この記事の目次
- この記事の結論
- 株式譲渡をしても連帯保証は自動では外れない。外すかどうかは金融機関が決める
- 最初に作るのは、借入ごとに「会社の担保・社長の保証・社長個人の担保」を分けた一覧
- 外す道は3つ。売る前に自社で外すか、買い手の信用力で外すか、返済して借り換えるか
- 金融機関は、売主の持株・代表権・経営への関与と、会社の返済力を見て保証の要否を判断する
- 相談は最終契約の前に始める。秘密保持契約から金融機関と専門家を除いておく
- 株式譲渡契約には4つを書く。買い手の義務、クロージング条件、外れなかった場合の解除・補償、相談先の秘密保持除外
- 外れる見込みが立たないときは、クロージングを急がず、返済・借換えか条件の組み直しを検討する
- 電気工事会社では、社長個人の資産の混在と、売主が許可の要件を兼ねていないかを先に確認する
- まとめ
- よくある質問(FAQ)
- 出典
借入のある電気工事会社を株式譲渡で売るとき、社長が気にするのは、売ったあとも個人の連帯保証と担保が残らないかどうかです。結論から言うと、保証は売買の成立で自動的には外れません。外すかどうかは金融機関が決めるため、売主と買主の約束だけでは足りません。この記事は、借入・保証・担保の一覧の作り方から、金融機関への相談、株式譲渡契約への書き方、外れそうにないときの判断までを整理します。
この記事の結論
- 株式譲渡をしても、社長の連帯保証は自動では外れません。 解除や買い手への移行を決めるのは金融機関です。
- 最初に、借入ごとに「会社の担保」「社長の保証」「社長個人の担保」を分けた一覧を作ります。 そのうえで、最終契約の前に金融機関と専門家へ相談します。
- 契約には4つを書きます。 買い手の義務、クロージング条件、外れなかったときの解除・補償、相談先の秘密保持除外です。
この記事の対象:借入に社長の連帯保証が付いた電気工事会社を、株式譲渡で売ることを考えている社長。買い手として保証の移行を求められる方にも使えます。
電気工事会社のM&A全体の論点は、電気工事会社のM&A DATAにまとめています。この記事は、そのうち借入の保証と担保の扱いだけを深く扱います。
株式譲渡をしても連帯保証は自動では外れない。外すかどうかは金融機関が決める
結論: 株式譲渡契約は売主と買主の契約で、保証契約は社長と金融機関の契約です。保証を外す手続きは、金融機関を巻き込まないと進みません。
中小企業庁は、経営者保証を「中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となること」と説明しています。企業が返済できなくなったときは、経営者個人が代わりに返済を求められます。「経営者保証に関するガイドライン」は、法的拘束力はないものの関係者が自発的に尊重することが期待される準則で、解除するかどうかの最終的な判断は金融機関にゆだねられています(中小企業庁「経営者保証」)。
中小M&Aガイドライン(第3版)も、同じ点を書いています。
- 解除または買い手への移行の実施は、最終的には金融機関等の判断によります。
- 正式な解除・移行は、クロージングを経て登記簿上の代表者が変更された後に行う必要があります。秘密保持の観点から、金融機関への相談がクロージング後になるケースもあります。
- クロージング後の審査では、買い手の信用力が著しく低い場合などに、円滑に解除・移行できないリスクがあります。買い手に解除・移行する意思が薄いと、金融機関への相談自体が滞るリスクもあります。
本記事の整理では、売主と買主が「解除する」と合意しても、契約の当事者ではない金融機関はその合意に縛られない、という構造です。だから、買い手の約束を取ることと、金融機関の判断を引き出すことを、別々の作業として進めます。
中小企業庁は、この構造が現実のトラブルになった事例を注意喚起しています。クロージング後、売主が買い手に何度依頼しても契約に基づく保証の移行がされず、買い手が売主の現預金などを回収したあと必要な事業資金も送金されないまま会社が倒産し、保証が残っていた売主が個人破産に至った事例です(中小企業庁「M&Aに関するトラブルにご注意ください」)。
| 避けたい判断 | こうすればOK |
|---|---|
| 株式を譲渡すれば、保証も一緒に外れると考える | 保証は金融機関が外すものと捉え、外す手続きと時期を最終契約の前に確認する |
| 買い手の「保証は引き継ぐ」という口頭の約束で安心する | 買い手の義務として契約に書き、金融機関の意向を確かめる手順を条件にする |
