Webサービス・アプリアクティブユーザーの見方

アプリ 買収 MAU|登録者数を見ずに、アクティブ数・継続率・売上を3点照合する方法

この記事の目次
  1. この記事の結論
  2. 登録者数は入口の累計、評価に使うのは直近の実利用
  3. DAU・WAU・MAUは、ツールごとに数える単位と期間が違う
  4. ボット・重複・休眠を除いた後の数字で見る
  5. 継続率は、同時期に使い始めた人の集まり(コホート)ごとに見る
  6. 一時的な利用増は、流入元とコホートの残り方で見分ける
  7. ユーザー数は、売上・課金の数字と必ず照合する
  8. 買収前に売り手へ求めるデータと、数字の限界
  9. まとめ
  10. よくある質問(FAQ)
  11. 出典

「登録者数10万人」。Webサービスやアプリの売却案件で、よく見かける数字です。買い手が知りたいのは、そのうち今も使っている人がどれだけいて、使い続けられていて、収益に結びついているかです。この記事は、その3点を公式な指標の定義に沿って確かめる手順を整理します。

この記事の結論

  • 登録者数は、評価の根拠にしません。 見るのは、直近の期間に実際に使った人数(アクティブ数)と、使い続けた割合(継続率)です。
  • 「MAU」は、ツールごとに数え方が違います。 数える単位(ユーザーか端末か)と期間を揃えてから比べます。
  • ユーザー数は、売上・課金の数字と必ず照合します。 合わない場合は、理由が説明できるまで価格の前提に使いません。

この記事の対象:Webサービス・アプリの買収を検討している方。売り手として、買い手にどんなデータを問われるかを知りたい方にも使えます。

Webサービス・アプリ全体の論点(主要KPI・DD・引き継ぐもの)は、Webサービス・アプリのM&A DATAにまとめています。この記事は、そのうちユーザー数の見方だけを深く扱います。月額課金の売上の数え方はSaaS ARR 企業価値を参照してください。

登録者数は入口の累計、評価に使うのは直近の実利用

結論: 登録者数は、増えることはあっても減りにくい数字です。買収後の収益を支えるのは、今使っている人なので、評価は実利用の数字で行います。

本記事の整理では、ユーザーの数字を次の4段階に分けます。

段階 意味(本記事の整理) 見る場所の例
登録者数 会員登録・アカウント作成の累計 自社データベース
合計ユーザー数 期間中に何らかのイベントを起こした人 GA4
アクティブユーザー数 期間中に実際に使った人 GA4・各ストアの分析画面
課金ユーザー数 期間中に支払いが発生した人 決済データ

本記事の整理では、アクティブ・課金と下に行くほど数字は小さくなるのが通常の形で、どこまで小さくなるかが評価の中身だと考えます(GA4 の合計ユーザー数には未登録の訪問者も含まれるため、登録者数より大きくなることがあります)。登録者が多くてもアクティブが少なければ、買い手が引き継げるのは「使われていないアカウントのリスト」に近くなります。

避けたい判断 こうすればOK
登録者数が多いので、利用者基盤が大きいと見る 登録者のうち、直近の期間に使った人の割合を確かめる
「ユーザー数」という言葉を、売り手の定義のまま受け取る 登録者・合計・アクティブ・課金のどれを指すか、数え方を書面で確認する
月間の数字だけを見る 日次・週次・月次を並べて、使われ方の頻度を見る

DAU・WAU・MAUは、ツールごとに数える単位と期間が違う

結論: 同じ「アクティブ」でも、GA4・App Store Connect・Play Console では定義が違います。数字を並べる前に、定義の表を作ります。

各ツールのヘルプにある定義は、次のとおりです。

ツール 指標 公式の定義
GA4 アクティブ ユーザー数 指定した期間にサイトまたはアプリを利用したユニーク ユーザーの数。エンゲージメント セッション(10秒以上継続・コンバージョン発生・2回以上のページビューまたはスクリーン ビュー)などで認識される
GA4 合計ユーザー数 指定した期間にイベントをトリガーしたユニーク ユーザーの数
GA4 新規ユーザー数 指定期間中に first_open または first_visit が記録された新しいユーザーの数
App Store Connect アクティブ デバイス 選択した期間に、1回以上セッションがあった端末の数。セッションは、アプリが2秒以上使われた回数
App Store Connect Active in Last 30 Days 直近30日に1回以上セッションがあったアクティブ デバイスの数
Play Console DAU ある日にアプリを開いたユーザーの数
Play Console MAU 直近28日間(ローリング)にアプリを開いたユーザーの数

