手がいるか」。継ぐ若手がいれば親族・社内承継、いなくても技能士・許可・元請取引が生きていれば、買い手の人材代替ニーズで売れる芽があります。
- だから順番は「畳むと決める前に、まず査定」。廃業コストと売却の手取りを同じ物差しで並べてから決めるのが、後悔しない出口です。
※債務超過で再建が難しい場合などは、廃業・特別清算が合理的なこともあります。本記事は「許可・技能士・取引が生きている塗装会社」を主に想定し、両方の手取りを比べる材料をお渡しします。
§1 塗装業の「廃業」と「売却」とは — 2つの出口の正体
出口は「廃業」か「売却」かの2択に見えますが、本質は「資産を現金化して“消す”か、許可・技能士・取引ごと“残す”か」の違いです。
廃業とは、自主的に会社を解散し清算することです。借金で行き詰まる「倒産」とは違い、体力があるうちに自分の判断で畳むものです。畳むには足場や車両を売り払い、倉庫や事務所を片付け、従業員に辞めてもらい、最後に法人を清算します。会社が持っていた建設業許可・有資格者・元請取引は、原則すべて消えてゼロ円になります。
一方の売却(M&A)は、会社をそのまま次の担い手に引き継ぐことです。中心となる株式譲渡では、株主(オーナー)が変わるだけで会社の法人格は変わりません。だから、会社に紐づく建設業許可(塗装工事業)も、原則そのまま引き継がれます[C-07]。塗装業は労働集約×許認可ビジネスで、一級/二級塗装技能士は技能検定(職業能力開発促進法)に基づく国家資格であり、塗装工事業の専任技術者・主任技術者の要件にも関わります[C-12]。新規参入では一朝一夕に揃わない許可・有資格者・元請取引の蓄積こそ、M&Aで評価される“見えない資産”です。
ここで多くのオーナーが誤解しています。「うちは継ぐ若手がいないから畳むしかない」と。しかし、たとえ継ぐ若手がいなくても、技能士・許可・元請取引が健在なら、あなたの会社は「畳むしかない事業」ではなく「買われる資産」かもしれません。この「技能を継ぐ若手がいるか」が、売れるか廃業かの分水嶺になります。詳しくは§3・§4で解説します。
業種を問わない廃業と譲渡の比べ方は廃業と譲渡の比較(全体像)も参考になります。本記事は塗装業に絞って掘り下げます。塗装業界そのものの需要・将来性は塗装業界の将来性・需要動向はこちらで俯瞰しています。
§2 なぜ今、「廃業か売却か」で悩む塗装会社が増えているのか
需要が堅調でも、続けられる体力があるとは限りません。「畳むか、売るか」を迫られる塗装会社は、構造的に増えています。
数字で見ると、2024年の全国の「休廃業・解散」は過去最多でした。帝国データバンク(TDB)の集計(個人事業主を含む)で69,019件(2016年以降で最多)、うち建設業は8,162件(前年比+7.0%)で業種別最多でした[C-11]。
注目すべきは「倒産する前に、余力を残して畳んでいる」点です。休廃業した企業のうち直前期が黒字だった割合は51.1%と依然5割超で、さらに資産が負債を上回る「資産超過型」が65.1%(2016年以降で最高)でした[C-11]。つまり、まだ会社に体力があるうちに、自主的に畳む会社が多いということです。
注:この件数は塗装単独ではなく建設業全体の数字です(発行元はTDB)。塗装単独の休廃業の公的統計区分は存在しないため、建設業全体の動向で接地しています。
背景には、建設業の後継者不在率57.3%(2025年・全業種最高水準)[C-01]、職人の高齢化と採用難、塗料・足場の原価高騰、いわゆる2024年問題後の労務環境の変化があります。収益構造も厳しく、塗装工事業を含む「職別工事業」の売上高営業利益率は▲0.42%(令和4年度=営業赤字、建設業全体は0.33%)[C-05]という薄利です。続ける体力が削られ、後継者問題が重なる——その出口として「廃業」と「売却」が並んで検討されているのです。
そして“資産超過のうちに畳む”会社が多いということは、裏を返せば、許可・技能士・元請取引という売れる資産を抱えたまま畳もうとしている会社が少なくない、ということでもあります。
注:職別工事業の数値は塗装単独ではなく「職別工事業(塗装を含む区分)」での近似です[C-05]。
