SES利益率・年収

SES会社の利益率をどう見る?待機率・人月単価・外注比率で収益力を比較

この記事の目次
  1. この記事の結論
  2. SESの売上と粗利益は、稼働している技術者の人数×月額単価から生まれる
  3. 人月単価・稼働人数・稼働率は、掛け算でつながる
  4. 待機人員が増えると、営業利益は売上の減り方より大きく動く
  5. 正社員とBPでは利益の出方が違い、稼働率が約83%を下回ると逆転する
  6. 収益力は、月次の8つの指標で比べられる
  7. M&Aでは、この収益が続くかを、12か月以上の推移と契約の終了予定で判断する
  8. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)
  10. 出典

SES会社の決算書を見て「利益が薄い」と感じたとき、原因が稼働不足なのか、単価の低さなのか、商流の位置なのか、外注の使い方なのかで、直し方も買い手の見方も変わります。この記事は、利益を稼働率・人月単価・外注構成に分けて読む方法を、仮の数字のシミュレーションで示します。実在の会社のデータや、SES会社の平均的な利益率を示すものではありません。

この記事の結論

  • SESの営業利益は、「在籍人数×稼働率×人月単価」から、技術者の原価と間接費を引いた結果です。 仮の数字では、稼働率が90%から80%に下がるだけで、営業利益は月200万円から▲10万円になります。
  • 待機は、売上が消えて人件費だけが残ります。 正社員の稼働率が約83%を下回ると、外注(BP)で受けるより粗利が少なくなる、という試算になります(仮の数字)。
  • 収益力は、月次の指標で比べられます。 M&Aでは、直近1か月ではなく12か月以上の推移と、契約の終了予定から、この収益が続くかを判断します。

この記事の対象:SES(技術者を顧客の現場で稼働させる事業)を営む会社のオーナーで、利益が少ない原因を知りたい方、売却を考え始めた方、買収を検討している方。

SES会社のM&A全体の見方は、SES会社のM&A DATAにまとめています。契約の型(準委任・請負・派遣)や派遣の許可はSES会社の買収で確かめる契約・許可・稼働に任せ、この記事は利益の読み方に絞ります。

SESの売上と粗利益は、稼働している技術者の人数×月額単価から生まれる

結論: 売上は稼働している人数に比例し、費用の大部分は在籍している人数に比例します。この差が、SESの利益が稼働率に敏感な理由です。

本記事の整理では、SESの損益を次のように分けます。会計処理は会社によって違い、技術者の人件費を原価に入れない会社もあるため、他社と比べる前に定義をそろえてください。

項目 入るもの 何に連動するか
売上 稼働している技術者の月額単価の合計 稼働している人数と単価
技術者の原価 正社員の給与と会社負担の社会保険料など。BP(外注)の外注費 正社員は在籍している人数(稼働しなくても発生)。BPは配属された人数(契約による)
粗利 売上 − 技術者の原価 稼働率と単価
間接費 営業・管理部門の人件費、採用費、家賃など ほぼ固定
営業利益 粗利 − 間接費

本記事ではBP(ビジネスパートナー)を、自社の社員ではない他社の技術者や個人事業主に、再委託して現場に出す形を指す呼び名として使います。呼び方は会社ごとに違うので、資料を受け取るときは定義を確かめてください。

参考:派遣の統計から見える「料金と賃金の差」

SESの粗利率を直接示す官公庁の統計は、本記事の作成時に確認できませんでした。参考として、厚生労働省の労働者派遣事業報告書(令和6年度の速報)には、派遣料金と派遣労働者の賃金の平均が載っています。どちらも派遣労働者1人1日(8時間)あたりの額を事業所ごとに単純平均したもので、全業務平均は各業務の単純平均です。派遣料金は消費税を含みます。

区分(令和6年度) 派遣料金の平均 派遣労働者の賃金の平均 料金に対する差の割合(本記事の計算)
全業務平均 26,257円 16,735円 約36%
情報処理・通信技術者 34,382円 21,032円 約39%(消費税を除くと約33%)

この表の読み方には注意が必要です。まず、派遣はSES(準委任など)とは契約の型が違い、この差は粗利率でも営業利益率でもありません。厚生労働省は、マージン(料金から賃金を除いた部分)には派遣会社の利益のほか、派遣会社が負担する社会保険料や教育訓練費などが含まれると説明しています。賃金だけで原価を見ると粗利が大きく見えるため、本記事の試算では、技術者の原価に会社負担の社会保険料なども含めます。

