解体受注残の評価

解体会社 買収 受注残|処分費・外注費・入金条件で工事別の見込利益を出す4つの確認

この記事の目次
  1. この記事の結論
  2. 受注残の金額は利益ではない。契約の書面がある工事だけを、工事別の見込利益に引き直す
  3. 解体の原価は、自社施工・外注費・運搬処分費の3つに分ける。処分費は受注後に動く前提で見直す
  4. 地中障害物や残置物で原価が増えたとき、請求できるかは通知と変更合意の書面で決まる
  5. 入金が完成引渡しのときだけなら、受注残が増えるほど、買収後の立替資金が膨らむ
  6. 受注残を数えるのは、工期内に施工できる人と重機が残る場合だけにする
  7. 見込利益は、年買法の営業利益と二重に数えず、価格・補償・買収の前提条件に移す
  8. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)
  10. 出典

「受注残が積み上がっていて、来期の利益は見えている」。解体会社の売却でよく出る説明です。ただ、受注残は、これから処分費や外注費を先に払いながら作る義務でもあります。受注時の見積どおりに原価が収まらなければ利益は消え、入金が遅ければ、買い手が資金を立て替えます。この記事は、受注残を買収後の利益として見込んでよいかを、工事別の書類で確かめる方法として整理します。

この記事の結論

  • 受注残は、工事別の見込利益に引き直すまで、利益とは言えません。 確認は4つです。契約の書面があるか、処分費・外注費を見直した原価はいくらか、追加費用を請求できる合意の記録があるか、入金はいつか。
  • 人と重機が残る前提でだけ、受注残を数えます。 工期内に施工できる技術者を、買収後も配置できるかを確かめます。
  • 見込利益は、年買法の営業利益と二重に数えません。 差が見つかったら、価格・補償・買収の前提条件に移します。

この記事の対象:解体会社の買収を検討している買い手。売り手として、買い手が受注残で何を問うかを知りたい方にも使えます。

解体業全体の評価と売却準備は、解体業のM&A DATAにまとめています。この記事は、そのうち受注残の見方だけを深く扱います。進行中の案件を案件別に見直す考え方は、システム開発会社でも同じです。その整理はシステム開発会社 買収 不採算案件にあります。この記事は、解体に固有の処分費・外注費・工程・入金条件に絞ります。

受注残の金額は利益ではない。契約の書面がある工事だけを、工事別の見込利益に引き直す

結論: まず、受注残のうち「書面のある契約」を選びます。そのうえで、工事ごとに完成までの原価を見直した利益を出します。

建設業法19条は、建設工事の請負契約の当事者に、契約の締結に際して次のような事項を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付することを求めています。

  • 工事内容、請負代金の額、工事着手と完成の時期
  • 請負代金の前金払や出来形部分に対する支払を定めるときは、その時期と方法
  • 設計変更や工事の中止の申出があった場合の、工期・請負代金の額の変更に関する定め
  • 検査の時期と方法、引渡しの時期、工事完成後の請負代金の支払の時期と方法

分別解体の対象になる工事では、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)13条により、これらに加えて、分別解体等の方法と解体工事に要する費用なども書面に記載します。書面があれば、受注残の工事ごとに、金額・時期・支払の条件を確かめられます。

工事の状態(本記事の整理) 確かめる書類 受注残としての扱い
契約済・未着工 請負契約書、請負代金内訳書、工期 数える。ただし、民間建設工事標準請負契約約款(甲)33条は、発注者が必要と認めるときに書面で工事を中止し、または契約を解除できるとしている。契約書の解除と損害の定めを確認する
着工済 契約書、工事別の原価の実績、出来高の請求書 残りの作業とその原価だけを受注残として数える。済んだ部分は、実績の売上・原価・入金で確かめる
見積提出済・口頭の内示 見積書のみ、書面なし 数えない
避けたい判断 こうすればOK
受注残の合計額を、そのまま来期の売上や利益として評価する 書面のある契約だけを選び、工事別に請負代金と見直した原価を並べる
見積段階の案件や口頭の内示まで、受注残に含めて説明を受ける 契約書の有無で区分した一覧を出してもらう。区分のない合計は評価に使わない
利益率の高い工事だけを見る 小さな工事も含め、赤字の件数と合計を見る