| 代金を受け取ってから、保証の相談を始める | 最終契約の前に、借入と保証の一覧を持って相談先を決める |
最初に作るのは、借入ごとに「会社の担保・社長の保証・社長個人の担保」を分けた一覧
結論: 保証と担保を同じ欄にまとめると、何が外れて何が残ったのかが分からなくなります。借入1本ごとに分けた一覧を、相談の前に作ります。
ガイドラインの対象になるのは、中小企業の借入に対する保証です。対象の保証人には、経営者のほか、実質的な経営権を持つ人、営業許可の名義人、経営者と共に事業に従事する配偶者が含まれる場合があります(「経営者保証に関するガイドライン」3項)。社長以外の家族が保証人になっていないかも、一覧で確認します。
中小M&Aガイドライン(第3版)は、クロージング後の作業として、リース契約・賃貸借契約・金銭消費貸借契約などの名義変更、経営者保証の解除、(連帯)保証人の変更を挙げています。また、借入金や不動産への担保設定があるときは、担保の解除と抹消登記について、取引金融機関との調整があらかじめ必要になることがあるとしています。銀行の借入だけでなく、リースなどの保証や、担保になっている不動産も一覧に入れます。
次は仮の数字の例です。実在の取引ではありません。
| 貸し手 | 借入残高(仮) | 社長の個人保証 | 担保 | 確認すること |
|---|---|---|---|---|
| 金融機関A(プロパー融資) | 2,000万円 | あり | 社長個人名義の土地に抵当権 | 保証金額、担保を外す手続き、土地の使い方 |
| 金融機関B(信用保証協会付き融資) | 1,500万円 | あり | なし | 金融機関と信用保証協会のそれぞれの判断 |
| リース会社(車両・計測器) | 300万円 | 社長が連帯保証 | リース物件 | 契約の名義変更、保証人の変更 |
| 合計 | 3,800万円 | 3本とも | 2本 |
この例では、3本すべてに社長の保証があり、うち1本は社長個人の土地が担保に入っています。この土地は、本記事の整理では「保証」とは別に外す対象です。あわせて、会社の事業にその土地を使っているなら、売却や引継ぎの整理も要ります(中小M&Aガイドライン(第3版)は、経営者個人名義の土地などで事業に使われているものは、買い手に売却または引き継ぐとしています。最終契約の前に整理することが望ましいとしています)。
信用保証協会が関わる借入は、金融機関だけで手続きが完結するかを別に確認します。中小企業庁は2024年8月30日、金融機関向けの監督指針の改正に加えて、信用保証協会についても金融機関と同様に経営者保証を見直す枠組みを構築するための監督指針の改正を行ったと説明しています(中小企業庁「金融機関におけるM&A支援の促進等について」)。個別の借入でどこに何を確認するかは、窓口の金融機関に尋ねます。
外す道は3つ。売る前に自社で外すか、買い手の信用力で外すか、返済して借り換えるか
結論: どの道を選ぶかで、準備の時期と買い手に求める条件が変わります。1つに決めず、組み合わせることもあります。
| 道 | 中身 | 留意点 |
|---|---|---|
| ① 売る前に自社で外す | ガイドラインが求める3つの姿に近づけたうえで、金融機関に解除を相談する | 解除が売却の主な動機なら、売却を進める前の段階で取り組むことも考えられるとされている |
| ② 買い手の信用力で解除または移行する | 買い手の信用力や経営体制を踏まえて、金融機関が解除または買い手への移行を審査する | 買い手の信用力が著しく低い場合などは円滑に進まないリスクがある |
| ③ 返済して借り換える | クロージング時に、保証の対象になっている借入を買い手の資力で返済し、買い手が別途借り換える | 買い手の資金調達の確実性に左右される。クロージングの条件にして確認する |
①でいう3つの姿は、中小企業庁が「経営者保証ガイドラインの3要件」として整理しています。
- 資産の所有やお金のやりとりについて、法人と経営者が明確に区分・分離されている。
- 財務基盤が強化され、法人だけの資産や収益力で返済できる。
- 金融機関に、財務情報を適時適切に開示している。
3つの全部または一部を満たせば、すでに提供している保証を見直せる可能性があるとされています(中小企業庁「経営者保証」)。ガイドライン本文は、区分・分離の中身として、役員報酬・賞与、配当、オーナーへの貸付といった法人と経営者の間の資金のやりとりを、社会通念上適切な範囲を超えないものにすることを挙げています。決算書に役員貸付金や私的な費用が混ざっている会社は、ここから見直します。
