Webサービス・アプリ売却時の税金

アプリ 売却 税金|個人開発の売却益は所得区分が分かれ、消費税と法人化で手取りが変わる4つの分岐点

この記事の目次
  1. この記事の結論
  2. 税金の枠は、売る人(個人か法人か)と売るもの(資産か株か)で四つに分かれる
  3. 個人開発の売却益は、資産ごと・継続性ごとに所得の区分が分かれうる
  4. 消費税は、課税事業者かどうかと、売る資産が課税対象かで決まる
  5. 売却前の法人化は、出資の時点の課税と、新設法人の消費税の特例を確認する
  6. 手取りは、売却代金から税・費用・清算を引き、個人のままの場合と比べる
  7. 税理士に確認することは、4点にまとめられる
  8. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)
  10. 出典

この記事の結論

  • アプリ・Webサービスの売却益は、「誰が」「何を」売るかで課税が変わります。 個人が資産として売る、売却前に法人化してから売る、法人が事業を売る、オーナーが株を売る、の四つで、課税される人も税目も違います。
  • 個人の売却益は、一つの所得区分に決まるとは限りません。 国税庁の資料で確認できるのは、著作権が譲渡所得の対象資産に含まれること、継続的な譲渡は事業所得または雑所得になること、の二つまでです。
  • 消費税と売却前の法人化は、手取りを変える分岐点です。 個別の税額はこの記事では出さず、資産の一覧を持って税理士に試算を頼みます。

この記事の対象:個人開発のアプリ・Webサービス、または小さな法人が運営するサービスを売ろうとしている運営者。アプリのソースコード、ドメイン、ストアのアカウント、契約上の権利の譲渡に限り、飲食店舗の営業資産の税務は扱いません。

Webサービス・アプリ全体の見方(利用者数の数え方、DDの論点、売却準備)は、Webサービス・アプリのM&A DATAにまとめています。この記事は、そのうち売却にかかる税金の区分だけを扱います。確認日は2026-10-18で、国税庁のタックスアンサーは「令和8年4月1日現在法令等」と表示されている内容に基づきます。個別の税額や有利不利は書きません。

税金の枠は、売る人(個人か法人か)と売るもの(資産か株か)で四つに分かれる

結論: 先に決めるのは税率ではなく、自分がどの形で売るかです。形によって、対価を受け取る人(個人か法人か)と、課税の仕組みが変わります。

中小M&Aガイドライン(第3版)は、中小M&Aは一般に株式譲渡または事業譲渡で行われるケースが多いとし、個人事業主の中小M&Aは事業譲渡(営業譲渡)の手法を用いるのが通常だと説明しています。アプリ・Webサービスの売却を、本記事の整理で当てはめると次の4パターンです。

パターン 売る人・売るもの 対価を受け取る人 資料で確認できる課税の枠
個人が資産・権利を売る 個人開発者が、ソースコード(著作権)やドメイン、契約上の権利などを売る 個人 所得税。資産ごとに譲渡所得、事業所得、雑所得など。消費税は課税事業者かどうかで変わる
売却前に個人から法人へ移してから売る 個人が法人へ資産を出資・譲渡し、その後に法人または株主が売る 法人、その後オーナー個人 法人への出資・譲渡の時点の課税、消費税の新設法人の特例、売却時の課税の三つを見る
法人が事業を売る 会社が、サービスの事業を売る 法人 法人税等。消費税の課税事業者なら課税売上。オーナーに渡す段階で別の課税
オーナーが株を売る 株主が、会社の株式を売る オーナー個人 申告分離課税(ガイドラインは税率20.315%と説明)
避けたい判断 こうすればOK
「売却益は一律○%」と考えて手取りを見積もる まず、個人か法人か、資産の譲渡か株式の譲渡かを決め、パターンごとに確認する
アプリを売る前提で、ドメイン・アカウント・契約の区分を考えない 売る資産の一覧を作り、資産ごとに税理士へ区分を確認する
節税のつもりで売却直前に法人化する 法人化は、それ自体が課税の対象になりうるので、売却方法とあわせて試算する