人月単価・稼働人数・稼働率は、掛け算でつながる

結論: 営業利益は「在籍人数×稼働率×人月単価−固定的な費用」です。原因を切り分けるには、この3つの数字を別々に見ます。この式は全体を見るための概算のモデルで、時間精算の精算幅を外れた月の増減、単価の改定時期、正社員とBPの違いなど、契約の条件で実際の売上と原価はずれます。

次の仮の前提で、A社のシミュレーションをします。

仮の前提(A社) 数字
在籍している正社員の技術者 30名
技術者1人あたりの月の原価(給与・会社負担の社会保険料など) 48万円
間接費(月) 250万円
基準の稼働率 90%(27名が稼働、3名が待機)
基準の人月単価(稼働者の平均) 70万円

技術者の原価の合計は月1,440万円、固定的な費用は間接費を足して月1,690万円です。営業利益は 30名×稼働率×単価−1,690万円 で計算できます。

次の表は、稼働率と人月単価を変えたときのA社の月の営業利益です(万円、仮の数字)。

稼働率(稼働人数) 単価65万円 単価70万円 単価75万円
100%(30名) 260 410 560
90%(27名) 65 200(基準) 335
80%(24名) ▲130 ▲10 110
70%(21名) ▲325 ▲220 ▲115

営業利益がゼロになる稼働率(損益分岐の稼働率)は、1,690÷(30×単価)で求められます。単価65万円なら約86.7%、70万円なら約80.5%、75万円なら約75.1%です。単価が5万円違うと、損益分岐の稼働率が5〜6ポイント動きます。 稼働率が同じでも、単価が低い会社は、少しの待機で赤字になります。

待機人員が増えると、営業利益は売上の減り方より大きく動く

結論: 待機が1人増えると、売上は単価分(仮の数字では70万円)減り、原価は減りません。減った売上がそのまま営業利益の減少になります。

A社の基準から、待機と単価を変えた4つのケースを並べます(万円、仮の数字)。

ケース 売上 粗利 営業利益 売上に対する営業利益
基準(稼働27名・単価70万円) 1,890 450 200 約10.6%
待機が3名増える(稼働24名・単価70万円) 1,680 240 ▲10 約▲0.6%
単価が5万円低い(稼働27名・単価65万円) 1,755 315 65 約3.7%
待機3名増+単価5万円低い 1,560 120 ▲130 約▲8.3%

売上は基準から11%(210万円)減るだけですが、営業利益は200万円から▲10万円へと、ほぼ全額が消えます。売上高の変化の割合より、営業利益の変化の割合が大きく出るのは、原価と間接費が稼働に連動しないためです。

待機の中身を分けて見る

待機の人数が同じでも、利益への意味は違います。本記事の整理では、待機を次の4つに分けて、技術者別の一覧に理由を書いてもらうことを勧めます。

待機の種類 見方
契約終了直後の配属待ち 次の配属までの月数。月数が伸びていないか
育成中の新人・未経験者 将来の稼働のための投資。人数と育成の期間
スキルや希望が案件と合わない 配属が決まりにくい。単価が下がる要因にもなる
休職・長期の休みなど 稼働の対象から外して比べる

待機中の給与について

厚生労働省は、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合、使用者は休業期間中、平均賃金の100分の60以上の手当(休業手当)を支払わなければならないと説明しています。同省のQ&Aは、注文が少ないことも使用者の責に帰すべき事由に当たるとしています。待機が「休業」に当たるのか、社内で業務や研修をさせている通常の勤務なのかで、必要な賃金は変わります。個別の判断は、社会保険労務士など専門家に確認してください。本記事の試算では、待機中も月48万円の原価がかかる前提です。

正社員とBPでは利益の出方が違い、稼働率が約83%を下回ると逆転する

結論: 正社員は稼働すれば粗利が大きい代わりに、待機の費用を自社が負います。BPは粗利が薄い代わりに、待機の費用を負わない前提で、稼働率によって有利不利が入れ替わります。

1人月あたりの仮の数字です(万円)。BPは、配属がない月は外注費がかからない契約と仮定します。実際の契約によって変わります。

項目 正社員 BP(外注)
顧客への月額単価 70 70
月の原価 48(稼働しなくても発生) 60(配属された月だけ)
稼働時の粗利(粗利率) 22(約31.4%) 10(約14.3%)
待機時の粗利 ▲48 0
稼働率90%の期待粗利 15 10
稼働率80%の期待粗利 8 10
稼働率70%の期待粗利 1 10

