この記事の目次
SES会社を売るとき、「誰が買うのか」が分からないと、自社の何を整理しておけばよいかも決まりません。この記事は、買い手自身が出した適時開示とプレスリリースを読み、買い手の類型ごとに「何を目的に買い、売り手のどこに価値を置き、統合で何が問題になりうるか」を並べます。
この記事の結論
- 取得した公表資料で、買い手が目的の中心に書いていたのは、エンジニア(人数・採用育成力)、自社の顧客基盤にエンジニア機能を足すこと、開発の領域を広げることでした。 25名で3期連続の営業赤字の会社を買う例もあります。ただし7件のうち対象がSES専業なのは2件で、SES専業のM&A市場全体を表すデータではありません。
- 買い手の類型で、価値を置く点も統合の論点も違います。 本記事の整理では、SES・開発の同業、SIer・開発会社、受託・システム開発系グループ、他業態の会社の4つに分け、下の表で比べられます。
- 売り手が先に決めるのは、打診を避けたい相手、技術者の扱い、派遣の許可を持つ場合の扱いの3点です。 買い手が決まってから決めるのでは遅くなります。
この記事の対象:SES事業を営む会社のオーナーで、売却を考え始め、どんな会社が買い手になるのかを知りたい方。
SES会社のM&A全体の見方はSES会社のM&A DATAにまとめています。この記事は「買い手」だけを扱います。価格の考え方はSES会社のM&A・売却相場、収益の見方はSES会社の利益率、技術者の定着はSES会社の売却でエンジニアは引き継げるか、買収前の確認はSES会社の買収DDに分けています。
買い手の目的は、取得した7件では「人材」「顧客基盤」「領域の拡大」のどれかに書かれている
結論: 買い手が自社で書いた目的は、エンジニアの確保、顧客基盤との組み合わせ、事業領域の拡大に集まります。売上や利益の規模を目的の中心に置いた開示は、取得した範囲にありませんでした。
次の7件は、買い手またはそのグループが自ら出した適時開示またはプレスリリースを、本記事の執筆時(2026年10月23日)に読めたものです。対象の事業にSESが含まれると買い手が書いている案件だけを選びました。
| 公表日 | 買い手 → 対象(取得の形) | 買い手が書いた目的(要旨) |
|---|---|---|
| 2026年1月15日 | ハイブリッドテクノロジーズ → MCP35(中核子会社はSES事業のグルーヴ・システム。全株式) | 安定的なエンジニア供給力と採用・育成体制の構築。双方の大手SIerを中心としたクライアント基盤を使ったエンジニアの相互供給、採用・育成の共有、配置による稼働率の最適化、買い手のPMIノウハウの導入[4] |
| 2026年3月2日 | ココナラ → フレームキャリア(正社員SES。完全子会社化) | 正社員エンジニアの在籍数を増やし、フリーランスと正社員を組み合わせた人材提供体制を固める。相手の採用力を挙げる[5] |
| 2026年4月6日 | Pacific Meta → Kenpal(SES・受託開発、20名。全株式) | クライアントの案件規模が拡大するなかでの開発リソースの拡充とデリバリー体制。ISMS認証と全省庁統一資格も挙げる。経営の独立性を維持する方針[6] |
| 2026年7月29日 | システムソフト → 日本クラウド(SES事業。株式67.4%) | SESを中心とした開発事業の規模・領域の拡大と、AIなど新しい技術を用いた事業展開[1] |
| 2026年8月1日 | テクニケーションシード ← ミギナナメウエのSES事業(事業譲受) | 両社の人材、ノウハウ、案件情報、開発体制を一つの事業基盤に集約。既存クライアントへのサービス提供内容や契約への影響はないと説明[7] |
| 2026年9月2日(取得は9月1日) | J.C.O.S → クロニクル(SES・システム開発。全株式) | 買い手の法人顧客基盤・ICT領域の営業力と、相手のシステム開発・エンジニアリング機能の組み合わせ[8] |
| 2026年9月10日 | +81(SOLIZE Holdingsの子会社)→ エンジョイ(SESを含む。全株式) | ソフトウェア事業の開発体制と顧客基盤の強化、金融領域への拡大。同じ発表の中で、対象会社の代表は理念や組織文化を重視して提携先を検討したとコメントしている[9] |
対象の事業は一様ではありません。開示の事業内容欄と本文の説明から、本記事の整理で次の3つに分けました。売上のうちSESが占める割合は、どの開示にも書かれていません。
| 区分(本記事の整理) | 対象(開示の事業内容の記載) |
|---|---|
| SES専業 | フレームキャリア(事業内容は「正社員エンジニア派遣」。本文で「正社員SES事業を展開する」会社と説明)[5]/ミギナナメウエのSES事業(会社ではなく事業の譲受。譲渡会社の事業は採用支援・人材紹介など)[7] |