解体の原価は、自社施工・外注費・運搬処分費の3つに分ける。処分費は受注後に動く前提で見直す

結論: 受注時の見積原価をそのまま使わず、3つの区分ごとに、いまの単価と未払いの請求を入れて原価を見直します。

建設業法20条1項は、建設業者に、工事の種別ごとの材料費・労務費などの内訳と、工程ごとの作業および準備に必要な日数を記載した見積書を作るよう努めることを求めています。努力義務ですが、見積書にこの内訳と日数があるかで、原価を見直す土台の有無が分かります。工程ごとの日数が書かれていない見積書は、工期と人員の配置を後から確かめにくくなります。また、同法19条の3第2項は、建設業者が、国土交通省令で定める正当な理由がある場合を除き、請け負う工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならないと定めています。個々の工事がこれに当たるかは別の判断で、弁護士に確認することになりますが、見直した原価が請負代金を上回る工事は、契約を結んだ時点の見積の根拠から確かめます。

原価の区分 中身の例 確かめる資料 見直しで見る点
自社施工 自社の作業員、重機、燃料 工数の記録、重機の稼働記録 工事ごとに記録されているか。他の現場の工数が混ざっていないか
外注費 下請の手壊し、重機オペレーター、足場など 発注書、下請契約書、請求書 未着の請求書や、出来高の未精算がないか。運搬を下請に任せている工事では、下請が運搬の許可を持っているか
運搬・処分費 収集運搬、中間処理、最終処分 委託契約書の料金、マニフェスト、処理業者の見積 受注時に置いた単価と、現在の委託先の単価の差

運搬・処分費は、元請の原価です。環境省「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」は、建設工事に伴う廃棄物について、実際の施工を下請が行っていても、発注者から直接工事を請け負った元請業者を排出事業者とし、処理料金の支払いを含む責任が伴うとしています。環境省の通知「建設工事から生ずる廃棄物の適正処理について」別添の建設廃棄物処理指針も、元請業者は適正な処理費用の支払いを行うよう努めなければならないとしています。

処分単価を低く置いた見積では、見込利益が大きく見えます。同じチェックリストは、地域における産業廃棄物の一般的な処理料金の半値程度かそれを下回る料金で委託していて、その料金に合理性を示せない場合は、適正な対価を負担していないことになり、措置命令(廃棄物処理法19条の6)の対象になる可能性があるとしています。複数の処理業者の見積をとるなど、適正な料金かを把握する措置をとっていない場合も同様です。受注残の見込利益が、低すぎる処分単価の上に成り立っていないかを、委託契約書の料金と見積の比較記録で確かめます。

運搬を下請に任せる場合も確認が要ります。建設廃棄物処理指針は、下請負人が許可なく建設廃棄物を運搬できる場合を、解体工事、新築工事、増築工事以外の建設工事で請負代金が500万円以下のものなどに限っています。解体工事そのものは、この例外に含まれていません。

仮の数字での例(実在の工事ではなく、計算の流れを示すためのものです)。請負代金1,200万円の工事Aについて、受注時の見積と、いまの単価で見直した原価を並べます。

項目 受注時の見積 見直し後 差
自社施工 350万円 350万円 0
外注費 250万円 300万円 +50万円
運搬・処分費 400万円 520万円 +120万円
現場経費 50万円 50万円 0
原価の合計 1,050万円 1,220万円 +170万円
請負代金 1,200万円 1,200万円 0
見込利益 150万円 -20万円 -170万円

