Webサービス・アプリアプリのストア移管

アプリ 売却 アカウント移管|App Store・Google Play の移管条件と、止めない手順の7ステップ

この記事の目次
  1. この記事の結論
  2. アカウントごと渡すのと、アプリだけ移管するのは、別の手続き
  3. App Store は条件を満たせば移管でき、レビューと評価は残る。課金まわりに事前作業がある
  4. Google Play は移行リクエストで評価・レビュー・定期購入が移る。注文とテストグループは移らない
  5. ストアの移管が終わっても、サーバー・API・プッシュ・外部認証の付け替えが残る
  6. 更新と決済を止めない順番は、洗い出し→事前作業→移管→付け替え→確認
  7. 移管できないとき・途中で止まったときのために、契約に入れておく項目
  8. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)
  10. 出典

アプリを売却するとき、買い手が最初に気にするのは「今のレビュー・評価と、課金している利用者を、そのまま引き継げるのか」です。答えは、ストアの公式の移管手続きを使えるかどうかと、手続きの外にある設定(サーバー・プッシュ通知・外部認証)をどう付け替えるかで決まります。この記事は、Apple と Google の公式ヘルプをもとに、その分かれ目を整理します。

この記事の結論

  • まず「アカウントごと渡す」のか「アプリだけ移管する」のかを決めます。 手続きも条件も別で、ストアによって使える範囲も違います。
  • レビュー・評価・サブスクリプションは、公式の移管手続きなら移ると両ストアが説明しています。 一方で、テストグループ・注文・分析データ・各種証明書のように、移らない、または付け替えが要るものがあります。
  • ストアの移管が終わっても、サーバー・プッシュ通知・外部認証の付け替えが残ります。 更新と決済を止めないために、順番と責任分担を契約前に決めます。

この記事の対象:iOS・Androidアプリ(またはそれを含むWebサービス)の売却・買収を検討している方。

Webサービス・アプリのM&A全体の論点(利用者数の数え方、規約とデータの譲渡、ストアアカウントの名義など)は、Webサービス・アプリのM&A DATAにまとめています。この記事は、そのうち「アプリの移管」だけを深く扱います。月額課金の売上が中心のサービスの見方は、SaaS 売却 ARR 評価も参考になります。

アカウントごと渡すのと、アプリだけ移管するのは、別の手続き

結論: 売る範囲を先に決めます。アカウントごと渡すとアカウントに紐づくものが残り、アプリを移管すると、その1本だけが移ります。

アカウントの移管 アプリの移管
App Store Account Holder ロールを、チームメンバーへ移す アプリを、別の App Store Connect アカウントへ移す
Google Play アカウントのオーナーを、別のユーザーへ移す アプリを、別のデベロッパーアカウントへ移す
向いている場面 複数のアプリや契約をまとめて渡す 1本だけ売る。買い手に既存のアカウントがある

両ストアとも、公式に用意された手続きがあります。

  • App Store: Apple の「Transfer the Account Holder role」では、移管先は、組織を法的に拘束する権限を持つチームメンバーでなければなりません。個人として登録したメンバーシップでは、Account Holder の移管は、未成年が成年に達したときや Account Holder が亡くなったときなどに限られ、Apple Developer Support の対応が必要です。個人アカウントのアプリを売る場合は、アプリの移管を使います。
  • Google Play: Google の「Transferring ownership of a Play Console developer account」では、対象は組織アカウントと、収益化していない個人アカウントです。収益化している個人アカウントは直接移管できず、新しい開発者アカウントを作ってアプリを移す必要があります。また、アプリ移管が進行中のアカウントは、オーナー移管がブロックされます。
避けたい判断 こうすればOK
買い手に「アカウントのログイン情報」を渡して済ませる 各ストアの公式の移管手続きを使い、名義の変更を記録に残す
「アカウントを売る」と「アプリを売る」を同じものとして契約書に書く 売る範囲(アカウント全体か、アプリ1本か)を契約に明記する
個人アカウントでも、法人アカウントと同じ手続きだと考える 個人か組織か、収益化の有無を確かめてから、使える手続きを選ぶ

アカウントの売買そのものが、ストアの規約でどう扱われるかは、本記事では確認できていません。ここでは、公式の移管手続きに沿って名義を変える方法だけを扱います。規約上の扱いは、Apple・Google の最新の規約と、専門家への確認で閉じてください。

App Store は条件を満たせば移管でき、レビューと評価は残る。課金まわりに事前作業がある

結論: Apple は、アプリ譲渡で配信を続けられ、レビューと評価は保持されると説明しています。ただし、条件を満たす必要があり、サブスクリプションなどに事前の作業があります。