| SESを含む複合事業 | グルーヴ・システム(本文で「SES事業を展開する」会社。事業内容欄は業務系Webアプリケーションの開発、基盤系・ネットワーク系の構築運用、ITサポート業務など)[4]/Kenpal(SES事業、受託開発事業)[6]/クロニクル(SES事業、システム開発・受託開発事業等)[8]/日本クラウド(買い手は「SES事業を営む事業会社」と開示。事業内容欄はソフトウェアの開発、システム・エンジニアリング業務)[1] |
| 受託開発・自社サービスが主 | エンジョイ(顧客クラウドシステム開発、クラウドサービス、受託開発、常駐型プロジェクト支援サービス(SES))[9] |
このため、7件はSES専業の会社のM&A市場全体を表すデータではありません。SES専業の対象は2件で、うち1件は事業の譲受です。以下の章の読み方も、この区分を前提にしています。
公表事例は、上場会社など開示や広報をする買い手に偏ります。成約全体の傾向を示すものではありません。また、ファンドや個人が買い手になった公表事例は、取得した範囲にありませんでした。ファンドが出てきたのは売り手側で、MCP35の株主として投資事業有限責任組合が開示されています[4]。
SIer・開発会社の買収目的は、すでに協業している相手のエンジニアと、長期取引の顧客を取り込むこと
結論: SIer・開発会社が買い手の開示は、協業実績のあるエンジニアの確保と、相手の長期取引先を自社の顧客基盤とつなげることを挙げています。ただし、取得した開示の対象はSESと明記された会社ではなく、「SESを売る場合に当てはまる」と言い切るには材料が足りません。
| 買い手 → 対象 | 目的に書かれていた点 | 売り手のどこが見られたか(開示から読める範囲) |
|---|---|---|
| ティアンドエスグループ → エクステージ(2025年1月22日。全株式) | 半導体・重電・社会インフラ向けの需要が強く、「優秀なエンジニアリソースの確保拡充が不可欠」。すでに半導体関連のソフトウェア開発で協業していた[2] | エンジニア約30名の組織。買い手の完全子会社と営業上の取引があった[2] |
| Sun Asterisk → MIXENSE(2025年12月24日。全株式) | 業務系・制御系の受託開発の相手が「大手通信キャリア企業を始めとした顧客と長期間に渡り取引を継続」していることを挙げ、顧客基盤の連携と経営リソースの相互活用を期待[3] | 長期取引の顧客と、受託開発の実績[3] |
この2件では、エンジニアの人数(ティアンドエスグループは「質と量」の向上を挙げる[2])に加えて、すでに一緒に働いたことのあるチームや、長く続いている取引先が、売り手の価値として説明されています。SESの会社に当てはめるなら、本記事の整理では、売り手が自社の技術者のうち、買い手の現場で実際に協業した人・案件を書き出せるかが、最初の材料になります。
SESの契約形態(準委任・請負・派遣)の違いは、買い手が価値を判断するときの前提になります。制度の説明はシステム開発会社のSES契約と派遣の許可に任せます。システム開発会社全体の事例はシステム開発会社のM&A事例にあります。
SES同業の買収は、人材供給力と稼働の最適化で説明されている。商流の改善を目的に書いた開示は取得した範囲に無い
結論: 同業が買い手の開示は、エンジニアの供給力、採用・育成の仕組み、稼働率の最適化、クライアント基盤の相互利用を挙げます。「商流を上げる」ことを目的に書いた開示は、取得した範囲にありませんでした。
| 買い手 → 対象 | 同業の買い手が書いたこと | 読み方(本記事の整理) |
|---|---|---|
| システムソフト → 日本クラウド(2026年7月29日) | 「SESを中心とした開発事業の規模や領域の拡大」。2025年秋にSESやコンサルティングの会社を子会社化したことも書く。対象の人員は25名(2026年4月末)、営業利益は2024年4月期から3期連続で赤字(▲17、▲27、▲26百万円)[1] | 規模と領域の拡大が目的。利益は主因として書かれていない |
| ハイブリッドテクノロジーズ → MCP35/グルーヴ・システム(2026年1月15日) | エンジニアの相互供給、採用・育成の共有、稼働率の最適化、買い手のPMIノウハウの導入[4] | 買い手の現場とエンジニアを組み合わせる前提で、配置の方針が統合の中心になる |
| テクニケーションシード ← ミギナナメウエのSES事業(2026年8月1日、事業譲受) | 人材、ノウハウ、案件情報、開発体制を一つの事業基盤に集約。営業体制の融合、エンジニアの待遇向上を挙げる[7] | 会社ごとではなく事業を譲り受ける形。案件情報と営業体制が譲渡の対象に含まれる |
商流の位置(エンド直、元請、二次請け以下)が価格に関わることは、システム開発会社の売却相場で扱っています。上の開示は、商流という語ではなく「クライアント基盤」や「案件情報」で目的を書いています。同業が買い手になる場合に、買い手の側で商流がどう変わるかは、個別に買い手へ確認する必要があります。