読み取れる違いは3つです。

  • 単位: GA4 と Play Console はユーザー、App Store Connect は端末です。1人が複数の端末で使えば、端末の数はユーザーの数より多くなります。
  • 期間: Play Console の MAU は28日、App Store Connect の指標は30日、GA4 は指定した期間です。同じ「月間」と呼ばれても、日数が違います。
  • 何を使ったとみなすか: GA4 は10秒以上の滞在などを条件にし、App Store Connect は2秒以上、Play Console は「開いた」ことを条件にします。

売り手が出す「MAU」が、どのツールのどの定義かを最初に確認します。複数のツールの数字を足し合わせて出した MAU は、同じ人を重複して数えている可能性があります。

ボット・重複・休眠を除いた後の数字で見る

結論: 自動で除かれるのは既知のボットだけです。それ以外の水増しの要因は、売り手の集計の中で除かれているかを確かめます。

GA4 では、既知のボットとスパイダーのトラフィックは自動的に除外されます。Google の調査と、IAB が管理する International Spiders and Bots List を組み合わせて識別していて、この除外は無効にできず、どれだけ除外されたかも確認できません(Analytics ヘルプ「Known bot-traffic exclusion」)。

つまり、GA4 の数字を見るだけでは、次のものがどう扱われているか分かりません。

水増し・ずれの要因 確認すること
既知でないボット・自動アクセス 不自然な時間帯・地域・単一ページへの集中がないか、サーバー側のログと照合する
同じ人の複数アカウント・複数端末 数える単位がアカウントか、端末か、人か。GA4 は識別に User-ID を使う場合があり、ツールによって識別方法が違うと人数がずれる
休眠アカウント アクティブの期間を決め、その外を除いた数字か
テスト・社内・運営のアクセス 開発用のアカウントや運営者の利用を除いているか

GA4 のコホート分析は、ユーザーの端末のデータだけに基づき、User-ID は考慮されません(Analytics ヘルプ「[GA4] Cohort exploration」)。同じ人が端末を変えると別のユーザーとして数えられる可能性があります。

避けたい判断 こうすればOK
売り手が示す MAU を、除外条件を聞かずに使う ボット・重複・休眠・社内利用の扱いを、集計の条件として書面で受け取る
GA4 の数字だけで、実在のユーザー数と判断する 自社データベースのログイン記録、決済データなど、別の資料と照合する

継続率は、同時期に使い始めた人の集まり(コホート)ごとに見る

結論: 月ごとの全体の継続率は、新しく入った人の数に左右されます。使い始めた時期ごとのコホートで、同じ日数後に何割が残るかを比べます。

GA4 のコホートは、共通する特徴(たとえば獲得日)でまとめたユーザーの集まりです。包含条件(コホートに入る条件)と、復帰条件(その後に満たす条件)を決めて、日次・週次・月次で見ます。計算方法は3種類あります。

計算方法 数えるもの
標準 その期間に復帰条件を満たしたユーザー
ローリング その期間と、それ以前のすべての期間で復帰条件を満たしたユーザー
累積 探索期間のいずれかで復帰条件を満たしたユーザー

標準とローリングでは、同じデータでも数字が違うので、売り手がどの計算で出したかを確認します。

ストア側にも継続率の画面があります。

ツール 継続率の定義 注意点
App Store Connect 選択した日にインストールしたアクティブ デバイスのうち、一定の日数後にアプリを開いた割合 インストールしても一度も開かなかった端末は、分子にも分母にも入らない
Play Console 最初にアプリを開いた日から N 日後に、いずれかの端末でアプリを開いたユーザーの数 「開いた人」を数えるので、インストールだけで終わった人は含まない

たとえば、ある日に初めてインストールした100台のうち、7日後に1回以上セッションがあったのが20台なら、その日の7日後の継続率は20%です(本記事の仮の例)。

ここで注意が要るのは、一度も開かなかった人が分母に入らない点です。インストール後すぐに使われなくなったサービスでも、「開いた人の中での継続率」は高く見えることがあります。インストール数に対して何割が一度でも開いたか(アクティベーション)も、別に確認します。

また、Play Console の「Retained installers」は、アプリを開いたかどうかを問わず、端末に残っていれば数える指標です(「インストールは、その期間にアプリが開かれたことを意味しない」と説明されています)。売り手の資料がどちらの指標かを、画面名で確認します。