スナック・バーなど飲食店舗の売却税務は、資産の種類が違うためスナック 売却 税金で別に扱っています。この記事は、ソフトウェアと契約上の権利の側に絞っています。

個人開発の売却益は、資産ごと・継続性ごとに所得の区分が分かれうる

結論: 個人が売る場合、国税庁の資料で言えるのは区分の候補までです。アプリ一式がどれに当たるかは、開発と運営の実態で変わるため、税理士の確認が要ります。

国税庁のタックスアンサー No.3105 は、譲渡所得の対象になる資産に、特許権、著作権、機械器具、取引慣行のある借家権などが含まれるとし、貸付金や売掛金などの金銭債権は除かれると説明しています。一方で、同じページは、棚卸資産や小額の減価償却資産などに当たらない資産でも、相当の期間にわたり継続的に譲渡している場合の所得は事業所得または雑所得になること、取得価額が10万円未満の減価償却資産などを譲渡した場合の所得は事業所得または雑所得になることも説明しています。

国税庁のタックスアンサー No.1300 は、雑所得に、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当すると例示しています。副業として運営しているアプリは、この点も確認する必要があります。

売るもの(例) 国税庁の資料で確認できること この記事で言えないこと
アプリのソースコード・プログラムの著作権 譲渡所得の対象資産に「著作権」が含まれる(No.3105) 自作のアプリ一式が譲渡所得に当たるか、事業所得・雑所得になるか
開発に使った10万円未満のパソコン・周辺機器 取得価額10万円未満の減価償却資産は事業所得または雑所得(No.3105) 個々の機器がこの範囲に入るかの判定
ドメイン、ストアのアカウント、外部サービスとの契約上の権利 本記事では、区分を示す資料を確認できていない 各権利の所得の区分、譲渡の可否
売掛金・未収の広告収入などの金銭債権 譲渡所得の対象から除かれる(No.3105) 売却に含める場合の扱い

譲渡所得になる場合の計算は、国税庁のタックスアンサー No.1460 で次のように説明されています。土地・建物・株式等以外の資産の譲渡益から、特別控除額(最高50万円)を引いて譲渡所得の金額を出し、ほかの所得と合計して税額を計算します。所有期間が5年以下なら短期、5年を超えるなら長期で、長期譲渡所得の金額は合計するときにその2分の1になります。なお、同ページは、自己の研究成果である特許権などは所有期間にかかわらず長期譲渡所得になるとしていますが、ここに自作のアプリの著作権が入るかは資料からは言えません。

雑所得になる場合は、国税庁のタックスアンサー No.1500 によれば、総収入金額から必要経費を引いて金額を出し、ほかの所得と合計して税額を計算します。雑所得の計算で生じた損失は、他の所得と損益通算できません。

個人の売却では、どの区分になるかで、控除や合算の仕組みが変わります。ここは、売却前に税理士へ資産の一覧と運営の実績を見せて確認する項目です。

消費税は、課税事業者かどうかと、売る資産が課税対象かで決まる

結論: 個人でも法人でも、課税事業者が事業として行う資産の譲渡には消費税が課税されます。免税事業者の譲渡は課税されません。売却額が大きいと、売却年の前後の判定にも影響しうるため、売る前に確認します。

国税庁のタックスアンサー No.6105 は、消費税の課税対象を、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等とし、資産には有形資産のほか、権利その他の無形資産が含まれると説明しています。No.6931 は、課税事業者が事業用の資産を譲渡した場合は消費税が課税される(土地や借地権の譲渡は非課税)と説明しています。中小M&Aガイドライン(第3版)も、事業譲渡の場合は減価償却資産等が消費税の課税売上に当たるため、課税事業者は留意が必要としています。

状況 国税庁の資料で確認できること 確認すること
基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、特例もない 原則として納税義務が免除される(No.6501) 自分が免税事業者かどうか
適格請求書発行事業者の登録を受けている 基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、納税義務は免除されない(No.6501) インボイスの登録の有無
特定期間の課税売上高が1,000万円を超える 納税義務は免除されない(No.6501) 前年の1月1日から6月30日(個人)の売上
課税事業者選択届出書を提出している 納税義務は免除されない(No.6501) 届出書を出した時期
株式を譲渡する 有価証券等の譲渡は非課税取引に挙げられている(No.6201) 株式譲渡か事業譲渡かの選択