同業は、売り手の顧客や現場とすでに重なっている可能性があります。重なる顧客や現場は、統合後に同じ顧客へ二社分の営業窓口が残るのか、片方に寄せるのかが論点です。本記事の整理では、売り手は顧客別の売上と技術者の配置先を一覧にしておくと、重なりの有無を早く確かめられます。
受託開発・システム開発系のグループが求めるのは、特定領域の知見と、技術者を育てる仕組み
結論: 受託開発やシステム開発を軸にするグループは、金融向けなど特定領域の開発知見、顧客基盤、人材の育成ノウハウを挙げます。技術者の人数だけを理由にした開示は、取得した範囲にありませんでした。
| 買い手 → 対象 | 目的に書かれていた点 |
|---|---|
| +81(SOLIZE Holdings子会社)→ エンジョイ(2026年9月10日) | 金融機関や公共・行政分野のシステム開発の強みと、パートナー企業のネットワークを使った開発体制。買い手側のSOLIZEグループの顧客基盤、人材育成のノウハウ、製造業向けソフトウェア開発の知見と組み合わせる[9] |
| Pacific Meta → Kenpal(2026年4月6日) | 大手企業・官公庁向けのシステム開発とSES事業の実績、バイリンガルのエンジニアを含む20名のチーム。ISMSと全省庁統一資格も戦力として挙げる[6] |
| No.1 → コード(2025年2月28日。全株式)。買い手は2024年にSES・システム開発の会社を子会社化して参入した | 官公庁・自治体との取引で得た業務知識と、レガシーシステムの移行に対応できる点。買い手のSES子会社と組み合わせ、開発の内製化、人員の相互補完、取引先への人員派遣を挙げる[10] |
SESを売る側から見ると、技術者の人数に加えて、特定の業界や技術に詳しい技術者がどのくらいいるか、認証や資格を持っているか(ISMS、全省庁統一資格など)が、この類型では価値の説明に使われています[6]。
買い手が受託開発を主体にすると、買収後の技術者の一部を買い手の自社案件に回す計画が出ることがあります。SESとして顧客先に常駐している技術者を引き上げると、常駐先との契約の扱いが変わります。これは本記事の整理で、計画の中身は個別に確認する論点です。
買い手ごとに評価されやすい事業特性は、類型×目的×統合リスクの表で比べられる
結論: 下の表は、取得した開示から読めることと、本記事の整理による統合リスクを分けて並べたものです。自社がどの行に当てはまるかを見る目安として使い、買い手の実際の方針は個別に確かめてください。
| 買い手の類型(本記事の整理) | 開示で見られた買収目的 | 売り手で評価されやすい事業特性 | 統合で起きやすい論点(本記事の整理) |
|---|---|---|---|
| SES・開発の同業 | エンジニア供給力、採用・育成の共有、稼働率の最適化、規模・領域の拡大[1][4][7] | 稼働できる技術者の人数と領域、採用・育成の力、営業体制 | 顧客や現場の重なり。配置換えの方針が技術者の希望と合うか。技術者を買い手のグループに回す場合の派遣の割合の上限(下の章) |
| SIer・開発会社 | 協業実績のあるエンジニアの確保、長期取引顧客との連携[2][3] | 一緒に働いた実績のある技術者、長期取引の顧客 | 売り手が他社の元請にも技術者を出している場合、その顧客との関係が続くか。取得した開示の対象はSES専業ではない |
| 受託・システム開発系グループ | 特定領域の開発知見、顧客基盤、人材育成、官公庁取引の知識[6][9][10] | 金融・公共など特定領域の経験者、認証・資格、人材育成の仕組み | 買い手の自社案件への配置転換と、常駐先との契約の関係。売り手の独立性をどこまで残すか(Pacific Metaは経営の独立性を維持する方針を書く[6]) |
| IT人材サービス・ICT・コンサルなど他業態 | 買い手の顧客基盤にエンジニア機能を足す、正社員エンジニアの在籍数を増やす、開発リソースを補う[5][6][8] | 正社員のエンジニア、採用力、認証や許認可(Kenpalは労働者派遣事業許可を保有と記載[6]) | SESの契約・商流への理解の差(J.C.O.Sのように、人材サービスの一つとしてSESを既に挙げる買い手もある[8])。派遣の許可を持つ場合、買収後の財務や役員の状況が許可の維持に影響しないか(SES契約と派遣の許可) |
| ファンド・個人 | 取得した範囲に買い手としての公表事例なし | ― | ― |
「評価されやすい事業特性」の列は、買い手が自社の発表で挙げた強みから読んだものです。価格に与える影響の大きさは、開示からは分かりません。
売り手が買い手候補を選ぶときは、避けたい打診先、技術者の扱い、許認可の扱いを先に決める
結論: 中小企業庁のガイドラインには、売り手が事前に決められる点がいくつか書かれています。SESの会社では、これに技術者の扱いと派遣の許可の確認が加わります。
| 確認事項 | 根拠・考え方 | 売り手が事前にすること |
|---|---|---|