M&Aの中で外す②と③は、時間の使い方が違います。②は金融機関の審査に時間がかかることがあり、③は買い手の資金手当てが先に要ります。どちらを軸にするかは、買い手候補の資金力と、借入の本数・残高で決めます。
金融機関は、売主の持株・代表権・経営への関与と、会社の返済力を見て保証の要否を判断する
結論: 売主が株主でも役員でもなくなるなら、保証を続ける理由は薄くなります。売主が持株や役職を残すなら、その理由を金融機関に説明できるようにしておきます。
「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(令和元年12月公表、令和2年4月1日適用)は、前経営者に引き続き保証を求める場合に、金融機関が次の点を勘案して必要性を慎重に検討することを求めています。
- 前経営者の株式保有状況(議決権の過半数を保有しているか等)
- 代表権の有無
- 実質的な経営権・支配権の有無
- 既存債権の保全状況
- 法人の資産・収益力による借入返済能力
特則は、取締役などの役員ではなく、議決権の過半数を持つ株主でもない前経営者に、やむを得ず保証の継続を求める場合は、より慎重な検討が求められるとしています。また、前経営者は、実質的な経営権・支配権があるといった特別の事情がない限り、いわゆる第三者に当たる可能性があるとも書いています。さらに、事業承継時には、前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めないことを原則としています。
金融庁の資料も、旧経営者に代わって新経営者と新たに保証契約を結ぶ場合は、ガイドラインと特則を踏まえて対応できるとしています。M&Aで旧経営者が退任せず、経営権のない地位で残るケースでも、ガイドラインを踏まえた対応が否定されるものではない、という考え方です(金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」)。
本記事の整理では、売却後の売主の立場ごとに、次の点を金融機関に確認します。結果は金融機関の判断で変わります。
| 売却後の売主の立場 | 特則の考慮要素に当てはめた確認点 |
|---|---|
| 全株を譲渡し、役員も退任する | 株主でも役員でもない前経営者への保証継続は、より慎重な検討の対象。外す前提で、手順と時期を確認する |
| 全株を譲渡するが、引継ぎ期間は取締役などで残る | 実質的な経営権・支配権があるか、代表権があるか。残る役職の権限と期間を説明できるようにする |
| 株式の一部を保有し続ける | 議決権の過半数を保有するかどうか。保有割合と、経営への関与の有無を整理する |
金融機関には、保証の見直しにあたって、ガイドラインの要件のどこが十分でないために保証が必要なのか、どう改善すれば変更・解除の可能性が高まるのかを、個別具体的に説明することが求められています(特則)。特に法人の資産・収益力は、可能な限り定量的な目線を示すことが望ましいとされています。相談のときは、この2点を質問に使えます。
金融庁の監督指針の改正は、2024年10月1日から適用されています。M&A・事業承継などで主たる株主等が変更になることを金融機関が把握した場合に、どうすれば経営者保証の解除の可能性が高まるか等を事業者に説明することが、金融機関に求められています(金融庁の資料)。「主たる株主等」には、持株比率50%以上の株主のほか、親族の保有分を含めて50%以上となり実質的な経営権を持つ者なども含まれ得るとされています。
相談は最終契約の前に始める。秘密保持契約から金融機関と専門家を除いておく
結論: 事前相談には、情報が早く金融機関に伝わるという代償があります。相談先を決め、秘密保持の取り決めを整えたうえで進めます。
中小M&Aガイドライン(第3版)は、保証を確実に解除または移行したい売主の対応として、次の2つを挙げています。
- 専門家・公的機関への相談: 仲介者やFAへの相談に加えて、まず士業等専門家(特に弁護士)や事業承継・引継ぎ支援センターに相談する。特に弁護士は、保証の提供先の金融機関との調整といった具体的な支援も相談できる。
- 金融機関への事前相談: クロージング前または最終契約前に、秘密保持を徹底したうえで、買い手とともに保証の提供先に相談することも考えられる。ただし、事前相談後も扱いが確定的にならない可能性や、M&A成立前に金融機関へ情報が伝わる点に留意する。相談先と秘密保持契約を結んだうえで相談することが望ましい。