本記事の整理では、売却の対価が課税売上に含まれる場合、その金額が2年後の基準期間の判定に入るかどうかも、税理士への確認項目になります。基準期間は、個人事業者ではその年の前々年(No.6501)です。個人が「たまたま」売るのか、事業として売るのかも、No.6105 の「事業として」(反復、継続かつ独立して行う)の判断になるので、個別に確認が必要です。

売却前の法人化は、出資の時点の課税と、新設法人の消費税の特例を確認する

結論: 法人化は、手取りが増えるとも減るとも決めつけず、出資・譲渡の時点の課税と消費税の扱いを含めて、個人のまま売る場合と並べて試算します。資料で確認できる注意点は二つです。

一つ目は、個人から法人への資産の移転です。国税庁のタックスアンサー No.3105 は、資産の譲渡には、法人に対する現物出資も含まれるとしています。また、法人への贈与や、時価の2分の1未満の価額での譲渡があった場合は、時価で資産の譲渡があったものとされます。個人が自作のアプリの資産を法人に移す価額と、そのときの課税は、税理士に確認します。

二つ目は、新設法人の消費税です。国税庁のタックスアンサー No.6503 は、設立1期目・2期目は基準期間がないため原則として納税義務が免除される一方、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の法人は課税事業者になること、適格請求書発行事業者や、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合などは免除されないことを説明しています。

避けたい判断 こうすればOK
「法人にすれば税率が下がる」と考えて、売却の直前に設立する 個人のままで売る場合と、法人化して売る場合を、同じ前提で税理士に試算してもらう
法人への資産の移転を、金額なしで済ませる 時価と移転価額、出資の時点の課税を、先に確認する
設立時の資本金と消費税の関係を見ない 資本金1,000万円以上か、インボイスの登録をするかで消費税の扱いが変わるため、設立前に確認する

法人化した後は、売却の方法で課税が変わります。株式譲渡では、中小M&Aガイドライン(第3版)が、株主である経営者個人の税金は分離課税(税率20.315%)で課税関係が終了すると説明しています。事業譲渡では、譲渡対価は法人に帰属するため益金に対して法人税等が生じ、その後にオーナーへ配当や役員報酬などで還流する場合は総合課税の対象になります。役員退職慰労金は分離課税となるため、併せて検討することもあり得るとされています。法人の事業譲渡と株式譲渡の二段の課税の見方は、飲食の例で整理したスナック 売却 税金と同じ枠で読めます。

手取りは、売却代金から税・費用・清算を引き、個人のままの場合と比べる

結論: 売却代金は手取りではありません。個人のまま売る場合、法人化して売る場合を、同じ前提の手取りで並べて比べます。

本記事の整理では、手取りを次の式で見ます。数字は入れず、引く項目だけを示します。

項目 内容 確認先
売却代金 譲渡対価の合計(資産ごとの内訳があると、区分の確認に使える) 売買契約書の案
− 所得税・住民税など 個人のままの場合の、資産ごとの所得区分に応じた課税 税理士
− 消費税 課税事業者である場合の納付額 税理士
− 法人化する場合の課税と費用 出資・譲渡の時点の課税、設立の費用、法人からオーナーへ渡す段階の課税 税理士
− 開発や運営の未払いの費用 外注費、サーバー代、ストアの手数料など 請求書・明細
= 手元に残る額 個人のままの場合と、同じ前提で比べる 税理士

中小M&Aガイドライン(第3版)は、中小M&Aにより株主である経営者個人に所得が生じた場合には、所得税・住民税のほか、国民健康保険料などにも影響があるため留意が必要としています。個人開発者が売却益を得たときも、税のほかに、こうした負担が変わるかを税理士に確認します。

売却の価格そのものの見方は、Webサービス・アプリのM&A DATAで扱っています。ストアの移管の手順はアプリ 売却 アカウント移管、利用者データを譲渡先で使えるかはWebサービス 売却 個人情報で扱っています。

税理士に確認することは、4点にまとめられる

結論: 税理士に渡す資料は、確定申告書、売る資産の一覧、費用の記録、売却方法の候補です。確認する点は、所得の区分、消費税、法人化の要否、手取りの試算の4つです。

渡す資料 確認する点
直近の確定申告書・決算書 事業所得か雑所得か、ほかの所得、課税事業者かどうか
売る資産の一覧(ソースコード、ドメイン、ストアのアカウント、契約、機器など) 資産ごとの所得の区分、取得費、所有期間
開発・運営にかかった費用の記録 必要経費、取得費の根拠
売却方法の候補(個人の資産譲渡、法人化、株式譲渡、事業譲渡) 課税される人、消費税、オーナーへ渡す段階の課税
法人の場合は株主の状況・出資の経緯 株式の取得費、譲渡益の計算