| 打診を避けたい相手 | 中小M&Aガイドライン(第3版)は、売り手はマッチングを希望する候補先、または打診を避けたい先があれば、事前に仲介者・FAに伝えることが望ましいとしている[11] | 顧客の競合、技術者の移籍先になりうる会社など、知られたくない相手を書き出す。売り手が自ら取引先や同一地域内の同業者等に打診するときも、情報の伝わり方に注意が必要とされる(同ガイドライン)[11] |
| 従業員と取引先への伝え方 | 同ガイドラインは、最終契約の前に伝えるのは親族や幹部役員等のごく一部にとどめ、それ以外の関係者には原則としてクロージング後(早くとも最終契約締結後)に知らせるべきとしている。伝わった後に頓挫すると、取引先の喪失や従業員の退職につながるおそれがある[11] | 技術者や顧客への説明の順番を、買い手と協議して決める。伝え方の計画はSES会社の売却でエンジニアは引き継げるかで扱う |
| 買い手の人の扱い | 同ガイドラインは、譲り受け側の経営者が譲り渡し側の幹部役員等に高圧的な態度を取らず、譲り受け側の役員・従業員と同等に接する姿勢を心掛けているかを、売り手経営者が確認しておくことが考えられるとしている。トップ面談は、経営理念・企業文化や経営者の人間性を直接確認する場とされる[11] | トップ面談で、技術者の配置、待遇、評価制度の方針を聞く。+81の例のように、相手方が理念や組織文化を重視して提携先を検討したと発表する例もある[9] |
| 派遣の許可と、買い手グループへの派遣 | 派遣元事業主は、自社の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある者その他の厚生労働省令で定める者(関係派遣先)への派遣割合を、総労働時間で100分の80以下にしなければならない(派遣法23条の2)[12]。買収で買い手が売り手の経営を実質的に支配する関係になれば、買い手やそのグループが関係派遣先に当たる可能性がある(本記事の読み方。範囲は省令なので個別に確認) | 派遣の許可を持つ場合、買い手が技術者を自社グループの現場に回す計画があるかを聞く。派遣として行う部分だけが対象で、準委任など別の形の契約は別の確認になる。契約類型の確認はSES契約と派遣の許可へ |
個別の契約や法令の判断は、弁護士・社会保険労務士・税理士などの専門家に確認してください。買収前に買い手が何を見るかはSES会社の買収DDにあります。
自社の場合を確認する 自社の技術者と顧客が、どの買い手の類型に価値を持つかを見たいとき → 事業価値を確認する
まとめ
- 取得した公表資料では、SESを営む会社が買われる目的は、エンジニアの確保、顧客基盤との組み合わせ、事業領域の拡大のいずれかとして書かれています。7件のうち対象がSES専業なのは2件で、SES専業のM&A市場全体を表すものではありません。25名で3期連続の営業赤字の会社でも買い手がついた例があります。
- 買い手の類型で、評価される点と統合の論点が違います。同業は配置と顧客の重なり、SIer・開発会社は協業実績と長期取引、受託・システム開発系は特定領域の知見、他業態の会社は正社員の技術者と許認可が中心です。
- 売り手は、打診を避けたい相手、従業員と取引先への伝え方、買い手の人の扱い、派遣の許可を持つ場合の扱いを、買い手が決まる前に決めておけます。
よくある質問(FAQ)
Q1. SES会社を買うのは、どんな会社ですか? A. 取得した買い手自身の開示では、SES・開発の同業、IT人材サービスやICT・コンサルなど他業態の会社、システム開発系のグループが確認できます。ファンドや個人が買い手になった公表事例は、取得した範囲にありませんでした。公表事例は、開示や広報をする買い手に偏ります。また、取得した7件のうち対象がSES専業なのは2件で、ほかはSESを含む複合事業や受託開発が主の会社です。SES専業のM&A市場全体を表すものではありません。
Q2. 赤字のSES会社でも買い手はつきますか? A. 買い手がつく例はあります。システムソフトは、SES事業を営むと開示した、人員25名で2024年4月期から3期連続の営業赤字だった日本クラウド(事業内容はソフトウェアの開発とシステム・エンジニアリング業務)の株式67.4%を取得しました。目的は開発事業の規模・領域の拡大などと書かれています。個別の例であり、赤字の会社が必ず売れることは意味しません。
Q3. 同業に売ると、何を気にすればよいですか? A. 一つは情報の扱いです。中小M&Aガイドライン(第3版)は、売り手が自ら取引先や同一地域内の同業者等に打診するときも、情報の伝わり方に注意が必要としています。もう一つは、顧客や現場の重なりです。本記事の整理では、顧客別の売上と技術者の配置先を一覧にしておくと、重なりの有無を早く確かめられます。
Q4. 買い手が異業種でも、SES会社は売れますか? A. 売れた例は開示されています。通信・ネットワークのICT事業を主軸にするJ.C.O.S(人材サービスの一つとしてSESも挙げる)、ITフリーランスのマッチングなどを営むココナラ、ブロックチェーンのコンサルティングのPacific Metaは、それぞれ自社の顧客基盤や開発リソースの補強を目的に挙げています。ただし、SESの契約や商流への理解は買い手によって違うため、技術者や顧客の扱いを事前に聞くことが必要です。