相談を妨げないために、仲介契約・FA契約や買い手との契約に秘密保持条項がある場合は、相談先を条項の対象から除外します。ガイドラインは、買い手は売主から相談の申し出があれば、その実施を拒むべきではなく、相談先を対象から除外するべきだとしています。金融機関から確認事項があれば、誠実に対応することも求めています。
進め方を、時期ごとに整理します。
| 時期 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 最終契約の前 | 借入・保証・担保の一覧を作る。弁護士や事業承継・引継ぎ支援センターに相談する。必要なら秘密保持を整えて金融機関に事前相談する | ガイドライン(第3版)の対応例 |
| 最終契約後〜クロージング前 | 買い手が、金融機関から解除または移行を実行できるかの組織的な意向表明を取る。進められる場合、必要書面を金融機関に出し、代表者の変更登記の必要書類を作る | 同上の、クロージング条件の例 |
| クロージング日 | 万全を期す場合は、金融機関の同席のもとで、代表者の変更登記と、保証の解除または移行の手続きを同時に行う | 同上 |
| クロージング後 | リースや賃貸借、借入の名義変更・保証の解除・保証人の変更を進める。引継ぎ作業には3か月〜1年程度かかることが多いが、個別のケースで異なる | ガイドライン(第3版) |
ガイドラインは、保証が円滑に移行しないなどのトラブルが起きたときは、早急に弁護士へ相談することが望ましいとしています。仲介者やFAの役務提供は基本的にクロージング時点で終了しており、クロージング後の当事者間の紛争への関与は弁護士法72条の非弁行為に当たる可能性もあるため、支援に限界があるためです。
株式譲渡契約には4つを書く。買い手の義務、クロージング条件、外れなかった場合の解除・補償、相談先の秘密保持除外
結論: 約束を契約に書いておけば、外れなかったときに動ける根拠になります。中小M&Aガイドライン(第3版)が示す4点を、順に確認します。
| 書くこと | 内容 | ガイドラインの記述 |
|---|---|---|
| ① 買い手の義務 | 保証の解除または移行を、買い手の義務として明記する | 最終契約で、解除または移行を譲り受け側の義務として明確に位置づけることを検討すべき |
| ② クロージング条件 | (a)最終契約後・クロージング前に、買い手が金融機関から解除・移行できるかの組織的な意向表明を取る (b)進められる場合は、必要書面の提出と、代表者の変更登記の必要書類の作成を済ませる | 具体的な条件として、(a)(b)が考えられる |
| ③ 外れなかった場合 | 契約解除条項、補償条項などを置く | 移行がなされなかった場合を想定した条項を盛り込むことが重要 |
| ④ 相談先の秘密保持除外 | 仲介契約・FA契約や買い手との契約の秘密保持条項から、金融機関と専門家を除く | 相談先を対象から除外することが求められる |
このほかの手段として、ガイドラインは、クロージング時に買い手の資力で保証対象の借入を返済し、買い手が別に借り換える方法を挙げています。
譲渡代金の支払い方も、保証と同じ重さで確認します。ガイドラインは、クロージング後の分割払いや役員退職慰労金の後払いは、事業や買い手の状況によって不履行になるリスクがあり、特に期間が長いほどリスクが高いとしています。中小企業庁の注意喚起も、売主の財務状況が厳しく保証の扱いが重要な場合と、クロージング時の対価が低額で一定期間後に多くを支払う条件の場合を、特に注意が必要なケースとして挙げています。
期限や補償の範囲といった具体的な書き方は、契約ごとに変わります。本記事は数字を示しません。契約書の作成は、弁護士に確認してください。ガイドラインの参考資料として「中小M&A時の経営者保証の取扱いについて」(参考資料13)も公表されています。進め方の詳細は、その原文と専門家で確認します。
外れる見込みが立たないときは、クロージングを急がず、返済・借換えか条件の組み直しを検討する
結論: 金融機関の意向が見えないまま代金を受け取ると、保証だけが残るおそれがあります。外れる見込みが立たないときは、条件を変えるか、日程を見直します。
本記事の整理では、見込みが立たないときの選択肢は次のとおりです。
| 選択肢 | 中身 | 留意点 |
|---|---|---|
| クロージング時の返済と借換え | 買い手の資力で保証対象の借入を返済し、買い手が借り換える | 買い手の資金調達が確実か。ガイドライン(第3版)が挙げる方法 |