売り手の資料では150万円の利益が見込める工事が、見直すと20万円の赤字になります。この工事を受注残に載せたまま評価すると、170万円を過大に見積もることになります。処分費に関する契約書の文言や、追加請求の可否は、次の章で確かめます。

地中障害物や残置物で原価が増えたとき、請求できるかは通知と変更合意の書面で決まる

結論: 追加費用は、発生した事実だけでは請求できるか分かりません。通知・指示・変更の合意が書面で残っているかで、請求できる赤字か、会社が負担する赤字かが分かれます。

民間建設工事標準請負契約約款(甲)16条は、工事現場の状態や地質などが設計図書の施工条件と実際で相違することや、土壌汚染、地中障害物の発見その他、施工の支障となる予期することのできない事態が発生したことを発見したときは、受注者が直ちに書面で発注者等に通知するとしています。通知を受けた発注者は、直ちに書面で指示し、発注者と受注者は、必要と認められる工期の変更または請負代金額の変更を求めることができます。

請負代金額の変更は、31条が、工事の追加や変更、工期の変更があったとき、建設業法20条の2第2項に規定する資材の価格の高騰その他の請負代金の額に影響を及ぼす事象が発生したとき、などに求められるとしています。処分費が受注後に上がった場合も、この条項に当たるかは契約書の文言と事実関係で変わり、本記事の資料では断定できません。建設業法19条2項も、契約内容のうち1項に挙げる事項(請負代金の額や工期の変更に関する定めなど)を変更するときは、変更の内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付するよう求めています。建設リサイクル法13条2項も、分別解体等の方法や解体工事に要する費用に変更があるときは、同様の書面を求めています。

解体に特有の残置物は、環境省の建設廃棄物処理指針が、発注者の責務として、建設工事を行う以前からの廃棄物(例えば、解体予定建築物中に残置された家具等の廃棄物)を適正に処理することを挙げています。このため、見積の時点で、残置物の処理を発注者と受注者のどちらが行う前提かが、契約書や仕様書でどう書かれているかを確かめます。

標準約款は、中央建設業審議会が作成して実施を勧告するもので、個別の契約が約款どおりとは限りません。実際の契約書で、通知・指示の手順、協議の期限、変更の合意の方法を確認します。

避けたい判断 こうすればOK
「施主も事情を分かっているから、追加分は払ってもらえる」という説明を前提にする 通知・指示・変更合意の書面を工事ごとに出してもらう。書面のない追加分は、回収できない前提で見直す
地中障害物や残置物の増加分を、粗利のばらつきとして流す 原因別(地中障害物、残置物、石綿への対応、近隣対応、工期延長)に、追加費用の累計を集計してもらう
工期の遅れを、現場の事情として片づける 工期延長の請求と合意の記録を見る。約款(甲)34条は、工事が正当な理由なく工程表より著しく遅れ、工期内などに完成する見込みがないと認められるときを、発注者が工事を中止し、または相当の期間を定めて書面で催告したうえで契約を解除できる場合に挙げている

石綿が見つかった工事では、事前調査の記録と追加の作業を突き合わせます。確認する書類は解体業 M&A デューデリジェンスにまとめています。

入金が完成引渡しのときだけなら、受注残が増えるほど、買収後の立替資金が膨らむ

結論: 受注残の利益と、それを得るまでに必要な資金は別です。工事別の入金条件で、買収後に会社が立て替える額を見積もります。

標準約款の入金の定めは、発注者と契約の種類で違います。約款(甲)は民間の比較的大きな工事向けで、個人住宅など民間の小規模な工事向けには約款(乙)があります。以下は約款(甲)で見ます。