Q5. 買い手が決まる前に、技術者や顧客に話してよいですか? A. 中小M&Aガイドライン(第3版)は、最終契約の前に伝えるのは親族や幹部役員等のごく一部にとどめ、他の関係者には原則としてクロージング後(早くとも最終契約締結後)に知らせるべきとしています。情報が伝わった後に頓挫すると、取引先の喪失や従業員の退職につながるおそれがあります。
Q6. 派遣の許可がある場合、買い手のグループへ技術者を出せますか? A. 派遣として行う部分には上限があります。派遣法23条の2は、関係派遣先への派遣割合を事業年度の総労働時間で100分の80以下にするよう定めています。買い手が経営を実質的に支配する関係になると、買い手やグループが関係派遣先に当たる可能性があります。範囲は厚生労働省令で定められているため、個別に労働局等へ確認してください。
出典
- 株式会社システムソフト「子会社の異動を伴う株式の取得に関するお知らせ」(2026年7月29日) https://www.systemsoft.co.jp/wp-content/uploads/2026/07/kogaisha20260729.pdf
- ティアンドエスグループ株式会社「エクステージ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」(2025年1月22日) https://pdf.irpocket.com/C4055/PEbr/Y7Xx/zOn7.pdf
- 株式会社Sun Asterisk「株式会社MIXENSEの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」(2025年12月24日) https://ssl4.eir-parts.net/doc/4053/tdnet/2734887/00.pdf
- 株式会社ハイブリッドテクノロジーズ「MCP35株式会社(中核子会社:株式会社グルーヴ・システム)の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」(2026年1月15日、PR TIMES掲載) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000093.000091454.html
- 株式会社ココナラ「株式会社ココナラがSES事業を営む 株式会社フレームキャリアを子会社化」(2026年3月2日、PR TIMES掲載) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000106.000045956.html
- 株式会社Pacific Meta「Pacific Meta、Kenpal株式会社を完全子会社化」(2026年4月6日、PR TIMES掲載) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000173.000111379.html
- 株式会社テクニケーションシード「株式会社テクニケーションシード、株式会社ミギナナメウエよりSES事業を事業譲受」(2026年8月1日、PR TIMES掲載) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000115801.html
- 株式会社J.C.O.S「株式会社J.C.O.S、システム開発・SESを手掛ける株式会社クロニクルを完全子会社化」(2026年9月2日、PR TIMES掲載) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000073186.html
- +81株式会社「+81株式会社が株式会社エンジョイの全株式を取得し子会社化」(2026年9月10日、PR TIMES掲載) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000175857.html
- 株式会社No.1「No.1がソフトウェア受託開発を手掛けるコードを子会社化」(2025年2月28日、PR TIMES掲載) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000086.000055597.html
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月) https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf
- e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」第23条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088