Apple の「Overview of app transfer」は、次のように説明しています。

  • 譲渡中も譲渡後も、App Store での配信を続けられる。レビューと評価は保持され、ユーザーはアップデートを受け取り続ける。
  • Bundle ID は維持される。
  • 譲渡後、アプリは譲渡元のアカウントから削除される。事前に情報をバックアップする。

譲渡できる条件は、Apple の「App transfer criteria」にあります。主なものは次のとおりです。

条件 内容
契約 譲渡元と譲渡先の両方が、アカウントが保留中・変更中でなく、最新の契約に同意済み
公開履歴 App Store にリリースされたバージョンが少なくとも1つある
事前注文 いずれの国・地域でも事前注文の対象になっていない
アプリの状態 「Waiting for Review」「In Review」「Pending Developer Release」などの状態でない
アプリ内課金の商品ID 譲渡先のアカウント内のどのアプリの商品IDとも重複しない
対象外 Apple Arcade のアプリは譲渡できない

アプリ内課金の商品のステータスにも条件があります。条件の全体と正確な内容は、Apple の「App transfer criteria」で確認してください。

課金と、買い手が引き継ぐ設定に関わる、事前の作業は次のとおりです(Apple「Overview of app transfer」)。

項目 Apple の案内
自動更新サブスクリプション 譲渡前に app-specific shared secret を作って譲渡先に共有する。譲渡後は、元の持ち主がアクセスできないよう再生成する
Sign in with Apple 譲渡前に、データベースのユーザーごとに transfer identifier を生成する
プッシュ通知(APNs) 譲渡先の証明書は期限まで有効。期限後は譲渡先が再生成し、APNs サーバー側の更新が必要
Apple Pay Merchant ID は譲渡されない。譲渡先で新しい Merchant ID を作る
TestFlight 譲渡前にベータビルドとテスターを削除する

譲渡の流れと期限は、Apple の「Initiate an app transfer」「Accept an app transfer」に書かれています。

  • 開始できるのは、譲渡元の Account Holder。譲渡先の Account Holder の Apple Account と Team ID を入力する。
  • 譲渡先が承諾するまでの期限は60日。この間、譲渡元は、メタデータ・価格・アプリ内課金などの一部を編集できない。
  • 承諾後の処理に最大2営業日かかる。完了後、譲渡先は新しいプロビジョニングプロファイルを作る。

買い手に移るのは、アプリの管理権限とストア上の情報です。ソースコードとビルド資産は、Apple の移管の外で、売り手と買い手が直接やり取りします(Apple は、コードとビルド資産は譲渡元が譲渡先と直接やり取りして渡すとしています)。

Google Play は移行リクエストで評価・レビュー・定期購入が移る。注文とテストグループは移らない

結論: Google は、アプリの移行でユーザーや評価・レビュー、サブスクリプションが移ると説明しています。移らないものと、事前に整える統合サービスの対応表を作ります。

Google の「Transfer apps to a different developer account」は、次のように案内しています。

区分 内容
移る ユーザー、統計、データ、コメント、評価・レビュー、サブスクリプション、過去に提出したポリシー申告や App content の情報
移らない 移行前に作成された注文(返金は元のアカウントか Developer API で行う)、バルクエクスポート・推定売上・収益レポート、プロモーション設定、テストグループ、統合サービスの権限とリンク設定
事前の条件 元のアカウントと対象アプリが Google Play のポリシーに準拠している。移行先は登録が完了している。有料アプリやアプリ内商品がある場合、移行先に有効な支払いプロファイルが必要。移行先のデフォルト通貨が異なる場合、アプリ内課金のみのアプリは移行後に非公開になり、価格を確認して再公開するまで配信されない(有料アプリは価格が自動で換算される)

統合サービスの付け替えも、同じページに挙がっています。

  • Google アナリティクスで、移行先に権限を付与する。
  • Google Developers Console のプロジェクトで、移行先をオーナーに追加する。
  • Firebase プロジェクトは、元のアカウントからリンクを解除し、移行先に再リンクする。
  • 広告SDK(AdMob を含む)は、APK で更新する。
  • Play アプリ署名は、必要に応じて、移行先がアップロード鍵をリセットしたり、署名鍵をアップグレードしたりできる。

手続きは、リクエストを送信し、移行先のデベロッパーが確認して承認します。その後、Google Play サポートが2営業日以内に審査・返信します。

価格に関わる注意が1つあります。 Google は、手数料15%の区分を使っているアカウントでは、別のアカウントグループへ移行すると、そのアプリの収益全体が両グループの当年収益に算入され、最初の100万ドルの算定に影響すると説明しています。買い手の手数料区分に関わるため、買い手側の状況を確かめます。