契約 標準約款の定め 買い手が見る点
民間工事(約款(甲)) 検査に合格したときは、契約書に別段の定めがある場合を除き、受注者が引き渡すと同時に、発注者が請負代金の支払いを完了する(28条1項)。部分払は、契約書の定めにより請求でき、出来高払の請求額は、契約書に別段の定めがある場合を除き、検査に合格した出来形部分などに対する請負代金相当額の十分の九に相当する額(同条2項) 契約書の支払方法が「完成引渡しのとき」だけか、前払・部分払があるか
公共工事(公共工事標準請負契約約款) 検査合格後に請負代金を請求し、発注者は請求を受けた日から四十日以内に支払う(33条)。前払金は、保証事業会社の保証契約を前提に請求でき、発注者は請求を受けた日から十四日以内に支払う(35条) 自治体などの発注工事の割合と、前払・部分払の使用状況
元請から下請への支払 建設業法24条の3は、元請負人が出来形部分に対する支払または工事完成後の支払を受けたときは、受けた日から一月以内で、かつできる限り短い期間内に下請代金を支払うよう求めている 元請として受けた工事で、下請へ払う時期。下請として受けた工事で、元請から入る時期

建設工事標準下請契約約款34条は、元請負人が前払金や部分払金の支払いを遅延し、相当の期間を定めて支払いを求めても支払わないときは、下請負人が工事を一時中止できるとしています。入金の遅れは、資金繰りだけでなく、工事の進行にも影響します。

仮の数字での例。前の章の工事A(見直し後の原価1,220万円)で、完成前に原価が全額先に出ていくと仮定して、入金条件ごとの立替額を比べます。実際は、処分費や外注費の支払時期で変わります。

入金条件(仮) 立替額の計算 立替額
完成引渡しのときに全額 1,220 - 0 1,220万円
契約時に請負代金の30%を前払 1,220 - 1,200×0.3(360) 860万円
出来高払。進捗50%の時点(請負代金相当額600万円、その十分の九を請求できたと仮定) 原価610(1,220×50%) - 540(600×0.9) 70万円

同じ工事でも、入金条件によって、先に出ていく資金は大きく変わります。受注残の工事が多く、どれも完成時払いなら、買収後に必要な運転資金は、受注残の増加とともに増えます。

前受金や前払は、買い手が自由に使える現金ではありません。約款(甲)41条は、工事の完成前に契約を解除したときは、発注者が出来形部分などを引き受け、受ける利益の割合に応じて請負代金を支払うとしています。発注者が受注者の債務不履行を理由に解除し、清算の結果、過払いがあるときは、受注者が返還します(同条2項)。未完工の工事に含まれる前受金は、清算の対象になる前提で見ます。

受注残を数えるのは、工期内に施工できる人と重機が残る場合だけにする

結論: 受注残の工期に合わせて、技術者と重機の配置表を作ります。買収後に配置できない工事は、受注残の利益として数えません。

建設業法26条1項は、建設業者が建設工事を施工するときは、工事現場における施工の技術上の管理をつかさどる主任技術者を置かなければならないとしています。受注残の各工事に、誰が主任技術者として入るのかが決まっていて、その人が買収後も在籍するかを確かめます。許可や技術者の承継の論点は、解体工事業の許可承継で扱っています。

確かめる点は次のとおりです。

  • 工事ごとの工期と、配置する主任技術者を、時期を重ねて並べる。同じ人が重なる期間に、複数の工事へ配置されていないか
  • 重機とオペレーターの稼働予定が、工期と合っているか。リースの重機は、契約が買収後も続くか
  • 主要な技術者が退職した場合に、代わりが入れるか。工事が遅れると、約款(甲)34条の解除の理由になりうる

受注契約そのものの承継も確認します。約款(甲)6条は、選択条項(A)で、契約上の権利義務を第三者に譲渡し、または承継させるには、相手方の書面による承諾を得ることを求めています。選択条項(B)では、あらかじめ相手方の承諾を得た場合などを除き、承継させられません。事業譲渡で請負契約を移す場合は、発注者の承諾が要る可能性があります。株式譲渡は契約の当事者が変わりませんが、中小M&Aガイドライン(第3版)は、賃貸借契約などについて、支配権の変更に関する条項があると、継続のために事前の協議が必要になる場合があると指摘しています。受注契約に同じ条項がないかを、契約書で確認します。