§3 塗装会社が後悔しない出口の選び方 — 判断の3ステップ
「廃業か売却か」は、次のステップで順に考えると整理できます。
1. 債務超過かどうか。負債が資産を大きく上回り再建が難しいなら、廃業・特別清算や専門家への相談が現実的です。一方、資産超過なら売却の芽が十分あります(前述のとおり、畳む会社の多くは資産超過[C-11])。 2. 技能を継ぐ若手がいるか。社内に塗装技能を継げる若手がいれば、親族内・社内承継の芽があります。いなくても、次の③が生きていれば第三者へのM&Aで売れる芽が残ります。 3. 許可・技能士・元請取引が残っているか。建設業許可(塗装工事業)・一級/二級塗装技能士・優良な元請取引が健在なら、それは“買われる資産”です。買い手の人材代替ニーズがそこに向きます。 4. 急ぐかどうか。後述のとおり、廃業(清算)は債権者保護手続きだけで最低2か月[C-01]、売却も準備から成約まで相応の時間がかかります。「今すぐ全部終わらせたい」と焦るほど、安く手放しがちです。
SWOTで自社を棚卸しすると、強み=建設業許可・一級/二級塗装技能士・安定元請枠、弱み=社長が唯一の技能保有者・元請一社依存・継ぐ若手不在、が見えてきます。債務超過でなく、許可も技能士も生きていて、少し時間に余裕がある——この条件がそろうほど、廃業より売却が手取りで有利になりやすい局面です。次章で、その「廃業の総コスト」を具体的に分解します。
§3.5 塗装業の廃業にかかる総コストを分解する
「廃業=何もしなければ0円」ではありません。畳むためにこそ、お金がかかります。塗装会社の廃業コストを費目ごとに並べてみましょう。
① 足場の処分・売却 自社保有のくさび式足場などは、中古市場やリサイクル業者へ売却するか、廃棄します。ただし買取価格は状態・年式・数量・市況で大きく振れ[C-06]、決め打ちできません。リース足場は勝手に返却・解約できず、未払いリース料相当額や予定残存価格を違約金として精算する必要があります[C-06]。
② 車両(高所作業車・トラック)の処分・名義抹消 高所作業車やダンプの処分・名義抹消が要ります。中古買取は作業床の高さ・アワーメーター(稼働時間)・車両状態・メーカーで大きく変動し、一律の相場はありません[C-06]。一方、日本製は海外需要が強く、古い機でも一定の値が付くことがあります[C-06](あくまで目安で、状態次第です)。
③ 塗装機材・設備の処分、④ 倉庫・資材置場・事務所の原状回復 高圧洗浄機・吹付機などの塗装機材は中古売却か廃棄処分に。賃借していた倉庫・資材置場・事務所は原状回復義務(民法621条)があり、オフィス退去の原状回復は坪あたり小・中規模で2〜10万円程度、都心・高グレードでは坪20〜30万円超になることもあるとされます[C-06]。残置物・残塗料は産業廃棄物として処分費が別途かかります。資材置場・ヤード(土地賃貸借)の更地返しや残土・地中埋設物の撤去は契約の特約次第で、現地調査が欠かせません。
⑤ 従業員への退職金・解雇予告手当 雇用を残せないのが廃業の最も重い痛点です。解雇には労働基準法20条で少なくとも30日前の予告か、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)が必要です[C-04]。退職金は法律上の一律義務ではありませんが、退職金規程があれば支払義務が生じます[C-04]。
⑥ リース残債・借入の一括弁済と個人保証 廃業しても借入や個人保証は自動では消えません。ここは「売却なら見直せる」ポイントとして§4で対比します。
⑦ 残塗料・産廃・残置物の処分費 塗装業特有の論点として、残った塗料・溶剤・空き缶は適正処理が要り、産業廃棄物として処分費がかかります。
⑧ 法人の解散・清算手続き 法人を清算するには、解散登記・清算人選任登記・清算結了登記で登録免許税が合計およそ41,000円[C-01]。加えて官報での解散公告(債権者保護手続き)が必要で、掲載料は1行あたり税込3,947円(22字/行)、10〜12行でおおむね3.5〜4.5万円が目安です[C-01]。債権者保護のための公告期間は会社法で最低2か月と決まっており[C-01]、清算結了まで相応の時間がかかります。司法書士・税理士に一連を依頼すれば、別途報酬(登記一式で8〜10万円程度が一つの目安)も発生します[C-01]。