税務の判断は、個別の事情で変わります。この記事は国税庁と中小企業庁の資料で確認できた区分を整理したもので、個別の税務の助言ではありません。具体的な取り扱いは、税理士に確認してください。

まとめ

  • アプリ・Webサービスの売却は、個人の資産譲渡、法人化してから売る、法人の事業譲渡、オーナーの株式譲渡で、課税される人と税目が変わります。先に、自分の形を決めます。
  • 個人の売却益は、著作権が譲渡所得の対象に含まれる一方、継続的な譲渡は事業所得または雑所得になるなど、区分が分かれます。アプリ一式の区分は、税理士に確認します。
  • 消費税は課税事業者かどうかで変わり、売却前の法人化は、出資の時点の課税と新設法人の特例を確認します。手取りは、個人のままの場合と法人化する場合を、同じ前提で比べます。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 個人で作ったアプリを売ると、所得税の区分は何になりますか? A. 一つに決まりません。国税庁のタックスアンサー No.3105 は、譲渡所得の対象になる資産に著作権が含まれる一方、棚卸資産などに当たらない資産でも、相当の期間にわたり継続的に譲渡している場合の所得は事業所得または雑所得になると説明しています。個人開発のアプリ一式がどの区分に当たるかを個別に示す資料は確認できていないため、開発と運営の実態(継続性、帳簿、ほかの収入)を持って税理士に確認します。

Q2. 譲渡所得になる場合、税額はどう計算されますか? A. 国税庁のタックスアンサー No.1460 によると、土地・建物・株式等以外の資産の譲渡益から特別控除額(最高50万円)を引いて譲渡所得の金額を出し、ほかの所得と合計して税額を計算します。所有期間が5年を超える長期譲渡所得は、合計する際にその2分の1になります。取得費や所有期間は資産ごとに変わるので、本記事では税額を計算しません。

Q3. アプリの売却に消費税はかかりますか? A. 課税事業者かどうかで変わります。国税庁のタックスアンサー No.6931 は、課税事業者が事業用の資産を譲渡した場合は消費税が課税され、免税事業者の譲渡は課税されないと説明しています。基準期間(個人は前々年)の課税売上高が1,000万円以下でも、インボイスの登録などで免税にならない場合があります。自分の区分は税理士に確認します。

Q4. 売却前に法人化すると、税金は安くなりますか? A. 資料からは、有利か不利かは言えません。国税庁のタックスアンサー No.3105 は、法人への現物出資も資産の譲渡に含まれ、時価の2分の1未満の価額での譲渡は時価で譲渡があったものとされると説明しています。また、法人の事業譲渡では、対価は法人に入り、オーナーに渡す段階で別の課税が生じます。法人化の手順と時期は、売却の方法とあわせて税理士に試算を頼みます。

Q5. 法人のサービスを株式譲渡で売る場合は、どうなりますか? A. 株を売るオーナー個人の譲渡益に、申告分離課税がかかります。中小M&Aガイドライン(第3版)は、株式譲渡では分離課税(税率20.315%)で課税関係が終了すると説明しています。株式の譲渡は、消費税では非課税取引に挙げられています(国税庁 No.6201)。

Q6. 税理士には何を渡して、何を確認すればよいですか? A. 直近の確定申告書や決算書、開発と運営にかかった費用の記録、売る資産の一覧(ソースコード、ドメイン、ストアのアカウント、契約など)、課税事業者かどうかのわかる資料、売却方法の候補を渡します。確認するのは、所得の区分、消費税、法人化の要否、手取りの試算の4点です。

出典

  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」(令和6年8月) https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf
  • 国税庁 タックスアンサー「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.1460 譲渡所得(土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1460.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.1300 所得の区分のあらまし」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1300.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.1500 雑所得」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.6105 課税の対象」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6105.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.6931 消費税等と譲渡所得」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6931.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.6501 納税義務の免除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6503.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.6201 非課税となる取引」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6201.htm

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