見込利益は、年買法の営業利益と二重に数えず、価格・補償・買収の前提条件に移す

結論: 受注残の見込利益は、将来の営業利益の一部です。価格の算定で営業利益の数年分を使うなら、同じ利益を別に足しません。見つかった差は、金額の確かさに応じて契約の条件に移します。

解体業M&A売却相場が紹介する年買法は、時価純資産に営業利益の数年分を上乗せする考え方です。本記事の整理では、受注残の見込利益は、その営業利益に含まれる将来の利益の一部になりえます。受注残の利益を、営業利益の数年分とは別に足すと、同じ利益を二重に数えることになります。受注残は価格を押し上げる材料というより、営業利益の見込みが実現するかを確かめる材料として使います。営業利益の水準そのものは、解体業の利益率も参考にしてください。

決算書も確かめます。企業会計基準適用指針第30号(2024年9月)は、工事契約について、工事原価総額等が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつその金額を合理的に見積れる場合に、超過すると見込まれる額のうち、既に計上された損益の額を控除した残額を、工事損失が見込まれた期の損失として処理し、工事損失引当金を計上するとしています(90項)。前の章で見直した赤字の額と、決算書の引当の額を比べます。同指針に沿って決算している会社なら、差は決算書に反映されていない見込みです。同指針を適用していない会社では、引当が無いことだけでは判断できません。同指針は、期間がごく短い工事契約について、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する取扱いも認めています(95項)。この取扱いを選んでいる会社では、着工済の工事の売上が期末に入っていないことがあるため、売上と仕掛の数字は、会社が選ぶ処理で変わります。どの基準で決算しているかは、公認会計士・税理士に確認してください。

中小M&Aガイドライン(第3版)は、デュー・ディリジェンス(DD)の結果を踏まえて、最終契約に定める譲渡額・表明保証・補償などの内容や条件を調整できるとしています。また、最終契約で、クロージングまでに何を行う必要があるかを、クロージングの前提条件として定める場合があるとしています。期間や責任上限が設定されていない表明保証は、譲り渡し側が過大な責任を負う原因になりうるとしています。

見つかったこと 移し方(本記事の整理) 注意点
見直し後の原価で赤字になる工事。金額が固まっている 譲渡額に織り込む。または、売り手がその工事を完成させ、原価を負担する 決算書で既に引当や損失が計上されていれば、二重に差し引かない
追加費用の請求が、書面の裏付けなく不確か 補償・表明保証の対象にする。範囲・期間・上限を決める 期間や上限のない条項は、売り手の負担が過大になりうる。売り手は範囲を確認する
立替資金が大きく、買収後の運転資金が足りない 買い手の資金計画に織り込む。受注残の入金条件の見直しを、前提条件にすることも検討する 発注者との条件変更は、売り手だけでは決められない
主任技術者が退職する見込み、発注者の承諾が得られない 該当する工事を受注残から外す。または、クロージングの前提条件にする 承諾を得る時期は、秘密保持との兼ね合いがある

表明保証や補償の書き方、価格をいくら調整するかは、案件の事情で変わります。弁護士・公認会計士・税理士などの専門家に確認してください。

自社の場合を確認する 受注残を含めた事業価値を、自社の数字で確かめたいとき → 事業価値を確認する

まとめ

  • 受注残の合計額は、利益ではありません。契約の書面がある工事を選び、工事別に、処分費・外注費・自社施工の原価を見直して、見込利益を出します。
  • 追加費用は、通知・指示・変更合意の書面があるかで、請求できるかが分かれます。入金条件は、買収後の立替資金の大きさを決めます。
  • 受注残は、技術者と重機が残る工事だけを数え、営業利益と二重に数えません。差は、価格・補償・前提条件に移します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 受注残が多い解体会社は、買収後の利益も見込めますか? A. 受注残の金額だけでは見込めません。受注残は、これから原価をかけて工事をしたうえで受け取る金額です。工事ごとに、請負代金と、処分費・外注費・自社施工の原価を見直した完成までの原価を並べ、利益が残るかを確かめるまでは、利益とは言い切れません。