⑨ 許可の廃止手続き 塗装業も許認可があるため、畳むにも届出が要ります。建設業の廃業届は廃業日から30日以内に国土交通大臣または都道府県知事へ提出が必要です[C-04]。
注:ここでいう「建設業の廃業届」は建設業法12条の届出で、年度に依存しません。税務署に出す「個人事業の開業・廃業等届出書」(提出期限が年度依存)とは別の書類です。混同しないようご注意ください。
⑩ 清算時の税金(ここが見落とされがち) 会社財産を株主(オーナー)に戻すとき、残余財産の分配のうち「資本金等の額を超える部分」だけが“みなし配当”として配当所得(原則は総合課税)になります[C-02]。配当所得は超過累進で、所得税の税率は5〜45%です[C-02]。一方、資本金等に対応する部分は、みなし配当部分を除いて株式の譲渡所得等として扱われます[C-02]。「残余財産を全部受け取れば手元にまるごと残る」わけではなく、しかも“全部がみなし配当で重い”わけでもない、この二段構造が重要です。

図解F1:廃業の総コストは費目の積み上げ。金額は会社規模・状態・市況で大きく変わります。
こうして並べると、“静かに終わる”はずの廃業が、意外な持ち出しになりがちだと分かります。では、同じお金を「売却で残る手取り」と並べると、景色はどう変わるでしょうか。
▶ 廃業を決める前に、まず手取りを試算しませんか
「畳むといくら持ち出しか」「売るといくら残るか」を同じ土俵で比べると、結論が変わることがあります(売り手は完全無料)。 → 廃業前に手取りを試算する/譲渡を相談する
§4【M&A・投資視点】廃業 vs 売却を「手取り」で比較する
ここからが本題です。廃業と売却を、税引後の「手取り」という同じ物差しで並べます。
比較のフレーム
ざっくり言えば、こうです。
- 廃業の手取り = 残余財産(足場・車両・機材などの換価額)−(処分・原状回復・退職金などの清算コスト)− 清算時の税
- 売却の手取り = 譲渡価格 −(仲介手数料などの譲渡コスト)− 譲渡税(20.315%)
廃業側のコストは§3.5で見たとおりです。売却側の「譲渡価格がいくらになるか」は、年買法など相場の見方が別途あります(算定式の詳しい解説と相場の出し方は外壁塗装会社の売却相場と評価(年買法・営業権)の決まり方はこちらをご覧ください。本記事では相場の中身までは踏み込みません)。

図解F2:廃業の手取りと売却の手取りを同一スケールで比較。清算課税はみなし配当(資本金等超過部分=総合課税)+みなし譲渡20.315%の二段構造。具体額は会社により異なります。
同じ価値でも「税」で手取りが変わる
見落とされがちなのが税です。清算課税は二段構造になっています。廃業(清算)では、残余財産の分配のうち資本金等の額を超える部分が“みなし配当”として配当所得(原則 総合課税・累進5〜45%)になり得ます[C-02]。所得が大きいほど税率が上がります。残りの資本金等に対応する部分は、みなし配当部分を除いて株式の譲渡所得等(申告分離20.315%)として扱われます[C-02]。「残余財産を株主に戻せば全部みなし配当で重くなる」という理解は誤りで、みなし配当は資本金等を超える部分だけである点に注意してください。
一方、会社ごと売る株式譲渡では、個人株主の譲渡益は申告分離課税で一律20.315%です[C-03]。つまり、同じくらいの企業価値でも、清算で配当課税が重く乗る場合と、譲渡で一律20.315%で済む場合とでは、手元に残るお金が変わり得るのです。(総合課税が20.315%より重くなり得るかは、資本金等の額や所得状況・配当控除などで変わります。具体的な税額は必ず税理士にご確認ください。)
売れるか廃業かの分水嶺 — 技能を継ぐ若手がいるか
ここが、塗装業の出口判断でいちばん大事な分かれ目です。
- 技能を継ぐ若手がいる → 親族内・社内への事業承継の芽があります。