正社員の期待粗利は、70×稼働率−48です。BPの10万円と等しくなる稼働率は、58÷70で約82.9%です。この仮の前提では、正社員の稼働率が約83%を下回ると、BPで受けたほうが粗利が多くなります。 正社員だけで粗利がゼロになる稼働率は、48÷70で約68.6%です。

売上が同じ2社で、利益がどう違うかも見ます(万円、仮の数字)。間接費はどちらも250万円とします。

項目 A社(正社員30名) B社(正社員20名+BP9名)
稼働人数 27名 27名(正社員18名+BP9名)
売上 1,890 1,890
技術者の原価 1,440 1,500(960+540)
粗利(粗利率) 450(約23.8%) 390(約20.6%)
営業利益(営業利益率) 200(約10.6%) 140(約7.4%)
稼働3名分の契約が終わったときの営業利益 ▲10(正社員3名の場合) 110(BP3名の場合)/▲70(正社員3名の場合)

B社は平時の利益率がA社より低い一方、契約が終わったのがBPなら利益の減り方が小さくなります。ただし、利益率が低いほうが悪い、高いほうが良いとは言えません。BPが顧客に受け入れられるか、BPの契約が実態に合っているか(契約の型は契約の記事を参照)、正社員の定着が育つか、という別の論点があります。外注比率は、買い手が「自社の技術者が資産」と見るか「利益の振れを抑える仕組み」と見るかでも評価が分かれます(買い手の見方はSES会社を買収するのは誰かを参照)。

収益力は、月次の8つの指標で比べられる

結論: 利益率だけで比べず、稼働・単価・外注・顧客の指標を月次で並べます。同じ利益率でも、原因が違えば打ち手も買い手の評価も違います。

指標 計算 何が分かるか
稼働率 月末の稼働している技術者数÷在籍している技術者数 待機の大きさ。定義は売り手と買い手でそろえる
待機人数・待機月数 技術者別に、現場に配属されていない月数 待機が一時的か長引いているか
平均人月単価 稼働者の月額単価の合計÷稼働者数 単価の水準。正社員とBPで分けて見る
技術者1人あたり粗利 粗利÷稼働している技術者数(在籍数でも出す) 稼働者あたりと在籍者あたりの差が待機の影響
粗利率 粗利÷売上 原価(給与・外注費)が単価に対して重いか
外注(BP)比率 BPの稼働人数÷稼働人数。売上ベースでも出す 利益の振れ方と、粗利率の水準
上位顧客・商流の位置別の売上 上位3社の売上構成比。元請・一次・二次以下で区分 単価と契約の続きやすさの背景
営業利益率 営業利益÷売上 間接費まで含めた収益力。社長報酬など調整後の数字も出す

指標の数字から、利益が少ない原因を切り分ける見方は次のとおりです。因果は断定できないため、「疑う」ところから始めて、契約や勤怠の資料で確かめます。

見えている数字 疑う原因 確かめる資料
稼働率が低く、待機月数が長い 稼働不足 技術者別の配属表、契約の終了予定、待機の理由
稼働率は高いが、平均単価が低い 低単価・商流 顧客別・契約別の単価、商流の位置(元請・一次・二次以下)
粗利率が低く、BP比率が高い 外注構成 BPごとの単価と外注費、契約の型
粗利は出ているが営業利益が薄い 間接費・経営者の役割 間接費の内訳、社長の業務と報酬
粗利率が高いが、特定の顧客に集中 顧客集中 顧客別の売上と契約更新の履歴

商流が単価に与える影響は、本記事では数字を示しません。商流の位置別の単価を示す官公庁の統計は、本記事の作成時に確認できませんでした。自社の契約書の単価で比べてください。

M&Aでは、この収益が続くかを、12か月以上の推移と契約の終了予定で判断する

結論: 買い手が見るのは、過去の利益より、買収後に同じ稼働と単価が残るかです。直近1か月の稼働率ではなく、12か月以上の月次の推移と、今後の契約の終了予定を求められる、と考えて準備します。