Q2. 受注残に数えてよい工事は、どこまでですか? A. 本記事の整理では、請負契約の書面がある工事です。建設業法は、請負代金の額や工期などを書面に記載して相互に交付することを求めています。着手前でも、書面がある工事は数えますが、発注者は工事の完成前に中止や解除ができる約款もあるため、解除と損害の定めを確認します。見積書を出しただけの案件や口頭の内示は、数えません。

Q3. 処分費が受注後に上がったら、追加で請求できますか? A. 契約の定めで変わり、本記事の資料だけでは断定できません。標準請負契約約款(甲)は、資材の価格の高騰などで請負代金額の変更を求められるとしていますが、運搬処分費の上昇がこれに当たるかは、契約書の文言と事実関係の確認が要ります。請求の可否は弁護士に確認してください。

Q4. 地中障害物や残置物が出て費用が増えたときは、誰の負担ですか? A. 民間建設工事標準請負契約約款(甲)は、地中障害物の発見など予期しない事態を受注者が書面で通知し、発注者が書面で指示し、必要と認められる工期や請負代金額の変更を求められるとしています。環境省の指針は、工事前からある残置物の適正処理を発注者の責務としています。実際の負担は契約書で決まるため、通知と変更合意の書面があるかを工事ごとに確認します。

Q5. 入金条件は、買収後の資金繰りにどう影響しますか? A. 入金が完成引渡しのときだけなら、処分費や外注費を先に払う分を会社が立て替えます。前払や出来高払があれば立替額は減ります。仮の数字で、同じ工事でも条件によって立替額が変わることを本記事で示しています。実際の条件は、民間・公共・下請で標準約款が違い、個別の契約書で確認します。

Q6. 株式譲渡と事業譲渡で、受注残の引き継ぎはどう変わりますか? A. 株式譲渡は譲り渡し側の法人格に変動がないため、契約の当事者は変わりません。事業譲渡は承継対象を選べますが、民間約款(甲)は契約上の権利義務を第三者に承継させるには相手方の書面による承諾が要るとしています(選択条項の一つ)。受注残のうち承諾が得られない工事は移せない可能性があります。個別の契約と進め方は弁護士に確認してください。

出典

  • e-Gov法令検索「建設業法」(昭和二十四年法律第百号。19条・19条の3・20条・20条の2・24条の3・26条を確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
  • e-Gov法令検索「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(平成十二年法律第百四号。12条・13条を確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000104
  • 国土交通省「建設産業・不動産業:建設工事標準請負契約約款について」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000092.html
  • 国土交通省・中央建設業審議会「民間建設工事標準請負契約約款(甲)」(令和7年12月2日改正) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001499465.pdf
  • 国土交通省・中央建設業審議会「民間建設工事標準請負契約約款(乙)」(令和7年12月2日改正) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001331104.pdf
  • 国土交通省・中央建設業審議会「公共工事標準請負契約約款」(令和7年12月2日改正) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001499463.pdf
  • 国土交通省・中央建設業審議会「建設工事標準下請契約約款」(令和7年12月2日改正) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001329293.pdf
  • 環境省「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」 https://www.env.go.jp/content/000126051.pdf
  • 環境省「建設工事から生ずる廃棄物の適正処理について(通知)」(環廃産第110329004号。別添「建設廃棄物処理指針(平成22年度版)」) https://www.env.go.jp/hourei/add/k035.pdf
  • 企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第30号 収益認識に関する会計基準の適用指針」(2024年9月) https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/kichu_20251016_26.pdf
  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月) https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/m_and_a_guideline.pdf

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