- 継ぐ若手はいないが、技能士・許可・元請取引が生きている → 第三者へのM&Aで売れる芽があります。買い手は、ゼロから揃えると時間のかかる建設業許可・一級/二級塗装技能士・施工エリア・元請枠・職人の採用代替を「会社ごと」得たいからです。
- 技能士も許可も元請取引も失っている → 残念ながら、廃業に傾きます。
つまり「継ぐ若手がいない=必ず売れない」わけではありません。技能士と元請取引が生きていれば、買い手の人材代替ニーズで売れる芽は残ります。逆に、社長が唯一の技能保有者で、有資格者も取引も失えば、買われる資産が乏しくなります。「技能を継ぐ若手がいるか/技能士・許可・取引が生きているか」が、売れるか廃業かの分水嶺です。

図解F3:売れるか廃業かの分水嶺。継ぐ若手がいなくても、技能士・許可・元請取引が生きていれば売れる芽があります。
売却なら“残るもの”がある
廃業すればゼロ円で消えるものが、売却なら次の担い手に引き継がれ、対価になります。
- 創業者利益:会社の値段が、手取りの現金として残ります。
- 個人保証の見直し:M&A・事業承継の場面では「経営者保証に関するガイドライン」の特則により、前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めない/前経営者の保証は解除に向けて見直すことが原則とされています[C-13]。廃業(清算)では保証債務は当然には消えませんが、売却では解除に向けた検討が図られ得ます(個別の可否は金融機関・専門家へ)。
- 職人の雇用:会社ごと引き継がれれば、職人を路頭に迷わせずに済みます。
- 許可・技能士ごと承継:株式譲渡なら、建設業許可(塗装工事業)も会社に残って原則継続し[C-07]、一級/二級塗装技能士も会社ごと承継されます[C-12]。
補足:事業承継税制とM&Aは別物です
「M&Aで事業承継税制を使って節税できる」は正しくありません。事業承継税制(贈与・相続による株式取得の納税猶予制度)は親族内・社内承継のための制度で、第三者へのM&A売却(株式譲渡所得課税=20.315%の世界)とは別物です[C-03]。出口の節税を考える際は、ここを取り違えないようご注意ください。
3Cで見る:買い手は何を狙っているか
買い手(同業・リフォーム会社・ハウスメーカー・ファンドなど)が欲しいのは、ゼロから揃えると時間のかかる建設業許可・一級/二級塗装技能士・営業エリア・元請枠・職人の採用代替です。後継者不在率57.3%[C-01]という需給のなか、買い手は「許可も人材も会社ごと得られる」M&Aを求めています。買い手が実在することは、売り手にとって「畳まなくても引き取り手がいる」という安心材料でもあります。あとは、技能士の在籍や継ぐ若手の有無といった“見えない資産”を言語化できるかどうかです。技能士の在籍が査定額をどの程度動かすかの定量は、一級塗装技能士の在籍が査定額をどう動かすか(定量)で詳述します。
畳む前の10チェック(廃業 vs 売却 手取り比較ワークシート)
次の項目を自社に当てはめ、①〜⑧の合計=廃業の手取り、⑨⑩=売却の手取り、として並べてみてください。
- ☐ ① 足場・車両・塗装機材の想定処分額(買取なら資金化/廃棄なら費用)
- ☐ ② リース残債・中途解約の違約金(足場・機材)
- ☐ ③ 倉庫・資材置場・事務所の原状回復見積(残置物・産廃処分費を含む)
- ☐ ④ 退職金・解雇予告手当の総額
- ☐ ⑤ 借入残高と個人保証の有無
- ☐ ⑥ 残塗料・産廃・残置物の処分費
- ☐ ⑦ 解散・清算の実費(登記約4.1万円+官報約3.5〜4.5万円+専門家報酬)
- ☐ ⑧ 清算時の課税概算(みなし配当=資本金等超過部分は総合課税/残りはみなし譲渡20.315%・要税理士)
- ☐ ⑨(売却側)建設業許可・一級/二級塗装技能士・元請取引・継ぐ若手の有無=残せる資産
- ☐ ⑩(売却側)株式譲渡時の手取り(譲渡額 − 譲渡コスト − 20.315%)
編集部より:廃業を選んだ社長が、後で“もったいなかった”と言うこと