ストアの移管が終わっても、サーバー・API・プッシュ・外部認証の付け替えが残る

結論: ストアの移管は、アプリの名義を移す手続きです。アプリが動くために使っているサーバーや外部サービスは、別に洗い出して、付け替えの責任者と期日を決めます。

両ストアの公式の案内から、手続きの外に残ると読み取れるものを、次の表に整理します。

領域 公式の案内で分かること 確認の観点
プッシュ通知 Apple:APNs の証明書は譲渡先でも期限まで有効。期限後に再生成し、APNs サーバーの更新が必要 証明書とキーの保管者、期限、通知を送るサーバーの運営者
外部認証 Apple:Sign in with Apple は、譲渡前に transfer identifier を作る必要がある 認証に使っている方式の一覧と、ユーザーの識別子の移し方
サブスクリプション検証 Apple:shared secret を共有し、譲渡後に再生成する レシート検証を行うサーバーと、シークレットの更新手順
アプリ内の統合サービス Google:Firebase の再リンク、広告SDKの更新、Google アナリティクスの権限付与が必要 使っているSDKとアカウントの名義の一覧
署名鍵 Google:Play アプリ署名を使う場合、移行先がアップロード鍵をリセットできる 署名鍵・アップロード鍵の保管者と、再発行の手順
分析・売上データ Apple:譲渡元は譲渡後に App Analytics のデータにアクセスできない。Google:売上レポートは移らない 引き渡し前に、必要なデータを出力して保存する

この表にないもの(自社のサーバー、決済代行、メール配信、問い合わせツール、ドメインなど)は、公式の案内の対象外です。 売り手に、アプリが依存している外部サービスの一覧を作ってもらい、名義の変更の可否と手順を、サービスごとに確認します。個人情報や利用規約が関わる移し方は、プライバシーポリシーと照らして、専門家に確認してください。

更新と決済を止めない順番は、洗い出し→事前作業→移管→付け替え→確認

結論: 利用者から見て「アプリが突然動かない」「課金が通らない」ことがないように、ストアの手続きの前後を分けて、順番を決めます。

次は、公式の案内を並べた、本記事の整理による手順です。

順番 作業 主な担当 根拠
1 アプリが使っているサーバー・外部サービス・証明書・鍵の一覧を作る 売り手 上の表
2 両ストアの条件を確かめる(App Store:契約同意、アプリの状態、商品IDの重複/Google Play:ポリシー準拠、支払いプロファイル) 売り手・買い手 App transfer criteria/Transfer apps to a different developer account
3 移らないデータをバックアップする(売上・分析・注文など) 売り手 Overview of app transfer/Transfer apps to a different developer account
4 事前作業をする(shared secret、transfer identifier、TestFlight の整理など) 売り手 Overview of app transfer
5 ストアの移管を申請・承認する。App Store は期限60日、Google Play は2営業日以内の審査 売り手・買い手 Initiate / Accept an app transfer/Transfer apps to a different developer account
6 移管の完了後、証明書・Merchant ID・Firebase・広告SDK・署名鍵などを付け替える 買い手(売り手が支援) Overview of app transfer/Transfer apps to a different developer account
7 新しいバージョンを提出し、課金・通知・ログインの動作を確認する 買い手 Accept an app transfer
避けたい判断 こうすればOK
移管の完了と同時に、売り手がすぐ運営から手を引く 付け替えと動作確認が終わるまで、売り手が支援する期間を決める
付け替えを、買い手の責任として契約に何も書かない 項目ごとに、担当と期日、できなかったときの扱いを書く
繁忙期や大型アップデートの直前に移管する 更新の予定と重ならない時期を選ぶ

移管の期間中は、Apple では譲渡元が一部の情報を編集できません。この間にアプリの更新を出す必要が生じる場合は、順番を見直します。

移管できないとき・途中で止まったときのために、契約に入れておく項目

結論: 移管は、条件が満たせないと止まります。本記事の整理では、止まったときの扱いを先に決めておくほうが、後の争いを減らせます。

契約で決めておく項目を、本記事の整理として挙げます。

項目 決めておくこと
移管できなかった場合 代金の支払い時期を移管の完了と結びつけるか、やり直しの期限、解除の条件
売り手の支援期間 移管の完了後、付け替えと動作確認のために、売り手が協力する期間と範囲
移らないデータ 売上・分析データ・注文・テスターなど、移らないものの引き渡し方法
名義の確認 ストアのアカウント、証明書、鍵、ドメイン、外部サービスの名義と、移す順番
条件を満たせない場合の代替 新しいアプリとして出し直す場合の扱い(レビュー・評価・課金が引き継げないことへの対応)