| 条件の組み直し | 買い手の義務の内容、期限、外れなかったときの解除・補償を見直す | 金融機関の意向表明の結果を踏まえて決める |
| 日程の見直しまたは見送り | 金融機関の意向が出るまでクロージングを遅らせる、または見送る | 本記事の整理。契約上、延期や見送りができる条件を入れておく必要がある |
相談先は、弁護士や事業承継・引継ぎ支援センターです。中小企業庁は、不適切な買い手とのトラブルへの注意を呼びかけ、少しでも違和感があれば弁護士や各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターに相談するよう案内しています。
電気工事会社では、社長個人の資産の混在と、売主が許可の要件を兼ねていないかを先に確認する
結論: 電気工事会社に特有の確認は3つです。社長個人名義の資産の使い方、リースなど銀行以外の保証、売主が担っている許可上の役割です。
- 社長個人名義の事務所・資材置場。 会社が使っている土地や建物が社長個人名義で、会社の借入の担保になっているなら、保証とは別に、担保の解除と使用の継続を整理します。
- 役員貸付金・私的費用の混在。 区分・分離の3要件の最初の項目です。M&A DATAのDD項目にも、社長の個人保証と個人資産の混在があります。
- リース・車両・計測器の保証。 銀行の借入が整理できても、リース契約の連帯保証が残ることがあります。一覧に入れます。
- 売主が許可の要件を兼ねている場合。 売主が建設業許可の経営業務の管理責任者等や営業所技術者(旧・専任技術者)、電気工事業の登録の主任電気工事士を兼ねているなら、退任の時期と保証の解除、後任の確保が重なります。許可を維持できる体制を先に決めます。電気工事業の許可は承継できるで、許可の承継の考え方を整理しています。
保証と担保の整理は、売却の価格や条件の話し合いとも結びつきます。価格の見方は電気工事会社の売却相場に、廃業した場合に保証がどう残るかは電気工事業は廃業と売却どちらが得にまとめています。
個別の借入や契約の扱いは、弁護士、税理士、行政書士など専門家に確認してください。
まとめ
- 株式譲渡をしても、連帯保証は自動では外れません。解除や移行を決めるのは金融機関で、売主と買主の合意だけでは動きません。
- 借入ごとに、会社の担保・社長の保証・社長個人の担保を分けた一覧を作り、最終契約の前に、弁護士や事業承継・引継ぎ支援センター、必要なら金融機関に相談します。
- 契約には、買い手の義務、クロージング条件、外れなかったときの解除・補償、相談先の秘密保持除外の4つを書きます。見込みが立たないときは、返済と借換え、条件の組み直し、日程の見直しを検討します。
自社の場合を確認する 売却を考える前に、会社の事業価値を自社の数字で確かめたいとき → 事業価値を確認する
よくある質問(FAQ)
Q1. 株式譲渡をすれば、社長の連帯保証は自動で外れますか? A. 自動では外れません。保証契約は社長と金融機関の間の契約で、解除するかどうかは最終的に金融機関が判断します。中小M&Aガイドライン(第3版)も、解除または移行の実施は最終的には金融機関等の判断によるとしています。株式譲渡契約に買い手の義務として書くのは、外れる可能性を高める手当てです。
Q2. 買い手が「保証は引き継ぐ」と約束していれば、安心ですか? A. 約束だけでは足りません。ガイドラインは、保証の解除または移行を買い手の義務として最終契約に明記し、クロージング条件や、移行されなかった場合の契約解除条項・補償条項を入れることが重要だとしています。中小企業庁は、クロージング後に約束どおり移行されず、売主が個人破産に至った事例を挙げて注意を呼びかけています。
Q3. 金融機関への相談は、いつ始めればよいですか? A. ガイドラインは、クロージング前または最終契約前に、秘密保持を徹底したうえで買い手とともに事前相談する方法を挙げています。ただし、事前相談後も扱いが確定しない可能性があることと、成立前に金融機関へ情報が伝わることに留意が必要です。正式な解除・移行は代表者の変更登記の後に行う必要があるため、相談がクロージング後になるケースもあります。
Q4. 社長個人の不動産を担保に入れている場合も、保証と同じ扱いですか? A. 本記事の整理では、保証とは別に確認します。ガイドラインは、借入金や不動産に担保設定がある場合、担保の解除と抹消登記について、取引金融機関との調整があらかじめ必要になることがあるとしています。会社が事業に使っている社長個人名義の土地は、買い手への売却や引継ぎの整理も論点で、ガイドラインは最終契約の前に整理することが望ましいとしています。