廃業の相談で多いのが、「許可も技能士も、値があると思っていなかった」という声です。建設業許可・一級/二級塗装技能士・優良な元請取引は、廃業すればゼロ円。譲渡なら値がつきます。 足場・車両の中古価格は思ったより安いこともあり、個人保証は廃業しても残りますが、売却なら解除に向けた見直しが図られ得ます。そして「継ぐ若手がいない」と諦めていた会社でも、技能士と元請取引が生きていれば、買い手の人材代替ニーズで売れたケースがあります。畳むと決める前に、“数字に出ない資産”を一度棚卸ししてみてください。(※本コラムは当社の建設・塗装領域におけるM&A実務での一般的な所感です)
▶ 「売ると、いくら残る?」をまず知る
廃業コストと売却の手取りを並べた概算を、売り手は完全無料でお出しします。許可・技能士の承継(株式か事業譲渡か)も含めてご相談ください。 → 塗装会社の無料売却査定を相談する
建設業のM&Aと許可承継の総論は建設業のM&A・許可承継の全体像も参考に。掲載中の案件は掲載中の建設・塗装関連のM&A案件を見るからご覧いただけます(買い手が実在することは、売り手にとっての安心材料でもあります)。
§5 よくある質問(FAQ)
Q1. 塗装業は廃業と売却、どちらが得ですか? A. 「廃業して出ていくお金」と「売却して手元に残るお金(税引後)」を同じ物差しで比べるのが基本です。許可・技能士・元請取引が生きている塗装会社なら、廃業の持ち出し(足場・車両処分・原状回復・退職金・清算費用)より、売却の手取りが上回ることが多くあります。ただし債務超過なら廃業・再生が合理的な場合もあります。
Q2. 塗装会社の廃業費用はいくらかかりますか? A. 会社規模で大きく変わりますが、法人の解散・清算だけでも登録免許税が合計およそ4.1万円、官報の解散公告が10〜12行でおおむね3.5〜4.5万円かかります[C-01]。これに足場・車両・塗装機材の処分、倉庫・資材置場の原状回復、退職金、残塗料・産廃の処分費が加わり、規模により持ち出しになりがちです。
Q3. 足場・車両は廃業時にいくらで処分できますか? A. 一律ではなく、状態・年式・作業床の高さ・アワーメーター・メーカーで大きく変動します[C-06]。日本製の高所作業車は海外需要で古い機でも値が付くことがあります。一方、リース足場・リース機材は買い取れず、未払いリース料相当額や予定残存価格を違約金として精算する必要があります[C-06]。
Q4. 塗装会社を廃業する手続きと期間は? A. 株主総会での解散決議→清算人選任→官報公告(債権者保護で最低2か月[C-01])→清算結了の流れです。並行して、建設業の廃業届(建設業法12条・30日以内[C-04])も必要です。なお、この廃業届は税務署に出す「個人事業の開業・廃業等届出書」とは別の書類です。
Q5. 廃業(清算)と売却で、税金はどう違いますか? A. 清算で会社財産を株主に戻すと、資本金等を超える部分だけが“みなし配当”=配当所得(原則 総合課税・累進5〜45%)になり得ます[C-02]。残りは株式の譲渡所得(分離20.315%)です。会社ごと売る株式譲渡なら個人株主の譲渡益は一律20.315%[C-03]。同じ価値でも手取りが変わり得るため、必ず税理士にご確認ください。
Q6. 借金・個人保証があっても塗装会社は売れますか? A. ケースによります。M&A・事業承継では「経営者保証に関するガイドライン」の特則で、保証の二重徴求を避け、前経営者の保証を解除に向けて見直すことが原則とされています[C-13]。廃業では保証は当然には消えないため、対比として知っておく価値があります(個別は金融機関・専門家へ)。
Q7. 後継者(技能を継ぐ若手)がいない塗装会社でも売却できますか? A. 可能性は十分あります。建設業の後継者不在率は57.3%と高く[C-01]、買い手は許可・技能士・元請枠・職人を会社ごと得られるM&Aを求めています。継ぐ若手がいなくても、一級/二級塗装技能士・許可・元請取引が健在なら、買い手の人材代替ニーズで売れる芽があります。許可も技能士も健在なうちほど評価が上がります。
§6 まとめ — 畳む前に、まず査定を