売り手が示す資料 買い手が確かめること 再現性が低いサイン
技術者別の月次表(直近12か月以上) 稼働率・待機月数の推移 直近だけ稼働率が高い、待機の月数が伸びている
顧客・契約別の単価と更新の履歴 単価が上がった理由と、契約の終了予定 単価が一時的な案件で上がっている、大型の契約が近く終わる
正社員とBPの区分別の粗利 BP比率の変化と、BPの契約条件 直近でBPを急に増やして稼働率を保っている
上位顧客の売上構成比 顧客1社の契約が終わったときの影響 1社で売上の大半を占める
営業利益の調整表 社長報酬や一過性の費用を調整した後の利益 調整額が大きく、根拠の資料がない

営業利益の調整(社長報酬や一過性の費用)と、価格の算定への使い方はSES会社のM&A・売却相場で、一般的なシステム開発会社の算定の考え方はシステム開発会社の売却相場で扱っています。技術者の定着と離職はSES会社の売却でエンジニアは引き継げるか、買収前の確認項目はSES会社の買収DDで整理しています。

自社の場合を確認する 売上・利益・稼働人員から自社の事業価値を見たいとき → 事業価値を確認する

まとめ

  • SESの営業利益は、在籍人数×稼働率×人月単価から、技術者の原価と間接費を引いたものです。仮の数字では、稼働率10ポイントの低下で営業利益がほぼ消えました。
  • 待機は売上だけが消え、人件費が残ります。正社員とBPは、稼働率が約83%(仮の前提)を境に粗利の大小が入れ替わりますが、利益率の高低だけで良し悪しは決まりません。
  • 利益が少ない原因は、稼働・単価・商流・外注構成・間接費に分けて、月次の指標と契約の資料で確かめます。M&Aでは12か月以上の推移と契約の終了予定が、収益の再現性を判断する材料になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. SES会社の利益率の目安はどのくらいですか? A. SES会社に限った利益率を示す官公庁の統計は、本記事の作成時に確認できませんでした。参考に、中小企業庁の令和7年中小企業実態基本調査(令和6年度決算)では、中小企業(法人企業)の全産業加重平均値で売上高経常利益率は4.44%です。業種が違うため、SES会社の目安として使えません。本記事の10.6%などは仮の数字で、実際の水準を示すものではありません。

Q2. 稼働率が何%を下回ると赤字になりますか? A. 会社ごとに違います。損益分岐の稼働率は、(技術者の原価の合計+間接費)÷(在籍人数×平均単価)で計算できます。本記事の仮の数字(30名、単価70万円)では約80.5%です。自社の数字で計算し、単価が違えば分岐点も動くことを確かめてください。

Q3. 待機中の社員にも給与を払う必要がありますか? A. 厚生労働省は、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払う必要があると説明しています。待機が休業に当たるか、通常の勤務か(研修などを含む)で変わります。個別の判断は社会保険労務士などの専門家に確認してください。

Q4. 派遣会社のマージン率は、SES会社の粗利率と同じ意味ですか? A. 同じではありません。マージン率は派遣料金から派遣労働者の賃金を除いた割合で、厚生労働省は、利益のほか社会保険料や教育訓練費などが含まれると説明しています。派遣とSESは契約の型も違い、SESの粗利率は自社の原価(給与・会社負担分・外注費)で計算する必要があります。

Q5. 外注(BP)を増やせば、利益は安定しますか? A. 本記事の仮の数字では、BPは粗利が薄い代わりに、配属がない月は費用がかからないため、契約が終わったときの利益の減り方が小さくなりました。ただし、それはBPの契約条件と、顧客が受け入れるかに依存します。契約の型と実態が合っているかは、別の記事の確認項目です。

Q6. 売却前に、利益の説明のために何を整えればよいですか? A. 直近12か月以上の、技術者別の月次表(雇用区分・単価・原価・待機月数)、顧客・契約別の単価と更新の履歴、正社員とBPの区分別の粗利、営業利益の調整表です。個人名は記号に置き換え、買い手に渡す範囲は専門家に確認してください。

出典

  • 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(令和8年3月31日)https://www.mhlw.go.jp/content/001684019.pdf
  • 厚生労働省「マージン率等の情報提供について」https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000634367.pdf
  • 厚生労働省「派遣会社のマージン率等について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00013.html
  • 厚生労働省「会社の都合で仕事を休まされている。休んでいる分の補償はないのか。」https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyunhou_26.html
  • 厚生労働省「会社都合で休みをとらされましたが、給料なしは労基法上ありですか?|Q&A|確かめよう労働条件」https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/chingin/q6.html
  • 中小企業庁「令和7年中小企業実態基本調査速報(要旨)」(令和8年2月26日)https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?fileKind=2&statInfId=000040417882

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