一時的な利用増は、流入元とコホートの残り方で見分ける

結論: 広告・キャンペーン・メディア掲載で増えた分は、止めた後に何割残るかで本物かが分かります。

仮の数字で、考え方を示します。実際のサービスの水準を示すものではありません。

仮の前提:通常月のMAUは3,000人。広告を出した月のMAUは8,000人で、増えた5,000人の大半は広告経由の新規。翌々月は広告を止めて、MAUが3,600人になった。

見方 数字 読み取り
広告月のMAU 8,000人 一時的な利用増を含む
通常月のMAU 3,000人 広告前の基盤
広告を止めた後のMAU 3,600人 通常月より600人多い。広告で獲得した人の一部が残った
残った分の割合 600人 ÷ 5,000人 = 12% 広告で増えた人のうち、残ったのは12%

この仮の数字では、評価に使うのは8,000人ではなく3,600人です。さらに、広告費を毎月出し続けないと基盤が維持できない構造かを、獲得単価と合わせて確かめます。

売り手に求める分析は、次のとおりです。

  • 流入元別(自然検索・広告・紹介・SNS)の新規ユーザー数の月次推移
  • 獲得月別のコホートの継続率
  • キャンペーンや広告の実施期間と費用の一覧
  • 季節性(毎年同じ時期に増減していないか)が分かる、過去2年以上の月次の数字

「何か月以上のデータを求めるか」に決まった基準は、本記事の整理では示しません。サービスの利用の周期(日常的か、年に数回か)によって必要な期間が変わるためです。

ユーザー数は、売上・課金の数字と必ず照合する

結論: ユーザー数と売上が説明でつながらないなら、どちらかの数え方がおかしいか、まだ見えていない前提があります。

照合の手順は、次の順です。

  1. アクティブユーザー数(期間を揃える)
  2. 課金ユーザー数(その期間に支払いがあった人)
  3. 課金ユーザー数 ÷ アクティブユーザー数(課金率)
  4. 課金ユーザー1人あたりの売上(単価)
  5. 売上の合計(会計上の数字と一致するか)

仮の数字での例です。

項目 仮の数字 計算
月のアクティブユーザー 4,000人
課金ユーザー 200人
課金率 5% 200 ÷ 4,000
課金単価 月1,000円
課金による月の売上 20万円 200 × 1,000円
売り手が示す月の売上 50万円
差額 30万円 50 − 20

この例では、差額の30万円が何なのかを売り手に確認します。広告収入なのか、別の課金なのか、ユーザー数に入っていない法人利用なのか。説明がつかない差は、価格の前提から外します。

避けたい判断 こうすればOK
ユーザー数と売上を、別々の資料として別々に評価する ユーザー数 → 課金率 → 単価 → 売上の順に、数字がつながるか照合する
売上の内訳を聞かずに、ユーザー数の多さで評価する 課金のあるユーザーと無いユーザーを分けて、それぞれの数字を見る
課金率は高いほどよいと見る 課金している人の継続率を確かめる。一度課金して止まった人が多くないか見る

買収前に売り手へ求めるデータと、数字の限界

結論: 画面のスクリーンショットだけでは、期間や絞り込み条件が分かりません。閲覧権限か画面共有で、条件を確かめながら見ます。

求める資料 確かめること
指標の定義書(アクティブの条件・期間・単位・除外条件) 数字の意味を揃える
GA4 の閲覧権限、App Store Connect・Play Console の画面共有 数字と条件を自分の目で確かめる
獲得月別・流入元別の新規ユーザーと継続率 一時的な利用増を見分ける
日次・週次・月次のアクティブ数(期間は利用の周期に合わせて決める) 季節性と推移を見る
課金データ(人数・単価・返金・未払い) 売上との照合
休眠・退会・削除のアカウントの扱い 登録者数との差を説明できるか

ストアの分析には、数字の限界もあります。App Store Connect の利用状況は、データの共有に同意した App Store ユーザーを基にした数字で、同意した人が少ないと、継続率のセルが空欄になることがあります。利用状況の指標は、選択期間内にアクティブ デバイスが5台以上ある場合に表示されます。同意しなかった人は数字に入らないため、ストアの画面の数字は実際の利用者より少ない可能性があります。

ここまでの数字は、あくまで買収の判断材料です。個人情報を含むデータを譲渡先で使えるか、利用規約やプライバシーポリシーとの関係は、Webサービス・アプリのM&A DATAに挙げた論点と合わせて、弁護士など専門家への確認が必要です。