- 塗装業の廃業は0円では終わりません。足場・車両・塗装機材の処分、倉庫・資材置場の原状回復、退職金、残塗料・産廃の処分、解散清算(登記約4.1万円+官報約3.5〜4.5万円ほか[C-01])で、規模により持ち出しになりがちです。
- さらに清算では、残余財産のうち資本金等を超える部分だけが“みなし配当”=原則 総合課税になり得ます[C-02]。会社ごと売る株式譲渡なら一律20.315%[C-03]で、手取りに差がつくことがあります。
- 売却なら、廃業で消える建設業許可・一級/二級塗装技能士・元請取引・創業者利益が残り、許可も会社に残せる株式譲渡が選ばれやすい[C-07]。
- 分水嶺は「技能を継ぐ若手がいるか」。継ぐ若手がいれば事業承継、いなくても技能士・許可・元請取引が生きていれば買い手の人材代替ニーズで売れる芽があります。畳む会社の多くは資産超過[C-11]=“買われる資産”を抱えています。許可も技能士も健在な「今」が、出口を選べるタイミングです。
許可・技能士・取引は、廃業すれば価値ゼロで消えますが、譲渡なら次の担い手に引き継がれ、対価が残ります。「畳む」と決める前に、自社の手取りを一度だけ知ることが、後悔しない出口選びの第一歩です。相場の詳しい出し方は外壁塗装会社の売却相場と評価の決まり方、業界の将来性は塗装業界の将来性・需要動向もあわせてご覧ください。
▶ 畳む前に、許可・技能士承継を含めて無料で相談する
「廃業といくら持ち出しか」「売るといくら残るか」「職人の雇用は守れるか」——売主は完全無料です。 → 許可・技能士承継を含めて無料相談する(売主完全無料)
免責
本記事は塗装工事会社の廃業・M&Aに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の査定額・成約・節税効果を保証するものではありません。記載した費用・相場・税の取り扱いはあくまで目安・レンジであり、実際の金額は会社の規模・状態・市況により異なります。財務指標は塗装単独ではなく「職別工事業(塗装を含む区分)」の近似値です。個別の税務(みなし配当・清算所得・譲渡課税)は税理士、許認可の廃止・承継は行政書士・行政庁、契約・清算・法務に関する事項は弁護士へご相談ください。本記事には当社サービス(無料売却相談)へのご案内を含みます。
出典
- [C-01] 建設業の後継者不在率57.3%(2025・全業種最高/2018年ピーク71.4%から改善・全国平均50.1%)— 帝国データバンク「後継者不在率動向調査2025」: https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
- [C-01] 法人の解散・清算の登録免許税(解散3万円+清算人選任9千円+清算結了2千円=計約4.1万円)— 登録免許税法 別表第一24号/法務局 様式
- [C-01] 官報の解散公告 掲載料(1行 税込3,947円・22字/10〜12行で約3.5〜4.5万円)— 全国官報販売協同組合: https://www.gov-book.or.jp/asp/Kanpo/KanpoPrice/?op=1
- [C-01] 債権者保護手続きの公告期間は最低2か月(会社法499条)— e-Gov 会社法499条
- [C-01] 解散から清算結了までの登記を一連で司法書士等に依頼した場合の報酬目安8〜10万円程度 — 士業解説(T3・range・事務所により変動)
- [C-02] 残余財産分配のうち資本金等を超える部分はみなし配当(配当所得・原則 総合課税・累進5〜45%)、資本金等対応部分はみなし配当を除き株式譲渡所得 — 国税庁 タックスアンサー No.1477/No.1536/No.2260: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1477.htm / https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1536.htm / https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- [C-03] 個人の株式譲渡益は申告分離課税20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)/事業承継税制(親族内・社内承継の納税猶予)とは別物 — 国税庁 タックスアンサー No.1463: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