Apple・Google の移管の条件は、変更される可能性があります。実施前に、最新の公式ページを確認してください。具体的な条項、税務上の扱い、利用者の個人情報の移し方は、個別の事情で変わるため、弁護士・税理士などの専門家に確認してください。

まとめ

  • アカウントごと渡すのか、アプリだけ移管するのかを先に決めます。Google Play は、収益化している個人アカウントを直接移管できません。
  • レビュー・評価・サブスクリプションは、公式の移管手続きで移ると両ストアが説明しています。移らないもの(Google Play の注文・テストグループ・売上レポート、Apple の分析データへのアクセスなど)は、事前にバックアップします。
  • サーバー・プッシュ・外部認証の付け替えは、ストアの手続きの外に残ります。順番と担当、移管できなかったときの扱いを、契約前に決めます。

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よくある質問(FAQ)

Q1. アプリを売却すると、レビューや評価は消えますか? A. ストアの公式の移管手続きを使えば、消えないと説明されています。Apple は、アプリ譲渡の概要で、譲渡中も譲渡後も App Store での配信を続けられ、レビューと評価は保持されるとしています。Google Play も、アプリの移行で、評価・レビュー、ユーザー、統計、サブスクリプションなどが移ると説明しています。新しいアプリとして出し直す場合は、この対象になりません。

Q2. 開発者アカウントの売買と、アプリの移管は何が違いますか? A. アカウントの移管は、アカウントの管理者(Apple は Account Holder、Google Play はオーナー)を変える手続きで、アカウントに紐づくものがそのまま残ります。アプリの移管は、アプリ1本を別のアカウントへ移す手続きです。どちらを使えるかはストアごとに条件が違うため、本記事の整理では、売る範囲(アプリ1本か、アカウント全体か)を先に決めてから手続きを選びます。

Q3. App Store のアプリは、いつでも移管できますか? A. 条件があります。Apple は、App Store に公開されたバージョンが少なくとも1つあること、事前注文の対象でないこと、審査中・リリース待ちなどの状態でないこと、譲渡元と譲渡先の両方が最新の契約に同意済みであることなどを挙げています。条件の全体は、Apple の「App transfer criteria」で確認します。

Q4. Google Play のアプリ移行で、移らないものはありますか? A. あります。Google は、移行前に作成された注文、バルクエクスポート・推定売上・収益レポート、プロモーション設定、テストグループ、統合サービスの権限やリンク設定を、移らないものとして挙げています。必要なデータは事前にダウンロードし、テストグループやFirebase、広告SDKは移行先で設定し直します。

Q5. 移管の手続きにはどのくらい時間がかかりますか? A. Apple は、譲渡先が承諾するまでの期限を60日とし、承諾後の処理に最大2営業日かかると案内しています。Google Play は、アプリ移行のリクエスト後、Google Play サポートが2営業日以内に審査・返信するとしています。ただし、これは手続きの目安で、サーバーや外部サービスの付け替えにかかる時間は含みません。

Q6. 売却の契約で、移管ができなかった場合に備えて何を決めておきますか? A. 本記事の整理では、移管の条件が満たされなかった場合の扱い(代金の支払い時期、やり直しの期限、解除の条件)、移管の前後で売り手が運営を続ける期間、移管で移らないデータの引き渡し方法を、契約前に決めておく項目として挙げます。具体的な条項は、個別の事情で変わるため、弁護士に確認してください。

出典

  • Apple Developer「Overview of app transfer」(App Store Connect ヘルプ) https://developer.apple.com/help/app-store-connect/transfer-an-app/overview-of-app-transfer
  • Apple Developer「App transfer criteria」(App Store Connect ヘルプ) https://developer.apple.com/help/app-store-connect/transfer-an-app/app-transfer-criteria
  • Apple Developer「Initiate an app transfer」(App Store Connect ヘルプ) https://developer.apple.com/help/app-store-connect/transfer-an-app/initiate-an-app-transfer
  • Apple Developer「Accept an app transfer」(App Store Connect ヘルプ) https://developer.apple.com/help/app-store-connect/transfer-an-app/accept-an-app-transfer
  • Apple Developer「Transfer the Account Holder role」(Account ヘルプ) https://developer.apple.com/help/account/access/transfer-the-account-holder-role/
  • Play Console ヘルプ「Transfer apps to a different developer account」 https://support.google.com/googleplay/android-developer/answer/6230247
  • Play Console ヘルプ「Transferring ownership of a Play Console developer account」 https://support.google.com/googleplay/android-developer/answer/16909862

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