まとめ

  • 登録者数は評価に使わず、実際に使った人数と継続率で見ます。登録・合計・アクティブ・課金の4段階に分けて、どこで数字が小さくなるかを確かめます。
  • MAU は、GA4・App Store Connect・Play Console で定義が違います。単位(ユーザー・端末)と期間を揃えてから比べます。
  • 一時的な利用増は、コホートの残り方で見分け、ユーザー数は売上・課金の数字とつなげて照合します。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 登録者数が多いサービスは、買収で高く評価されますか? A. 登録者数だけでは評価の根拠になりにくいです。登録した人が今も使っているとは限らないためです。本記事の整理では、登録者数は「入口まで来た人の累計」として扱い、評価には、直近の期間に実際に使った人数(アクティブユーザー)と、使い続けた割合(継続率)を使います。

Q2. GA4・App Store Connect・Play Console のアクティブ数は同じ意味ですか? A. 同じではありません。GA4 のアクティブユーザーは、エンゲージメントのあったセッションなどを条件に数えます。App Store Connect は2秒以上使われた端末の数、Play Console の MAU は直近28日間にアプリを開いたユーザーの数です。数える単位(ユーザーか端末か)と期間が違うため、並べて比べる前に定義を揃えます。

Q3. ボットや重複したアカウントは、ユーザー数から除かれていますか? A. GA4 では既知のボットとスパイダーのトラフィックは自動で除外されますが、除外された量は確認できません。未知のボット、同じ人の複数アカウント、休眠アカウントは自動では除かれません。売り手に、どの条件で除いた数字かを確認します。

Q4. 継続率は何日後の数字を見ればよいですか? A. サービスの使われ方によって変わるため、本記事では特定の日数を勧めません。App Store Connect の同業比較や Play Console の継続率には、複数の日数後の数字があります(具体的な日数は画面で確認します)。毎日使うサービスと月に数回使うサービスでは、意味のある日数が違うので、売り手が想定する利用の頻度を先に聞きます。

Q5. 広告で一時的にユーザーが増えた分は、どう見分けますか? A. 流入元別・週別の新規ユーザーと、そのコホート(同じ時期に使い始めた人の集まり)の継続を並べて見ます。広告を止めた後に残った人数が、実際の基盤です。GA4 のコホート分析(Cohort exploration)や、各ストアの継続率の画面で確かめられます。

Q6. ユーザー数と売上が合わないときは、どうすればよいですか? A. 先に定義を揃えます。売上がユーザー数に見合わないとき、課金している人の数、課金の単価、未払いや返金の有無、ユーザー数の数え方のどれに差があるかを、売り手の資料で一つずつ確かめます。理由が説明できないときは、価格の前提に使わない判断もあります。

Q7. ストアの分析画面の数字は、全ユーザーの数ですか? A. 全ユーザーとは限りません。App Store Connect の利用状況のデータは、データの共有に同意したユーザーを基にしており、同意の数が少ないと継続率が空欄になることがあります。Play Console も端末や集計の定義があるため、画面の注記を売り手と一緒に確認します。

出典

  • Google アナリティクス ヘルプ「[GA4] ユーザーに関する指標を理解する」 https://support.google.com/analytics/answer/12253918?hl=ja
  • Google アナリティクス ヘルプ「[GA4] ユーザー数の誤差」 https://support.google.com/analytics/answer/9408920?hl=ja
  • Analytics Help「[GA4] Cohort exploration」 https://support.google.com/analytics/answer/9670133?hl=en
  • Analytics Help「Known bot-traffic exclusion」 https://support.google.com/analytics/answer/9888366?hl=en
  • Apple Developer「Metric definitions」(App Store Connect Analytics ヘルプ) https://developer.apple.com/help/app-store-connect-analytics/reference/metrics-definitions
  • Apple Developer「App retention」(App Store Connect Analytics ヘルプ) https://developer.apple.com/help/app-store-connect-analytics/engagement/app-retention/
  • Apple Developer「Peer group benchmarks」(App Store Connect Analytics ヘルプ) https://developer.apple.com/help/app-store-connect-analytics/benchmarks/peer-group-benchmarks/
  • Play Console Help「View app statistics」 https://support.google.com/googleplay/android-developer/answer/139628?hl=en
  • Play Console Help「Measure your app's acquisition and retention」 https://support.google.com/googleplay/android-developer/answer/6263332?hl=en

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