- [C-04] 建設業の廃業等の届出は廃業日から30日以内(建設業法12条・年度非依存・税務署の個人事業廃業届出書とは別物)/解雇は30日前の予告か30日分以上の平均賃金(労働基準法20条)・退職金は規程による(労基法89条三の二)— e-Gov 法令: https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/324AC0000000100 / https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/322AC0000000049
- [C-05] 職別工事業(塗装を含む近似)の売上高営業利益率▲0.42%(令和4年度・営業赤字/建設業全体0.33%)・自己資本比率29.79%(5区分で最弱)。※0.35%は設備工事業の値であり用いない — 建設業情報管理センター(CIIC)「建設業の経営分析(令和4年度)」: https://www.ciic.or.jp/wp-content/uploads/2024/01/bunseki_R04.pdf
- [C-06] 足場・高所作業車・塗装機材の中古処分額は状態・年式・作業床高さ・アワーメーター・市況で大きく変動(廃棄なら費用/買取なら資金化・海外需要で古い機も値が付く余地・リース機は違約金/残債精算)/倉庫・事務所の原状回復は坪2〜10万円目安(都心・高グレードで上振れ)・産廃処分費は別途・原状回復義務は民法621条 — 中古建機/高所作業車買取・解体原状回復業者解説(T3・range/attributed): https://www.bee-truck.com/column/buy/kousho-sagyousha-kaitori/ / https://kaitaihiroba.com/4626/
- [C-07] 株式譲渡なら建設業許可は会社に残り原則継続/事業譲渡は令和2年10月施行の改正建設業法による事前認可(地位承継・承継予定日90日前まで・全部承継が前提)が必要 — 国土交通省: https://www.mlit.go.jp/common/001365753.pdf
- [C-11] 2024年 全国休廃業・解散69,019件(個人事業主含む・2016年以降最多)・建設業8,162件(前年比+7.0%・業種別最多)・黒字割合51.1%・資産超過型65.1% — 帝国データバンク「2024年『休廃業・解散』動向調査」: https://www.tdb.co.jp/report/economic/kyuhaigyo_kaisan2024/
- [C-12] 一級/二級塗装技能士は技能検定(職業能力開発促進法)に基づく国家資格で、塗装工事業の専任技術者・主任技術者の要件に関わり、M&Aで会社ごと承継される(廃業すれば散逸)— 厚生労働省 技能検定/国土交通省 専任技術者となり得る国家資格一覧: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/ability_skill/ginoukentei/syokusyu.html / https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001619998.pdf
- [C-13] 事業承継・M&A時の経営者保証は二重徴求を避け前経営者保証は解除に向け見直し(廃業=清算では当然には消えない)— 全国銀行協会「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(令和元年12月): https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline_sp.pdf