Q5. 売却後も社長が取締役として残る場合、保証はどうなりますか? A. 個別の事情で変わります。特則は、前経営者に保証の継続を求める場合に、株式保有状況、代表権の有無、実質的な経営権・支配権の有無、既存債権の保全状況、法人の返済能力などを勘案して慎重に検討するとしています。残る役職の権限と期間、保有する株式の割合を整理して、金融機関に説明できるようにします。
Q6. 保証が残ったまま会社が行き詰まったら、個人の財産はすべて失いますか? A. すべて失うとは限りません。中小企業庁の説明では、ガイドラインに基づいて保証債務を整理する場合、破産時の自由財産99万円は原則として手元に残り、事業再生等に早く着手して会社からの回収見込額が増えた場合には、金融機関は一定期間の生活費(年齢等に応じて約100万円〜360万円)を残すことを、華美でない自宅については収入に見合った分割弁済などで住み続けられるようにすることを検討するとされています。ただし、ガイドラインに法的拘束力はなく、適用には保証人が誠実に財産状況を開示していることなどの要件があります。見通しは弁護士に確認します。
出典
- 経営者保証(中小企業庁): https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/
- 経営者保証に関するガイドライン(日本商工会議所): https://www.jcci.or.jp/support/information/assurance/index.html
- 経営者保証に関するガイドライン(経営者保証に関するガイドライン研究会、平成25年12月): https://www.jcci.or.jp/file/chusho/202403/guideline_keiho.pdf
- 事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則(経営者保証に関するガイドライン研究会、令和元年12月): https://www.jcci.or.jp/file/chusho/202403/tokusoku.pdf
- 事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則の公表について(金融庁、令和元年12月24日): https://www.fsa.go.jp/news/r1/ginkou/20191224-1.html
- 中小 M&A ガイドライン(第3版)-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-(中小企業庁、令和6年8月): https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf
- 中小M&Aガイドライン(中小企業庁): https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html
- M&Aに関するトラブルにご注意ください(中小企業庁): https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2024/240830_01.html
- 金融機関におけるM&A支援の促進等について(中小企業庁、令和6年8月30日): https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2024/240830.html
- 「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について(金融庁、令和6年8月30日): https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20240830.html
- 金融機関におけるM&A支援の促進等に関する監督指針改正(8月30日公表)の概要(金融庁): https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20240830/00.pdf
- コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(金融庁、令和6年8月30日): https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20240830/01.pdf
本記事は2026年10月18日時点の公開情報の整理であり、個別の法律・税務・金融の助言ではありません。